西沢本棚沢 丹沢山塊中川川
2014.05.05
Nさん、高橋

稜線にツツジ 稜線もようやく春だ










遡行図  



参考情報
AYコーナー山ブログ 西沢本棚沢 2012.07.28
http://akichanpon.at.webry.info/201207/article_8.html



コースタイム
西丹沢自然教室7:34−西沢本棚8:34F3落ち口9:34870m二俣−920m二俣10:51−6m滝10:5811:45980m二俣12:01−稜線登山道12:50−善六ノタワ−下棚沢出合−西丹沢自然教室15:05



 なぜ、西沢本棚沢を今まで歩いてこなかったのだろうか。本棚の高巻きを敬遠したのだろうか、それともF4までの登りがどれも直登できそうもないので、滝を登る楽しさが最初から奪われている沢と判断したためだろうか。『丹沢の谷110ルート』には、「下棚と同様、(中略)この沢も初心者同士の入渓は控えたほうがよい。」とあったためだろうか。今となっては忘れてしまったが、ようやくNさんと歩くことになった。

 Nさんとは、2007年からの付き合いだから、もう7年になる。早いものだ。Nさんは仕事で忙しく、二人でそう頻繁に沢を歩いたわけではないが、ここぞという時には、一緒に歩いて来た。自分の中には、Nさんと歩いた記念すべき沢が幾つもある。考えてみれば、短い沢だが、今回もそのひとつなのかも知れないと思う。五月連休といえば、残雪の春山を登るか山スキーがふさわしい季節だが、二人とも五月連休は沢に触肢が向く極めてまれな人種だ。そうであるから、五月連休の遡行の思い出はNさんとのものが多い。今回も必然的に二人になった。そういうことなのだろう。
 Nさんは、今年はやる気充分らしい。それは彼の装備を見れば分かる。スリングは全てダイニーマでそろえ、30mロープ、ハーケンとハンマーは常備しているようだ。「やる気充分」の本当の理由をまだ聞いていないが、新しい仕事にも慣れ、自分の時間を取れるようになったことと関係があるのだろう。このギアが、この遡行で意外に役立つ事になろうとは、想像していなかった。

 ウェブ情報を調べてみると、そう難しそうではなく、ただ高巻きの技術は要求される。本棚沢は、そういう沢のようだった。ということは、大きな倒木のかかるF4までの高巻きの後は、主だった滝が終わり、消化試合のような気の抜けたコーラのようになるのかなと、何となく思っていた。だが、F4の先は、ウェブ情報で想像していた以上の楽しい遡行になった。小難しい6mF5、赤岩ノ滝5mF6の他にも、西丹沢的な華麗なナメと小滝の連続する退屈しない谷だったのである。前日歩いた鬼石沢も落ち着いた美しい渓だったが、それ以上の魅力にあふれる渓流だった。水も稜線直下の標高1050mまで流れており、これもまた想像していないことだったので、嬉しかった。谷の水というのは、わずかであっても流れていると心癒されるものだ。
 快適に登れる滝が、次々に現れる谷ももちろん好きだが、この本棚沢のようにナメと小滝で構成されるしっとりと落ち着いた谷も捨てがたい。こういう谷を毛嫌いする面々もあるようだが、私はこういう西丹沢的な、日本庭園的な渓谷も好きだ。もしかしたら、身体が思うようにならなくなったことと関係があるのかも知れない。ようやく、谷の本当の良さが分かる歳になった。そういうことなのだろうと思う。



