ウェルネス・クライマーズ短信 083
恋ノ岐川 奥只見
2014/09/03〜04
加藤、黒川、大橋、山ア

二日目の朝 ブナに絡むツタウルシも色付き始めた















参考情報
「沢の風と空」2012.09.15 恋ノ岐川

 http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/120915koinomata.html

コースタイム
9月3日
鹿沼4:30⇒清四郎小屋8:1030−恋ノ岐橋8:40〜55−清水沢出合11:301205階段状5m右岸15:30(泊)
9月4日
1205m7:00オホコ沢出合8:55〜9:20−稜線登山道12:20〜45−登山口駐車場15:30


遡行図  なし






日和得て心弾ませ沢に入るその名もゆかし恋ノ

瀬を歩み淵をへつりて滝を登る沢は変幻我等を魅する

滑滝を行けば乳茸群れありて目移り繁く歩み進まず

黄昏れの沢に野営し酒を過ごし瀬音枕に寝ねにけるかも

漸に源頭詰めて尾根に出づ疲労困憊言葉も出でず

尾根道の下りは易きと思へども背の荷は重く足腰軋みて

山の疲れ三日を経てもなお癒えず寄る年波は抗へぬかも

                                  ku.





9月3日
 恋ノ岐川は渓流釣りをしている頃に、一度は釣りをしながら遡行したいと憧れていた川であった。丁度二年前の今頃、SSCで企画したが長男の結婚式があり参加できなかった。今回有難いことにウェクラ企画として山アLが組んでくれた。当初は土、日曜で計画したが天候が悪く、日延べをして平日に実施することになった。
 メンバーの家が近いこともあり、車を出す人には御足労をかけるが、各家々を回って相乗りしていくというスタイルが続いている。この方法だとほぼ予定時間に鹿沼を出発することができる。集合場所を決めると、時間に集まれない人が出たりして余計な心配をする。実際自分も1時間前に集合したり、目覚まし時計を1時間遅く設定したりで迷惑をかけたことがあった。
 恋ノ岐は遡行前後のアプローチをどうするかという問題があった。二年前は山アLが登山口に組立自転車をデポし、尾瀬口船着場に車をデポしたそうである。このときは、土砂災害で通行止めの為ここから恋ノ岐橋まで2時間ほど歩いたとのことであった。今回も山アLが前回と同じデポ方法を考えていたが、たまたま山小屋に状況確認の電話をしたところ、気持ち良く平ヶ岳登山口から恋ノ岐橋まで送ってくれることになった。本当に有難いことである。

 久しぶりの沢歩きのせいか気持ちが高ぶり、自然と早歩きとなってしまった。淵やゴーロ帯を越えるのにも落ち着いた見極めができなかった。そんな行動に気づいたリーダーが一言「このまま行動していったら事故が発生する」この言葉に我に返り、その後は整然とした歩きをすることができた。
 大きな淵では左右どちらを越えるか。冒険心を優先するなら難しい方を選ぶだろう。しかし明日の行程を考えるなら少しでも先に進みたいと思うので、短時間で突破できる方を選んでいく。しかしこの判断も挑戦しないと結果は分からない。全員が難なく突破できたときはやったと思うが、ホールドがなく戻らなければならない状況や、へつりに失敗して胸まで水に浸かったりしてしまうとロスタイムとなってしまう。
 全員の目視判断とリーダーの経験が安全地帯と時間短縮へと進ませてくれる。こんなときの遡行図はありがたい。今回もsawakazeさんから届いた資料を基にリーダーの的確な判断と経験で進むことができた。
 計画の段階で地形図に支沢とポイントになる地点の高度を入れる。しかし実際に歩いてみると予想通り確信のある地形がある訳でもなかった。支沢もうっかりすると見逃してしまうこともあった。地形図、遡行図、高度計で確認し合いながら現在地を特定していかねばならなかった。今日の泊まり場は出来るだけオホコ沢に近づこうとしたが、標高1200m辺りに最高のテン場があった。誰もこれより先にテン場を求めようとはしなかった。時間も15時を過ぎていたのでここに泊まることにした。早速薪集め、タープ張り、釣り班に分かれて夕食の時間に進んでいった。
                               O.




