小塚沢(仮称) 丹沢山塊中川川笹子沢
2014.04.05
高橋

キブシが特徴のある花を咲かせていた









遡行図



参考情報
なし

コースタイム
笹子橋−(50分)−小塚沢出合11:53−二俣12:12−F2上12:36−596mゴルジュ12:44〜13:52−同ゴルジュ上14:16−8m滝14:25〜45−705m二俣14:58−登山道15:44〜51−二本杉峠16:00−笹子橋16:40


ルート図



 西丹沢を流れる中川川は、途中に丹沢湖を抱える大きな河川である。この中川川の「川」の字が二つ続く河川名は、なにかしっくりこない。以前にもこんな感想を別のところで書いたことがある。現地の橋梁の表示を見ると、この中川川は、河内川(こうちがわ)と呼ばれているようである。いつもお世話になっている昭文社の『山と高原地図』には、中川川となっているが、国土地理院の地形図では、河内川と記されている。一説には、丹沢湖の上流を中川川、その下流を河内川と呼ぶという。また、中川川の方が古い呼称だとする説もあるようだが、これらの説の根拠は不明である。家にある昭和46年発行のアルペンガイド『丹沢』では、中川川の表記になっているので、中川川の方が古いという説は当たっているのかもしれない。現地の図書館へでも出掛けて丹念に調べれば、これらの経緯がわかるだろうと思うが、そこまでの使命感は持っていない。誰か分かる人がいたら、教えてもらえればありがたい。

 つまらない前置きが長くなってしまったが、今日は、小塚沢(仮称)を歩くことにした。とはいっても西丹沢の沢を良く歩く人でも、小塚沢と聞かれて分かる人はまずいないだろうと思う。この小塚沢は、中川川笹子沢の支流だ。遡行前に情報を求めてウェブを検索したが、この小塚沢の情報は皆無である。丹沢の仙人「マシラ」のサイトにもその情報はない。うーん、仙人でも歩かない沢だとすると、相当のドブ沢かもしれない。 笹子沢の情報は多い。これは、出版物の影響である。『関東周辺沢登りベスト50コース』や『丹沢の谷110ルート』に笹子沢左俣の遡行ガイドが掲載されている。ウェブの沢情報は、ガイドブックや山岳雑誌にルートガイドされたものが圧倒的に多い。道のない山谷を駆け巡るバリエーショルートの代表格といわれる沢登りでも、この事情は変わらないようだ。
 小塚沢は、笹子沢の標高500m付近で右岸から入る沢だ。いくつかのウェブ情報により、小塚沢と称されているので、小塚沢とした。「西丹沢頂稜河川土地名称図」にも記載がないので、仮称としておこう。もちろん、今評判の『西丹沢登山詳細図』にもない。
 今回の沢歩きで、この小塚沢の出合を間違えて、他の沢を歩いてしまった。
480m付近で右岸からナメ滝と6mほどの滝で笹子沢に入る沢である。雰囲気が良い沢なので、てっきりここが小塚沢だと思ってこの沢に入ってしまった。2時間ほど格闘の末に、間違えたことに気付いて、再び出合に戻って来た時には、お昼近かった。
 お昼ごはんをこの出合でゆっくり食べて、小塚沢に「再挑戦」することにした。だが時間がない。小塚沢は、上流に見える石積み堰堤を越えたその先にある。標高500mで右岸から出合う広い沢である。ただ、水が流れていないので冴えない沢だ。これでは、誰も歩かないのもうなずける。だれも遠くまで来てスカを引きたくないし。ただ、意外とこういう沢は当たりになる可能性がある。


