位牌岳 愛鷹連峰
2016.03.17
高橋


いっぷく峠から富士山を仰ぐ 手前の高峰は愛鷹連峰越前岳1504m


参考情報
 なし

コースタイム
水神社駐車場8:36-桃沢橋9:04-つるべ落としの滝10:02141370m主稜線分岐-位牌岳12:4213:09-いっぷく峠13:45-林道14:4757-水神社駐車場15:35

ルート図



 つるべ落としの滝で休んでいると、ひとりの登山者がやって来て休憩した。同じ年代ぐらいの登山者だ。少し会話する。同じ位牌岳へ登る予定だという。
「いっしょに行きましょう」
 と言われたので、
「うーん」、「それは、ちょっと」「頂上でまた会いましょう」
 というと、その人は、先に行ってくれた。
 
せっかくの天気、ひとりでのんびり位牌岳(いはいだけ)のブナ林を歩きたかった。数日前に降った雪が残っていて、素晴らしいブナ林の雪原が広がっているだろう。楽しみだ。朝出てきたときに、愛鷹(あしたか)連峰の稜線が白くなっているのを確かめていた。位牌岳に登るときには、南稜線の東に広がるブナ林を見るのをいつも楽しみにしている。雪のあるときは、ことさらブナの樹が黒く映える。
 
標高900m付近にある「つるべ落としの滝」は、桃沢川の大滝である。20mぐらいある。数日前に雪が降り、その後暖かな気候になったので、冬にしては珍しく水量を落としている。1月に二度来た時には干上がっていたが、今日は違う。やはり、水のある滝は見栄えがする。
 
大滝を右岸から高巻くように登山道が延びている。しばらく沢沿いに歩くと大きなモミの木がそびえている。ブナの大木もある。人の手が入っていないので、雑木の明るい登山道が続く。ミツマタの花がわずかに開き黄色を覗かせている。
 1000mを越えると勾配がきつくなり、なかなか思い通りに身体が動いてくれなくなる。標高を上げるにしたがって斜面が白い斑に変わる。登山道は次第に雪に埋まり、ルート取りが難しくなる。まだ新しい雪に、二人の先行者の跡がある。1150m付近で一人の足跡がルートから外れて登っているのに気が付いた。いずれ気が付いて戻ってくるだろう。そう思った。
 
雪の原に飛び出た岩に座って休憩した。暖かい日差しのお陰で雪が濡れるように融けてゆく。小鳥の高い声が間近に響く。まぶしいほどの雪の原だ。空は青い。
 
とつぜん後ろの斜面に物音がした。振り向くと両手にストックを持った一人の登山者が、がさがさ降りてくるのが見えた。さっき、「つるべ落としの滝」で会話した登山者だった。この手前でルートを外したのは、彼だったことを悟った。道を失ったことに気付き戻ってきたのだろう。後で聞くと、私のザックの鈴音に気付き、あわてて降りてきたという。
 
休みながら会話して、このAさんのことを知った。登山を始めて5年、いま71歳だという。体力維持を目的に山歩きを始めたとのこと。静岡市から車でやってきたようだ。目印がないので、このコースは分かりにくい、私の後を歩きたいという。また、「一緒に歩きましょう」という催促だったが、今度は断れないと思い、ブナの雪原をひとりブナと対話しながら歩くことをあきらめた。

今日の空は格別に青い 気温が上がり暖かい 沢沿いの山道を歩くと大きなアカガシが迎えてくれる


つるべ落としの滝の前ではあえて涸れ沢に入って歩く
つるべ落としの滝 めずらしく水を落としている


気持ちの良い明るい雑木林を歩く
1100mを越えると雪が多くなる

1310mの分岐付近 尾根登山道にぶつかる






















ブナの大木が並ぶブナ林 20~30cmの積雪があった

南アルプスの白稜 北岳から聖岳までその全容がくっきりと見える


























位牌岳の頂上を見ながら稜線を歩く
位牌岳頂上 4~5人のグループに会う


頂上付近 かなりの積雪
富士市街、駿河湾が見える

 Aさんは、磁石も地図も持たず、アイゼンもスパッツも用意していなかった。この時季、この愛鷹連峰を春か秋の山だと思っているらしかった。持っているものは、インターネットで手に入れた愛鷹連峰のルート図だけだった。道標のしっかりしたコースならそれで良いだろうが、愛鷹連峰はそうでない。夏でも初心者は少ない。冬はマニアだけが歩く。この点、Aさんは、驚くほどの楽観論者だった。だが、この雪でそのルート取りが難しいことを悟ったようだ。
 
結局、このAさんと遭遇の後、私たちは二人で歩いた。久々に雪と晴天に恵まれた愛鷹連峰だったが、すっかり私の目論見は崩れた。Aさんは、位牌岳を登り愛鷹山の鞍部まで縦走する予定だというが、途中迷いやすい馬場平もある。急な下りもある。アイゼンを付けていないAさんを「はいどうぞ」と突き放すことはできなかった。私の予定していたいっぷく峠から下るルートをAさんにも歩いてもらったのである。
 
それでも、持ち前のリーダーシップを発揮して、二人の行動を仕切る自分が居て、改めてそのバカさ加減に気が付いた。それでも、Aさんはとてもまじめで良い人であることが分かったので、二人の登山に少しは満足するところもあるにはあったのである。
 
二人旅ではあったが、冬の装いを見せたブナ林と位牌岳は見事だった。空気も澄んでいたので、稜線からは富士山はもとより南アルプスの山襞まで良く見えた。


いっぷく峠から見る富士山 北側の展望が良く南アルプスも見える
南稜線を いっぷく峠へ向かう いつ歩いても感動する

いっぷく峠から下山 ヒメシャラの混じる原生林を歩く

北斜面にはまだ雪が残っている





















Home