遡行図
玄倉川本流1

プロフィール
 ザンザ洞、同角沢など丹沢を代表する沢を抱える玄倉川本流は、丹沢黒部と呼ばれ以前はダイナミックな遡行が楽しめたと言う。今では、ダムができて水量も少ないためそのような面影はない。しかし、隋所に残っている廊下は美しく奥深い渓谷に迷い込んだように思う。両岸はそそり立ち、白い花崗岩(石英閃緑岩)の一枚岩の川床を深く澄んだ水が流れていく。流れのいたるところ花崗岩の白い巨岩が塞ぎ、水の深みは碧い。水が少なくなったため、この美しい渓谷を初心者にも歩けるようになった。ただ、要所にある堰堤が遡行を遮り興ざめだが、それでも十分に沢歩きの楽しさを満喫できる。
ポイントガイド
 紹介したコースには三箇所の大きな堰堤がある。下から堰堤1、2、3とした。なお、降水量が多くなると上流の第二発電所前の大倉ダムから放水するので十分に注意したい。丹沢湖の上流すぐ上の第一発電所の玄倉林道側に「放水中」の表示が出るので入山の時に見て行くと良い。雨の日や増水しているときは河原に降りてはいけない。
 このコースは特に難しい箇所はないが、堰堤1、2の手前から涸沢を林道に上がるルートが最も難しい。いずれもかなり急で堰堤1はザレで足元が悪い。堰堤2は石積みの壁を登らなければならない。堰堤1では、ザレでバランスを取るドライバーと6mm×10mロープを持参したい。ロープは、涸沢を撤退するときに安全を確保する。玄倉第二発電所上の3m堰堤の上から入渓して同角沢出合、堰堤3下へ至るコースでは林道へ上がる箇所は難しくない。河原から林道へ這い上がる自信が無ければ、このコースだけでも十分楽しめる。釣り師がいる場合は釣り場の後を静かに迂回するようにしたい。
アクセス
 バス  小田急新松田(バス45分)玄倉(徒歩50分)車止めゲート
 丹沢湖の東端、玄倉に玄倉川が注いでいる。玄倉川の左岸にはユーシンロッジへ至る玄倉林道が走っている。丹沢湖ビジターセンター前の玄倉バス停で降りて北へ歩く。玄倉大橋を左に見て玄倉川沿いに歩く。玄倉第一発電所を左に見てさらに登ると西丹沢県民の森や沢登りで人気のある小川谷廊下へ至る分岐に出るが、ここは左に折れずに玄倉林道を真っ直ぐ行く。そのまま、閉じられた車止めゲートに当たるまで進む。車止めゲート前には駐車できる広場がある。
 マイカー
 車の場合はゲート前の広い駐車場に止めれば良い。20台ほどは止められるが、いつもかなりの数の車が止まっている。車止めゲートまでは、丹沢湖ビジターセンターから約3kmである。

入渓点
 ゲート前の駐車場を玄倉川寄りに降りると川沿いを辿って自然に川へ降りられる道がある。この道に沿って歩き玄倉川に入渓する。
コースガイド
 車止めゲート〜堰堤1
 玄倉川の広い河原に降りて川歩きを始める。最初、川幅が広いが次第に狭くなって来るので、遡行しやすい場所を探しながらの渡渉が必要になる。川を歩き出して10分ほどで右側から沢が出合う。さらに進むと川が左へ大きくカーブすると川幅が50m程に狭くなる。この先右側から護岸した涸沢が出会う。ここは涸沢沿いに林道へ上がることができる。大きな石のゴーロをしばらく歩くと川はゆるく左にカーブする。この辺りから両岸は切り立ち廊下の様相を示してくる。さらに進んで右へ大きくカーブすると川は渓谷の美しさを見せてくる。切り立った崖の川底には日が差さず少し暗い。川を流れる水は深く澄み碧々としている。川底には様々な形の岩床が横たわり水と岩の美しい景観を見せてくれる。白い花崗岩の一枚岩の岸に沿って碧い淵がゆるやかに流れて行く。

  入渓点付近の広い河原                    芋ノ沢手前の廊下

この先で左側にケルンのある涸沢、芋ノ沢が出合う。さらに川が右に大きくカーブするところに左から20mほどの滝が落ちている。この先の大きな石のゴーロを歩いて行くと、左側に赤い苔岩がある。この少し先で二段の堰堤に行き当たる。一段目は低いので登れるが二段目は高く難しいので引き返す。堰堤から100mほど戻った林道側(左岸)から涸沢が落ちている。かなり急に見えるが取り付いてみると下段は問題ない。中段から上はザレているので登りにくい。支持用のドライバーがあると登れるが素手ではバランスが取り難い。かなり登りにくいが、沢歩きでは良く出てくるケースなので登りたいところだ。10分ほどで林道に出られる。上がったところは、林道の境隧道のすぐ上である。しかし、危険を感じたなら無理をしないで引き返してほしい。途中でザレを下へ戻るときにはロープがあれば容易だ。近くの樹木にロープを回して端を8の字結びをして縛り、ロープを頼りに下へ降りてから回収すれば良い。

