杓子山・鹿留山 道志山塊
2015.12.05
高橋


忍野村を北進すると今日の山が見えてくる












参考情報
 なし

コースタイム
コミュニティーセンター8:53-立ノ塚峠10:0714-鹿留山11:35-二つ目ピーク12:0218-杓子山12:3338-不動湯分岐12:57-高座山13:35-コミュニティーセンター14:40

ルート図
 杓子山(しゃくしやま)1598mは、先日富士山二ツ塚に登った時に、山中湖の向こう一番左手に見えていた山である。湧き水の観光で知られる忍野八海のある忍野村の北側にある。



 とても堪えられない光景だった。美しいコナラの林に、スーパーの白い買い物袋が一面に散乱していた。そのように見えた。だが、それはナラの木々の根元に巻いたビニールの白い帯だった。その帯の端が風にはためいていた。おそらく、シカの食害を防ぐ方策なのだろう。コナラの美林が台無しだった。何より見るに堪えなかった。
 鹿の被害が大きいとしても、山道の樹木をこのように醜くしてしまうのはどうなのだろう。林の中で、白い帯は遠くのものまで見える。林の中に買い物袋が散乱しているようだ。「美的センス」ということばが瞬間に浮かんだ。なぜ、もう少し目立たない色彩にできなかったのだろう。そうすれば、遠くのものは視界に入らない。コナラ林の美しさをそのままに残すことができたのではないか。
 見るに堪えないので、足元だけを見て歩いた。来るんではなかった。なぜ、こんな場所を選んでしまったのだろう。どこまで、この光景が続くのだろうか。せっかくの良い天気だったが、もうすっかり後悔していた。もうこの山へ来ることはないだろうと思った。

駐車地点から1時間10分 静かな立ノ塚峠 右・二十曲峠 左・杓子山とある


















白い帯の端が風に揺れていて見苦しい
立ノ塚峠を出るとすぐ現れる白い帯 スーパーの買い物袋が散乱しているように見える

白い帯はどこまでも続いているように見えた 下を向いて歩いた

 30分ほど歩くと、白いテープが視界から消えた。標高1450m付近の急登が始まる辺りである。今まで、視界を遮っていた靄が突然晴れたようだった。それまでとは全く違った林の姿が現れた。ただ、それだけで、心が晴れ、爽快だった。背中から差す日差しが暖かだった。
 鹿留山(ししどめやま)へ向かう分岐までは、少しの岩場も混じる急登だったが、樹間から富士山や御正体山が見え快適だった。分岐の手前で、きれいな笹が現れた。下草がすっかり涸れた時季なので、笹の葉のみどりが美しい。立ノ塚峠からこの分岐まで、1時間20分ほどの行程だった。


明るい日差しの中に急登が続く 暖かい
標高1450m辺りから急登が始まる


富士山の絶景ポイントも
岩場には丈夫なロープが下がっている


分岐が見える 笹が現れる 鹿留山は右手だ
主稜線は間近だ 急だが気持ちの良い尾根が続く

 分岐から鹿留山までの間は、巨木の混じる山毛欅の林を見ながらの尾根歩きになる。頂上には二人組が休憩をしていた。今日は、登り始めて三組に会ったので割合に人気の山なのかもしれない。分岐前の急登で会った人は三つ峠駅から歩いて、石割山へ向かうという。健脚だ。鹿留山の頂上は山毛欅林の中だ。樹間から、遠く頂の白い山並みが見える。南アルプスの山々ではないかと思う。杓子山へ向かうために、分岐へ引き返す。


右手樹間に道志山塊の主峰・御正体山がどっしりとした姿を見せる
ブナが増える ブナの林立する気持ちの良い縦走路を鹿留山まで歩く


頂上から西の方面に南アルプスの山並みが見える
鹿留山(ししどめやま)の頂上 ブナに囲まれている 葉が落ちる前は、見通しが悪いだろう

 杓子山(しゃくしやま)までは、起伏のある縦走だ。ミズナラの間から左手に富士山を見ながらの快適な歩行となる。
 二つ目のピークでヤブの陽だまりにザックを広げ、お昼ご飯にした。暖められた枯葉の布団が柔らかく、気持ちが良い。コンビニで買ってきた稲荷を食べる。油揚げの甘辛い味が好きだ。ミズナラの枝を仰いだりしながら、至福の時間が流れていく。またここで、登山者が二組過ぎた。
 三つ目のピークからは、杓子山の盛り上がりが見える。その向こうの山間に垣間見える湖面は、河口湖だろう。(後で調べて分かったのだが、河口湖と思った湖面は、その西隣の西湖だった。河口湖は枝尾根の張り出しで、杓子山からは見えない。)南アルプスとおぼしき白い山々が彼方に連なっている。一番右手に見える雪の白さが乏しい峰は甲斐駒に違いない。

 杓子山の裸の頂上は、人々でいっぱいだった。十五六人はいたかもしれない。霜が融けて泥がべたつく不快な地面だった。
 設えられたベンチで昼食を採っている者もいる。人気の山の頂上で食事をする人を見かけるが、なぜこのように人々の動きの激しい中で食事をするのだろうか。いつも疑問に思う。頂上を外せば、どこにでも暖かい日だまりの適地があるものを、なぜわざわざ人の頻繁に往来する風の過ぎる場所でくつろぐのだろうか。頂上という特殊な場所での儀式のように思う。ひとの入らない奥山の頂なら別だが、私はそのような心境にはなれない。

 樹木の生えない頂上からの眺めは良い。南に山中湖と大きな富士が見え、右手には富士吉田市の広い街並みを見下ろすことができる。高速道路がまっすぐに貫いている。遠くには、先ほどから見えていた南アルプスの白い山並みが見える。こうして遠方の山並みを広く見渡すと、その輪郭がわずかに弧を描いているのが分かる。地球の丸さが現れているのだろう。

分岐を杓子山へ向かう この辺りだけに笹がある この山域でこの辺りの標高が最も高い 1640m
















三つ目のピークから望む杓子山 遠く南アルプスの山並みが白く見える


左手に富士山を見ながらの縦走になる 裾野の広がりが見える
ミズナラの見事な林が続く

杓子山の頂上から 富士吉田市の街 右手奥の御坂山塊、右手ピークは黒岳1792mだろう 一番遠い白い山並みは南アルプス 右手の雪の薄い甲斐駒から仙丈岳、北岳、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳、少し離れて赤石岳、聖岳、一番左手のピークは、2803mの上河内岳だろう 赤石山脈(南アルプス)の主稜線の大半の山々が確認できる

 この山々の美林は、鹿留山から杓子山への縦走の中に現れる。しかもそれは、かなりの水準である。
 杓子山から高座山の下りは、そう見るべきものが無い。1400m付近では松林に変わり、1300m付近では松にコナラが混じるようになる。さらに下がると唐松が現れ、刻々と林相が変わる。
 高座山からは、鳥居地峠ではなく南の内野の集落へ向かう。急斜面を樹を掴みながら滑り降りた。この急斜面も、1240m付近までだ。緩やかな斜面に変わったところで、茅を右手にくぐると広い作業道に出る。あとは、この作業道をまっすぐ下るだけだ。右前方に逆光になった富士山がいつまでも聳えている。



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