荒川3 奥秩父笛吹川
2015.09.12

高橋(フェルトソール)
葉がカエデのように裂けているグミ 初めて見た














参考情報
「沢の風と空」 荒川1 2015.07.12荒川2 2015.08.23御室川左俣
        2015.09.05



コースタイム
駐車広場8:56-荒川入渓点9:401550m右岸支流出合11:07-堰堤11:43-同上12:0021-神子ノ沢出合12:2432-右岸林道13:06-右岸林道下降点13:38-荒川入渓点13:50-駐車広場14:37


ルート図(アプローチ)


ルート図(遡行、帰路)




 支流の御室川を含めて四度目の荒川を歩いた。今回は、今までの中でも最も下流域だ。
 牧丘林道を琴川ダムの上流に沿って車を走らせ琴川を渡る。そこから500mほど走った先で左手に林道のゲートが見える。5、6台車の停められる駐車広場がある。ここから、乙女鉱山跡へ続く作業道を歩き荒川へ入渓する。珪石を採掘していたという乙女鉱山跡は、荒川の標高1470m付近にある。
 当サイト「荒川2」2015.08.23で、「乙女鉱山跡(標高1470m)までは、水量が相当多いことが想像されるので、渓を歩くには、その上流が良いだろう。」と記した。今回は、それを実践してみようという訳である。

 遡行の対象になりそうな流域の地形図を鳥の目で見て、遡行ルートを考えるのはなかなか楽しいものだ。ただ、車で出かけることが多いので、スタート地点へ戻ってくるルートを選ばなければならないという制約がある。往路と復路を同じルートにすれば単純で簡単だが、沢を下降することになるので時間がかかる。復路に「発見」も無い。復路は、できれば登山道や作業道を利用して時間を節約したいと思う。ヤブが無ければ、踏み跡のない尾根を下っても良い。復路の検討もルート開拓の重要な要素である。
 牧丘林道(川上牧丘林道)の駐車広場から乙女鉱山跡へ向かえば、荒川まで1.7kmほどである。30分強で荒川に入渓できるだろう。この作業道は、荒川の入渓点まで、比較的大きな支流に沿って続いている。
 荒川の入渓点、標高1500mから上流を神子ノ沢出合まで歩き、神子ノ沢を遡行して荒川の右岸林道へ上がる。その後は、林道を歩いて荒川の入渓点付近まで下り、そこから緩斜面を選んで荒川へ降り、往路と同じ支沢沿いの作業道を歩いて駐車広場まで戻る。およそこんなルートを描いて遡行を企てた。このルートを歩けば、今までの3回の遡行を含め、標高1500mから2000mまで5.5kmの荒川の全容を知ることになる。今まで、この流域を歩いた記録が無いようなので、初めての記録になるだろう。

 乙女鉱山跡へ向かう作業道は、地形図に明瞭に示されているので、間違えることはないと思っていた。駐車広場の左脇には施錠された立派な林道が見える。この林道へ入り明るい唐松林を歩いた。実はこれが間違いだった。林道は行けども沢沿いの道にはならず、40分も歩いた末に突然山中で行き止まりになってしまったのである。
「どこで間違えたのだろう」
「ここはどこだろう」
 いっぺんに不安になった。もう40分も歩いた。元へ戻る気はしない。だが、現在地が分からずにこの先に突っ込んでしまえば、山中を迷うことにもなりかねない。ただ、現在地は不明だが荒川を目指して西へ進んできたことは確かだ。
「このまま西へ進めば、荒川へ当たるだろう」
 ラフな考えで林道の行き止まりから小さな尾根を下った。かすかな踏み跡があるが、獣のものだろう。
下るにつれて、沢の音が聞こえるようになった。かなり大きな音だ。小さな尾根を標高差100mは下ったと思う。幅広の作業道に出合いそしてその下に沢が見えた。沢幅が小さいので本流ではない。支流だろう。支流を渡ったところで見つけた踏み跡を辿ると、小さな枝尾根を越えて大きな川に出た。荒川に違いない。この辺りでこんな大きな河川はない。運良く支沢出合近くの最初に予定していた入渓地点に降りていた。



晴れの予報だが、金峰山方面の稜線にはガスが懸っている
カラマツ林の林道を降りた これが間違いだった


 荒川は相変わらず美しい清流だった。基本はゴーロで花崗岩の河原が続く。花崗岩のゴロタ石は薄茶に染まり、明るい河原を創り出している。おそらく水に含まれるわずかな鉄分のせいだと思われる。両岸の岩には緑の苔が光る。水はあくまでも澄み釜は碧い。樹木の傘の間から、ときどき木漏れ日が差し水面をキラキラと輝かせる。両岸は見通しが良く、明るい広葉樹の林になっている。以前歩いた奥利根のヘイズル沢や前深沢の流れを思い出す。
 流れはざわめく瀬になり時には水底を見せる瀞となり、岩に砕けて白く泡立つ流れへと変わる。水量は多い。流れが絞られた急流は怖くて徒渉できない。おとといの台風18号の影響もあるのだろう。
 時に見事な釜を持つスラブの滝が現れる。滝は遠くから見ても白く見えるので良く分かる。滝は沢のアクセントだ。滝が見えるとそれだけで興奮する。どんな姿の滝だろうか、釜を回れるだろうか、登れるだろうか・・・・。荒川に大きな滝は無い。だが、両岸からせり出したスラブでできた小滝は、小さくても豪快に水を落とし、驚くほどの轟音を響かせる。まともにはとても登れない。
 荒川は、倒木や流木が極端に少ない。なぜだかその理由は分からないが、荒川を美しく見せている要素だと思う。両岸が原生林なので、間伐が行われないというのも一つの理由だろうか。
 神子ノ沢出合の手前に大きな堰堤がある。堰堤の落とす幅広のスダレ状の「滝」は、なかなか見事だ。堰堤は左岸を低く巻いたが、少し高めに巻いた方が苦労が少なく安全だろうと思う。堰堤を越した降り口は急で固定ロープが二本下がっていた。ほとんど人が入らないと思わるところにも、釣り人の気配がある。その努力には感嘆する。



