西沢 丹沢山塊中川川
2016.09.03
高橋


マムシグサ 色が鮮やかなのでよく目立つ














コースタイム
駐車場09:08-西沢出合09:13-第二堰堤09:38-下棚沢出合10:46-本棚沢出合11:0712-下唐棚沢800m地点11:3550-幅広滝3m12:2547-駐車場13:25

ルート図



西丹沢の中川川の上流で、東西から大きな支流がほぼ同じ位置で出合う。東沢と西沢である。バスの終点、西丹沢自然教室のすぐ近くだ。東沢は檜洞丸(ひのきぼらまる)に、西沢は畦ヶ丸(あぜがまる)に源頭がある。どちらも西丹沢では大きな山だ。

 いま療養中なので、普段は沢の遡行を控えている。だが、治療に絶妙な合間があることが分かり、さっそく利用することにした。どんな場合でも、療養の基本は体力保持にあるから、やたらエネルギーを浪費しないことが肝要だ。だが、軽い沢登りぐらいは病人にも許されるだろう、と私は考えている。大体なんでもそうだが、本当に控えるべき時は、体自体がそれを許さないものだ。つまり、やりたくてもそれができない時は、控えるべき時だ。つまるところ、体が動く間は何をしてもよいということになる。
 「絶妙な合間」というのは、いつでも現れる質のものではない。今週は、二日ほどそれが現れ、その後はしばらく現れない。その二日の間に、ぜひ晴れ間が出てほしいと思っていた。だが、なんでもそううまくいく訳がない。一日目は、曇りのち雨、二日目は朝から雨の予報になった。一日目の土曜日に、多少雨に降られても決行と狙いを定めた。だが、朝まで踏ん切りがつかなかった。天候のことばかりではない。やはり弱気が現れていた。
 
次の朝、雲の間に青空が覗いていた。これから雲が広がって下り坂になるのだろう。朝空をそんな風に受け取ったが、こころはすでに現地に向かっていた。どういう訳か、強気に転じていたのである。

 
天気予報は外れだった。車で現地へ向かう間も。沢を歩いている間も、明るい日が差していた。何も言うことがないほどだった。こういうことがたまにある。久々の沢歩きだったので、心が弾んでいた。
 
西沢は、水のきれいな渓だ。水のきれいな渓はいくつもあるだろうが、ぴかいちの沢だといってよい。西丹沢の小川谷廊下という沢に入ったことのある人なら大方想像がつくだろう。
 
西丹沢の山は、閃緑岩(せんりょくがん)という岩盤によって造られている。花崗岩と似たような岩だ。西沢の閃緑岩には、ぬめゴケや緑のコケが付いていない。乾いた閃緑岩は白く見えるので、西沢を上空から撮影できたとすれば、白い蛇のように見えるだろう。白い蛇のゴーロの間を縫って水が流れている。水がきれいな理由は、苔のない白い岩と時に露わになる白い岩盤にある。
 
西沢は、大滝沢とともに、私に最初にその美しさを気付かせてくれた渓である。畦ヶ丸の登山に、大滝沢沿いの登山道から畦ヶ丸へ登り、西沢沿いの登山道を下るルートがある。畦ヶ丸は、他の西丹沢の高峰と同じく、その山に特別な魅力がある訳ではない。頂上は樹木に囲まれ展望もない。そのため、畦ヶ丸登山の魅力は、上り下りに現れる渓の流れの美しさにあるといってよい。西沢と大滝沢はそういう沢だ。私は、この渓の美しさに気づいて初めて沢の遡行にのめり込んだ。

 
だれもこんな沢を歩こうと考える人はないだろう。西沢はそんな沢だ。かの『丹沢の谷110ルート』にも載っていない。沢登りの対象にはなっていない沢、それが西沢だ。
 
西沢はゴーロの沢である。沢の遡行の楽しみは滝登りにあると考えている人にとっては、退屈な沢だ。わざわざ遠くからきて歩く谷ではない。ただ、水のきれいな渓としてはぴかいちだと言っておこう。白い岩のゴーロと時に現れる白い岩盤の滝や渕は得も言われぬほどに美しい。西沢は、遡行の経験のない人にも何の心配もなく歩ける沢だ。ゆっくり沢の散歩をしてみたいという人は、一度訪れてみてほしい。ただ、残念なことに、本棚沢出合までに四基の大きな堰堤がある。
 春には、早朝からいっぱいになる西丹沢自然教室前の駐車場だが、まだまだ余裕があった。夏山シーズンの今、登山者はアルプスへ向かっているのだろう。子供たち以外には、登山者の少ない、思いのほか静かな遡行になった。
 本棚沢出合に落ちる本棚50mを見たあと、下唐棚沢を遡行し800m地点の二俣まで寄り道をして下山の途についた。下唐棚沢には、小さな連瀑が二つほどあった。その先は、急峻なゴーロが続いていた。




中川川の水 深みは碧い
中川川 畦ヶ丸へ向かう橋が架かる 青空がのぞく


中川川の右岸支流、西沢の出合 思いのほか狭いが水は多い
こんなゴーロが続く 苔が付いていないので岩は白い

時に岩盤が現れる 小さな滝があったり 小さな渕があったりする 水がきれい 底まで見える

ゴーロを少し歩くと すぐ第一堰堤になる 左から巻ける

第二堰堤前の釜 水の透明度が高く底の岩盤が見える 釜を廻って小滝を上がる



























奥に第二堰堤が見える 白砂の釜が美しい
2mほどの滝の先に四段ほどの小滝が続く


最後の小滝 水勢は強い 釜に落ちないよう慎重に右岸を越える
小滝二段目 暑い日だが沢は涼しい


ときどき登山道と交差する 沢に木漏れ日が差している
大きな岩には苔の生えているものもある ゴーロが続く

第三堰堤が見える どの堰堤も登山道で巻ける

第三堰堤を過ぎるとその先に滝が見えてくる 滝があるのはやはり嬉しい 最初の滝3m 釜も深く見応えがある この上に幅広滝が続く


幅広滝3m 左が本流だが右の岩にも細流が落ちる この辺りが西沢のハイライトだ


閃緑岩の間を勢いよく水が滑っていく
きれいなゴーロが続く 天気予報はハズレ 日が差している

唯一難しい滝6m 水流左が登れそうだが水勢強く巻いた


第四堰堤が見えてくる 手前のS字状ナメ 
水はきれい 砂は白い


西澤堰堤 竣功昭和八年とある 古い
ゴーロを歩く 下棚沢出合はまだ先


下棚沢出合を過ぎると、両岸から緑が深くかぶるようになる 岩に緑苔が目立つようになる
本棚沢出合の本棚50m 以前ヒロタさんたちは右の窪を登攀した 楢原さんとこの大滝を巻いて本棚沢を遡行したのは2014年5月である

左岸支流、唐棚沢にも大きな滝がある



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