キュウハ沢
遡行図

プロフィール
 丹沢山に突き上げるキュウハ沢は、ゴルジュ突破、小滝の沢歩き、滝の直登、高巻き、懸垂下降と変化のある沢歩きができる。初心者には手強い沢だが、自分の技量に合わせて巻き道をうまく利用すれば楽しい沢歩きができる。しかし、出合いまでのアプローチ、遡行時間を足すと6時間近くになるのでそれなりの体力が要求される。表丹沢の初級上クラスの沢歩きをしてから挑戦したい。キュウハ沢のハイライトは最初のゴルジュだろう。そう高い滝があるわけではないが、ゴルジュの突破には工夫を凝らさなければならない。ゴルジュの中は3〜4mほどのスラブの滝と碧い釜の連続した見事な渓谷美を見せてくれる。沢歩きが楽しいのは小滝の連続するF1上だ。
ポイントガイド
 キュウハ沢は、表丹沢の初級クラスの沢に比べると難しい滝が多い。まず最初のゴルジュの突破に手こずるだろう。最初の4m滝を左から越えるとすぐ、横向きに勢い良く水を落とす5m滝がある。ここは深い釜に入って滝右奥から取り付けば簡単に登れる。ただし釜の深さは胸ぐらいまである。ゴルジュ出口の最後の5m滝は、突破が難しい。ここは、その手前の3m滝下を左に巻けば簡単に四町四反ノ沢出合いに出る。
 F1の巻き道は難しくないが高度差があるので慎重に。F2を巻いた後は懸垂下降になる。F5は下段が登れても上段がなかなか難しい。登れなければ、下段の滝下に戻って左岸の巻き道を利用する。ここもF5を巻いた後、沢へ降りるときに懸垂下降になる。二俣上の二段10m涸滝もなかなか厄介だ。涸滝は岩が脆くホールドも細かいので初心者は苦労する。ここは、左の長いザレを巻くことができる。キュウハ沢の出合い付近にはヒルがいるという情報もあるので、虫除けスプレーを持参したい。足元に虫除けスプレーをして入渓したためと思うが、私は三度ともヒルには会わなかった。いずれも8月、9月のことである。
アクセス
 キュウハ沢は、車の利用が便利だ。宮が瀬やまびこ大橋を渡ってその先の三叉路を左に入る。中津川に沿って走れば塩水橋(しおみずばし)まで一本道なので迷う所はない。塩水橋の前と、橋を渡ってから道路の右に車が止められる。休日は、キャンパーや釣り人の車がいっぱいだ。駐車場で歩く準備をして、塩水橋から札掛、ヤビツ峠方面100mほどのところを右に分岐する林道に入る。林道の入り口には車止めゲートがあり車は入れない(2004年8月現在)。
 車止めゲートをくぐって歩くと5分ほどで堂平へ向かう分岐がある。分岐を堂平方面へ右折しないで、林道を真っ直ぐ本谷川沿いに歩くと塩水橋から約30分で本谷川に架かる吊り橋、本谷橋に着く。ここからも本谷沿いに林道を歩くこと約30分でキュウハ沢出合いに出る。熱い季節には日が射すので、このキュウハ沢までの道のりが結構きつい。
本谷橋の上から本谷川上流を望む

入渓点

 歩いてきた林道に架かるキュウハ沢出合いの橋を渡ってすぐの所に「キュウハ沢」と書いた手製の標識が有る。出合いからすぐ沢へ降りないで、橋から見える一つ目の堰堤を沢左(右岸)の踏み跡を辿ってやり過ごしてから沢へ降りる。
コースガイド
 入渓点〜最初の二俣
 入渓点で沢へ降りると二つ目の高い堰堤が見える。下流からは見えにくいが、この堰堤には右奥に取り付けの梯子があるのでここを登る。水量が多い場合は膝上まで水に漬かり梯子に辿り着く。梯子は高度感があるので慎重にいきたい。3、4、5番目の堰堤も右から越えられる。いずれも梯子は高くない。5つ目の堰堤を越えゴーロを歩いて行くと、沢左から6mほどの滝が出合う。その先にトイ状の滝がある。きれいな一枚岩の岩溝を深く澄んだ水が流れて行く。
 右へ左へ沢を越えながら歩くと、釜のある4mの滝が勢い良く水を落としている。ここは左が登れる。上部のホールドが少し細かいので慎重に行く。この先はキュウハ沢のハイライト、最初のゴルジュである。4m滝の奥には釜を持つ90度流れの向きが変わる5mの滝がある。この滝も勢い良く水を落とし、釜を白く泡立てている。登りやすいのは釜の向うの滝の右奥だが、水量が多く滝の轟音に圧倒され引き返してしまう。ここは、滝左のリッジも登れるがその上の2m滝をへつるのも大変だ。ここは、ぜひ釜に入って滝右から取り付きたい。水量が多い場合でも胸辺りまで入れば釜を越せる。滝の右奥に取り付ければ滝の登りは簡単だ。

