プロフィール
 マスキ嵐沢は西丹沢、中川川に注ぐ大滝沢の支流である。短い沢だが白い花崗岩、石英閃緑岩が作り出す西丹沢特有の景観を見せる美しい沢だ。白い火成岩が水の流れによって磨かれ、美しいスラブの滝やナメが作り出されている。スラブには薄く苔が生えており良く滑る。傾斜がゆるい滝でもホールドが乏しいため登るのが難しい。わらじや渓流シューズは必携だ。F3やF4は初心者にはやや難しいので、本書の初級、初級上の沢を登ってから挑戦するか、経験者に同行してもらうようにしたい。

ポイントガイド
 マスキ嵐沢は滑りやすいスラブ滝が多いのでわらじや渓流シューズは必ず履きたい。難しい滝はF3とF4だ。F3の滝は中段のバンドを右のブッシュを目差す所がクリアできれば何とかなる。たわしを持参してスタンスを擦ってから足を置けばベストのフリクションが得られる。F4は水流沿いを登るか右の草付きのリッジを登るか、現地で判断することになる。右の草付を登るのもそう易しくない。初心者は経験者にリードしてもらって登りたい。
アクセス
 バス 小田急新松田駅(60分)大滝橋
 新松田からバスで約1時間、大滝沢出合いにあるバス停大滝橋で降りる。バスを降りて西丹沢自然教室方面に歩くと、橋の手前を左へ入る道がある。左へ入るとすぐ分岐になるので、ここは左の未舗装の林道に入る。右は旧道の大滝橋、その先に入口の閉ざされた旧トンネルがある。
 マイカー
 車の場合は、旧大滝橋の上か旧トンネルの手前に駐車するか、林道途中のゲート前あるいは山道入り口前の駐車に止める。


入渓点
 右下に大滝沢を見ながら林道を歩く。大滝橋からマスキ嵐沢入渓点まで1時間弱だ。大滝沢は小さな滝やナメの美しい容姿を見せている。碧く澄んだ釜の底が透けて見える。変化に富んだスラブの沢床を音立てて水が流れて行く。この沢を遡行したら楽しいだろうと思いながら林道を急ぐ。「峰山橋」を渡ると沢は左になる。左に小さいダムを見て道路左わきにある駐車場を過ぎると林道は右へ大きくカーブする。この標識がある地点から、林道と分かれてヒノキ林の中を通る道に入る。比較的広い道が、大きく左へカーブした先で細い山道に変わる。ここからは、沢を左に見て「一軒屋非難小屋」へ至る細い山道になる。山道の下に沢音を聞いて歩くと轟音を上げる大きな滝を見下ろすことができる。15mのスラブ滝が木立の間から見える。少し手前には沢へ降りる踏み跡がある。この先で沢を二度渡るが、二番目の沢がマスキ嵐沢である。マスキ嵐沢を渡って右岸をさらに少し進むと、沢寄りに「マスキ嵐沢」の手製の標識が立っている。ここが、マスキ嵐沢への入渓点だが、気が付きにくいので注意して歩こう。登ってきた山道は大きく左へ折り返し山腹を横切って「一軒屋非難小屋」へ向かう。
コースガイド
 入渓点の付近は岩がゴロゴロして歩きにくい。左岸の歩き易い所を選んで進むとすぐに4mスラブ滝になる。最初に登る滝としては手ごろな滝だ。ここはホールドのある滝左の乾いた岩を登る。

 入渓点の手製の標識                 4mスラブ滝

 滝の上からは長いナメで水流に足を浸しながら快適に歩く。気持ちの良いところだ。ナメの先には小さな釜のある4mほどのS字状の滝が勢いよく水を落としている。水流沿いは避けて左の傾斜の緩い乾いた岩を登る。S字滝の上右から枝沢が入っている。本流が左へ曲がった先に4m滝が見える。簡単に見えるがスラブなので水流沿いはホールドが乏しく登るのはなかなか難しい。滝右のホールドを拾って登ると2m、1.5mの滝が連続する。これらの滝の上からはナメが続き爽快な沢歩きになる。この辺りの沢の景観は表丹沢には見られない西丹沢独特のものだ。白い花崗岩の磨かれたスラブの滝やナメが沢を支配し岩は褐色の苔を付け良く滑る。100mほどナメを歩くとその先に大きな滝が現れる。F1、8mは横を向いた高い滝だ。滝左の乾いた岩の段差を登るのが良さそうだが、ここは滝前の窪を滝の流れを横切って右へ回り、そこから滝右端の岩を登る。ここは高度感もなく安全にF1の上に出られる。水が多いと滝を横切るときに濡れるだろう。

