小蛇尾川釜沢 男鹿山塊小蛇尾川
イワナ沢~小蛇尾川~釜沢~後ツル沢
2016.06.05
黒川、大橋、楢原、高橋
(フェルトソール)

小蛇尾川釜沢の左岸に石垣 軌道跡か こんな山深い所にも人の痕跡が 









遡行図  




概要
 イワナ沢、小蛇尾川(こさびがわ)、釜沢、後ツル沢を遡下降した。終盤でゲートの閉じ込めが気になり、そのことに慌てて後ツル沢の遡行を急いだことだけが、いやに記憶に残る。
 だからといって、印象の薄い沢という訳でもない。こうやって、全ルートを記録してみると、それなりに感動的なシ-ンが幾つもある。最近雨が降っていなかったせいか、全体に水の少ない印象を受けた。特に、支流からの流れが貧弱であった。保水性の高い山ではないのかも知れない。
 
ゴーロ歩きが多いが、要所にきれいなナメや滝が現れる。歩いた沢の数も多く距離も長いので、全体的に印象が薄くなったとも考えられる。
 
人の気配のないと思われる山深くに人の痕跡を見ると感動する。こんな山奥にも、人間の社会と関わりのある地平があったことに、何か人の偉大さのようなものを感じるのだった。かつて、この辺りには萩平に通じる森林鉄道があったようである。
 ガイドブックに載るような魅力満載の渓ではないが、静かな渋い渓をゆったりと歩きたい人にとっては、価値ある沢となるだろう。

参考情報
「栃木県の滝」栃木県の滝行 小蛇尾川へ 2012年5月5日
「栃木県の滝」栃木県の滝行 小蛇尾川2 右俣偵察 2012年5月12日
「栃木県の滝」栃木県の滝行 小蛇尾川3 奥の二俣迄 2012年8月4日


コースタイム
第二ゲート駐車場8:10-小佐飛川8:57-釜沢出合10:04-二俣12:0124-左俣30m滝12:42-釜沢出合14:07-後ツル沢出合14:181070m左岸支流出合16:1537-登山道18:00-第二ゲート駐車場18:20

ルート図




 なぜこの沢を遡行しようと思ったのか、メンバーに聞かれてもはっきりとは答えられなかった。
 
男鹿山塊には、大蛇尾川という沢屋には良く知られた渓がある。二泊して西俣遡行、東俣下降というルートが取られることが多いようだ。だが、このルートは、技術的にも体力的にも自分の手には負えないようだった。それでも、このきれいな水の沢を歩きたいと思った。どこか近くに、日帰りで歩けるところは無いだろうか。そんな思いで探していたら、ここに当たった。
 
ここというのは、小蛇尾川釜沢である。大佐飛山の南に長者岳1640mがある。釜沢はこの長者岳の南面を源頭とする小蛇尾川の支流である。大蛇尾川ではなく小蛇尾川だが、「蛇尾川」なんだから似た渓相だろう。この沢の詳しい遡行記録はない。いわば未知の沢である。
 
長者岳の頂上付近には、塩那道路が通っているとの情報を得て、この道路を下山に使えるのではないかと考えてみたが、下山距離があまりに長すぎてあきらめた。様々に遡行ルート検討して決めたのが、塩那道路の第二ゲートに車を停めて歩くルートである。
 
塩那道路は、塩原側から第一ゲート、第二ゲートがある。第一ゲートは午前時にゲートが開かれ、午后6時に閉められる。第二ゲートは終日閉め切りである。第二ゲートまでは車で入れるが、夕方の6時には、下のゲートが閉まってしまう。そういう道路のようだ。

 
那須塩原駅で楢原さんと落ち合い、道の駅に向かった。この辺りのキャンプ場は驚くほど高い。前泊するだけなので、道の駅の軒を借りることにした。テーブルとイスそして屋根付きの寝所を確保することができた。道路からも駐車場からも離れていて、静かなのが良い。久々に、楢原さんと呑み語らった。静かで温かな夜だった。ふらふらと光るものがある。どこからか、蛍が一匹飛んで来て、酔人のようによろけながら飛んで消えた。