標高500m小塚沢出合 水が流れていない 倒木も多く冴えない


 小塚沢を選んだのには理由がある。ルートガイドされている笹子沢左俣とほぼ同じ流程を持ち、集水面積もさほど変わらない。笹子沢左俣が、ガイドするに値する沢であるとするなら、小塚沢も同じような沢のはずである。世に知られていない沢を歩くことにこそ「冒険」と「発見」がある。少し嘘っぽいが、文字で表すと、こうなってしまう。だが、小塚沢がどんな沢か、現地を歩いて見る他、それを確かめる術はない。
 見栄えがしないとはいえ、せっかく来たのだし、涸れ沢の小塚沢を歩き始めることにしよう。
 しばらくは、倒木の多い誰も歩きたくならない涸れ沢だ。だが、案の定、
200mほど歩くと水流が現れた。倒木の多い広い河原をさらに歩いて行くと、550mで右俣に二段の滝が現れた。5m、12mぐらいだ。12m滝の手前の両岸は切り立っている。水は少ないが、堂々とした滝だ。
「うーん、これは来たかいがあったぞ。」
 5m滝を登るには水に濡れる。今の季節、ちょっとそれは遠慮したい。その上の12m滝はとても登れないし、二つとも巻くことにしよう。
 左俣は、広い河原がまだ続いている。この左俣の先がどうなっているのか知りたいが、また次の機会にしよう。



下段5m滝拡大 季節が良ければ、水流沿いが登れるだろう
小塚沢右俣に掛かる二段の滝 5m、12m

600mゴルジュ入り口 雪渓が見える 本流は右へ曲がる

ゴルジュは五段の小滝が続く 同左 3m滝


同左 ホールド細かく登れない
ゴルジュの出口6m滝 難しそう

ゴルジュ上から 左岩壁からの高巻きは難しく断念 右岸を巻いた



















 小塚沢右俣は、出合からは想像できないけっこう険しい沢だった。F1、F2は左のヒノキ林から高巻きできたが、二つ目のゴルジュは厳しかった。とはいえ、登攀技術のしっかりした人であれば、このゴルジュ出口の滝6mなどは、難しくはないのかもしれない。ここの高巻きを、左岸の岩壁から一時間以上もトライしたが突破できなかった。この岩の壁は簡単にも見えるが、岩が脆いところがあり怖い。あと一歩のところでどうしても踏み出す勇気が持てず撤退した。だが、この撤退は結果オーライだった。
 左岸の壁と同じ左岸の枝尾根の高巻きに長い時間トライした末に、ルートを右岸に変えた。この右岸の高巻き途中から左岸の壁と枝尾根を見て、この高巻きがかなり険しいことを悟った。落ち口へ向かうバンドが満足に無く、急斜面がかなり上まで続いていたのである。追い詰められた末に選択した右岸の高巻きは、ドライバーの助けを借りて、ブッシュをつないでいけば登れる。落ち口への降下も難しくはない。幸運だった。
 625mで右にルンゼを見ると、本流は息苦しくなるような狭隘部になる。両岸の幅は一人分の寸法しか無い。だが、水量が僅かなので簡単に越えることができる。。この狭隘部を曲がった先にある8mの滝は、水がほとんどないが、苔が付いていないところを見れば、降水のたびに水は落ちるのだろう。この滝もテカテカしていて自分が登れるとはとても思えない。技術がしっかりした人であれば、トライするのだろうとは思う。この8m滝は、左にある岩溝を落ち葉を払いながらホールドを探し、少しずつ身体を持ち上げていく。何しろ足元不安定で、高度感もあるので緊張する。この緊張感は、シーズン初めのせいかそれとも歳のせいか。こんな沢でこの緊張感は困るな―と思うが、それが現実なので仕方がない。
 この緊張感は、あと一度だけ味わわなければならなかった。標高700mの二俣を左に入ってから登山道を目指す詰めがある。この詰めがいけなかった。沢は大ガレの急斜面になり沢通しでは上がれない。750m辺りでうまい具合に左の尾根に上がれたが、その先を一箇所だけ這いつくばって上がった。人ひとりだけ乗せればいっぱいの急な痩せ尾根を文字通り這いながら通過した。あー怖かった。こういう詰めも久々で、すっかり喉が乾いてしまった。だが、これは技術不足の自分が緊張したというに過ぎない。このぐらいの緊張感は、まだ初級のうちだろうと思う。この詰めは、少し早めに左手に見えるヒノキ林に上がった方が良いのかも知れない。と書いて、誰がこの沢を登るのだろうか思い、そんな心配は無用だと分かる。



スラブの小滝 この上が狭隘部
左へ折れると狭隘部 ひと一人が通れる隙間がある


右岸の岩溝を上がり高巻いた 上から
8m滝 ほとんど水が流れていない

スラブの小滝


700m二俣の上は雪渓が連なる
700m二俣手前 源頭の雰囲気

標高760m付近で右岸枝尾根に取り付く



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