河原木場沢~治郎兵衛沢 八ヶ岳鳴岩川
2016.10.23
大橋、高橋
(ラバーソール)
カラマツ林のキャンプ場に炎が上がる シートが広げられ酒の肴が並べられる










遡行図



参考情報
「源流遡行 さがみ山友会」 
鳴岩川・河原木場沢~治郎兵衛沢下降 2015年5月23http://sagamisanyuukai.web.fc2.com/kirokupdf/20150523kawakibasawa.pdf

コースタイム
醤油樽ノ滝入口7:41-醤油樽ノ滝8:3040-同滝上9:26-二段ノ滝10:3440-同滝上11:072190m左岸支流出合11:42-稜線12:22-治郎兵衛沢12:5513:15-大滝2513:2232-林道14:24-醤油樽ノ滝入口14:57 ゆっくり歩いています

ルート図



 いつの間にか、今年も晩秋となり沢のシーズンも終盤に入った。みんなを誘う沢としては、今年最後と決めて参加者を募ったが、私を含めて二人の山行となった。少し寂しい。
 様々な事情により、エネルギーが減縮している。確かなことだ。そういう私も、三週間に一度、わずかに体調の整うタイミングを見ての遡行となっている。これが最後、そう呟きながら沢へ入っている。沢歩きという遊びをいつまで続けられるのだろうか。身体が動くまで。果たして・・・・。

前夜
 
遠路をかまわず参加してくれた大橋さんを韮崎駅で迎えて、今日の宿、立場川キャンプ場へ向う。この駅で再開するのは、南アルプス神宮川の「笹ノ沢二ノ沢」を歩いた時以来だ。もうずいぶん昔のことのようだが、わずか二年半ほど前のことだ。
 
途中のスーパーで、夕食の調達をした。食べたい、呑みたい意欲は旺盛なので、つい買い過ぎてしまう。夕食のほかに、酒の肴を買った。焼き鳥塩、漬物、しし唐、アジの開き、ブリ刺身、豆腐、ソーセージ、高野豆腐煮付けなど。秋の夜長に焚き火を囲みながら、それぞれの腹におさまっていく。
 
旨い。なぜ、外で食べるとこんなに旨いのだろう。最近は、体調が良いわけではないので、そう食欲もない。だが、山に入ると食欲が沸き起こる。そんな感じだ。最初に温めて食べた焼き鳥は、格別だった。
 
ずいぶん日が短くなった。しきりに食べそして呑んだ後に時計を見ると、まだ5時55分だった。高原の風も日暮れとともに冷たさが加わってきた。最近は、脂肪がついてないので寒さが身にこたえる。だが、火というのはありがたいものだ。ゆらめく炎に手をかざしていると自然に身体が温まってくる。
 
ほかに人のいない夜のキャンプ場には、我々の声だけが響いていた。明日の遡行のことも考えて、8時にはテントに入り身体を伸ばした。

沢の概要
 河原木場沢は、ナメの沢である。標高1900m付近に醤油樽ノ滝という有名な滝がある(地理院の地形図の位置は正しくない)。そこまでは、探勝路がある。醤油樽ノ滝は、下から覗くと深い樽の底にいるように感じる滝である。探勝路からアルミ梯子を下がると樽の底に降りることができる。
 河原木場沢のナメは、水量がそう多くない。両岸に緑のコケや草が生え穏やかな風景を見せてくれる。これが、この沢の特徴だろう。残念なのは、倒木帯がこの景観を壊していることである。標高2000m付近から二段ノ滝が現れる2070m付近まで、断続的に続く。

ルート検討
 
河原木場沢を歩くグループは、天狗岳西尾根に上がり、根石岳、オーレン小屋、夏沢鉱泉と周回して入渓点に戻るのが大半である。距離も起伏もあるので、体力がないと日帰りではこなせないだろう。
 八ヶ岳のピークに興味がある訳ではないので、距離を縮めるのを目的として地形図でルートを探った。治郎兵衛沢へ尾根越えをし、この沢を下ることに決めた。どの辺りから尾根越えを企てるのが良いだろうか。詳細は省くが、詰めの標高差が小さい所が良いだろうと思った。体力を心配してのことだ。2190m付近に出合う窪を詰め、稜線鞍部を目指す。これが、おそらくベストだ。ただ、窪をそのまま詰めると、鞍部からそれてより高い稜線に詰め上げてしまうので、本流から50mほど登った辺りで、真南に進路を変更する必要がある。ただ、未踏の領域なので、ヤブが有るか無いかで困難さは変わる。
 先達の記録にただ一つ、尾根越えをして治郎兵衛沢を下った情報があった。「相模山友会」の三井さんの記録だ。どの位置から尾根越えをしたのか定かではないが、ヤブの記述がないので、密ヤブではないと考えられる。三井さんは信頼できる遡行者だ。記録は信用できる。治郎兵衛沢の下降では、ロープを使うところはないようだ。
 今度の遡行を体験して、三井さんたちの尾根越えのルートを確認できた。二段ノ滝を過ぎた標高2100mの先の左岸枝沢に沿って上がったようだ。氏の記録には、
「少し下流に20mほどの滝が懸かった枝沢があり、そこの右岸を登って行くとあっさりコルに出てひと下りで治郎兵衛沢に下りる。」とある。ただこの枝沢の出合の現地は地形的に分かりにくいので、注意して探さなければならない。氏の記録の通りに、出合付近に15mほどの水の少ない滝が懸かっていた。
 
