大谷沢(大岩沢)

プロフィール
 神ノ川の支流、大谷沢は水量が多く通過の難しいゴルジュもある変化に富んだ沢だ。初心者が直登するには難しい滝が多く、遡行時間も長くなるので初心者向きの沢とはいえない。本書で紹介した他の沢を独力で登る技量を身につけてから登るか、経験者と一緒に登るようにしたい。遡行の前半はF8まで次々に滝が現れ、どのように突破するかを考えながら登るのが楽しい。F8の上からはゴーロになり沢歩きの醍醐味を味わうことができる。ただし、遡行時間が長くなるので体力を使う。
ポイントガイド
 F3は水流沿いを嫌うなら左岸の傾斜のゆるい側壁から取り付き、落ち口方向へトラバース気味に登る。F4の滝は滝下に近付けず直登が難しい。巻き道は少し戻った左岸の8m凹角から登り、その上の枝沢の滝を登った所からトラバースする。この急斜面のトラバースは明確な踏み跡があるわけではないのでルート判断が要求される。8m凹角の登りが難しければゴルジュを戻って大高巻きになる。大高巻きのルートはゴルジュ手前の左岸の土の斜面を登るらしい。F7は手前右岸から巻く。ブッシュを掴んで登れば滝を巻くことができるが、沢へ降りるときに10mぐらいの懸垂下降になる。下降は特に難しくない。
アクセス
大谷沢は車の利用が便利だ。津久井町側から来た場合は413号線の両国橋手前400mを左折し、道なりに進んでT字路を右折すれば神ノ川ヒュッテまで立派な一本道だ。ヒュッテの手前、日蔭沢橋手前右の駐車スペースに車を止められる。日蔭沢橋を渡ったところには公衆トイレがある。林道の先にはすぐ車止めゲートがある。

入渓点
 駐車スペースから歩いて、日蔭沢橋のすぐ手前を右へ入る。道なりに行くと神ノ川ヒュッテの前に出る。ヒュッテをすぐ右に見て犬越路(いぬこえじ)へ向かう林道を登ると、3分ほどで日蔭新道経由の大室山方面の看板がある。ここは日蔭新道に入らないで林道をまっすぐ進む。右の作業小屋を過ぎて歩くと、大きな堰堤が右手に見える。先を歩いて沢沿いの林道が左へ直角に折れて沢を離れ、また右に折れて沢と平行になる。ここから少しで「大谷沢」の立て札がある小さな広場に出る。近くに横転した廃車が放置されてある。神ノ川ヒュッテからここまで約15分の道のりだ。大谷沢の立て札の上部が焼け焦げて「*谷沢」となっているので注意する。ここから右手を流れる日蔭沢に降り、さらこの沢を横断した先にある大谷沢に入渓する。大谷沢の出合いはここから少し下流の所にある。入渓すると大谷沢の上流には10mのコンクリート製の堰堤が見える。
コースガイド

 入渓点〜F6、8m滝
 入渓点から堰堤を全部で4基越えることになる。最初の堰堤は左のザレを登って越える。二番目の鉄製の堰堤は右を越えるが、最初の堰堤の右側から伸びる踏み跡を辿れば容易だ。三番目の堰堤は右の岩と岩の間のルンゼを登ってから越える。四番目は堰堤と岩に挟まれた右奥のザレを登る。足元が悪くホールドがないので、ドライバーを差し込みバランスを取りながら登る。滑らないように注意したい。この堰堤を越えると前方に2mほどの小さな滝があり、その先には豪快に水を落とす4mほどの滝が見える。ここからゴルジュになっている。この釜のあるF1、4mは
水が少ない場合は水流沿いを登れるが、ずぶ濡れになる。登攀用具の点検をしてから水流左の壁に取り付く。ホールドが細かいが何とか拾える。F2も豊富な水流が釜めがけて轟音を上げている。F2、4m滝はF1を登った後、そのまま右岸をトラバースする。途中一抱えほどある岩の出っ張りを越える所が、ややホールドに乏しくなるが良く探せば拾える。すぐF3、7m滝でゴルジュは開け明るくなる。ここは水流沿いにホールドを追えるが結構水量が多く濡れるだろう。ここは滝右の傾斜の緩い乾いた岩を登り、落ち口の方へトラバース気味に登る。滝上までしっかりしたホールドがあるが、高度差があるので慎重にいきたい。

