王岳 御坂山塊
2015.12.19
高橋


ウラジロモミ 王岳付近の高所に現れる











参考情報
 なし

コースタイム

根場いやしの里8:53-尾根9:43-鍵掛峠10:30-王岳11:501000m付近12:5613:16-根場いやしの里13:33


ルート図




 先週は毛無山、十二ヶ岳、鬼ヶ岳と歩いたが、今日はその西、王岳1623mを歩いた。根場(ねんば)の旧集落から鍵掛峠へ上がり、王岳まで縦走して、王岳の南斜面を下って、根場の旧集落へ戻るルートである。王岳からの下りルートは、地理院の地形図には載っていないが、良く踏まれた分かりやすい登山路である。

 今回歩いたコースも、人家の近くを除けば人の手の入らない自然林であった。広葉樹が多いので、葉の落ちる秋から冬にかけては、明るい尾根を歩くことができる。先週のように、南に聳える富士山と対話しながら歩くことになる。ただ、逆光になるので富士の深い山肌を見ることはできない。北側に奥秩父、八ヶ岳、南アルプスの山塊が見えるが、展望のひらける場所はないので、樹間から望むことになる。葉の茂る夏季にはこれらの展望は望めないだろう。ただ、富士山を始めとする南側の展望は良いので、富士五湖や天子山塊などを俯瞰するように楽しむことができる。

薬明大神の手前から村道を入る 入り口には道標がある 北へ向かい川沿いの林道を歩く 復元した民家 人の住んでいない民家というのは寂しい なにか庭が生きていない

 根場いやしの里に車を置いて、薬明大神を左手に、旧集落の復元家屋群を右に見て村道を上がる。根場の集落は、昭和41年の大水でその大半が流されるという甚大な被害を受けたようだ。いまは、当時の集落を復元して観光地として復興しているようである。

 本沢川沿いにしばらく歩き、やがて左岸の斜面をジグザグに登り右手の尾根に上がる。鍵掛峠へ至る1230m付近の尾根である。アカマツ、コナラ、ブナ、アセビの生える明るい尾根を歩く。南面なので日当たりが良く暖かい。右手に鬼ヶ岳の尾根の張り出しにある雪頭ヶ岳、左手には天子山塊の山々が見える。湖面がかすかに見えるのは、本栖湖だろう。

 1500mを過ぎた辺りで登山路が左手に巻き始めると鍵掛峠は近い。鍵掛とは王岳へ至る途中のピーク1589mを指すようだが、面白い山名だ。いわれがあるのだろうが分からない。鍵掛峠から西へ向かう王岳までの縦走は、南からの日差しを受けるので暖かい。ただ、北側から強い風が吹き上げていたので、縦走路が北に寄った場所は、霜柱も地面も融けない寒さである。

 鍵掛峠から王岳までは、1時間20分ほどだが、日差しを受けながら林の様子などを楽しみながら歩くと、時間を忘れるほどである。先週のコースと同じように縦走路にはツツジが多い。もし春に花が咲けば、尋常でない花園が現れると思うが、どうなのだろう。ミズナラ、ブナが目立つが、高度のある王岳の周辺では針葉樹のウラジロモミやカラマツが見られる。腰丈の笹もこの付近だけである。王岳手前はキレットになっていて、かなりのやせ尾根を渡る。

 根場旧集落から一人の登山者にも会わずに来たが、王岳の頂上で二組、五人ほどの登山者が休憩中だった。下界の忙しい12月下旬にこんなマイナーな山を歩くのだから、同類の山狂いなのだろう。最近の山行の頻度には、我ながらあきれるところがある。
 王岳の展望は、南側だけである。この辺りの見晴らしは、鬼ヶ岳の頂上に勝るものは無い。


 山は山へ来て初めてその良さが分かる。料理の味わいをどのように文字にしても、そのうまさを伝えることは難しい。山での展望は、写真で見ればわかる。だが、山の良さはそればかりでない。山に来なければ感じられないものがある。

空気の漂いとその匂い、風の音、日差しの光と温度、日差しの移ろい、木々の静寂とにぎわい、獣の気配、鳥の威嚇、自身の喘ぎ、土を踏む感触、岩肌の温もりと冷たさ、などなど拾い上げたら切りがない。山を歩くということは、山に包まれることだ。なぜこんなに心地よいのか。考えても分からない。ただそうであるとしか言えないものが、確かにそこにある。自分の幼少期に戻るような感覚、いやそれ以前のまだ自分の存在がなかった頃までにも遡るような感覚がある。

 自然に包まれるということは、自身が無くなるような、自分を意識することのない時間がどこからともなく訪れ、いつの間にか自分を取り巻いているような、なにか不思議な体験だ。山を語るものは、まだ山を知らない。山は感じることしかできないものだと思う。山をひとりで歩く良さは、ここにあったのかもしれない。



先週登った鬼ヶ岳南端の雪頭ヶ岳が右手に見える
鍵掛峠へ伸びる尾根 コナラ、アセビ、アカマツ


振り返れば逆光の富士山が
明るい尾根を踏みしめて高度を上げる


主稜線に達すると鍵掛峠 北側からは冷たく強い風が
手前が鍵掛 左手向こうは天子山塊

ブナの林を抜けて王岳をめざす 気持ちの良い日だ


ピークがいくつか見えるが王岳は遠い
主稜線が見える 一番向こうが王岳だろう 

西湖が見える 西湖の向こうは足和田山 途中から見える 赤石岳 ズームで

王岳の展望は南側だけ 北側のヤブの間から南アルプスが見える


















王岳の南面を腰丈の笹を漕いで下山する  最後は明るい林道を下って根場へ

振り返ると今日歩いた稜線が見えた




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