水無川本谷
遡行図

プロフィール
 水無川本谷は沢幅が広く水量も多い明るい沢で、丹沢の中で最も人気がある代表的な沢だ。登れる滝が多く、シーズンの晴れた休日には滝の登攀を目的にした遡行者が多い。F1からF5へ次々と滝が現れるが、中でもゴルジュに滝が連続するF3からF5がこの沢の核心である。これらの滝の登攀は初心者には難しい。ただし、これらの滝には鎖が付いているので初心者は鎖を利用して登ることができる。しかし、鎖を利用しての事故もあるので注意したい。F8付近の岩は崩壊が進んでおり巻き道も急峻で険しい。初心者には危険なところがある。初級、初級上の沢を経験した上で歩きたい。F5まで登った後、木ノ又大日沢へ繋げる方法もある。F8の難所を回避できる上に、稜線に出るまでの時間もかなり短い。このコースの場合は、初級上になる。
ポイントガイド
 水無川本谷の核心はF3からF5のゴルジュの通過だが、初心者にとってここは厄介な場所だ。F3の鎖を利用したトラバースは足元が不安定なので、鎖にセルフビレイを取りながら登る必要がある。ゴルジュの難しい登攀を回避するには、ゴルジュ手前右岸の巻き道を利用すれば良い。この巻き道は難しくないが、滝登りの楽しさは無くなってしまう。F8の巻き道は高度差があって急峻で険しい。枯れ木をつかんだりしないように、細心の注意が必要だ。初心者にとっては、F8の通過が最大の課題である。しかし、第二ルンゼ、支尾根の登りを慎重に行けば通過はできる。第二ルンゼ下部の崩壊も進んでいるので現地での判断が要求される。
アクセス
 源次郎沢と同じ

入渓点 
 戸沢山荘の上を通る林道は、その先で行き止まりになっている。途中、県立戸沢休憩所と丹沢臨時警備所が併設された建物がある。警備所にはシーズン最盛期に遭難対策隊が詰めている。ここで登山届を出して出掛けよう。ここにはトイレもある。林道が切れると戸沢が右から出合い道路上を沢が横切っている。その先の水無川に掛かる鉄の橋を渡る。水無川には澄んだ水が勢いよく流れている。この先、本谷山荘の前で道は右にカーブし、その先の小さな広場の右に「至 書策新道」の標識がある。標識に従って右方向へ、大きな沢の水無川に降りる。ここでは沢を対岸へ渡らずに、沢に降りてそのまま沢の堤防の左端を進む。ここは間違い易い所なので注意する必要がある。沢左を真っ直ぐ進むと源次郎沢出合い、そして源次郎沢の一つ目の堰堤に当る。この堰堤の前で対岸に渡り堰堤の右に造られたコンクリート製の急な階段を登る。この先を右に水無川を見て歩くとじきに分岐になり「源次郎沢入り口、本谷F5近道」の書策新道へ入る看板がある。この看板を左に見て、右側を流れる水無川本谷の右岸に沿って歩く。沢は大きな岩がゴロゴロして歩きにくいので、沢の左の踏み跡を探しながら歩く。入渓点付近の地形は源次郎沢左俣で紹介した地図を参照のこと。
コースガイド
 戸沢山荘〜F5上書策新道
 大きな岩のゴーロの沢に降りないで、沢の右岸を踏み跡を探しながら歩く。戸沢山荘を出てから15分ほどで大きな堰堤に行き当たる。ここは、鎖が下がった左の岩を登りトラバースして堰堤上に出る。足元に気を付ければ難しいところはない。堰堤の左端にロープが下がっている場合もあるが、この鎖のあるルートの方が楽だ。堰堤の先も沢はゴーロで歩きにくいので、時々渡渉して歩き易い所を探して歩く。堰堤から5分ほど歩くと沢は大岩が5、6個詰まった3mのゴロタの滝になる。滝は勢い良く水を落としており水流沿いを登るのは難しい。ここは、滝右を登ることもできるが、滝左にある大岩の左を巻く方が簡単だ。滝上は、沢の右側が切り立った崖になっている。この上もゴーロが続くので沢に入らずに右岸の踏み跡を歩いたほうが楽だ。しかし、時間に余裕があるなら、水流沿いを歩いたほうが楽しい。ゴロタの滝の上は小さな滝や釜が連続していて、沢歩きの楽しさが満喫できる。ゴロタの滝から10分ほど歩くと豪快な滝、本谷F1が見えて来る。
 
