玄倉川小沢 丹沢山塊玄倉川
2014.11.22〜23
楢原さん、高橋(ラバーソール)

錦繍の山神径路 暖かな日に廃道を歩く



遡行図  
なし
 玄倉川小沢の遡行図はこちら

参考情報
AYコ−ナー山ブログ 玄倉川支流「小沢」で・・・・。2013年9月21
 http://akichanpon.at.webry.info/201309/article_3.html


コースタイム
玄倉林道ゲート8:42−小沢出合9:4858−堰堤2つ目12:12−山神径路−板小屋沢左岸尾根14:1645−玄倉林道15:29−玄倉林道ゲート16:25
          *ゆっくり歩いています。ラバーソールのフリクションは良好(小沢)



 富士山もいつの間にか五合目まで雪をまとい、この南国にも冬の到来を告げている。この秋は、いつまでも暖かく過ごしやすかったが、いよいよ籠もる冬を迎えなければならない。
 このところの冷え込みで、11月下旬の山行はどうなるのか少々心配していたが、天気も良く気温も上がりそうなので、予定通り計画を実施することにした。この夏から秋の連休で天候の心配もなく、山行きを計画できたのは数えるほどしか無い。行くか行かないかを前日まで心配して、結局行かないという結論を出した日がどんなに多かったことか。
 とは言ってみても、今度の「山行」は、玄倉川のほとりで、テント泊をしようという何とも軟弱な計画だった。山は、天気が良く歩きたくなったらその辺を歩けば良い。という、真に山を愛する者から見たら、とても思いつきもしないような計画だった。

 沢は、前回の弥七沢で終わりのつもりだったので、それもいいなと楢原さんに賛同した。というか、そういう「山行」を自分自身が望んでいたふしがある。この夏から秋にかけて、体力の衰えによって、テントを担いで歩く山行を一度もしていない。焚き火の炎を見て、心鎮める歓びをすっかり忘れていた。そんな自分を見かねて、楢原さんが配慮してくれた「山行」だと思っている。

玄倉川哀歌
 最近、玄倉川は人が多い。遅く出かけると玄倉林道ゲート前の駐車場がいっぱいになっていることが多い。表丹沢がヒルの発生によって、登山者がこの西丹沢に押し出されてきたためとも思われるが、そればかりではない。
 玄倉川流域を含む西丹沢のバリエーションルートを歩く登山者が多くなっているのではないか。web情報を見ても、今まで歩かれていなかった、沢の遡行を含めたバリエーションルートの情報が多い。10年以上前のことからは、考えられない変化である。当時、ゲート前の駐車場にそんなに多くの車が停まっていた記憶が無い。ある意味、寂しい山域だったのである。そんな時期、沢を歩いていて情報発信をしていた人は、「丹沢の仙人」マシラさんしかいなかったような気がする。
 玄倉川周辺で沢の講習会といえば、すぐ小川谷廊下が浮かぶが、最近は玄倉川本流もけっこう歩かれているようである。「ウォーターウォーキング」白山書房の影響もあるのだろう。モチコシ沢や同角沢のアプローチとして歩いたり、釣りで歩くなら分かるが、かつては、玄倉川本流を目的に歩く登山者はそう無かったのである。

 言うまでもなく、玄倉川の晩秋はいつもより人が多い。玄倉渓谷の紅葉を見学するにわか登山者が増えるためである。だが、大方は日帰り登山のため、泊まる者はいない。広い河原を持つ玄倉川は、どこでも絶好のキャンプサイトになる。

