白ガレ沢 富士川福士川 (調査)
2016.05.08
楢原(ラバーソール)
高橋
(フェルトソール)

沢の中に咲いていたマンネングサ









遡行図



参考情報
『南アルプス』日本登山大系 白水社 白峰南嶺・安倍連山の項

コースタイム
白ガレ沢出合10:05-第一ゴルジュ10:50-第一ゴルジュ上11:3911:52690m二俣12:0512:15-第二ゴルジュ12:2313:09-第三ゴルジュ13:51-堰堤14:2344-大洞大橋14:53-大洞橋(篠井山登山口)15:18-グリーロッジ前駐車場15:42

いきさつ
 先月、篠井山(しのいさん)の南面を流れる大洞川を歩いた。篠井山は、安倍東山稜の東に派生する高峰である。今年の冬に安倍東山稜の青笹山を歩いた際に見えた大きな山である。篠井山を源頭とする大洞川は、地形図から判断すれば、福士川の本流と見て良いだろう。福士川は富士川の支流で、富士川の下流域で右岸から合流する。
 
日本登山大系では、福士川の「中流にあるゴルジュの突破は醍醐味がある」と、わずかに紹介されているのみである。ウェブで福士川の遡行記録を探せば、この七ツ釜ゴルジュの突破の記録は散見されるが、そのほかの記録は無いに等しい。
 
先日の遡行で大洞川が魅力的な沢であることを知り、なおかつ近くの支流、夕陽沢の出合の豪快なゴルジュを林道から見て、この地域にはまだまだ遡行を楽しめる渓があると思うようになった。
 そんな訳で、今回は大洞川の標高680m付近で右岸から出合う白ガレ沢を歩いてみた。稜線まで詰めても、標高差500m、距離2.4kmの小さな沢である。今回歩いたのは、その半分に過ぎない。同行者は、先週、早戸川間子小屋沢をいっしょに歩いた楢原さんである。


概念図


アクセス
 大洞川へ向かうには、山梨県南部町の奥山温泉を目指せばよい。新東名の新清水ICから甲府へ向かう国道52号線を北上する。南部町役場の近く、道の駅とみさわの手前を左に入る。奥山温泉は、道の駅から車で30分ぐらいである。途中、ゴルジュの七ツ釜があるが、今は渓谷道の入口に進入禁止の札が下がっている。崩壊部があるせいだろうか。良く分からない。
 奥山温泉への分岐、標高571m地点(地形図)でまっすぐに進むと、すぐ奥山グリーンロッジになる。その前に広い駐車場がある。


ルート図


白ガレ沢の出合から第一ゴルジュまで
 福士川は、渓流釣りでは良く知られているようで、今回も釣り人の姿があった。アマゴが釣れるようだ。だが、こんどの白ガレ沢は面倒な高巻きがあるので、釣り人に会う可能性は低いだろう。駐車場の右手から大洞川へ降りると白ガレ沢の出合がある。なお、「白ガレ沢」という沢名は、日本登山大系を参照した。現地の看板には、「ヒョウ沢」とある。幾つかの資料を参照してみると、「白ガレ沢」は「白崩沢」とも表記されるようだ。
 出合付近には、渓谷を散歩できる遊歩道があるが、老朽化が進みあまり利用されていないようである。
 白ガレ沢は、きれいな沢である。日が差すゴーロの岩は白く、渓を明るく見せている。岩は、岩の中に小石を含むような特有な紋様をみせ、見るからに固い岩である。フェルトソールは思いのほか喰いつきが悪い。この渓は、ラバーソールの方が優位だ。
 総じて岩は大きく水は多い。岩の間を縫う流れは岩に砕け白泡を立てている。ゴーロのいたるところに小さな滝と奔流を見せ、遡行者を楽しませてくれる。折しも新緑の季節、頭上は薄緑色の祭典である。一方ゴルジュは、岩も黒っぽい苔を付けていて見るからに暗い。今度歩いた範囲では、この渓には三ヶ所のゴルジュがあった。
 
白ガレ沢出合付近は、明るいゴーロである。倒木も現れるがわずかである。渓が大きく左へ曲がる辺りで、左岸から大きな窪が落ち、その窪の途中から滝になった枝沢が入る。水量は多くないが大きな黒い滝である。この枝沢を過ぎると本流の両岸はなおせり上がり、渓は暗くなる。
 