 
ゴルジュ入り口4m                    ゴルジュ4m滝 水が碧い
 
 この5m滝の上はゴルジュの景観が美しい。まず2m、3m、3mの三段の滝になる。いずれも碧い釜を抱えている。両岸からは緑濃い樹木が被っている。いずれも右から容易に越えられる。その上が2m、4mの二段滝だ。その先にはさらに滝が二段見える。この釜のある4m滝は、右を越えるがスラブなのでホールドが少なく滑りやすい。やや上をへつり気味に越える。すこしホールドを探る箇所がある。この上は、深い釜を持つ3m、5mの滝だが、越えるとしたら右からだろう。しかし、最後の5m滝を越えるのはなかなか難しい。ここは、3m滝の下左から巻くことができる。釜左の岩溝を登ると簡単に四町四反ノ沢に出られる。

 四町四反ノ沢を降りキュウハ沢に戻ると正面に大滝F1、12mが見える。近くで見るとその高さと水量に圧倒される。ここは滝左のチムニーが登れるらしいが、初心者には難しい。ここは、四町四反ノ沢出合いに戻って、四町四反ノ沢を少し登ってからキュウハ沢との間の支尾根に入る。踏み跡を辿ると大滝が見える辺りを小さく巻くルートと、高く巻いて自然に沢へ降りるルートがある。小さく巻く場合は沢へ降りるところでロープを出すことになる。大きく巻く場合は、踏み跡を辿って安全に降りられる場所を探しながら巻く。ロープ無しで自然に沢へ降りられる箇所がある。
 沢に戻った大滝の上は数メートルの滝が次から次と現れる連瀑帯だ。5分ほど歩く間に約16もの小滝が遡行者を迎えてくれる。難しい所もなく楽しい沢歩きになる。大滝上から10分ほど歩くと右から水のある沢が出合い、本流の先はF2、3m、7mの二段滝になる。下段3m滝を登ってから滝手前の右の濡れたカンテを登りその上の踏み跡を落ち口にトラバースする。滝上で5mほどの懸垂下降をして沢へ降りる。濡れたカンテの登りもやや難しいと思うなら、下段の滝下へ戻り左岸に出合う先ほどの水のある沢を20mほど登ってからF2との間の支尾根に入って登る。左のキュウハ沢へ踏み跡をトラバースすると沢が下に見える場所に出る。5mほどの懸垂下降が必要だ。ここは、F2,7m滝の上にある2m滝の上に降りることになる。水量が多いときは水流が収束するこの2m滝を越えるのが難しいので、そんな時はこの位置の下降は有効だ。

 F2二段滝 二段目は7m                  F3二段滝 4m、6m

 沢に降りた後は、2m、3mの滝になる。さらにその先にはF3、4m、6mの二段滝がある。F2からこのF3まではゴルジュになっている。F3の幅広の6m滝は左からも登れそうだが、滝手前の右の壁を登り、落ち口へトラバースするのが最も良いだろう。F3の上はゴーロになりゴロタの滝が四段続く。大岩が沢の正面を塞いでいる辺りは、休憩するには明るくて良い所だ。広いゴーロを流れが二手に分かれるところを過ぎ、さらにゴーロを歩くと4m、二条の滝になる。この滝は沢幅いっぱいに広がった20mほどの幅広の滝で、水の流れが左と右に別れて落ちている。ここは、左の段々を簡単に登れる。さらに分ほどゴーロを歩くと明確な二俣に出る。