 玄倉川の下流域の川幅は、40〜50mはあるだろう。場所によっては100mほどあるかも知れない。そんな広大な河原の段丘にテントが二張り立った。静かな玄倉川と錦繍の対岸を前庭に空を見上げることができる。ここに無いものと言えば、テレビの画面から垂れ流される退屈なお笑いと善政を喧伝する拡声器の音だ。
 もともと流木の少ない玄倉川で薪を集めるのは大変だが、ようやく一晩と次の朝の薪を集めた。その頃には、静かに薄闇が広がってきた。気温も少しは下がっているのだろうが、薪集めの労働によって暖められた身体にはその小さな変化を感じない。
 闇の広がりは、まず樹木の生える両岸に訪れ、しばらくして広い河原を舐めていく。両岸に挟まれた空はまだほんのりと白い。やがてこの白い空にも薄い闇が広がり始め、本当にゆっくりとその濃さを増していく。

 焚き火に炎が立ち、我々の顔を照らし始めた頃、頭上に瞬くものが見える。このときの空はまだ仄白く、闇が支配するのはまだ先のことだ。星の瞬きが徐々に増し、天空の大部分が星という星に埋め尽くされたときに、ようやく空に漆黒の闇が訪れるのだった。日没の時刻から数時間は経っていた。カシオペア、ペガスス、オリオン。
 闇の移ろいとともに、少しばかりの肴に杯を重ねると、いよいよ炎もそのゆらめきを増す。辺りが闇に包まれた分だけ、視線は自然に炎の動きに吸い寄せられる。焚き火の炎を見つめる眼は、おそらく原始の眼だ。


闇が支配する空の下 無風の河原に炎が立つ ビリー缶でモツ鍋を煮る 暖かい炎と温かい鍋 ビールとワイン



 炎の効用は、第一にその暖かさだろう。静かで温かな日とはいえ、河原の空気は冷え、吐く息は白い。そんな晩秋の屋外で何時間も座っていられるのは、焚き火の暖かさ以外にはない。空気は冷えていても、炎は我々の体表面を温め、温められた血液が身体中を巡る。身体の隅々まで炎の熱量が行き渡る。
 まず、生きるためには、身体が温められねばならない。身体が冷え始めて、そのまま冷えていくのは、その生命が終わりを遂げる時だ。原初から焚き火の炎は、我々の身体を営々と温めて来たに違いない。我々の命を燃やす恵みなのだ。おそらく我々の眼は、炎と我々の本源的な関係を知っている。だからこそ、我々は炎のゆらめきに魅せられて、その形のない炎を愛でる。たとえ独りでも、炎を見つめていれば、何時間でも時を過ごすことができる。これは、大げさではない炎と我々の関係だ。
 そこに、気の置けない友があるとすれば、もはや言うことはないだろう。とりとめのない話に花が咲き、語らう者の心は昂ぶりながらも、炎によって鎮められていく。
 そういえば、つい50年ほど前までは、我々の生活は木の燃える匂いと炎の中にあった。食べ物を煮炊きするカマドあり、風呂釜があり、居間には囲炉裏があった。そこには、いつも揺らめく炎と煙があったのだ。外で焚き火をしていれば、見知らぬ者が手をかざしてもそれを暖かく迎える心を持つ時代が、つい最近まであったのである。
 懐かしさだけで、過去を振り返るのは、みっともないものだ。だが、炎と我々の関係だけは、生きてあることの本源的な姿を現している。


玄倉林道〜小沢〜山神径路〜板小屋沢左岸尾根
 次の日も素晴らしい青空だった。さて、今日はどこを歩こうかといって、簡単に決められるわけがない。歩いてみたいルートはいくつかあったが、検討の末に玄倉第二発電所の先にある蛇小屋沢、板小屋沢、モチノキ(冬青)沢、小沢などの流域を選択をした。雨山、檜岳、伊勢沢ノ頭のつくる稜線下を源頭とする沢群である。この辺りは、ほとんど歩かれていない領域だが、
AYさんが再発見して詳しい探査記録を残している。
 これら沢群のどこを歩くかいろいろ考えた末、結局、小沢を遡行して山神経路(さんじんけいろ)へ入り、板小屋沢の上流部を遡行しようという、何か盛りだくさんな山行になった。この辺りを歩けば、玄倉川沿いの紅葉を存分に楽しむことができるだろうという訳である。