前方に突然大きな滝が現れる。前衛の滝を従えた幅広の豪快なナメ滝である。10mはあるだろう。地形図を見て、大きな滝のない穏やかなゴーロを想像していただけに、驚きだった。感激もした。勾配はきつくないが、スラブのため手掛かりは少ない。濃い色の苔も付いている。上級者でなければ、とても登れる滝ではない。とはいえ、両岸は切り立ち小さく高巻くルートを探すのは絶望的である。ここは第一ゴルジュだった。
 最初から困難な滝に遭い、意気消沈するも高巻きのルートを探る。どうしたものかと考えたが、楢原さんがすぐ提案した。
「やっぱり、さっきの左岸枝沢でしょう」
 という。
 枝沢は少し先で高い滝になる。10mはある。登れる滝ではない。高巻きのルートとしてはあまり使いたくない枝沢だ。だが、ひとまず滝下まで登ってみよう。滝へ近付けば、この滝上へ高巻くルートが見通せるかもしれない。


左岸に露岩が現れたりする 明るい沢を歩く
白ガレ沢へ入渓 明るいゴーロを歩く


日が差す明るい沢をゆっくりと歩く この辺りまでは予想通り
何という樹なのだろうか 白い霞のような花が咲いていた

少し大きめの滝が現れたりする 通過困難な所は無い 左岸の窪に落ちている枝沢1 黒い滝 10mはある

ナメ滝10mと前衛の滝 ツルツルの岩に前衛の滝にもてこずる 10m滝は登れないので左岸を大高巻き

第一ゴルジュの高巻き
 
この高巻きは、思いのほか追い上げられ、大高巻きになった。
 
左岸の枝沢に入り高巻きの取り付きにしたい。だが、本流から見える急峻な滝に阻まれる。この滝を高巻くためにさらに右の窪を上がる。およそ本流から30m上がった地点で、左手の枝沢をめざす。枝沢を覗くと、先にまだ難しい滝が続いている。この枝沢の左岸に沿って薄い笹を分けてさらに上がる。ようやく息を継いだのは、本流からほぼ60mを上がった段地であった。段地の手前が2mの壁になっていたので、上がるのに苦労したが、運よくけもの道を見つけて上がった。
 
ようやく勾配が緩くなったので、枝沢に入ることができた。この枝沢を枝沢1としよう。本流10mナメ滝を巻くには、さらに上流側の枝沢2へ移りこの枝沢2を下降するのが良いだろう。地形図の等高線はそう語っていた。
 
そこで、枝沢1と枝沢2の中間尾根へ上がり、中間尾根から枝沢2に下がるルートを探した。だが、急峻で降りられる場所がない。高度計を見ると680mを指している。地形図から中間尾根を標高700mまで上がれば左手にルートが探せるだろうと思われた。思った通りになった。710mから左手の枝沢2への降り口を探す間に踏み跡に気が付いた。この踏み跡に沿ってトラバースをすると枝沢2へ降り立つことができた。そこからは、本流の強い流れが見えた。だが、本流へ降りるのは簡単ではなさそうだ。枝沢2の出合は切れ落ちているように見える。かなりの高さのスラブ滝と思われた。10mはあるだろう。
 
枝沢2の右岸を沢に沿って10mほど下がると、20m下に本流が見える。本流左岸をトラバース状に下がる踏み跡があった。けもの道だろう。この踏み跡を下り、無事本流へ降り立った。大岩に囲まれた落ち着いた流れの渓だった。少し下がれば、先ほどの枝沢2の出合の滝が、細い流れを落としているのが見えた。やはり10m以上はある。ここを降りたら、25mロープでは届かなかったかもしれない。

