二ツ塚 富士山
2015.11.28
高橋


高度を上げると岳樺の巨木が目立つ














参考情報
 なし


コースタイム
水ヶ塚駐車場発09:10-須山御胎内上09:53-幕岩入口10:30-幕岩-幕岩入口10:44-四辻11:24-二ツ塚下塚11:4511:54-四辻12:07173012:2042-幕岩入口12:48-須山御胎内上13:13-県道13:27-水ヶ塚駐車場13:51


ルート図



「爽快だ!人っこ一人居ない」
 富士山二合目の二ツ塚に近づいたのに、人の姿はどこにも無かった。出発して二時間も経つ。ここまで、誰にも会わなかった。ふと振り返ると、駿河湾が陽の光を照り返して輝いている。伊豆半島の海岸線の起伏もはっきりと見える。
 夏には、30万人という登山者を呑みこんでなお泰然としている富士山だが、今日は誰も居ない。とはいっても、今日は二合目の二ツ塚を目指している。富士山の裾野にできた小さなこぶだ。二合目とは言っても、1800mもあるので驚きだ。
 冬型の天気で、今日は冷えた。一昨日までの雨で富士山も、四合目ぐらいまですっぽりと白いマントを羽織っている。頂上はすでに厳しい冬を迎えたのだろう。ただ、今日は風もなく穏やかな日だ。すでに森林限界を越えているのに、めずらしく強烈な吹き降ろしにも会わない。

 水ヶ塚の駐車場に車を置いて、須山口登山歩道に入り1450m付近の山道を北東へトラバースする。「須山御胎内上」の分岐で左に折れると苦しい登りが始まる。歩道は、富士山の頂上へ向けまっすぐ上がる。勾配は急ではないが、まっすぐな道なので登るには苦しい。富士山噴火の溶岩流の痕跡を見せる「幕岩」を経て、森林限界を超えた「四辻」までの直登だ。
 この間にも、森林の様子は刻々と変わり、歩く者を驚かせる。標高1600mになると、樹木がまばらになり、山毛欅や巨木の岳樺が多くなる。さらに登って唐松が現れると、それまで森を支配していた裏白樅(ウラジロモミ)が姿を消す。唐松の丈が低くなると森林限界は近い。その上は、黒い溶岩砂利とまばらな草地の世界となり、視界をさえぎるものがない。
 何気なく振り返ると、駿河の海がひかり、伊豆半島天城の連山がそしてその左手には相模灘が見える。
 「四辻」を右に折れて東へ向かう。この道は、御殿場登山口へ向かう登山道だ。二ツ塚の巨大なこぶの間を抜けるように東へ伸びている。二ツ塚下塚の標高は1800mだ。おそらく30分ぐらいの行程だろう。左手の上塚は下塚に比べて100mほど高い。間近で見ると上塚は巨大な砂利山だ。

 溶岩砂利を踏みしめて上がると、白い鳥居の見える「下塚」の頂上だ。石碑が立っている。頂上に上がると、北東に大きな碧い湖が見える。すぐに芦ノ湖だと思ったが、おかしい。右手南東に噴煙が二つ上がる大涌谷が見えるからだ。箱根が二つある訳がない。確証はないが、これは河口湖かもしれない。そう思った。何故だか分からないがそう思ったのである。だが、富士山の裏側の河口湖が見えようはずがない。この大きな湖は、山中湖だったのである。
 この大パノラマを左手北東から俯瞰すると、眼下の山中湖の向こうに杓子山、石割山、その奥に御正体山が見える。そして、その右手東、山中湖の尻の先に、円錐に突き出た大室山が見え、次々に檜洞丸、蛭ヶ岳など丹沢山塊が顔を揃え、少し離れて立つピークは大山だろう。大きく右手南東に眼を転ずれば、箱根の外輪山が神山のピークを際立たせている。二本煙を上げるのは、近頃噴火の激しくなっている大涌谷だろう。その向こうには、相模灘がかすみ三浦半島を突き出している。その奥には、ぼんやりと房総半島が回っているのであった。さらに、南南東に向けば、伊豆半島の塊が天城山を盛り上げて富士に向き合っている。南には、富士山の前衛、愛鷹山の位牌岳、越前岳が屏風のように立ち、その右手には駿河湾の広い海が妖しく輝いている。
 私が点々と歩いて来た近場の山々のすべてが、このパノラマの中に展望できるのであった。あたかも、釈迦の掌の中で飛ぶきんとん雲の悟空のように、これらの山も谷も富士の掌中にある。その山の中で谷を這いずっている自分は、物の原子の一粒にしか過ぎないだろう。



水ヶ塚駐車場前の須山口登山歩道に入る
トラバース道を歩く 日陰のところは寒いがこんな日当たりの良い場所も しっかりと霜柱が立っている


分岐須山御胎内上」を左折して「幕岩」を目指す
見事なブナの木 この踊っているような姿がいい


「幕岩」を過ぎ、唐松の木が低くなると森林限界は近い
岳樺の立派な木が目立つ 長い登り


黒い溶岩砂利が山をおおう
左に富士山、右に二ツ塚が見えてくる


振り返ると駿河湾がひかっていた 左は愛鷹連峰
  二ツ塚下塚が見える これから頂上を目指す

このところの雨で、すっかり雪をかぶった富士山 頂上付近に雪煙が上がっている

























<北東> 山中湖の先左に杓子山、中央に石割山、御正体山が見える
<東北東> 丹沢山塊 左の単独ピークは大室山か、檜洞丸、蛭ヶ岳などと続き、離れて大山のピークが分かる

<南東> 箱根 左手のピークは、金時山と明神ヶ岳が重なる その後ろには、相模灘が広がっている 右手の高峰は神山、その傍に大涌谷の噴煙が上がる   <南南東> 南に眼をやると、愛鷹連峰が連なる 高峰が越前岳、その左手は位牌岳 駿河湾が鏡のように光っている


正午近くなると、にわかに雲が湧き頂上を隠し始める

穏やかな下り 下りは楽だ 二時ごろには、早くも日が傾き始める



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