御室川左俣(ケイオウ谷) 奥秩父笛吹川荒川
2015.09.05

高橋(ラバーソール)
クマイチゴか 御室川出合に実が生っていた














参考情報
「沢の風と空」 荒川荒川2


コースタイム
駐車広場9:17-御室川出合9:391880m登山道分岐10:01-御室小屋10:20-スラブ滝11:162070m引き返し地点11:31-御室川出合12:4213:04-(荒川経由)-駐車広場14:13


ルート図




 地形図によると、笛吹川荒川の標高1800mで右岸から支流の御室川が入る。この御室川を遡れば、1890mで左右に分岐し右俣は、金峰山に向けて伸びている。地形図には、両俣とも標高2100mぐらいまで水線が描かれていて、集水面積も広いので水量が豊富であることが想像できる。地形図の記載によれば、金峰山を源頭とする右俣が御室川と呼ばれているようだ。(昭文社の地図には、御室川は御堂川、この右俣を三薙沢、左俣をケイオウ谷と記載されてある。)
 御室川は2000m辺りから徐々に勾配が急になり、2100m以上では左岸、続いて右岸に岩壁のマークが記載され、全体に険しいV字谷を形成していると想像できる。これらの点から、滝が形成されている可能性が高い。今まで、荒川の本流を二度ほど歩いて来たが、これらが、いずれも緩やかなゴーロにナメやナメ滝の現れる穏やかな渓であったのとは対照的だ。
 今日は30mロープが必要になるだろう。滝の登攀を考慮して、靴はラバーソールが良いだろう。アプローチには、金峰山へ向かう登山道を使い、入渓点は勾配のゆるむ1930m付近にしたい。遡行終了点は2300mにして、この辺りで傾斜のゆるんだ斜面をトラバースして登山道に出よう。そうすれば、帰りが楽だ。
 そんなことを考えながら、久々の登攀をともなう沢登りに期待と緊張を持って臨んだ。

「あれれー、水が無い」
 岩々に砕けて、白泡を立てて流れているはずの水が無いのだった。
「えー、沢を間違えたのだろうか」
 そう言えば、左手に聞こえていた沢の音が、だいぶ前から聞こえなくなっていた。地形図によれば、アプローチに使った登山道は御室川出合から徐々に沢を離れる。沢が離れているために水の音が聞こえなくなった、そう思っていたのだったが。
 常に現在地をイメージしながら、出合から御室川左岸の登山道を辿ってきたはずだった。出合いでは、豊富な水量をこの目で見ているし、間違えて違う沢に入ったとは考えられない、そう思った。

 ここは、登山道が水晶峠と金峰山へ向かう二手に分かれる分岐だ。標識にもそう書いてある。沢を間違えていることは、まずないだろう。水の無い沢を遡るとすぐに二俣になった。標高1890mの所だ。その上で、登山道は両俣の中間尾根へ上がっている。左右の沢の分岐位置、登山道の辿る位置そして周囲の地形から見て、現在地に誤りはない。ここは、御室川だ。左右とも白い岩の涸れ沢が続いている。水が無いのだ。何故だろう。
 地形図に青い水線が記載されて有れば、水は流れている。たいがいの場合は、水線が切れたその上流までしばらくは水の流れが続く。これは、今まで自分が沢登りの体験から得た確信だった。それが、見事に裏切られた。信じられないが、水は無い。それが事実だ。
 自分を納得させるのに時間がかかった。だが、さてどうしよう。水の無い沢を歩く気持ちは起きない。かといって、ここまできて転進もできないだろう。金峰山へ向かう登山道を登りながら考えた。とは言っても、水の無い沢ではしょうがない。せっかく車で3時間もかけてやってきたのに。愚痴が自然に出てくる。残念だった。