高巻きのルート



左岸枝沢に戻ってここの窪を30mほど上がる 左上は枝沢の10m滝

枝沢1の左岸に沿ってさらに30m上がる 笹がうるさい この上に2mの垂壁がある




















大高巻きのあと降り立った本流の清流 大きな岩がある 枝沢2の出合には10m以上の滝がある 水は少ない

第一ゴルジュ先から第二ゴルジュ
 第一ゴルジュ高巻きのあと、高巻いた10mナメ滝の落ち口まで戻って沢の様子を見てくればよかったが、高巻いた安心感にすっかり調査を忘れていた。10mナメ滝の落ち口から高巻き下降点までの間は約150mだ。この間に、隠れた名瀑があったかもしれないと思うと残念だった。
 高巻き下降点からしばらくは、河原が広がり解放感あるゴーロが展開される。白い岩の明るいゴーロに小さな滝や釜が連続する。心洗われる風景である。沢の中に大きな樹が岩を抱えて根を張り、枝を伸ばしている。よくもこんなゴーロに根付いたものだと感心する。
 本流が右へ向きを変えた後、右岸から水量のある支沢が入る。この沢は白ガレ沢の支沢としては比較的大きめの沢である。奥には、大きな滝が見えたので見学に向かう。目的の遡行終了点がある訳ではない。気ままに寄り道をして調査を満喫したい。大きく見えた滝は、二段10mぐらいの滝だった。
 今日はこの滝を登らなくてよい気楽さからか、あのルートが登れるとか、いや登れないとか、勝手な議論が沸騰した。
 この支沢の出合を本流に戻りさらに遡ると、沢が左へ曲がる地点から先が陰気なゴルジュになる。ゴルジュの入り口は、大釜のある4m滝だ。水を一か所に集め、勢い良く水を噴き出している。奥にはいくつか滝が続いているようだが詳細は分からない。この4m滝は、遠目にはホールドが乏しそうで登れないと見たが、近づいて見れば滝左の乾いた岩窪に弱点がある。股下から腰ぐらいまで釜に入れば、取り付くことができる。岩窪は、水に磨かれていてホールドが乏しいがフリクションで登れる。水量が多い時にはここも水が流れるので、4m滝を登るのは難しくなるだろう。
 ゴルジュ内は両岸が切り立ち暗い。大釜を持ったトイ状滝、その先ゴルジュ出口には8mの立派な滝を懸けている。右岸はハングしているが、左岸は比較的ゆるやかなバンドが落ち口まで延びている。だが、黒い苔が付き落ち口付近のバンド幅が狭くなっている。バランスを崩さずに突破するのは難しいと判断した。
 ゴルジュを戻ることにしたが、苔の付いたスラブを下がるのはやっかいだ。高橋はゴルジュ4m滝の釜で足を滑らせ全身釜へはまり、少しだが水を呑んだ。身体を冷やしては昨年の小川谷廊下の時のように身動き取れなくなると考え、急きょ楢原さんのフリースを借用した。お陰でこのあとも体力低下せずに何とか遡行ができた。最近は日帰り遡行では着替えを準備していなかったが、反省させられる場面だった。
 このゴルジュは右岸を少し上がるとテラス状になり比較的簡単に高巻くことができる。



左の写真と同じ場所 水の流れが美しい 小滝の連瀑 釜もある
沢の真ん中に根を張る樹木 何という樹か分からないが感心する 桂の木か?


水量の多いゴーロを歩くと標高690mで右岸支流の出合
右岸支流の滝 二段10m 登れそうなのでこの上も調査したい

 
ゴルジュにルートを拓いて進む高橋 左手に大釜のあるトイ状滝、前方に8m滝の落ち口が見える
第二ゴルジュ入口の4m滝 釜に入り左手の岩窪を上がる

振り返ってゴルジュ入口を見る 水が一点に吸い込まれて行く 引き返して右岸を巻いた 支点が取れるのでロープを出した
ゴルジュ出口の8m滝 右にバンドが伸びるが、岩が張り出し出合付近の突破が難しい 両岸は切り立ち弱点は見あたらない  

 第二ゴルジュは、右岸を小さく巻くことができる。ゴルジュ出口の先には6m滝がある。この滝は、横から見ると放物線を描くように水が落ちている。美しい形の滝だ。沢はここで大きく右へ曲がる。ここからしばらくは、小滝をまじえたゴーロが続く。解放感のある広いゴーロだ。つくづく、沢を歩いて幸せな気持ちになる。楢原さんと繰り返し「いいねー」を連発する。三段の小滝、ゴロタの滝4m、3m滝、ゴロタの滝5mが短い間に続く。
 
沢の喜びを体感している間もなく、沢の幅が狭まり小さなゴルジュになる。ここは小滝の続く小さなゴルジュに過ぎない。ただ、水をトイのように集めて流れるので釜は深く水勢は強い。スラブの小滝を越えることができず、少し戻って右岸を小さく巻いた。この巻きのルートは絶妙である。労せず第三ゴルジュを越えることができる。
 
ゴルジュを越えた後も、勢いのある小さな滝が連続し、われわれは嬉々として渓に遊ぶ。この小滝群を過ぎると大岩のゴーロとなる。大きな岩を乗越すと沢が開け、前方に大きな堰堤が行く手を塞いでいる。頭上を仰ぐと赤白にペンキの塗られた巨大な橋がはるか空中に懸かっているのが見える。後で分かるのだが、この天空の橋が大洞大橋である。