 山神経路は、ユーシンから檜岳、伊勢沢ノ頭の北西斜面の中腹を山神峠(さんじんとうげ)までを繋げる登山道のようだ。詳しことは分からないが、現在は廃道になっている。標識は立派だが、経路は全く手入れがされていない。途中、崩壊部があったり、朽ちかけた木橋があったりで、なかなかスリル満点で体力も使う。迂回も難しいところがあるので、一般の登山者にはお勧めできない。2002年版の「山と高原地図」丹沢・昭文社では、この山神径路は、赤の点線で示されているが、2010年版では表示されていない。
 途中、腐りかけた木橋の所で二人組の高齢の登山者に会った。こんなところで人に会うと思わなかったので驚いた。山神経路で時間がとられたので、結局、板小屋沢の上流部を歩くことはできず、板小屋沢左岸尾根を下ることにした。この尾根には、作業道らしき踏み跡があり楽に下ることができた。途中シカ柵が現れるので自由に歩けなくなるが、柵を乗り越えて蛇小屋沢へ降りた。蛇小屋隧道の少し手前である。蛇小屋沢にかかる堰堤を一つ左岸から下ればすぐ玄倉林道である。


玄倉林道

玄倉林道から対岸の山
玄倉第二発電所ダムの対岸 美しい連瀑が見える 帰路この滝を見ると水が落ちていない 不思議な滝だ 右手にある発電所水路のバイパスになっているのではないか


蛇小屋隧道が見えてきた 帰路はこの辺りへ降りてくる
板小屋沢F1 玄倉林道から見える 7mぐらい 見事な釜


小沢

銘板に「小沢」とある 小沢は固有名詞だ 小沢の名は、隣のモチノキ沢や板小屋沢に比べ、沢幅が小振りなので付けられたと思うがどうだろうか
最初の滝 小滝が三つ続く 手強い 右から巻ける


F1を左岸から巻いた 下降はロープを出した
小沢F1・5m滝 スラブで登れない


F2の上からは小滝が続く スラブなので手強い滝もあるが何とかなる
F1のすぐ先にあるF2・12m滝 左の窪を登り枝尾根に上がり、落ち口近くまでその尾根を下る 10mほど懸垂下降して沢へ戻る


710mの支沢を左に見送りゴルジュへ入る
ゴルジュのトイ状滝をつっぱりで越える 快適


小沢の由来通り、小さな沢だ
ゴルジュの出口 3mスラブ滝 登れないので左を巻いたが、沢へ戻るトラバースが要注意

1つ目の堰堤を左から上がる
二つ目の堰堤 右上に「小沢」の標識があり、山神径路が小沢を横断している


山神径路
こんな感じの山神径路を辿る 「山神峠/ユーシン」の標識が立つ


暖かい日差しが降り注いで 気持ちのよい散策になる
最初の大崩壊部 モミジの手前が大きく崩壊 左手へかなり上がり高巻く 結構な時間がかかる


明るい日差しのもとでお昼にする その先に崩壊部が2ヶ所見える かろうじて越えられる
紅葉真っ盛りの山神径路を行く


板小屋沢 上流部に堰堤が二つ見える 思いがけず水がまだある この上を歩く予定だったが時間が遅いので、今日はあきらめる いつか歩いてみたい
朽ち掛けた橋を渡るのが怖く、ロープで確保してもらう 二人で良かった 


板小屋沢左岸尾根

陽だまりで休憩 気持ちが良いので30分も長居してしまった
板小屋沢左岸尾根 標識とテーブルが有る この登山道はいつまで手入れがされていたのだろうか 標識はまだ新しい

右手に板小屋沢の音を聞きながらヤセ尾根を下る きれいな滝も見える 危険なところは無い 途中シカ柵があるので乗り越えた 蛇小屋隧道手前で蛇小屋沢へ降りる



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