  F3上のゴーロ

 最初の二俣〜丹沢山
 二俣は、水量の多い右俣へ入る。右俣へ入ると前方に大きな滝が見えるようになる。ここはF4、7m滝だ。この滝の手前右からは涸沢が出合う。F4は一見難しそうに見えるが、水流の左はホールドが豊富で安心して登れる。しかし、水量の多いときはシャワークライムになるので難しくなる。そんな時は、F4手前右の涸沢を少し登ってからキュウハ沢との間のリッジを登って巻いた方が良い。F4の先はF5、5m、6mの滝が連続している。F4からF5まではゴルジュになっている。F5の下段は滝左のややホールドの少ない箇所を中段に下がったスリングを頼りに登る。滑りやすいので慎重にスタンスを探していく。この上は狭いゴルジュになりすぐ6mのほぼ垂直の滝の下に出る。ここは滝左のホールドを拾いながら登るが、途中二箇所ほど残置支点があるのでスリングを掛けて登ることができる。しかし、ここは初心者にはなかなか難しい。巻き道も無い。この上段6mの滝を巻くには、下段の滝下へ戻り左岸のリッジを登り支尾根に入る。下段の落ち口の高さを越えさらに登るとリッジの上はザレになりF5の落ち口の方向へかすかな踏み跡が見える。踏み跡を辿って沢の方向へドライバーをザレに刺し込みながら支点にしてトラバースすると下に沢が見えるところへ出る。ここは傾斜が急なので降りられないが、ブッシュに支点を取り4mほど懸垂下降をすれば良い。さらに先へトラバースすれば自然に沢へ降りられる箇所があるのかもしれない。沢へ降りてから少しゴーロを歩くと4m滝になる。ここは、水流沿いを登るのは難しいので、沢の右端の段々を登ると良い。すぐ上は、4m、2mの二段6mの滝だ。ここは右の段々を簡単に登れる。しかし、褐色の苔が着いているので滑らないようにしたい。この上のゴーロを少し登ると前方に大きなガレがある二俣になる。
 ここは沢幅の狭い左俣が本流だ。左俣へ入ってすぐチョックストンの3m滝になる。ここは以前は右を登れたが、下の岩が崩れたのだろう現在はハングしていて難しそうだ。左を登る。水量が多いときは濡れるので、少し戻って滝右を巻いても良い。急なガレに近いゴーロを歩いて行くと右にガレが現れ、右前方に5m、5mの二段の涸滝が見えて来る。とは言っても水量の多いときは結構の水を落とす二段の滝になる。下段の滝を登ろうとしたが、岩が脆くて難しい。ここは、どこを登るか判断の難しいところだが、比較的傾斜の緩い涸滝左の長いザレを登る。ザレの下部は素手でも登れるが、上部はザレに刺し込んで支点にする道具が必要になる。ドライバーをザレに刺しながら支点にして、上部の急なザレを10mほど登りきると右の沢へ降りられる。沢に戻った後は、丹沢山の手前まで急なゴーロを息を切らせながらひたすら登ることになる。苦しいゴーロ歩きを続けるとやがて左にガレを迎える。三箇所目の大きなガレの下で沢は奥の二俣になる。
 詰め
 二俣の左はやや狭く樹木の覆った暗い涸沢になる。しかし、左俣は水量の多いときは水が流れている。右俣はやや広く開放的だ。ここは、涸沢の右俣へ入る。ここからも急な乾いたゴーロが続く。涸れたゴーロの岩は安定していないので足元を選んでゆっくりと登って行く。二俣から15分ほど歩くと大きな涸滝に出る。長さは30mぐらいあるが傾斜が緩く段々になっているので登るのは難しくない。涸滝を過ぎて忠実に沢を詰めると約15分で沢が消え土の斜面に変わる。鹿の足跡がたくさん残る急な草地に変わった後は、歩きやすい所を上方を目差してジグザグに登って行く。8月初めに登ったときは、黄色い花を開くマルバダケブキが咲いていた。やがて草地の傾斜がゆるくなるとひょっこり登山道に出る。登山道を左に歩けばすぐ丹沢山山頂である。残念ながら展望はきかない。
2004年8月上旬)

下山ルート
 天王寺尾根を本谷川吊り橋(本谷橋)へ降りるルート  2時間
データ
所要時間   4時間45分  (入渓点〜丹沢山)
地図     大山(1:2.5万)
適期     4月下旬〜11
・コースタイム
キュウハ沢出合い(30分)5番目の堰堤上(35分)四町四反ノ沢出合(20分)F1大滝上(10分)F2(10分)F3(35分)最初の二俣(10分)F4、F5(30分)F5上(15分)二俣(40分)奥の二俣(15分)涸滝(35分)丹沢山

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