青笹山 安倍奥東山稜
2016.02.27
高橋


有東木(うとうぎ)の集落 わさび栽培発祥の地と言われている 窪地はわさび栽培、丘はお茶の栽培がされている


参考情報
『駿遠・伊豆の山』山と渓谷社 2000年
「安倍奥山歩き」 安倍奥の山々 
http://yabukogi.html.xdomain.jp/

コースタイム
葵高原駐車場9:10-新道分岐9:29-風穴分岐10:03-稜線分岐10:48-青笹山11:1520-主尾根分岐11:38-細嶋峠11:5912:10-仏谷山12:30-地蔵峠12:43-真先峠13:1337-葵高原14:08

概念図


ルート図




 静岡県の東端に住んでいるため、秋から冬にかけて歩く山は、どうしても富士山周辺や伊豆、丹沢などが多くなってしまう。昨年の暮れから、富士山の西の山に関心が向き、十二ヶ岳、王岳、竜ヶ岳などを登った。先週は浜石岳を登り、そこから見た安倍奥東山稜の大きな山なみを見てさらに西に関心が動いた。この辺りは、地理院の地形図には「身延山地」とされているが、従来から安倍奥東山稜と言われているようである。
 安倍奥は、自分の住んでいるところから二時間弱で出掛けられ、丹沢とくらべても大きく違わない距離である。いままで、この安倍奥を歩かなかったのが不思議だ。なぜだったのだろうか。考えても良く分からない。安倍奥は遠いという思いがあったかもしれない。最近は、新東名ができて安倍奥へ向かうには便利になった。それまでのように、静岡市街を抜ける必要がなく、渋滞箇所がないのがありがたい。
 さて、安倍奥デビューにどの山を選ぼうか、最初は真富士山でも登ろうかと考えたが、結局富士山と南アルプスの眺望にすぐれるという青笹山を歩くことにした。頂上を踏んだあと北へ縦走して地蔵峠へ向かい、峠から登山口へ戻るコースを選んだ。
 この時期、車で遠出をするときに心配なのは雪である。一年中ノーマルタイヤで通し、タイヤチェーンも持っていない自分の車では、道路の状態だけが心配だ。しばらく、雨や雪が降っていないので、まず幹線道路は問題ない。ただ、ひとたび支道に入ると凍結や残雪がないとは限らない。
 有東木(うとうぎ)の集落は、県道29号線から急な舗装道路をかなり登った位置にある。地形図を見てはいたが、思いのほか急な登りだった。コンディションの悪い時は、運転が難しいだろうと思う。青笹山の登山口、葵高原は有東木の集落のさらに上にある。

 葵高原は、今では特に何もないところである。古びた標柱に葵高原とあり、打ち付けられた道標が朽ちかけている。1980年代後半の経済増勢の時代に、「リゾート開発」という名で、自然を無思慮、無計画に改変した時期があった。浅はかな知恵によって自然に重機を入れ、無用な施設が造られたのである。ゴルフ場、スキー場、ホテル。それも、経済の衰退とともにあっという間に過去のものになった。バブル崩壊という名だけは、今でも新しい。
 遊歩道やハイキング道などが盛んに整備されたのも、その時代と同期しているのだろう。だが今では、どこも廃道が進み道標は崩れたままである。必要なものは、篤志家が設置する。それで良いではないか。自然には不要な手を加えない方が良い。自然に価値があるとすれば、そういうものだと思う。

葵高原と書かれた標識から登山を開始

 葵高原と標識のある前に車を停めて、わさび田の管理用に作られた農道を東へ上がる。7分ほど歩くと道の右に「細島峠、青笹山」と書かれた小さな標識がある。標識に従ってわさび田の方へ入る。登山道も林の中も白い雪が残っている。まだやわらかい。この数日に雪が降ったのだろう。
 