 堰堤1上〜堰堤2
 川から上がって林道をユーシンロッジ方面に歩くと、林道下には先ほど引き返した堰堤が音を立てて水を落としているのが見える。そこから5分ほど歩くと、玄倉川の対岸が大きく崩れた箇所が見える。林道が右に曲がるところに「三保猟区山北町」の赤い看板、「水源かん養保安林」の小さな標識がある。この看板のすぐ左に河原へ下りる踏み跡がある。踏み跡を辿れば安全に河原へ降りられる。降りた河原の対岸には女郎小屋沢の出合いがあるが藪に隠れていて良く見えない。しばらく川を遡ると河原の真ん中に大きな石が鎮座している。よく見ると達磨のように見える。ゴーロの河原を歩いて行くと、左側は花崗岩の切り立った崖になる。玉砂利の沈んだ美しい川底を碧い水が流れている。さらに行くと白い花崗岩の川床に2mぐらいの滝が落ちる綺麗な所に出る。川を歩き始めて初めての滝だ。滝の先には二段の堰堤が見える。登るのは難しいので引き返す。林道側に上れる箇所を探しながら川を下流に向かって戻る。堰堤付近の左岸は切り立っていて登れそうな所は無い。5分ほど戻ると林道側から傾斜の緩いガレ沢が川に入っている。上方に林道の白いガードレールも見える。ここを登る。下段は傾斜が緩く登りやすいが上段は急な石積みの壁になっている。ホールド豊富だが高度感があるので少し緊張する。河原から10分程の登りで林道へ出る。ここから青崩洞門までは5分だ。林道へ這い上がるのが難しそうなら、河原を入渓点まで戻るのが良い。入渓点までは10分程だ。
 玄倉第二発電所上〜同角沢出合、堰堤3下
 青崩洞門、石崩隧道を潜ると、右から水量の多いアッチ沢が二段15mの滝を伴って玄倉川へ注いでいる。素掘りのトンネルの青崩洞門は中が真っ暗なので懐中電灯がほしい。石崩隧道を過ぎ、玄倉ダムを左に見て進むと対岸に玄倉第二発電所が見えてくる。じきに発電所に渡る橋のたもとに出る。ここには右から水量の多い沢が出合う。これが蛇小屋沢だ。発電所への橋を左に見てそのまま林道を進み、素掘りのトンネルを潜り先を歩く。右に釜のある10mのトイ状滝を落とす板小屋沢を見て、林道から玄倉川が望める場所に出る。川上に3mの堰堤が見える。この先は河原を見ながら歩く。3m堰堤を下に見て過ぎると林道が右へ曲がるところにカーブミラーがある。このカーブミラーの左にある踏み跡を辿ると河原に降りられる。第二発電所の橋からこの降り口までは約5分だ。
 河原に降りて3m堰堤の先を進むと、水が勢い良く落ちるゴロタの滝になる。さらにその先では右岸が100mほどの絶壁になっている。この辺りは、歩きやすい場所を右へ左へ渡渉を繰り返して歩くことになる。石や川床に生えた茶色の苔は、フェルト底の渓流シューズでは滑らないがゴム底の靴では滑るので注意したい。流れが左へそして右へ曲がると、両岸が切り立った峡谷になり奥深い谷へ迷い込んだような雰囲気になる。花崗岩の白い川床を深く澄んだ碧水がゆったりと流れていく。さらに歩いて流れが右へカーブする辺りは巨岩帯になって来る。この先で左から高い滝が糸状に落ちている。滝はS字状になっており落ち口が良く見えないほど高い滝だ。両岸の切り立った崖はますます狭まり幅が20mほどになる。ゴルジュの巨岩帯を過ぎるとゴロタの滝になる。流れが右へ大きくカーブする所で、左から水量のある同角沢が美しい滝を落としている。これが同角沢のF1二段20mの滝である。同角沢は丹沢でも屈指の人気の沢だが登攀のグレードが高く上中級者向きである。

 
同角沢手前の巨岩帯                     同角沢出合い先の3m滝
 
 同角沢の辺りは白い花崗岩が川床を作り、その上を澄んだ水が流れる美しい所だ。同角沢出合を過ぎると、すぐ3mほどのスラブの滝がある。沢の流れを集めて勢い良く水を落としている。この先で水は二筋に分かれトイ状に流れている。ここも川床が白い花崗岩の一枚岩で美しい。さらに歩くと、両岸は狭まりゴルジュになる。川幅は10mぐらいだろう。先に1m程のナメ滝が見える。この辺りは白い花崗岩に青い苔が生えた美しい渓谷だ。深山の峡谷の雰囲気がある。ナメ滝は釜を持っているので、川岸をトラバースする。滑らないように気を付けたい。流れは右へカーブするが両岸は切り立った崖が続く。幅も狭く10mぐらいだ。左側がやや開け明るい河原になる。ここを過ぎてしばらく歩くと、あっけなく両岸が開け、前方に広大な河原が見えるようになる。はるか前方には鉄骨製の堰堤3が見える。今回の川歩きはここで終わりだ。両岸が開けてすぐ右に沢が落ちている。ここを登れば簡単に林道に出られる。林道に上がって大倉方面に下るとすぐコンクリート製のトンネルがある。
(2004年5月下旬)

下山ルート
堰堤3下の林道から車止めゲート  1時間20分
データ
・ 所要時間   3時間40分(車止めゲート〜堰堤1〜堰堤2‥‥第二発電所〜堰堤3下)
・ 地図      中川(1:2.5万)
・ 適期      5月〜11月
・ コースタイム
車止めゲート(5分)入渓点(30分)芋ノ沢(25分)堰堤1(15分)堰堤1上林道(10分)女郎小屋沢前入渓点(15分)堰堤2(20分)堰堤2上林道(5分)青崩洞門(25分)3m堰堤上入渓点(15分)100m絶壁(20分)同角沢(30分)堰堤3下林道

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