我々は、この枝沢よりもさらに距離300mほどを遡行した先で、左岸の窪を詰めたことになる。



入渓から醤油樽ノ滝まで

醤油樽ノ滝入口 ここから探勝路に入る
すぐナメになる 探勝路を辿ったり沢を歩いたり


4m滝 左の梯子を上がる 梯子が有り難い
こんな感じの沢を歩いてゆく ゆったりした気持ちになる


ナメを歩くと向こうに小滝が見える
2mほどの滝 探勝路は続く

6m滝 右から巻いた 踏み跡がある

醤油樽ノ滝 30mはある見事な滝だ 真下から見ると井戸の底にいる雰囲気

醤油樽ノ滝の前で記念写真

醤油樽ノ滝の大高巻き 1940mまで上がり南東へトラバースすると深い谷に突き当たる ここから沢の右岸を辿る 深い谷の底に滝が見える 醤油樽ノ滝の上の滝だろう 沢の右岸をたどると自然に沢へ降りられる

醤油樽ノ滝上から二段ノ滝まで
醤油樽ノ滝の上もナメや小滝が続く 両岸にはコケや草が生え明るい


標高2000mを過ぎる辺りから倒木が邪魔する
正面に見えるのが2060mに出合う急峻な左岸枝沢 倒木の山を越えると谷は左へ曲がる すぐ二段ノ滝になる


3m滝 この上、左岸に二段ノ滝を高巻く取り付きがある
二段ノ滝 4m、7m 下段は上がれても上段は難しそうだ ここは高巻いた

難しい滝
 醤油樽ノ滝は30mはある。とても登れそうにない。ここは、右岸の探勝路を木橋のある辺りまで戻って枝尾根を上がる。踏み跡を外さないように、1940mほどまで登る。左手に涸れた枝沢が、右手に岩壁が見えるようになる。ここから、岩壁を左に見ながら南東に向かう。方角を定めてそのままトラバス-すると、前方下に深い谷が見える。この谷の右岸をトラバースして進むと次第に谷が近づき、自然に沢床へ降りられる。標高1950m付近である。難しいところは無い。

 
二段ノ滝10mは、下段を登れたとしても、上段は難しそうに見える。苦労をして登っている情報が多い。ここは最初から安全な高巻きを探すつもりだった。
 
二段ノ滝の下に3m滝がある。この滝の上、左岸の枝尾根に取り付き15mほど上がったのち、二段ノ滝の方向へトラバースする。やがて左に滝が見え、下段の滝の上へ落ちる窪が目の前に現れる。この位置で窪をトラバースするのは難しい。ここは窪の傾斜が緩くなる上方を目指して10mほど登る。傾斜がやや緩くなると窪をトラバースする踏み跡がある。これを辿り、枝尾根をひとつ越えれば、自然に沢床へ降りられる。窪をトラバースする標高は、およそ2100m、降り立った沢床は2095m付近である。
 
この高巻きルートは、最初から最後まで踏み跡がある。河原木場沢は釣りのできる沢ではないので、おそらく獣道だろう。われわれは、獣が二段ノ滝を高巻くルートを辿ったことになる。



地名について
 治郎兵衛沢は、「次郎兵衛沢」と表記される場合があるようだ(ヤマケイアルペンガイド)。また、「シラナギ沢」とも呼ばれるようだ。ただ、「沼郎兵衛沢」と表記する情報もある(グーグルマップ、YAHOO地図など)。この“沼郎兵衛“(ぬまろべい)という人名は、聞いたこともない語音である。おそらく、治郎兵衛の”治“を”沼“と読み違えたのだろう。こういう単純な誤記は、地理院の地図でもよく見られるものだ。
 
ここでは、地理院の地形図や昭文社の山と高原地図のとおり、「治郎兵衛沢」と表記した。
 なお、醤油樽ノ滝、二段ノ滝の位置を正確に記載した地図やガイドは見当たらない。遡行図にほぼ正確な位置を記載したので参考になると思う。


