マスキ嵐沢 丹沢山塊中川川大滝沢
2014.07.21
Nさん、高橋
(フェルトソール)

5m滝を上がるNさん 790m付近









遡行図  なし




参考情報
「沢の風と空」2011.11.21
  http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/111120masukiarasisawa.htm
「沢の風と空」 丹沢の沢を歩くー沢のガイドー マスキ嵐沢
  http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/masukiarasi01.html


コースタイム
大滝橋8:48−マスキ嵐沢入渓点9:23〜35−12m滝10:08−840m二俣10:59〜11:34−880m二俣11:43−910m二俣11:54−稜線12:41−1050mピーク12:44〜13:02−西沢分岐13:39〜50−西丹沢自然教室14:20


ルート図



長いプロローグ
 死んだ子の年を数える。そんなことわざがあったように思う。今年はそんな心境だ。豆焼沢、滝川本流、赤岩沢の遡行が、この一ヶ月半でことごとく中止に追い込まれた。全てが天候のせいだ。季節が悪いといえばそれまでだが、企画を立ててその具体化に力を注げば、中止になったときの落胆は大きい。死んだ子の年を数えるようにして、行けなかった谷の数をかぞえている。

 奥鬼怒の赤岩沢は、2010年に一度遡行した。大きな二つの滝以外は、快適に登れる滝とナメばかりで、なかなか楽しい渓である。一度滝が始まると、岩床が途切れずに小滝が延々と続く。この赤岩沢もつい先日中止になった。天候に恵まれないのならば、鬼怒川支流のコザ池沢小北沢を日帰りで遡行とも考えたが、この案も中止になった。どうにもならない天気予報だったのである。雨天決行という選択肢が無い訳ではない。だが、谷の両岸がゆるむ時にわざわざ出かける理由を見つけることはできない。
 このとき幸い最終日の21日だけ、雨の心配のない地方があった。奥秩父は、どうやら晴れ間も現れる天気予報だった。梅雨明けかもしれない。さっそく、その方面で自分の行けそうな渓を探した。以前から心の隅に温めていた渓をすぐ思い出した。ヌク沢左俣左沢だ。ヌク沢は200mの大滝で有名だが。そこを独りで登る勇気も技術も持っていない。1635mの二俣でこの有名なヌク沢左俣右沢を見送って左沢へ入る。ここがヌク沢左俣左沢である。あまり詳しい情報はないが、200mの大滝を登るつもりで遡行して、この二俣で間違えて左沢へ入り、この左沢を歩いてしまう人がいるようである。そそっかしい人が居るものだと思う。
 地形図で標高18001900mを見る限りでは、この左沢は大滝のある右沢と同じように等高線の密度に大差がない。つまり、大滝が隠されているように思えるのだが、どうやら急峻な岩窪を上がるような遡行になるらしい。岩窪なら何とかなるだろうというのが、私の判断だった。だが、結論を言っておこう。天候が良い方に変わると思われた予報が、少し遅れて進行するようだ。つまり、21日も相変わらず不安定な天候になるようで、準備万端整えたこのヌク沢左俣左沢結局中止にした。わざわざ遠くまで出掛けて、雨では割に合わないと判断したのだった。

マスキ嵐沢
 鬼怒川の赤岩沢をコザ池沢、笛吹川のヌク沢と「転進」して結局どれも中止にして、最後は身近な丹沢にした。ここなら、雷雨で追い返されたとしても、後悔は小さいだろうという打算の結果だった。もちろん、いつものように独りで出かけるつもりだった。近い西丹沢だったらどこでも良いと思っていた。が、つい先日Nさんから、「マスキ嵐沢の調査がしたい。」とメールが有ったのを思い出した。Nさんに同行の問い合わせをしたら、「OK」の返事が来たので、一緒に歩くことにした。前日の午後という、あまりに突然の誘いだったので90%はダメだろうと思ったが、二人の望みがぴたりと重なったのだ。誘ってはみるものだ。
 沢は独りで歩くのも良いが、やはり同行者があった方が楽しい。四方山話をしながら沢を歩くのは、なぜかすごい贅沢をしている気分になるから不思議だ。いつも独りで歩いているせいかもしれないが。