イワナ沢下降
 第二ゲートの手前に大きな駐車場がある。その駐車場から東へ伸びている踏み跡がある。弥太郎山へ向かう登山道だ。この登山道へ数メートル入り、そこから北へ向けて緩やかに下る。薄い笹ヤブを降りると徐々に沢形が現れ、水が流れだす。左からイワナ沢、次にもう一本支流を迎える。出合い近くなると大きな滝になる。左手に巻き道がありトラロープが下がっている。下から仰げば立派な滝だ。10mはあるだろう。水が少ないのが少し残念。ここから小蛇尾川はすぐだ。

イワナ沢10m滝 水は少ないが立派な滝だ 左岸に巻き道

小蛇尾川下降
 小蛇尾川は、傾斜のゆるやかなゴーロが続く。ときにナメやナメ滝が現れたり淵が現れたりする。大きな滝や行き詰まる箇所はない。左岸には時々石垣が見える。これは、どうやら軌道跡のようだ。沢床にレールの残骸が落ちていた。小蛇尾川下流の集落から続く軌道だろうが、ずいぶん山深く造られたものだと感心する。この軌道は、釜沢の左岸にも伸びていたようだ。そちらにも石垣の跡が残っていた。

 小蛇尾川を釜沢出合まで下る間に、一か所だけ高巻く場所がある。深い淵を右岸から小さく巻いて降りた。深い淵は碧く妖しい色を見せている。沢が右へ曲がり明るく広い河原になると、そこが釜沢出合である。水は思ったより少ない。本流の下流には堰堤が見える。

小蛇尾川 下流へ向けて下降する 天気予報が外れ晴れてきた こんなゴーロが多い


ゴーロだったりナメだったり景色が変わる
岩盤を流れるナメ滝

右へ左へ徒渉を繰り返す 浅いのでそう苦労はない 時には簡単なへつりを


深い淵があるので右岸を高巻いた
ナメが現れた 鳥の声が絶えず聞こえる

深い淵 流れが深く日が当たる場所だけに現れる妖しい碧

河原が広く明るくなると釜沢の出合が近い


















釜沢遡行
 出合のゴーロを過ぎると、沢床が岩盤となり、ナメとナメ小滝が現れる。水はそう多くないが、きれいなナメだ。左岸からは、5mほどの端正な滝が落ちているのが見える。その先本流は再びナメとなり緩やかな4mナメ滝となる。大釜を回ってスラブを登る。湛えた水は澄んでいてなお碧い。
 
ナメを歩いて行くと、右手に立派な石垣が見える。その上には平坦地が伸びるので軌道跡のようだ。だが、今では寸断されている。ガラス瓶の欠片が落ちていた。かつて人の住んだ跡なのだろう。ペットボトルも缶飲料もない昔のことだ。小石のゴーロをしばらく歩くと、ゴーロが大きめの灰色の岩に変わる。砂や土がなくなり水が澄んで見える。
 
標高940mで股下まで水に入り釜の縁を越える。多段の小滝を迎えると左岸から水の少ない沢が入る。左に折れた本流の先には、見上げるような滝が現れる。15mはある。左岸に見えるバンドを伝えば上がれるようにも見える。だが、そう簡単ではないだろう。ここは、少し戻って左岸支流から廻りこみ、大滝の上へ出る。難しい所のない絶妙な高巻きルートである。
 
青苔の付いた5m滝を右から上がりゴーロを進むと1000m付近で左岸から大きな滝となって支流が入る。前衛も含めて20mの落差はあるだろう。前衛の滝は簡単に登れる。この辺りから本流は狭まり、両岸が迫ってくる。
 
この先本流で、岩に囲まれた長釜をへつって滝左のクラックを上がる。4m滝だ。この上は多段のナメになっている。この先すぐ、1050mの二俣となる。どちらも流れは細い。左俣には30mの大滝があるとの情報がある。
 
左俣は、2m、4mの滝が続く。この4m滝には青苔がびっしり付いている。沢が右へ向きを変えると、太い流木の集積を見せる。かなりの水が出た時に流されて来たのだろう。この先に大きな30m滝がある。水の量が少ないので、今ひとつ見栄えががしない。