二段ノ滝の上から2190mまで

カモシカと対面 じっとして動かない
4m滝 登れないので左岸を巻いた


緩やかな4m滝 この滝を越えると谷は右へ曲がる 2190mで左岸から出合う窪を詰めることになる
源頭の雰囲気になる

稜線越えと治郎兵衛沢の下降
 予定通り左岸から本流2190mに出合う窪を詰めた。30mほどを登ると窪が急になり倒木も多くなる。早めに右手の尾根に上がりさらに詰める。すぐに傾斜が緩くなりヤブも無いので歩きやすい。ただコメツガの幼樹の枝がうるさい。思いのほか倒木も少なく歩きやすい。本流から50m上がった辺りで真南へ進路を変えさらに詰める。あっけなく、稜線鞍部に達する。
 下降を予定していた枝沢は、大きくガレている。ガレが落ち着くまで枝沢の右岸枝尾根を下る。枝尾根が急になるところは、右からかわした。下降予定の枝沢へ降りて下る。下降が困難な個所は、左手の窪を降りたりしてかわす。そう難しいところもなく、治郎兵衛沢に到達する。
 治郎兵衛沢を下り始めると、すぐにとんがり帽子のような奇岩が現れる。ここは両岸が狭まったゴルジュのようだ。谷が切れ落ちている。どうやら大滝らしい。とんがり帽子岩の手前、左岸の鞍部を越して左手のガレに降りる。傾斜はそこそこあるが難しいところはない。安全なルートを選びながら下降して振り返ると大滝が見える。段々に水の落ちる豪快な滝だ。25mはある。
 大滝以外に下降の難しい箇所はない。ただ、左岸が大きくガレているので、落石には注意したい。途中ナメ滝を過ぎ、堰堤を二つほど過ぎると林道になる。ここは、鳴岩川への出合いでもある。鳴岩川には5mほどのきれいな滝がかかっていた。


                                       (以上、高橋)




 河原木場沢には、醤油樽ノ滝入口の看板がある所から入渓する。見学者が多いのだろう立派な案内板も立っていた。しっかりした登山道になっていて、登山靴を濡らさぬよう木の橋もところどころに掛かっていた。登れない滝のあるところなどは、立派な木製のはしごがあった。
 前方に細長く、高さのある滝が水を落としているのが見えた。滝下に行くのに、立派すぎるアルミのはしごがあった。この時点で、既にsawakazeさんは高巻きのルートを探っていた。
 醤油樽ノ滝からは登山道もなくなり、鹿道だか人が歩いた道だか分からないような踏み跡があった。大きな岩壁があり、そこを右に巻いて行けそうだが、sawakaze さんが「ここを右に行っては駄目なんだ」と言った。さらに左上方に進むと、またも大きな岩壁が立ち塞がった。その下を右に回り込んでしばらく行くと、沢音が聞こえてきた。
 すぐには沢に降りず、上流に少し進むと簡単に沢床に降りることができた。危ない思いをすることなく、沢床に降りた嬉しさにハイタッチを求めてしまった。sawakazeさんの読みの巧さと、研ぎ澄まされた状況判断は、長年の経験や知識によるものだろう。到底真似のできることではないと思った。このことは、この先にある二段滝の高巻きでもみることができた。
 しかし、こればかりではなかった。治郎兵衛沢に向かうルートでは、標高2290mの白ザレの鞍部に出るのに、既に等高線を記憶していたのか、地形図もそれ程見ずに楽なルートを探り、25分で着いてしまった。
 ここまで来ればもう安心である。ここからはこの沢を下り、本流に出るだけである。地形図を読み取り、現場の状況を確認して判断を下す。ここまでには一朝一夕ではできない苦労があったのだろう。
 沢歩きは、確かに体力も必要であろうが、登山道のないルートを歩くには、事実に基づいた決断と判断が必要と思った。林道から山並みを見上げれば、今を盛りに紅葉が真っ赤に染まっていた。
                             O.



2190mで左岸から出合う窪を詰める 対面に大ガレ(写真白い部分)が見える これが、天狗岩西尾根へ上がる岩場だろう
下ってきた枝沢(左) 右手は治郎兵衛沢の源頭部である 荒れているように見える


最初はこんな穏やかな明るい谷を降りる
左岸にとんがった奇岩が見えてくる ここはゴルジュだ 奇岩の手前の鞍部を越えて、ガレに降りる 紅葉が始まっている

大滝25m 右手が降りてきたガレ


ナメを下るあたりからは、左岸が大きく崩れている
小滝があった

明るいガレをどんどん下る カラマツの黄葉が始まっていた



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