雷川いかずちがわ 奥秩父笛吹川
2016.09.25
楢原
(ラバーソール)高橋(フェルトソール)

大きな岩には、奥秩父特有の緑の苔が生えている









遡行図



参考情報
「山レコ」笛吹川水系イカズチ沢 (雷沢、雷川、イカズチ川) wetcradleほか 20150620()

コースタイム
駐車地点9:001110m入渓9:12-三俣10:00121310m二俣10:501460m詰め開始地点12:03131535m西尾根鞍部12:431363.5三角点14:07-林道14:32-駐車地点14:48 (ゆっくり歩いています)

ルート図




雷川
 雷沢へ出掛けた。現地の表記によれば、「雷川」とあるのでこちらの方が正しいのだろう。地理院の地形図でも「雷川」となっている。「いかずちがわ」、珍しい名だ。笛吹川の出合近くに「雷」という集落がある。
 なぜこの名が付いたのだろうか。大きな雷でも落ちたことがあったのかとも思う。だが、雷川を歩けば、この謎はすぐ解ける。
 雷川はナメの沢である。笛吹川上流部の支流、久渡沢にナメラ沢がある。この沢と似たような沢と言えば良いのだろうか。ただ、ナメラ沢は15年以上も前に一度歩いただけなので、こう断言してよいか自信がない。ナメラ沢は、ナメの沢として有名だが、最近荒れていて歩く人も少ないと聞く。ナメラ沢は、長い沢で下山も長い。体力が要求されることも人気がない理由かもしれない。
 雷川は、ナメの沢である。1100付近にある大きな堰堤を二つ巻いて入渓する。すぐ現れる3mほどの滝を越えると、大きなナメ滝がある。さらにその先には、驚くほど大きな20mナメ滝が視野いっぱいに現れる。1200mの三俣の先はナメが連続して止むことがない。ナメが段々に落ちてくる様は、雷の白い稲妻のように見える。1300二俣の上は、沢幅が狭くなるが、相変わらずナメが続く。源頭近くなっても小さなナメが現れる。
 雷川の遡行は、大きな岩盤の斜面を登っているような感じだ。ただ、両岸から落ちた枯れ木や泥があるので、やや荒れた感じのするのが残念である。いわゆる直瀑がないので、滝を好む遡行者には好かれないかもしれない。沢幅が狭くなって、ナメ滝が現れなくなる標高1400m以上は単調になる。
 苔が付いて、ラバーソールではよく滑るという情報があったが、今度の遡行では十分なフリクションがあった。私はフェルトソールだったので、これは、ラバーソールを履いた楢原さんからの情報である。今年は、台風が何度か来たので砂礫の流れで苔が削られたのかもしれない。

アクセス、アプローチ
 塩山駅から140号線を雁坂トンネルへ向かい、三富温泉白龍閣を過ぎてすぐ右の舗装道路へ入る。細い道路だが、道なりに走れば雷集落を過ぎ
川沿いの林道に出る。舗装されてあるが、破損している個所もある。道幅は狭い。1000m付近の橋を右岸に渡り車を止めた。ここには、先客がなければ2台ほど駐車できる。
 駐車地点から右岸の林道を歩いて行くと林道は雷川を左岸に渡る。ここから遡行開始だが大きな堰堤二基を左岸から巻いて沢へ入った。標高1110m付近である。