  堰堤前右岸の木立                      3mゴロタ滝

 1は、10mほどの大きな滝で落ち口から轟音を上げて水を落としている。この滝には左に鎖が下がっているのでこれを利用する。鎖は強く引っ張ってみて、しっかりと効いていることを確認してから利用するようにする。20046月の集中豪雨で一番上の支点が抜け、その下のもう一本の支点で支えられている。ここは、足元を良く見ればしっかりしたスタンスを探すことができる。ただし、高度差があるので初心者は緊張するだろう。落ち口は左の壁を少しトラバースしてから沢に降りる。ここは、しっかりしたホールドがあるのでホールドを良く探すこと。F1の上では、右からセドの沢が出合う。
 水量が豊富なF1‐10m
 
 本谷はすぐF2、5m滝になる。ここは鎖の下がったホールド、スタンスが豊富な左を登る。鎖は摩耗して摩擦部が細くなっているので良く確認してから使う。ここは水量が多いときは少し濡れるだろう。F2上にすぐ釜のある3m滝がある。ここは、右の壁も登れるが、左を登った方が簡単だ。3m滝の上はゴーロが続く。天気のよい日は沢の流れに木漏れ日が射して美しい。すぐに左右を大岩に挟まれた3mほどのトイ状の滝を落すゴルジュになる。ここは右の壁の上に登って、大岩の下をトラバースして滝上に出る。この上はまたゴーロが続く。ゴロタの滝が次々に現れて、始終どこを登るか考えなければならない楽しいところだ。ゴーロを行くと、トイ状滝、ゴロタ滝が重なった3m+2mほどの二段滝が現れる。トイ状の滝は水に入らず左のリッジを登り、上段ゴロタ滝は水流沿いを登る。さらに進むと左に涸沢が出合う。本谷は二条の3m滝を過ぎるといよいよ本谷のハイライト、F3からF5のゴルジュになる。ゴルジュの中に大きな滝が落ちているのが見える。これがF3、8m滝だ。
 F3手前にある2m滝は右から登れる。F3は左の鎖をたよりに登る。登りは恐くないが、滝上へのトラバースはスタンスが不安定で緊張する。鎖の位置をトラバースするのではなく、鎖をつかんだ足元にスタンスを探す。安全のため鎖にセルフビレイを取ってトラバースした方が良い。落ち口へ降りるところはホールドを拾って慎重に降りる。ここは鎖を使うルートでも事故が起きているとのことなので要注意だ。この上は釜のある4m滝だが、左の壁の段々を簡単に登れる。この辺りは次から次と滝と釜が現れて楽しいところだ。続いてF4、釜のある4m、1mの二段の滝になる。ここは水流の右を登る。さらにチョックストンのある3mの滝を左から越える。3m滝上には左から水のある沢が出合う。F5手前の5m滝は水流右の壁を登るが難しくない。F5、8m滝は豪快に水を落としている。ここは右側に鎖が付いているのでこれを使って登る。最近は右壁の下部が崩れていてスタンスがやや悪い。高度感もあるので慎重に行きたい。F5の上から3分ほど歩くと沢を横切っている書策新道に当たる。この辺りは沢が開けた明るいところで一休みしたくなる場所だ。書策新道を登ってきた人たちの休憩場所になっている。
 F5の鎖場の下部が崩壊して登りにくくなっている。F5の巻き道は、鎖の一番下の支点の所から右の踏み跡へ入る。10mほど先で左の急斜面を木の根を頼りに2mほど登るとすぐ左へ入る踏み跡がある。ここは登り過ぎないこと。左手に大岩が見えてきたら登り過ぎだ。踏み跡は大岩の下を通って落ち口へ出ている。巻き道は踏み跡がしっかりしていて難しいところはない。F5の高巻きは、F5手前の5m滝の下に左(右岸)から出合う水のある沢を登っても良い。すぐに書策新道に行き当たるので右へ入るとF5の上の沢へ出られる。
 F3の鎖場の通過が難しいと感じたらF3からF5を高巻きする方が良い。F3手前、ゴルジュ入口の2m滝を登らずに、この滝を15mほど下がった右岸の涸沢を真っ直ぐ登る。結構急だが難しいところはない。落石に気を付けて忠実にルンゼを詰めると5〜6分でひょっこり書策新道へ出る。新道を右へ歩き、ロープを渡した崩壊部のある山道を越えていくと自然に沢に出る。ここが本谷と書策新道の交差点である。沢の真ん中に木製の標識がある。