 恋ノ岐近くには何度か足を運んでいます。岩魚を守っている人々が居るのです。多くの知人と知り合った場所でも有ります。
 新潟には好きな山々がそびえています。その一つ平ヶ岳は何度かトライしましたが、残念な結果ばかりです。体力不足と現場状況を研究せず、挫折ばかりでした。甘い考えの登山です。一度は山頂の人になりたいと願うばかりです。今回の沢登りにチャレンジするには、過去にこのような結末があり、不安が募るばかりでした。
 山アさんの冷静な指導の結果、成功に導いて頂きました。同行した大橋さんのパワーと黒川さんに和まされ、疲れも飛び去り仲間の連帯感や達成感を満喫して、自分も成長した気分の最高な時間でした。
 貴重なアドバイスを頂いた高橋さん、的確な指導をしていただいた山アリーダーと同行した仲間に感謝でいっぱいです。
                             加藤




9月3日

清四郎小屋の前で


08:56 恋い焦がれた恋ノ岐川

09:02 両岸の白い岩が綺麗だ



09:55 二段4m右岸をへつる深みにスタンスがある

09:12 広い河原にも時折両岸が迫り道を塞ぐ


潜水艦のようなKuさん


10:41 大釜手前の小滝を越えて

10:54 大釜5m 水量により難しさがます



二段8m滝を上がるOさん

11:20 清水沢出合手前の二段8m体も暖まり気合も入る



12:03 清水沢出合で一本取るナメが続く

12:58 2012年遡行のときは左の流れは無かった 5mトイ状滝



14:21 ルートどりに苦労しながら

15:11 1200の大岩を右岸から巻くと階段状滝 1205のテン場目前



今晩の肴もしっかり調達して

15:30 1205mテン場 快適に過ごせる1200少し下にも翌朝煙を見た






9月4日
 昨夜は焚き火を囲みながら取り留めのない会話を交わし、それぞれにタープ下に消えていった。夜半から明け方の寒さを心配したが、ゆっくりと眠ることができた。今日も雨の心配はなさそうな天候である。沢を遡行する者にとっては有難い朝を迎えた。
 歩き始めは昨日の疲れからか筋肉の強張りを感じていたが、時間が経つにつれ気にもならなくなった。筋肉が解れてきたせいだろうか。
 今まで沢登りというと、次から次と現れる滝をいかに越えるかということに楽しさを求めてきたが、恋ノ岐は釜や淵を如何にスマートに突破するかだろうと思った。上手い具合に突破できたときは嬉しさがこみ上げてくる。滝もそうだろうが釜や淵にも必ず弱点はあるものだ。水に入らないへつりもスマートだが、見えない水中を読んで足先だけを頼りに突破できたときには最高に嬉しい。深い釜や淵になるほど心臓が高鳴るのが分かるぐらいだ。
 オホコ沢出合までに確認したテン場は数ヶ所あったが、昨夜泊まったテン場以上のものは見当たらないように感じた。なかには水が出たらアウトだろうと思われるような所もあった。オホコ沢出合の左岸の高台に良いテン場があったが薪集めに苦労するかもしれない。

 オホコ沢に入ると渓相が変わり圧迫感を感じるようになった。今まで広い本流歩きに慣れたせいだろう。いくつかの小滝を越え標高1500mを過ぎた頃、オホコ沢核心の10m滝が見えてきた、見た目では右岸からのが取り付き易く思えた。それを証明するかのように右岸の途中に釣り師の細紐が下がっていた。しかしリーダーが「ここは左岸からと言って登っていった。ホールドはわずかではあるが、難しい所もあった。ここはロープを出したほうが良かったかもしれない。落ち口に立ったとき、のっぺりした石に茶色い水苔が着いていて立ち上がるのに恐怖を感じた。ラバーソールは強い所は強いがこのような所ではフェルトソールのが有利だろう。
 標高1545mで本流から外れ、台倉清水を水源とする左俣に入っていった。この辺りまで来ると源頭部に近い渓相となってきた。1575mの二俣で登山道に出るショートカットを選んだ。水が切れた辺りから笹薮がうるさくなってきた。笠科川ワル沢を思い出すような笹が密生していて我々を拒んだ。1ヶ所だけ急登があったが、ラバーソールのおかげで小さな岩や窪地を拾って突破することができた。フェルトソールでは登れなかっただろうか。
 ヤブ漕ぎに30分以上はかかったであろうか、無事登山道に出たときは、安堵感からか二日間の気力が一気に抜け出たように頭の中が軽くなった。しかしここからの登山道下山が辛かった。燧ヶ岳や越後の山々が見えたときは冗談を言い合っていたが、時間が経つにつれて無口となり、只々ひたすらに平ヶ岳登山口を目指して下降していった。

                                   O




9月4日


07:50 朝日に照らされ額に汗が天気の心配はなさそうだ

07:54 二段くの字8m 右岸の窪を上がるものもいた 012前回よりも水量があるのが分かる


08:06 5m滝 魚影が走る


08:58 オホコ沢(1:2)出合 左岸にテン場 右岸はせいぜい2.5人 恋ノ岐川は南南西から北北西に進路を変える

















<オホコ沢>

10:01 オホコ沢二段上部10mを上がるY

09:57 オホコ沢 二段10mの上部・左は厄介 左岸から スリップ要注意



12:31 1575から左に入り苦労した 直進して鞍部に出るのが 正解 急がば回れか?