 F1すぐ上の傾斜の緩い3m滝を難なく越えると、右手から大きな涸沢が出合う。先を歩くと小さな釜のあるF2、トイ状滝5mが現れる。釜を左から回ってホールド豊富な水流左を登り、途中から水線通しにホールドを求めて登る。5mトイ状滝の上を歩くと前方に大きな滝、F3、二段15m滝が見える。
 下から見るとF3は全体が傾斜の緩い滝に見えるが、スラブなので水流沿いに滝を登るのは難しい。巻き道は無いのでこの滝は登らなければ先へ進めない。下段は3mの緩い滝で難しくない。その上で左からわずかに水を落とす沢が入る。ここからは水流の右上のブッシュを目差して細いバンドを斜め上に登る。スタンスは要所に在るがぬめっているので要注意だ。滑るのでバランスを崩さないように注意したい。スタンスを選びタワシで擦ってから足を置くとフリクションが得られて良い。慎重にスタンス、ホールドを選びながら登り、左岸のブッシュを掴めば一安心だ。そこからバンドを水流沿いに寄ってその上のバンドに上がる。上のバンドを右端に移動してブッシュの幹や根を掴んで、さらに一段登れば落ち口の上へ出る。F3の上から滝下を望めば滝が真下に落ち込んでいて、思った以上に傾斜が急であることが分かる。F3の上は日が射して明るい。休憩するには良い場所だ。F3の先はゴルジュとなり2mの滝をトラバース気味に越える。その先にF4、7m滝が見える。手前に釜のある幅広のスラブ滝、2mがある。
 F4、7m滝は、水流沿いに登れるが濡れる。難しければ右のカンテ、草付きを登る。さらにその右にルンゼがあるがスラブでホールドが乏しい。カンテは草付でホールドが乏しくかなり登らないとブッシュも掴めない。初心者は苦労するだろう。この沢ではここが最も難しい。土の下はすぐ岩なので、ドライバーを刺し込んで支点にできる所は少ない。しかし、差し込みながらホールドを探り一歩ずつ慎重に稼いでいく他はない。笹竹が掴めるようになればバランスも取りやすい。上りきった後の沢への下降は難しくない。F4の上を歩くと4m滝になるが、ここは流れの右を快適に登れる。その先でF5,8mのスラブが滝を落としている。水流沿いはフリクションで登る他なく難しい。滝の右端寄りにホールドを探せば登れる。上部では笹竹を掴んで登る。8m滝の上は釜のある2m滝、1m滝があるので、ここは8m、2m、1mの三段滝とも言える。

  F4-7m 水流沿いが登れるが濡れる       F5-8m 滝右端にホールドを探る

 この先で大きな岩を二つ見て過ぎると4mスラブ滝になる。ここは右へ上がるバンドを快適に登る。滝上はナメとなり足元を水に浸しながらの爽快な沢歩きになる。秋にはナメに紅葉が落ちて情緒のある沢の景観を見せてくれる。楽しいところだ。沢の真ん中にベッドのような平らな大岩が横たわっているところを過ぎると、右から水のある沢が出合う二俣1になる。右俣の水量は少ない。水量の多い左の本流へ入って行くと、すぐにCSがある。さらに進むと2mのスラブ滝になり、その先でゴーロ歩きになる。天気のよい日には背後から日が射して行く手の沢を明るく照らす。パノラマのようだ。西丹沢の特徴ある白い花崗岩が沢床を造り白い岩砂を堆積させている。その上を深く澄んだ水がゆるやかに流れて行く。

 二俣1から約10分で正面がヒノキの植林帯の二俣2になる。二俣2はヒノキの倒木によって荒れている。左の沢にはほとんど水が流れていない。本流の右俣に入るとすぐに水は涸れる。沢幅が徐々に狭くなるとまた少し水が流れ出す。じきに左から枝沢が出合い二俣3になる。ここは沢幅の広い右へ入る。右俣の正面には大きな涸滝F6、5mが沢を塞いでいる。この滝は傾斜が急だが階段状になっているので快適に登れる。F6を越えると両岸が切り立ち、すぐ先に大きな涸滝F7二段10mを仰ぐ。下段は二箇所にスリングが下がっているのでこれを掴んでハング気味の岩を登る。上段は左から取り付いて水線をまたいで右上へ上がる。残置支点が一箇所ある。この辺りは下から見ると傾斜が緩く階段状で、容易に登攀できるように見えるが結構急傾斜で高度感もあるので緊張する。最上部は腕力で登る。上部は水線を右へまたがないで、左の笹竹を掴んで登ることもできる。F7は右の窪を登れば安全に巻くことができる。初心者はこちらの方が良いだろう。
 詰め
 F7の上は白い岩のゴーロだ。晩秋なので沢筋に生えた木立の葉が落ちて見通しが良く明るい。詰めにしては傾斜もゆるいのでのんびり歩いて行ける。じきに左から細い沢が入り二俣4になる。右俣は古い倒木で荒れているが、こちらが本流だ。倒木の間を縫って歩いていけばすぐ三俣になる。ここは正面の真ん中の沢を登る。その先に尾根が見える。忠実に沢を詰めると徐々に傾斜が急になるのでドライバーを刺して支点にする。急なザレ沢を登り行き詰ったら左の尾根に逃げて登ればすぐ登山道に出る。
 (200411月上旬)

下山ルート
 登山道へ出てから右へ踏み跡を辿れば10分強で権現山だが、頂上は展望が利かない。登山道を左に降りれば40分で西沢の分岐に出る。分岐の標識には、「西沢出合いへ1.3km、畦ヶ丸へ3.5km」とある。ここから西沢出合い、西丹沢自然教室へは30分で降りられる。
 遡行終了点登山道から西丹沢自然教室  1時間10
データ
所要時間   2時間40分(入渓点〜登山道) 
地図     中川(1:2.5万)
適期     5月〜10
・コースタイム
入渓点(25分)F1(20分)F3(40分)F5(15分)二俣1(10分)二俣2(7分)二俣3、F625分)二俣4(2分)三俣(10分)登山道

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 F3二段15m滝

二俣2付近

遡行図
マスキ嵐沢