対岸の唐棚にも水がある 本棚と同じぐらい大きい
西沢本棚 水量が多く圧倒される 写真に収まらない


本棚の高巻き
 西沢を遡ると巨大な滝に当たる。本棚だ。この滝は、丹沢の中でも一二を争う大きな滝ではないかと思う。少なくても、自分の経験では、これ以上大きな丹沢の滝を見たことがない。ガイドブックには70mとあるが、自分の見立てでは50mだ。下棚も見事だが、それ以上の景観だと思う。今日の水量はたぶん少なく無い方だろう。対岸の唐棚沢にも細い流れが落ちている。それにしても、この圧倒される滝を登攀する者があるのだから驚きだ。とても同じ人類とは思えない。技術というものは恐ろしいものだと思う。とうてい登れないと思える断崖を登り切ってしまうのだから。
 ところで我々は、高巻きだ。本棚を戻ると右岸に涸れ沢がある。この出合の右岸尾根に取り付いた。最初微かな踏み跡がある。この踏み跡を逃さず辿ると、始めは涸れ沢の左岸に沿っての登りとなり、本棚沢から離れる。間違えたかなと思う頃に本棚側に向きを変えジグザグに急登する。踏み跡は白ザレがのった急斜面なので要注意だが、際どいところは無い。ピンソールがあれば万全だろう。登り切った尾根は本棚沢の右岸尾根825m付近だ。下方には樹間にF1の落ち口が見える。すぐ下には、10mほどの滝が見える。この滝は、あとでF3であることが分かる。とても登れそうにないので上から見るだけにした。右岸の踏み跡をトラバースして10m滝の落ち口へ降りた。この落ち口は平らなナメだ。この下にも滝の落ち口が見えるので、この10m滝はF3だろうと判断した。
 ところで、ウェブ情報では、「高巻きの途中にF1の落ち口に降りられる」との情報があるので、今回利用した踏み跡の他にも、早めに本棚沢の右岸尾根に出る踏み跡があるものと思う。


本棚を戻って右岸に取り付き高巻きを始める 白ザレの下は深い谷 緊張する


F1を高巻きして辿り着いた本棚沢の右岸尾根に立って 10mぐらいのF3を見る 
F3の落ち口 この下にF2の落ち口が見える


F4の高巻き
 F4は、10mぐらいだろう。大きな倒木が落ち口にかかっている。やや暗い雰囲気の滝だ。スラブの立った滝で直登はできない。少し沢を戻った右岸枝尾根に木の根の伸びたところがある。ここから取り付き、小さく巻いてF4の落ち口に達することができる。難しいところは無い。



小滝とナメが始まる 岩苔の緑が映える
F4・10m 倒木がかかる とても登れないスラブ滝 右岸の枝尾根を上がり小さく巻いた


ナメ滝とナメが始まる
穏やかな渓相に新緑が似合う 魚影が素早く動くが小さい


沢床がスラブなので水は澄んでいる
新緑を仰ぎながら春の渓を歩いた

瞑想するNさん すっかりこの谷に魅せられている

あまりに西丹沢的な、日本的な情緒が溢れている




















大ナメ滝が現れた ここで滝を見ながらお昼にする 幸せな時間が流れる
大ナメ滝を登るNさん 自然に心が晴れる


またまたゆるやかなナメ滝 滑らないようにぐんぐん越えていく
このトイ状滝の上で920m二俣になる

倒木の滝 何年経っているのだろうか


F5の登攀
 F5は6mほどの本棚沢では小さな滝だ。下から見ると比較的簡単に越えられそうに見えたが、落ち口下でバランスを取りにくいところがある。岩はヌメヌメで滑り、ハンドホールドも決まらない。たわし持参の高橋が選手交代して、スタンスの苔落としに励んだが、なかなか身体を上げる踏ん切りが付かない。ハーケンがあればなーと思うと、
「そうだ今日はNさんが完全装備だった。」
 Nさんからハーケンを上げてもらい、ここはA0で身体を持ち上げた。落ち口は探ればホールドがあるので難しくはない。スリングは回収したがハーケンは残置したので、この滝は1ランク簡単になってしまった。



落ち口下のバランスが悪い 支点をつくり突破
6m滝F5 ちょっと立っているので作戦を

湧水ノ滝 F6・5m 周りの岩から水が湧き出している



















湧水の滝を登るNさん
湧水ノ滝 岩が赤い ヌメリがあるがホールドは豊富


大岩の下を流れる水 
湧水ノ滝の上の4m滝 雨が降ってきた


最後まで岩盤が続き退屈しない 1050m付近
3m滝 980m二俣の上 雨は降り止まない

詰め
 幾重にも沢が分岐しているので、地形図を見てもどれが本流か分かりにくい。980mの二俣で右へ入り、あとは水の多い方へ辿れば、畦ヶ丸から北東に600mの鞍部、標高1125mの稜線に出る。稜線直下まで細流を岩登りする楽しい詰めだ。1050mまでは水がある。


ガスの懸かる稜線に上がると標識がある
昨日立った畦ヶ丸の頂上は目指さず 善六ノタワへ下がる



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