 2012年9月高橋栄さん企画に参加した時は、後方を歩いたのでル−トの選択などに苦労はなかった。今回はCLを任されル−トを探りながら、状況判断を瞬時にしなくてはならない。前回と比較にならないほど、労力が必要になるだろう。
 歩き始めは水に入るのが、やや不安があり躊躇していたが、徐々に水に慣れ積極的に「ジャブジャブと入っていった。気温も高いし何時までも避けていてはモチベも上がらない。そんな気持ちの変化の中、二段4mの釜を覗き込む。事件だ、釜の中央に小太りの中年男性がザックを必至で抱え込み「プカプカ」と桃太郎のように浮いていた。
 「上に上がるのですか、それともどうかしましたか」と尋ねると、下降していると答えてきた。「なに---」なんで、恋ノ岐橋に止めてあった福島ナンバ−の持ち主であった。かなり疲れ果て普通の精神状態ではないとすぐに分った。話によると昨日入渓したが、雨で増水しビバ−ク、恐怖の一夜を過ごし撤退を余儀なくされたようだ。昨日は天気も安定しているものかと思っていたが、山の天気は分からないものだと、改めて山の天気の優柔不断を感じた。
 清水沢出会いまでの滝で、注意しなくてはならない滝は、大釜を持つ5m滝。水量が多いと足元をさらわれないように注意しなければいけない。ヘツリは落ち着いてスタンスを探すことだ。
 清水沢出合いには11時30分に着いた。橋から2時間30分経過した。途中チタケが「ワンサカあり、栃木県人なら足を止めずに通過は出来ない。みんなも同じで、身体中に「チタケ命」と書いてあった。

 清水沢出合は2012年にテン場とした所である。遅い時間の遡行開始には、最高の一夜になるテン場だろう。その出合からはナメが続き、チ−ムの歩行にもリズムが出るところである。すっかり渓に溶け込み悠々とした歩みを見せてくれる。三角沢出合から先も飽きることのない滝や、幅広ナメが続き順調に距離を稼いだ。13時少しまえ右に5mトイ状の滝がかかる。2012の時は右岸の流れは無かったのだが、幅広の流れを落としていた。水量が増すと滝の姿も変わり豪快の一語に尽る。
 ゴ−ロが続き、ルート選びも難しい。上り下りを最小限に抑えることに気を使う。1200手前の大岩を右岸から巻くと、前方に段々と落とすスダレ状の滝が出現する。神様がくれた落し物。その流れの音を耳にしながら、一夜を過ごす宿場となるスペ-スが右岸にある。もう歩き始めて6時間30分を過ぎたところだ。タープMは四人では少し狭い。雨が落ちて来ない事を祈る。

 1205からオホコ沢出合いまでは、昨日の様な大きなゴ−ロはなく、滝間の歩きは淡々とすぎる。しかし地形上高度は中々上がらない。二段くの字8mを左岸から巻いたが、Kuさんなどはなかなか挑戦的で、右岸くの字を攻めていた。厳しいと思いきや流れの中に足場を見つけ超えた。なかなかやりますね。
 オホコ沢出合に二時間弱で着く。出合すぐ横、右岸に三人ほど泊まれるスペ-スがあるが、少し藪がかかり良い環境ではない。前回確認した左岸(3mの高さ)にあるテン場は(薮を刈ってある)十分余裕のある良い所だ。泊まり場とする者が多いので、薪の確保には時間がかかる。
 オホコ沢に8:55に入る。稜線鞍部1647目指し気を引き締め直し歩を進める。小滝が続きどれも登れて楽しい。支沢の水は本流と違い、水温はかなり低くネオプレンのソックスは必至だ。岩に赤みがさす二段10mは要注意だ。一見右岸がよさそうに見える。釣り師の細紐が二本垂れている。距離が短くなるので下降に使うものかもしれない。ここは黙ってやや逆層気味の、左岸のいかにも滑りそうな、赤黒く光る岩を慎重に落ち口に降りた。
 1575(1:3)で左から入る流れがある。手前に30mで沢が消える枝沢に注意したい。稜線鞍部1647には水量の多い方を直進するのだが、距離を稼げる左沢を選択してしまった。結果は詰めのル−ト図を見ればわかるように、急登で苦労して本来のコ−ス(1647)より60分余計にかかってしまった。冷静に地形図を見れば等高線が込み合い、選択すべきでは無いと判断できた筈だが。最後の最後で落とし穴にすっかりはまり込み、大いに反省させられた。
 千島笹の竹槍に反発するかのように、これでもかと圧し掛かる藪との対決。そこには風吹きぬける稜線登山道を頭に描き、最後の力を振り絞る他はない。

                               山ア



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