2m滝とF1‐4m ゴルジュの奥にF3の落ち口が見える   F3‐7m 右から巻くのが簡単

 F3の上では右から大きな涸沢が出合う。この辺りは日が射す明るいスポットだ。この先は再びゴルジュで両岸が切り立ってくる。大岩を左から巻くと2mの滝だ。その向うには釜のある5mの滝がある。右岸の高いところから長いロープが下がっているが、古そうなのでここは水流右の凹みを登る。そう難しくはない。この滝の先は深いゴルジュとなり薄暗い雰囲気になる。3m、4mの滝を続けて越えていくとゴルジュの奥に轟音を立てて落ちる滝、F4がある。とは言っても沢が左へ曲がった先にあるその滝の全容は判然としない。多量の水飛沫と釜の深さが行く手を塞いでいる。ここは、少し戻った左岸にある8mの凹角を登る。下部は良いが上部の一歩が苦しいところがある。凹角の上は樹木が生えるテラスになっており、その先に右から水のある枝沢がF4の釜へ滝を落としている。この滝の高さは、テラスまで6mほどだ。テラスを歩きこの滝下を越えるとF4の落ち口にトラバースする踏み跡が見える。途中残置スリングが見えるが、急傾斜でホールドに乏しく、ここをトラバースする気にならない。ここは、枝沢の6m滝を登って高巻くことにする。この滝は急だが二段になっておりホールドも豊富なので水流沿いを登れる。しかし、水の多いときは結構濡れるだろう。この滝を登ったあとこの枝沢をさらに10mほど登ってから左の支尾根に取り付いて、F4落ち口の方向へトラバースできる地点を探す。途中支尾根を箇所越えてトラバースすると大谷沢本流の上に出る。このトラバースは傾斜が急で高度もあるので滑落しないように慎重に行きたい。急な土の斜面ではドライバーを刺し込んで支点にする。不安定なところでは必ずロープを出して確保する。本流への下降点は難しくないが、安全のためロープを出して下降する。
 F4−10m 全容の撮影は難しい

 他のガイドブックによると、F4の巻き道はゴルジュ入口までもどり左岸の土の斜面を登ってF4手前に落ちる枝沢に出るとある。そのあとは、ここでガイドした通りだ。8m凹角の登りを避けたい場合はこちらの巻き道が良いだろう。とは言っても入渓者は少ないので踏み跡は明瞭では無い。
 F4のすぐ上の3m滝を越えると左に巨岩がふたつ直立している。左は10m、右のは5mぐらいの高さだ。両者は割れて二つになったようだ。よく見ると割れ目が一致する。夫婦岩という名前がふさわしい。大谷沢の別称「大岩沢」の由来になった岩であると思われる。この先、沢は大きな岩の散在する巨岩帯となり、この大岩と合わせて不思議な雰囲気を醸し出している。この沢で巨岩帯はここだけである。ここを過ぎると右から水のある沢が出合う。本流はすぐ4mのゴロタ滝だ。その向うには大岩の滝が水を落としている。このF5、5m滝は、右側が段になっていて簡単に登れる。ここからはゴルジュになっている。その先に幅広の大きな滝、F6、8mが豪快に水を落としている。まだまだ水量は衰えていない。直登は難しそうなので、左のルンゼを登ってから落ち口へトラバースする。特に難しいところはない。
 F6〜登山道 
 F6の上はナメになっている。日が射せば水が煌く明るい場所だろう。碧く澄んだ水がスラブの表面を滑ってゆく。その先の傾斜の緩い5mの滝を越えれば再びゴルジュとなり2m、mの二段滝が続く。3m滝はスラブでホールドが乏しい左をへつることになる。ゴルジュ内のナメを先へ進むと沢は左へカーブする。ここに釜のあるF7、6mのトイ状滝が勢い良く水を落としている。登るのは難しそうだが、水が少ない場合は水流右を登れる。水量が多く登れそうにない時は、ブッシュの生えた左の岩から巻く。ここは、一歩目のスタンスを取り、上のブッシュをつかめればあとは登れる。その上は支点になる潅木が要所に在るので斜面を登ってゆける。次々に木の幹をつかんでトラバース気味に斜面を登り切ると、視界が開け眼下に沢が見えてくる。その上流には大きな滝F8が沢幅いっぱいに水を落としているのが見える。沢までの下降はかなりの高度がある。F7の落ち口まで10mはあるだろう。太目の樹木にロープを回し、苔が生えて湿った岸壁を蹴ってF7上に懸垂下降する。
 すぐ先に幅広の10m滝、F8がある。ここは滝左の小さいルンゼを登ってから、落ち口の高さをトラバースすると簡単に巻ける。滝右のカンテからも巻ける。F8の上はゴーロになる。4mゴロタ滝を過ぎて10分歩くと左から小さな枝沢が落ちてくる。ワイヤーロープが放置されたゴーロをさらに歩いて行くと、一枚岩の5m段々滝、トイ状の段々滝、ナメになる。その先では、ゴロタの間を縫って奔流が迸る美しい水の輝きを見ることができる。この辺りは沢歩きに格好な場所だ。ゆったりとした気分でゴーロを詰めると三俣になる。左、中央、右とも水が流れている。水量は1:2:1ぐらいだ。ここは中央に入る。
  F8‐10m 右のカンテが登れる

