魂ノ山こんのやま 伊豆
2015.03.28
高橋


伊豆の春を告げるアセビ 今年は花が少ない
















概念図



ルート図





 伊豆の山に来ると、必ず思うことがある。なぜこんな山奥のしかも稜線付近にこんな立派な道路を造ったのだろう。スカイラインと言うらしい。ほとんど車の走らない国道級の舗装道路が伊豆の山稜を走っている。造るにどれだけの税金が投入され、どれだけ伊豆の山の趣を毀損してしまったことだろう。道路も使うならまだ良い。だが、ときどき忘れたころに車が通行する程度だ。不要の道路が、見事なまでに自由に山腹と峠を切り裂いて曲線を描いている。今さっき、三台の白いポルシェがエンジンを唸らせながら疾駆していった。

 先ほどからどうも気になる。登山道が、ところどころ荒れているのだ。イノシシが餌を探して登山道の端を掘り返すことがある。そんな感じだが、すこし違う。歩いているうちに気づいたのだが、よく見ると登山道の柔らかい地面が大勢の者たちによって踏みつけられいる。そんな風にみえる。幅の狭い登山道は歩くところが大きく凹み、へこんだ両端の土が盛り上がっている。幅広の地面の柔らかい登山道では、足跡らしい凹みが一面に付いている。どうしたのだろう。いつもの登山道とはどうも違う。この伊豆山稜線歩道では、休日でも人に会うのはまれである。こんなに人の足跡が付く訳がないのだが。登山道の荒れ様をどう解釈したら良いか分からぬまま、歩いた。
 魂ノ山の頂上手前で、トレイルランニングの若者とすれ違った。彼らの体格はたくましい。気持ち良い挨拶を交わしながら三人とすれ違った。「彼らに比べたら、俺なんて足腰立たない老人と同じだ。」そんなつまらない比較を自然にしてしまうほどの光景だった。だが、いつから俺は、スピードと距離を競う登山者になったのだろうか。
 思うことがあった。先ほどから気になっていた登山道の異様な荒れは、トレイルランニングのせいではないか。だが、あの若者達のように、走るのであれば道が荒れるとも考えられない。おそらく、雨の後か霜が溶けた登山道が柔らかくなり、そこを大勢の人が走ったのではないか。大きな力が繰り返しかかったと思われるあの登山道の凹みは、道をゆっくり踏みしめるようにして歩く登山者のものではない。何度も大きな加速度を地面が受け止めた。そんな風に見ることができる。100人も200人も走ったのだろうか。
 帰宅したあと、ウェブで”伊豆山稜線歩道 トレイルランニング 大会”のキーワードで、検索してみた。予想通りだった。二週間ほど前に、考えられないほどの走者が稜線歩道を走ったようだ。伊豆トレイルジャーニー2015。参加定員1500名とある。2015年03月15日(日)。参加費用17,000円。うーん、この大会の主催者は何を考えているのだろうか。一週間に20人ほどしか登山者が歩かない稜線歩道を、一日で二年分の数の走者を走らせたことになる。オーバーユースなどという領域を超えている。主催者は大会の後に、稜線歩道の状況について、次のように述べている。責任を感じていない訳ではないようだが、今後の成り行きを見守りたいと思う。自治体も加わっているのでどのような対処をするのだろうか。「コースの補修・現状復帰は当然の義務です。」と見栄を切っているが、あれだけの損傷をどう修復するのだろうか。この問題がしっかりと解決されない限り、稜線歩道でのトレランの大会は今後すべきではない。
   稜線歩道において修繕が必要なトレイルの損傷が確認されました。
   
コースの補修・現状復帰は当然の義務です。

 登山道の荒れようを嘆くうちに、つい本題から外れてしまった。今日は、伊豆稜線歩道の魂ノ山(こんのやま)を登ったのだった。稜線歩道は、西伊豆の緩やかな稜線を縫う登山道だ。急斜面が少ないので、体力のない者でも歩くことができる。このあたり特有の丈の低い笹原1)が多いので、すこぶる展望が良い。行く先の登山道の描く美しい曲線を、遠くまで望むことができる。南に伊豆の山、そしてときどき西に駿河湾が開ける。遠くから来た人にとっては、時々北側に見える富士山も魅力かもしれない。
 今日は特別に天気が良い。ただ、海風が強いので少々寒かった。海は、春霞でクリアに見えないところが残念だ。展望の良い小ピークで食べる弁当はまた格別である。魂ノ山の手前で天城放牧場を望む高みは、昨年も同じく弁当を開いたところだ。風を避けて座れば春の暖かい日差しが身体を温める。越後の雪山を目指した栃木の冒険野郎たちは、どうしているだろうか。天気が良ければよいが。
    1)稜線歩道付近に生える笹は、アマギザサまたはミヤマクマザサと言われている。

 魂ノ山からは雲の上に頭だけ出した富士山が見えた。めずらしい光景なので、ちょっと感動した。あとは緩やかな登山道を下るだけだ。やっぱり、道が荒れている。この日、登山道ですれ違ったのは、先のトレランの三人組だけだった。



宇久須峠へ向かう
大きなアセビをくぐる


宇久須峠 だれひとりいない
宇久須峠の手前から先の稜線を仰ぐ


宇久須峠の西側 海が見えるのだが
振り返ると苦労して歩いてきた山道が見える

稜線歩道が続いている 
伊豆の稜線の独特な景色
山と山の間には、海が見えるはずなのだが、
今日は暖かな空気で霞んでいる        


明るい登山道に気持ちも弾む
行く手に魂ノ山の頂上が見える まだかなりある


鞍部 登り返すと山桜がたくさんある 咲いたらさぞきれいだろう
魂ノ山前の鞍部へ降りてゆく


海風もアセビの陰に隠れると届かない ご飯を食べる 静か 
魂ノ山へ上がる 結構きつい斜面が続く 道が荒れている




魂ノ山から北を見ると、伊豆の山の向こうに不二の山が頭だけ出している

登山道らしからぬ凹凸が付いている この荒れ方はひどい 広めの登山道

山が笑い始めた まだアセビだけ






















西に土肥の港がかすんで見える 緩やかな歩道を下る

 下りの途中からまた富士山が見える
 



 帰り道、道路沿いに春の使者
ミツマタが花を付けていた  
帰途、車を止めた持越川の支流に偶然連瀑を発見
淵を抱えるゴルジュの先に小さな滝が見える
出来ればいつか入渓してみたい



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