  F5‐8m 右に鎖がある


 F5上書策新道〜塔ノ岳
 本谷F5を登るとすぐに書策新道が左右に交差する。木の看板が立てられてあるが、遡行者は気付かずに過ぎてしまうかも知れない。ここは、沢が開けて明るいため書策新道を通る登山者の格好の休息場所になっている。一息入れてから遡行を開始するとすぐ、沢右に3mの滝が落ちている。その上はすぐ3mのゴロタの滝だ。この辺りは水が左右に分岐して流れ、沢幅は広くどこを登っても良い。数分で左から沖の源次郎沢が入る。沖の源次郎沢は涸沢なので二俣に気付かずに過ぎてしまうかもしれない。さらに大きく右へ曲がる本谷を遡ると数分で二俣に出る。書策新道の交差点からこの二俣までは5〜6分だ。左俣が水無川本谷でF6,7mのチョックストン滝を抱えている。右俣正面が木ノ又大日沢だ。 本谷のF6CS滝にはスリングが下がっているが、ハング気味の岩を越えるのはなかなか難しい。巻き道は滝左を10mほど戻ったところにある。木の幹にテープが張ってあるので上り口はすぐ分かる。この巻き道は二俣の手前の本谷右岸から伸びている。7mCS滝の上は沢の真ん中に大岩が並び、その左右に水が分かれて流れている。この辺りは沢幅が広く明るい。右が大きく崩れているところは頭上がさらに明るく開け、歩いていて楽しいところだ。この先に釜のある3m滝がある。この先でも右側が大きく崩れた場所に出る。日差しが木に遮られていないので沢は明るい。夏は暑いだろう。4mの滝を過ぎてさらに進むと石の載った4m滝、F7が現れる。ここは水流が石の上からとその左側からと二手に分かれて落ちている。ここを左から登ると滝の上で左から金冷シ沢が合流する。金冷シ沢を見送って歩くと左にガレが見え、じきに右側から水のある小さな沢が出合う。この辺りはゴーロだが水量もまだ多く小さなトイ状の滝が連続する。水流沿いに歩くと楽しいところだ。ただし、岩が少し脆い。前方に非常に高い滝が見えるようになる。これがF8、25m滝だ。