しばらくわさび田の中を歩き、獣除けのネットをくぐる。見逃しやすいが、ここが細島峠と青笹山の分岐である。かすれた道標がある。しばらく、窪地のスギ林を歩くと雑木の明るい場所も出てくる。めずらしく無風である。静かすぎてなにか落ち着かない。カサとも音がしない。耳をすませば、かすかに小鳥の鳴き声がする。
 「風穴」への踏み跡を左に見て急な登りをこなせば、稜線へ続く枝尾根に上がる。この辺りも、ヒノキとスギである。人工林は、いつ歩いても風情がない。暗いし寒いし、林の中を早く抜けたいと思うばかりだ。1400mあたりからようやく雑木の林になり、明るい朝日も差し込むようになる。岩混じりの急な登りだが気持ちが良い。一度傾斜が緩んでから、滑りそうな急坂をロープを掴んで上がると稜線に出る。それまで無かった風が突然吹いて来て驚いた。


登山道を登り始めると雪があった
主稜線へ上がる手前の登り 明るい日が差し雰囲気が良い

稜線分岐から 東を見ると富士山が見えた この後、かすんで見えにくくなる

 
稜線分岐から南へ、青笹山を目指して笹の稜線を歩く。日をまともに受けるので稜線上は明るく暖かい。ときおり、西が開け安倍奥西山稜の山なみと南アルプスの白い頂が見える。ただ、空気が霞んでいるため、鮮やかに見えないのが少し残念である。四人組の登山者を追い越し、幾つかの起伏を越えると笹原に囲まれた青笹山の頂上(1550m)になった。わずかに雪が残っている。二人組の登山者がいた。頂上の展望は良い。東に富士山、北西に南アルプスが見える。南に延びる登山道の先には、真富士山が見える。
 予測通りの展望だが霞んでいる。

のんびりと稜線歩き 青笹山が見える  振り返ると南アルプスの白い頂が見える


青笹山の頂上 二人の先客があった
四人組を追い越すと、青笹山が見えてきた 名前の通り笹におおわれている

青笹山から 安倍奥西山稜と南アルプス 荒川三山、赤石岳、聖岳

青笹山の南 登山道の先には真富士山などが見える















 青笹山から北へ向かう縦走は、背中から陽が当たるので辺りの景色がより鮮やかに見える。正面に、地蔵峠の先の十枚山が遠望できる。安倍奥の大きな山なみへとつながっている。稜線分岐の先は、ブナが多くなり稜線歩きが楽しくなる。ただ、途中からは西斜面にたびたびヒノキが現れて稜線の雰囲気を壊してしまう。稜線近くにヒノキを植えても育ちが悪く、切り出しができないので、人工林とは思えないがどうしたのだろう。ヒノキは、細島峠を過ぎた登りの地点にもある。稜線にヒノキがあるとやっぱり興ざめだ。仏谷山(ぶっこくやま)へ至る1500mの平坦地には、ブナの古木が多く雰囲気の良い稜線である。ただ、左右は笹原なので展望は効かない。
 仏谷山(1503m)は、笹に囲まれた平らな頂で、特に見るべきものはない。地蔵峠までは急な下りとなる。北斜面なので、深くはないが雪はが残っている。アイゼンの力を借りてサクサクと降りた。



青笹山の隣のうつろぎ山
青笹山を下ると右手前方に篠井山が見える


稜線分岐の先はブナの古木が目立ち、雰囲気が良い
行く手遠方、地蔵峠の先に十枚山が見えてくる


細島峠手前 ヒノキが時々現れる 暗いし展望はないし
仏谷山頂上 広いが、笹に囲まれて展望はない

岩岳、十枚山を見ながら仏谷山を下る

 地蔵峠は、年季の入った標柱のある静かな場所である。ここには、地蔵の祠があると聞いたが、どこにあるのか分からなかった。真先峠までは緩やかな斜面を下る。日当たりが良くないせいか、雪がまだまだ残っていた。それでも5cmぐらいなので、この時期としては少ないのだろう。
 真先峠は、正木峠とも表すようだが良く分からないので、葵高原の看板にあったように「真先峠」とした。ここからは、少し舗装道を下がって大きく左折するところから、旧登山道を下った。だらだらと曲折する長い舗装道を下るのを嫌ったのである。この下り口には、進入禁止のテープが張ってあった。この廃道は笹が被り踏み跡がはっきりしない。慣れない人は使わない方が良いだろう。途中、崩落部がありう回路が分かりにくい。間違えて沢へ突っ込むとかなり時間を取られることになるので注意したい。


標柱に地蔵峠とある 静かな平坦地 ここから西へ下る

地蔵峠から真先峠へ下る 今日もひとり















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