マスキ嵐沢は大石のゴーロから始まる


 マスキ嵐沢は、西丹沢では有名な沢だ。ガイドブックに取り上げられてきたためだろうと思う。今回も、沢の中で二組のグループに遭った。西丹沢では、沢の中で人に会うことはまずない。とすれば二組というのは多い。それだけマスキ嵐沢は、歩かれているのだろう。
 マスキ嵐沢は、西丹沢の特徴を持ったきれいな沢である。1.5kmの短い沢だが、その割には沢幅が広い。岩床の沢が続くので、ナメや滝を流れる水が澄んでいる。白っぽい閃緑岩と岩に付いた青苔のコントラストが美しい。マスキ嵐沢が人気なのは、登れる滝が続くことにあるのだろう。滝の形も変化に富んでいる。ルートを選べば、どの滝も高巻きせずに登れ、高巻きの面倒くささがない。そういえば、今度の遡行で巻いたのは、詰めに近い10mの涸れ滝だけだった。ここは簡単に巻ける。
 独りで沢を歩きはじめて間もない時に、この沢に来たことがある。もう10年以上も前のことだ。12m滝とその上の傾斜のきつい7m滝で苦労した覚えがある。度胸も技術もなかったので、ちょっとした滝で苦労した。12m滝は、下部のスラブ登りで難儀した。滑落が怖くてなかなか足を前へ出せなかった記憶がある。だましだまし上がって、ようやく左岸のブッシュに手が届いた時の安堵感は、いまでもまざまざと思い出す。今思えば、そのときはまだ渓流シューズを履いていなかったかも知れない。運動靴に近いウォーターシューズでスラブには向いていなかったのだろう。その上の7m滝は、いかにも立派な滝で、上部が不安だ。一見、初心者がリードする滝ではないようにみえる。そのため、ここは左岸の急な草付きを上がって、落ち口へのきわどいトラバースで越えた。今度、まじまじとこの高巻きルートを探ってみれば、かなり難しいルートであることが分かる。いま登れと言われれば、躊躇するだろう。よくこんな難しい所を上がったもんだと感心した。岩を登る怖さが高巻きを選択させたのだろうが、良いルートとは思えない。その分、高巻きの技術は自然に磨かれたのかも知れない。
 今では、12m滝とその上の傾斜のきつい7m滝を何の不安もなく上がれる。V級かV級−だと思う。だが、遡行の終わった時の感動は、当時に及ばない。そのときは、単独で遡行を完遂した稜線で、打ち震える歓喜が全身を満たしたのだった。懐かしい。
 今度のマスキ嵐沢で残念だったのは、新しい倒木が多いことである。今年の大雪で倒れたのだろうということになったが、せっかくのナメや滝、そして美しいゴーロが遮られている。この倒木が洗われるのには、あと何年かかるのだろう。とはいえ、マスキ嵐沢の魅力は健在だった。



4mS字滝 スラブの滝で美しい その滝の上で
最初に現れた滝4m この上すぐ小さなナメ


新しい倒木がある この冬の大雪が原因か
きれいなナメが開ける 沢幅は広い


こちらも倒木 倒れながらも葉が出ている 2011年には無かったものだ
8m滝 水流沿いを登る 水が多いときは苦戦するだろう ここの滝の形はこの10年で変わった


トイ状滝 滑らないように注意して
手前3m、3m滝 その上右が12m滝 水流右をバンドを使って上がる


12m滝途中 正面で見たより急な滝だ
12m滝 上部を上がるNさん 沢慣れている者にとって難しくはない 上部はバンドを右斜に上がり、堅い木の根を掴ん身体を上げる

7m滝(6m?) 先行者がいる この二人組は懸垂してここを降りて行った トレーニングらしい ここは、水流左からバンドを上がり水流を右へ移る その後、最大斜度を直上する しっかりしたホールドがある V級





























5mスラブ滝に続く6mスラブ滝 細かいホールドを拾って この上に二段の小滝が続く
5mスラブ滝(前方) 水流沿いにホールドがある すぐ6mスラブ滝 なかなか美しい渓相だ 


4m滝 どこでも登れる 相変わらず水は澄んでいる
810m付近 スッキリしたゴーロやナメだったが、ここにも倒木が もうすぐ840mの二俣だ


1000m付近三俣 中央本流の窪を忠実に詰めて稜線へ 稜線前のザレに残置ロープがあった
920m二俣 右俣は5m涸れ滝(正面) こちらへ入る この上すぐに10m涸れ滝がある


 駐車場やバスの混み具合からすれば、今日の西丹沢は人の少ないのが分かる。Nさんによれば、小田急新宿の登山客はいつになく少なかったという。19、20、21日と三連休だったが、19、20日は雨、21日がかろうじてくもりの予報だった。準備していた山行を取り止めたグループも多かったものと思われる。暑くなってきたので、丹沢はシーズンオフになりつつあるのかも知れない。夏には、あまり来ることがないのでその辺のことは良く分からない。
 こんな中で、ヘルメットのグループをたくさん見かけた。下山途中や自然教室前でバスを待っていた時、大滝橋で沢装備を解いていた時など、沢装束のグループとすれ違った。いつにないことである。我々と同じように、希望の沢の天候が悪く、西丹沢に転進してきたのではなかろうか。同じ穴のムジナが、この一ヶ月半の悪天のために西丹沢にきょう偶然集まった。そんな雰囲気だった。



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