荒川 入渓点 標高1500m付近 左が流れ
スラブ小滝 水流が絞られて勢いがすごい

小さな滝があるとそれだけで水勢が増す ゴーロが続く 水が多く流れも速い

流れが岩に砕けて白泡を立てる

急流と穏やかな流れが交互に























1~2mの小さな滝が見える 標高1540m付近
小さな滝とは言え滝も釜も豪快だ


3m、3mの二段滝 右手から高巻いた
比較的大きめな滝が見えてきた 1540m付近

同上 上段3m滝


1550m付近 3m幅広滝
同左 小さい滝とは思えない豪快さを見せる

3m幅広滝 右岸から巻く途中で 豪快だ 1550m付近 四段ナメが連続する


明るい開けたゴーロ 歩いているだけで楽しくなる
深いところでも水底が見えるほど澄んでいる


二基の堰堤が続く すだれ状「滝」が、なかなかきれいに見える
1575m付近の左岸支流の滝 8mぐらい

12:00 堰堤を右から越えると、白砂の広い河原になった ここで日に当たりながら、のんびりと昼ご飯に


 右岸から入る神子ノ沢出合いは分かりにくい。出合いを覆った樹木の下から水が流れている。注意していないと見逃してしまいそうである。本流はこの先で右へ大きく曲がる。この先500mも遡行すれば、以前歩いた桜沢出合に至る。
 垂れ下がった樹木をくぐるように、暗い神子ノ沢へ入る。出合付近は小滝が続く。すぐ3m、5mの滝だ。両岸は脆く、今にも岩が落ちてきそうな雰囲気である。長居は無用だ。この上の5mトイ状滝を右から越えると勾配が緩くなり、穏やかな流れに変わる。
 
神子ノ沢出合付近の連瀑は、予測した通りだった。沢の勾配と両岸の等高線の密度から、滝が無いはずはないと思っていた。予測が当たって満足だった。神子ノ沢を標高1670mまで遡り、右岸の小さな窪をわずか20m上がれば右岸道へ出る。これも地形図で計画した通りだった。あとは、右岸道を使って荒川の入渓点に首尾よく降りられれば、すべてが完了する。


神子ノ沢出合 樹木に覆われて分かりにくい


















5m滝は、左を上がれる 両岸の岩が脆く落石が多い
3m、5m滝 神子ノ沢へ入ると滝がある


小さなナメや小滝が続く
5mトイ状滝を右から越える

5mトイ状滝を越えると勾配がゆるむ 快適に左岸を歩く


 荒川の入渓点へ戻るには、右岸道を歩けば近い。問題はどこから沢へ降りるかだが、右岸道の斜面は結構急なので、できるだけ安全に楽に降りる位置を予測した。ルート図の矢印で示した位置である。ここからであれば、30mも下れば荒川右岸の段丘になり、入渓点はすぐだ。
 はたして予測通りだった。遡行終了点から入渓点へ戻るに要した時間は、わずか45分だった。このとき右岸段丘に二基の炭焼き窯の跡を見つけた。かつては、この山深い場所にも人が出入りしていたと思われる。鉱山跡が近いので、働く人々の燃料にでも使ったのだろうか。


神子ノ沢を標高1670mまで遡り、右岸林道へ上がる

右岸林道から荒川入渓点へ向かうとき、右岸段丘に見た炭焼き窯の跡


 帰路は、荒川の支沢に沿った道を辿った。入渓する際に利用しようと考えていた正規の経路である。このルートは、支流沿いにどこまでも緩やかに登っている。だが、登りの長丁場はつらい。左から大きな枝沢が入り、経路が大きく右へ曲がると、じきに出発地点の駐車広場に着いた。荒川入渓点から約50分の行程である。
 ここで、ようやく朝の道を間違えた理由が分かった。駐車広場には、二つの林道ゲートが有ったのだ。朝は、牧丘林道から駐車広場を見てすぐ左の林道へ入ったが、駐車場の右端にはもう一つ目立たない林道のゲートがあったのである。ここが帰路に今さっきたどり着いたゲートだ。この間、10mほどしか離れていない。まさか、こんな近くに二つの入り口があるとも思わず、朝は左手の、いかにも目立つ林道にとらわれて下ってしまったという訳だった。
 この間違えて入った林道は、地形図に記載されていない。地形図を見て林道はひとつと考え、目の前の大きな目立つ林道に入ってしまったのも無理はない。


間違えて入った駐車広場左の林道ゲー 駐車広場右の林道ゲート 草が生えて目立たない



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