左手に五丈岩の見える金峰山 右に鉄山のピークが見える 金峰山に源頭のある沢を歩く 天気が良いので期待でいっぱい

御室川出合(奥) 手前は荒川本流


























1890m付近 登山道分岐 御室川に水が無い 岩が白い
御室小屋目指して歩く 左右に涸れ沢がある


 今日は天気が良いので、金峰山に登るという選択肢もある。だが、頂上までは700m近い標高差がある。とても今からピストンできる自信がない。考えても良い案がある訳ではない。撤退するほかないだろう。そうだ、せめて御室川に来たという証に、御室小屋に寄っていこう。小屋の標高は分からないが、地形図を見ると登山道が急登に入る手前に勾配の緩やかな地形がある。この1930m付近ではないか。そう考えて登山道を登った。
 考えた通り、御室小屋は1930m付近にあった。屋根も壁もすっかり崩れている。もう立て直す気配もないようだ。牧丘林道が整備され駐車広場から小屋まで一時間とすれば、泊りの必要がもう無くなったのだろう。
 日当たりの良い小屋の崩壊の様を見ていると、何やら水の流れる音がする。小屋の左手からだ。もしかして、沢の水音かも知れない。心が高鳴った。そうだったら良いが。




御室小屋 屋根壁とも崩壊
御室小屋跡 標高1930m付近 左手に水の流れる音がする


 御室小屋の左手の沢に少ないながら水が流れていた。遠くに小さな滝も見える。この沢は、御室川に1890mで出合う支流だと考えられる。御室川左俣ともいえる流れだ。御室川本流に水が流れていない以上、この支流でも構わない。歩いてみよう。そう思った。もうあきらめていたので嬉しかった。(昭文社の『山と高原地図26 金峰山・甲武信』によれば、この御室川左俣はケイオウ谷と名がある。)

 御室川左俣は小さな沢だ。小屋の近くでは沢の幅がまだ広いが、すぐ先に見える小さな滝の上から幅の狭い沢になる。だが、ゴーロの岩がきれいな、ときどき小さなナメと小滝の現れる雰囲気のある沢だ。基本は岩のゴーロなので歩きにくい。水が少ないので釣り人も入っていないのだろう。人の入った気配が無い原始の姿の沢であった。
 2000m手前ぐらいから勾配が急になり2000mの二俣付近では、左岸の大岩壁が崩壊して谷を埋めている。正面には家の大きさぐらいの巨岩が谷を塞いでいて、通過が厄介だ。ここは、右岸を巻いて右の本流へ入った。

 2040m付近で横長の大きなスラブ滝10mが現れる。下部が勾配の緩いトイ状滝、上部が5mのスラブナメ滝である。この滝は左を登った。この巨岩のスラブ滝の下では右に小さな枝沢があり、その奥には30mとも50mとも思われる岩壁が見える。その中央をわずかに水が流れている。
 2070mの小さな二条滝では水が少なくなり、その上は伏流になっている。この先は、水の無い急なゴーロが続く風に見えたので、遡行はここで終えることにした。
 今日の遡行は、わずか一時間に過ぎなかったが、御室小屋で帰ることを考えたら、わずかでも沢が遡行できたので満足だった。


 帰り道、御室川の出合いで昼ご飯にした。この出合いの水量からすれば上流部に水の無いことがやはり納得いかなかった。この水量の沢はどこまで続いていて、いったいどこから涸れ沢になるのだろうか。今回は、並走する登山道をアプローチに使ったが、水量の多い出合から御室川を遡行してその水量の変化をこの眼で確かめてみたいとも思った。どこかで、水が湧くように溢れて来るのだろうか。



御室小屋西側の沢 水がある 先に小滝が見える
小滝 この上から沢幅が狭くなる


ときどき小滝が現れる
小さなスラブのナメ 写真ではナメが分かりにくい


大石を滑る小滝
1980m付近から沢が急になる


沢を埋める大岩を越えて先へ進む
沢を塞ぐ巨大CS 左を越える


大岩の間を流れるトイ状滝
沢の真ん中に二階建ての家ほどの巨岩が鎮座 左岸が大きく崩れている 2000m付近で二俣になる 渓を岩が埋める右本流へ入る

2035m スラブ大滝10m 水は少ない 登れる この右手の枝沢にも50mほどの涸滝が

スラブ大滝上部5m 左から登れる 苔がある部分は滑る

水の少なくなった2070m 二条滝 ここで引き返す
































 御室川出合へもどり、本流荒川を遡行しながらスタート地点の駐車広場へ戻る。前方に釣り人が見えたので途中から登山道へ上がった。ヤブが無いので踏み跡が無くても自在に歩ける。


 右岸支沢の手前 小さな釜
右岸支沢の二段滝  

 ナメと小滝 癒される
3m滝 滝の少ない沢で 

前方に釣り人が見えたので適当なところから登山道を目指して上がる 今日はこれで終了



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