 三俣の上もゴーロが続く。水の勢いもまだまだ強い。じきに12mぐらいの多段の滝F9、F10がふたつ続くが、どちらも容易に登ることができる。その後、易しい5m曲り滝、緩い4m滝を過ぎると左から涸沢が入る。さらに進むと右から水のある沢が出合い、すぐゴツゴツした岩の4m滝を越える。難しいところは無い。水の勢いが弱くなり4m、3mの滝を越える辺りで水は涸れる。左にガレ沢を見て3m、5mの涸滝を越えると左に涸沢が落ちている。本流は10mの高い滝になるが、ここは左の窪を登る。傾斜の緩い6mの滝を越えた辺りで沢幅は狭くなるが、沢床はしっかりした岩である。












   
      F10‐10m 傾斜が緩い

 詰め
 また左にガレ沢が現れると本流にはかなり高く垂直に近い10m涸滝が沢を塞ぐ。ここは、ホールドのある滝左側を直登する。傾斜が急なので注意して登る。難しい場合は、左のガレ沢側から高巻くことになるだろう。10m涸滝を越えた後、小さな滝を二つ過ぎて苦しい登りを続けると小さな二俣になる。ここも、本流は右だ。左俣には大岩が見える。沢本流に水が涸れてからは、左側から涸沢、ガレ沢が合計4本入るが全て右にルートを取ると良い。最後の二俣から10分ほど忠実に沢を詰めると左に大きく崩れた土の斜面が現れる。崩れた斜面の中央の窪を登ることもできるが、上部が苦しい。崩れた土の斜面の右の支尾根に入り、枯れた潅木の中をジグザグに登って高度を稼ぐ。崩れた斜面の上部を左に巻いて行けば、じきに登山道に出る。登山道を右に100mほど登れば大室山、白石峠、犬越路の分岐点で椅子がある。ここからは、大室山まで0.3kmとある。
200410月中旬)

下山ルート
 犬越路を経由して神ノ川ヒュッテへ降りるルート  1時間45
データ

所要時間   4時間45分(入渓点〜登山道)
地図     中川、大室山(1:2.5万)
適期     6月〜10
・コースタイム
入渓点(25分)F1(35分)F4(35分)F4上(10分)F5(15分)F7(30分)F7上(45分)三俣(15分)左に涸沢(10分)左にガレ(10分)左に涸沢(10分)左にガレ(15分)二俣(10分)土の斜面(20分)登山道

TOP    BACK


遡行図