大釜のナメ滝を登る きれいな釜だ
釜沢に入りゴーロを過ぎると良い雰囲気の渓になる

このナメの先はゴーロ歩きになる 水の深い所は青い色が


岩が多い中を水が流れる
深い淵に入って越える

15m滝 なかなか立派な滝で見惚れる 手前の左岸支流から回り込んで高巻く


左岸支流の滝 前衛含めて20m
5m滝 右を上がる


4m滝を上がるOさん
4m滝 左のクラックを上がる

1050m二俣を左俣へ入り15分ほど歩くと30m滝 水は少ない 今日はここまでで釜沢出合へ引き返す

後ツル沢遡行
 釜沢を戻り小蛇尾川を下る。堰堤は左岸を降りられる。左岸にしっかりした踏み跡がある。釣り人のものだろう。トラロープの下がる頼りない丸太橋を越え、さらに先のロープの下がる崩落部から沢へ降りた。堰堤のすぐ下が、後ツル沢の出合だ。この出合右岸には、後ツル沢へ上がるためのロープが工作されてある。出合いの先はすぐ連瀑だ。三段12mがすぐ見える。上段が上がれず左岸の固定ロープから巻いた楢原さんに引き上げてもらった。
 後ツル沢は、水量の少ないゴーロが続く。2m二条滝、スラブ小滝が続いた後に巨岩帯になる。像のような巨岩を幾度も乗越すのに体力を消耗する。そうでなくても、時間が厳しくなっていた。午后6前までに駐車場に戻り、第一ゲートが閉まる前に、車で下がらなくてはならない。時間を逆算していくと、どんどん時間が足りなくなってくる。
 巨岩帯は30分続いた後、桂の大木が現れた辺りで、突然消えた。沢が左へ大きく曲がった先を300mほど進むと左岸からしっかりした沢が入るはずだ。ここから詰め上がれば、高度差200m足らずで登山道へ当たるはずだ。だが、この詰めの枝沢の確認に手間取り、30分ほど時間をロスしてしまった。急いでいるときに限って、手間取る。だが、確認せずに枝沢へ入ってしまっては、めざす登山道にたどり着けなくなってしまう。
 ようやく合点して、詰めの沢を上がり始めたのは、午后4時半を過ぎていた。
 巨岩帯で酷使した体力が、1180m付近の二俣先に現れた8m、5mそして続けて現れた三段12m滝でもさらに消耗する。どの滝もわずかに水が流れている。三段12m滝上段を左岸から巻いて沢へ戻った後はひたすら窪を登った。稜線手前で方角を定めて上がると稜線直下に登山道が現れた。ちょうど午后6時だった。ゲートの閉まる時間だ。どうなるのだろうか。駐車場までは、まだ20分はかかる。



下流側から小蛇尾川の堰堤 このすぐ近くに後ツル沢の出合がある
後ツル沢の出合へ入る 残置ロープがある


ゴーロを歩く
出合いすぐに三段12m滝が続く


2m滝を上がる
ゆるやかなナメ滝が現れた

 
巨岩帯になり、その乗っ越しに体力を消耗する
  右岸にカツラの大木 この辺りで不思議に巨岩が消える


三段12m滝の上段を右から高巻く 最後の踏ん張りだ
1070mで左岸支流に入りゴーロを急登 1180mの二俣を左へ入ると8m、5m、三段12m滝が連続する ここは最後の滝上段 ちょっと難しい

稜線が見えてきた 登る方角が違っていたので方角を修正して稜線をめざす 稜線を越えた先にようやく登山道があった


 第一ゲートに車でたどり着いたのは18:40頃だった。われわれの希望的観測に反して、ゲートは閉まっていた。車の窓に貼ってあった夜間連絡先にKさんが電話を入れてくれた。少し時間がかかるが開門に来てくれるとのことだった。これからの行動をどうしようかと悩んでいたわれわれにとっては、幸運な対応だった。ありがたい。日曜日の夜、大河ドラマを見損なってしまうような時間帯に、担当の方が来てくれた。もちろん丁寧にお礼を言って感謝した。



Home