6m滝を横から見ると放物線を描いて美しい
第二ゴルジュを右岸から巻くと本流には6m滝が見える

こんな滝もある 三段小滝連瀑  3m滝 登らずに左岸を歩く

ゴロタ滝5m 時々大きな岩が現れる 左岸の崖の下を水が流れる この先に右岸から水の少ない大きな滝が落ちている


ゴルジュのようだ この先に何が隠れているか (第三ゴルジュ)
釜に入り先を探る 小滝だが岩は磨かれ水勢強く引き返す 右岸を小さく巻いた


第三ゴルジュの上も流れの幅は狭いので水に勢いがある
遊び心いっぱいで流れと戯れる 前方が明るく開けてきた

巨石のゴーロ この上あたりが天空の橋、大洞大橋だ

大きな堰堤が現れる 左岸は巨大な露岩だ 今日はここまで



















 堰堤前の右岸は、2030m上がれば林道に出る。この林道は、現在の地形図には表示されていない。比較的新しいものかもしれない。林道を少し上がれば、上流側が遠くに見通せる。堰堤上は平凡な流れだが、800m付近の二俣先は、またゴーロが見える。ただ、上の方に堰堤らしきものが見えるので楽観はできない。いつか調査で歩いてみたいと思う。
 
左俣は、出合付近の流れには勢いがある。渓流の雰囲気がいっぱいだが、その左俣の上方は堰堤が見え隠れするので残念だ。いずれも、遠目に見た情報なので確かではない。
 
大洞大橋は林道を下ればすぐだ。少し遠回りに見えるが、大洞大橋から篠井山登山口の大洞橋を経由して、奥山グリーンロッジへ向かった。林道を45分ほどの行程である。
 
グリーンロッジ前の駐車場で沢装束を解いたが、山ビルが一匹喰い付いていた。楢原さんも同じだった。遡行前には、「山ビルファイター」を足首に噴霧し、遡行途中も足元をチェックして用心していたが、ヒルの方が上手だったようだ。吸いついたヒルは、山ビルファイターやディード系の虫よけスプレーを噴けば簡単に落ちる。
 
5月初めとはいえ、6月並みの気温の高い日だったので、ヒルの動きが活発だったのかも知れない。いずれ、ヒルのシーズンは要注意である。


<その後の調査>
 次の週、5月14日に先週歩いた大堰堤の先を歩いた。大堰堤は標高780m付近にあり、そのすぐ先800mに二俣がある。北へ向かう右俣へ入り遡行した。二俣の水量はほぼ同じである。両俣とも、この二俣の雰囲気は良い。左俣は大岩の間を勢い良く水が流れている。右俣は、小滝を二つほどかけているのが見える。ただ、その先には大きな堰堤がある。
 
左から堰堤を越えてその先を歩くと、840m付近で鉄錆が付いたような茶色の大岩がごろごろして、渓が荒れた雰囲気になる。これは、右の枝沢から崩れ落ちて来たようだ。沢はこの少し先でも左岸に崩落部があり、倒木や流木も多くなって荒れたゴーロになる。徐々に傾斜が増してくると、910mで左から小さな枝沢が入る。本流はまだまだ流れがあるが、前方を見ると変わらぬ荒れたゴーロが続き、滝が現れる様子もない。
 
この先を詰めても、期待するものはないだろうと、910mから引き返すことにした。この白ガレ沢は、堰堤の先に特に見るべきものは無い。先週歩いた最初の堰堤までが遡行の対象と考えた方が良いだろう。
 
帰りに、800mの二俣を左俣へ入り様子を見ようと歩き始めたが、それは無駄であることがすぐ分かった。大きな堰堤が、三基ほど連なっていたのである。これ以上、堰堤を越えて遡行する勇気が起きなかったので、左俣も調査を終了した。



800m二俣 左俣出合 なかなか良い雰囲気だが、この上には、堰堤が連続することが後で分かる
大洞大橋の上から今日歩く白ガレ沢右俣を望む


堰堤の上840m付近で茶色の岩が崩れている
800m右俣は、小滝が二つ その先に大きな堰堤が

その先でも左岸がザレている 標高910m 左から小さい沢が入る 本流右は荒れたゴーロが続く ここで引き返す

帰りに800m二俣を左俣へ入る 堰堤が続いていた この先を歩く気にはならなかった



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