少し荒れ気味の沢を歩き始める
スケールの大きな4m滝 左から巻いて上がる この上には10mナメ滝がある


10mナメ滝 直登は難しい 流れの左を上がる
10mナメ滝の上からナメが続く 思いのほか滑らない


同左 歩いていて快い 何も忘れてナメを歩く
稲妻のような多段ナメ滝 うーん長いな

大滝20m 視野いっぱいに大きな滝が現れる スラブで登れない 見た目より急だ


大滝の上の5m滝 雷川一番の美滝
20m大滝 水流は右端を落ちる 右端を水を避けながら登る 上部はブッシュに逃げる


小さな滝 こんなところも
奥秩父らしく岩には緑のコケが

1300m付近 堰堤が現れる 堰堤前の3m、4mナメ滝


1330m付近に炭焼き窯があった
1300m付近の二俣を過ぎると沢幅が狭くなる こんなところもある


ナメはまだ現れるが源頭が近い雰囲気になってきた
地k形図をよく見て現在地を確かめる


大岩の2m滝
まだ小さなナメが続く

4m斜瀑を超えると左岸の詰め地点1460mが近い

詰め
 詰めは、藤谷ノ頭の西尾根へ上がった。雷川の標高1460mから派生する枝沢を詰めて1530mの鞍部に出る。

 この詰めのポイントが、分かりにくい。沢形が明確でなく、平斜面を上がるような、枝沢とも言えない感じである。これは、地形図を子細に見れば分かるが、標高1460mの左岸は、平斜面である。20mほど上ると明確な窪状になり、一度、傾斜が緩んだ後、踏み跡をたどれば、次第に傾斜が増し鞍部1530mに出る。

下山
 赤岩御殿1560.1mへ上がり、ひとつ南の「滑沢」沿いを下山するグループもあるようだが、体力の無い者にとっては、あまりに距離がある。最短で入渓点付近に戻れる藤谷ノ頭の西尾根をそのまま下ることにした。1363.5の三角点を経由して、1270mで北西の尾根に下るのが、ポイントである。尾根はどこもヤブがなく見通しが利き歩きやすい。林道前は急斜面で降りられないので、監視用のテープに導かれて右手の沢へ降りて林道へ出た。
 終始、楢原さんのリードで尾根を下ったが、見事に始点に戻った。単独行を続けている楢原さんの面目躍如であった。
 下山のルートは、参考情報に記したヤマレコの記事を参考にした。


前泊
 塩山駅で14:00に待ち合わせ、みとみ道の駅へ向かった。今日はテン場を探し焚火をしようと考えていた。積もる話もあるだろう。道の駅の大屋根の下にシュラフを広げる方法もあるが、焚火をしてゆっくり山のことでも語り合いたい。そんな思いだった。
 8月に南アの栗沢山、アサヨ峰へ行ったときに、長衛小屋でテントを張った。その時は単独だったが、テントに泊まる魅力を再認識した。キャンプ場だったので焚火はできなかったが、焚火があればさらに盛り上がるだろう。そんな思いから、今日の前泊はどこかの河原でする、と強く思い定めていた。
 
しかし、道の駅に向かう間に雨は本降りとなり、テン場を探すうちにますます雨が強くなってきた。ひとまず道の駅に避難した。雨のせいだろう。客も少なかった。濃い雨雲が垂れ込め、奥秩父の緑濃い山肌を覆っている。
 
雨の止むのを待つのもよしと思ったが、それが何時だか分からない。天気予報によれば、夕刻には止むはずだが、気のせいかますます雨が強くなり、風も吹き出してきた。もはやこれまで。楢原さんと相談して、目の前にある「笛吹キャンプ場」の屋根を借りることにした。
 
さっそく屋根の下で乾杯をした。キャンプ場の白樺の林に生える見事なみどり苔を鑑賞しながら杯を重ねた。至福の時間が流れていく。大切に持ってきた三陸産の「さばのなまりぶし」を楢原さんに出した。身をほぐしてしょうゆをかけて食べる至って簡単なつまみだ。もちろんご飯にも合う。小さい時から食べていたものが、結局一番うまいと思う。人の味覚は、極めて保守的なものだ。
 
楢原さんは初めてのようだったが、「うまい」と言ってくれた。さすがに料理人だ。本物の味を知っている。
 
五時ごろからかまどに火をつけ、暖を取りながらとりとめのない話に興がのった。雨は夕刻を過ぎてもまだ降っていたが、夜遅くには樹木の間から瞬く光を見ることができた。
 
何を話したのかは定かではないが、二人の会話は、いつも山の思いに溢れている。最近精力的に取り組んでいる楢原さんの単独行の話は、なかなかおもしろい。丹沢の西はずれにある沢の遡行で、間違えて支流に入ってしまった話は、ほろ苦い話だった。今年は、彼氏の中で何かが変わっている。
 
最後になったが、記録だけしておこう。前回好評だった「さんまの開き」を探したが、さんまの不漁のせいかスーパーに売っていなかった。仕方なく、釧路産の「さんまのぬか漬け」を持参した。もちろん炭を熾してじっくり焼いた。これがまた美味しい。初めての味覚だったが、北海道ではよく食べられている名品なのかもしれない。偶然とはいえ、幸運な体験をした。
 酒と肴、これらも沢の遡行には無くてはならないいっぴんである。





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