  F6 CS7m                          F8‐25m 崩壊が進んでいる

 F8の手前のゴルジュには小さな滝が連続して現れる。左から出会う6mほどの白糸の
滝を見送ってF8に近づくと水飛沫が遠くまで飛んでくる。上部が三段になって水が落ちる。滝全体が崩壊中のように見える。滝すぐ右の第一ルンゼは滝と一緒に崩壊していて登れない。その手前の第二ルンゼは、取り付き付近の崩壊が進んでいて一年前には危険で登れなかったが。さらに崩壊が進んでいて、今度は登り易くなっている。その崩壊部を登り第二ルンゼに上がる。そこから15mほど登った地点で左の支尾根に入る。入り口にテープの目印がある。この地点で左の支尾根に入らずに第二ルンゼをそのまま登りたくなるが、この先に現れる涸滝によって阻まれる。テープの目印から左の支尾根に上がっても、まだ第一ルンゼが深くてトラバースできないので、そのまま支尾根を上へ登る。支尾根は木の根を頼りに登れるが、高度があるので枯れ木を掴まないなど細心の注意が必要だ。初心者はこの急な登りに緊張するだろう。第二ルンゼから支尾根に入った地点から2030mほど登った所に第一ルンゼをトラバースできる場所がある。倒れた木にロープが結び付けられ、テープの目印が付けられてあるので見逃すことはないだろう。第一ルンゼのトラバースはそう難しくないが、一部崩れているところがあるので、現地でルート判断が必要になる。第一ルンゼをトラバースして支尾根に入った後は危険なところはない。ロープなしで本谷へ降りられる。

 第二ルンゼ取り付きの崩壊の状況によって、そこを登れない場合は、さらに下の赤い岩の枝尾根を越える。赤岩のなるべく低いところから枝尾根の向うのルンゼに入る。枝尾根を越える所は細い潅木と木の根だけが頼りの心細い登りになる。ルンゼに入るとホールドが多く登りやすい。そのまま登ると第二ルンゼに合流する。合流地点から第二ルンゼを15mほど登ると左にテープの目印があるので第一ルンゼとの間の支尾根に入る。
 第一ルンゼをトラバースし、本谷に降りた先にはすぐ傾斜の緩い4m滝がある。この上では右から沢が滝になって出合う。じきに本流は二俣になる。右俣の奥にF9の標識が見える。ルートはこちらの右俣だ。F9、8m滝の左にはスリングが下がっているが逆層で難しい。滝右はハング気味で難しく見える。巻き道は、F9の右から入る支尾根にある。本谷の方向にトラバースできそうな地形を探しながら支尾根を10mほど登ると適当な場所に出る。トラバースすると簡単に沢に降りられる。F9の上で右から涸沢が落ちている。本流にはまだ水が流れている。ここから数分で石積みの堰堤が現れる。6月に登った時、F9とここ石積みの堰堤下の岩場には黄色い小さな花が咲いていた。深山万年草らしい。堰堤を右から越えると沢の水は涸れ、大きなガレになる。天気の良い日ならここから下界を見渡すと秦野市街が一望できる。さらにその向うには相模灘、真鶴半島、大島、伊豆半島が一望に見渡せる。時間があるならぜひ一休みしたいところだ。
 詰め
 ガレの上を歩くと足元が不安定で労力を使うので、なるべくガレを避けて登りたい。ここは手積みの堰堤すぐ上で、ガレ左の支尾根に早めに入るのが良い。急な支尾根を登るにつれて、明瞭な踏み跡が見つけられる。稜線に近づくと人の気配がし、やがて登山道に出る。石積みの堰堤からは30分ほどだ。登山道を左へ15分ほど最後の登りを歩けば塔ノ岳だ。
2004年6月上旬、2009年詰め修正)

下山ルート
 書策新道は傾斜が緩く脚に負担をかけずに下山できる。しかもセドノ沢、本谷の渡渉点で休憩ができて楽しい。時間を縮めたければ政次郎尾根を下るのが良い。
・書策新道ルート        2時間
・政次郎(まさじろう)尾根ルート  1時間45 
                   塔ノ岳〜書策小屋〜行者岳手前分岐〜戸沢山荘

データ
所要時間      4時間50分(戸沢山荘〜塔ノ岳)
地図          大山(1:2.5万)
適期          4月下旬〜11
・コースタイム  
戸沢山荘(15分)堰堤(5分)ゴロタ滝(15分)F1(40分)F3手前2m滝(40分)書策新道(10分)木ノ又大日沢出合い(30分)金冷シ沢出合い(15分)F8(50分)F8上(15分)二俣、F9(15分)石積み堰堤(30分)登山道(15分)塔ノ岳

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