金冠山 伊豆稜線歩道
2014.02.23

高橋



達磨山レストハウスの駐車場 伊豆の山なのに驚くほどの雪がある


 風のない穏やかな日だった。だが、今年の伊豆の景色はいつもと少し違う。いつもなら、春の便りを伝える時季だが、達磨山レストハウスは、除雪した雪の山で埋まっていた。もちろん、こんな景色を今まで見たことはない。この二週間で二度の大雪が降った。道端によけられた雪は1mほどあるだろう。雲はあるが幸い天気が良い。レストハウスの後ろから、富士山と駿河湾が一望できる。


コースタイム
達磨山レストハウス9:53−金冠山11:00−道路11:52〜12:15−700m地点12:42〜53−戸田峠13:20−達磨山レストハウス13:55

概念図



ルート図




 金冠山へ向かう稜線歩道の雪は、よく締まっている。踏み抜かずに歩くことができた。すでに、いくつも踏み跡がある。スノーシューの痕もある。大雪の後、この辺りの雪を見越して歩きに来たのだろう。同じことを考える者は居るものだ。枯れ枝を折って雪に突き刺してみると50cmはあった。とすれば7080cmは降ったのだろう。
 幅広の稜線歩道をゆっくりと登ると、やがて金冠山が見えてくる。頂上付近に、ちょっと無粋なアンテナが見える。一度緩やかに下ってから急な登りになる。南斜面になるので雪がゆるむ。足で踏む雪の感触は久々のものだ。締まった雪が少し沈み、靴の裏がわずかに滑る。少年の頃、春の雪道を歩いた時の感触だ。なぜこんな感触をいつまでも覚えているのだろう。不思議な気がする。

道路の雪はこんな感じ 車も少ない 達磨山へ続く伊豆稜線歩道を上がる トレースがある


金冠山が見えてきた 無粋にもアンテナが有る 
金冠山の下まで稜線歩道はこんなに広い 雪が固い


レストハウス/金冠山/達磨山の分岐
スキー場のゲレンデのように稜線歩道は続く

金冠山への急な登りを休みながら登る


 幸い金冠山の頂は静かだった。思いのほか風も強くなかった。西には戸田港の全容と静かな太平洋が、南には雪をかぶった小達磨山が見える。登山道が白い筋になって浮き出ている。北東には駿河湾が箱庭のように一望できる。沼津アルプスの山々や箱根の山並みも、そして沼津市街も手に取るように見える。さらに北には、雲を引いた愛鷹連峰、その上には富士山が顔を覗かせている。金冠山の展望はいつもの通り素晴らしかった。



金冠山の静かな頂上 岩があり独特の雰囲気がある
太平洋が広がる 下に見えるのは戸田港

駿河湾と沼津アルプスが手に取るように見える

右手は沼津市街 左手に富士山が雲の上から覗いている 手前は愛鷹連峰






















 金冠山の頂上から北へ降りる登山道がある。丈の低い笹原に登山道が伸びている。大雪のあとは誰も歩いていないようだ。小さな動物の足跡だけが続いている。誰も歩いていない雪原を歩くと、何故か心が明るくなるから不思議だ。平らな雪原を過ぎると下りになり、やがて真城(さなぎ)峠への道を左に分ける。ここからは、地形図には無い長い下りになる。「沼津市民の森」への道だ。この辺りの登山道は、太い馬酔木(アセビ)のトンネルになっている。垂れ下がる花の蕾はこの雪で縮んでしまったように見える。



この先で、アセビのトンネルになる 
金冠山の北 低い笹原に一本の雪道が続いている


春になれば一斉に小さな花が咲く
馬酔木(アセビ)のトンネルどれも太い幹を持つ

時々標識が現れる


 あまり歩く者も無いのだろう。登山道には目印がない。雪道を歩くには厄介である。時々ルートを探すのに苦労した。高度を下げるに従って足元の雪がゆるみ、踏み抜くようになる。と、思いがけなく左手下の樹間に立派な道路が見える。道路は右手にあるはずと思っていたのであわてた。今どこを歩いているのだろう。地形図を見ても整理できなかった。だが、左とはいえ広い道路だ、戸田峠につながっているだろう。少し迷ったが、急な斜面を漕いで道路へ降りた。これが間違いだった。樹間の雪はゆるく、膝まで雪に入った。ようやく道路に出たが、道は深い雪がおおっていた(A地点、あとで判明)。黒々とアスファルトの帯が見えたのは、どうやら道路の側壁だったようだ。道には人の歩いた跡が一筋続いている。
 ここで、方角を失った。この道路を峠へ戻るとすれば、左手へ歩くはずだ。そう思って、左へ歩いた。しばらく歩いて、曲折の多い道路を地形図と見比べたが、現在地がよく分からない。樹間から駿河湾が見えた。「あれ。淡島がこんなに大きく見える。」ということは、沼津寄りに降りているということだ。このままでは海へ降りてしまう。この立派な道は、地図にもない新しい道なのだろうか。とすれば、地形図も役に立たない。しばらく考えた末に、来た道を戻ることにした。このままでは、雪の原をウロウロするばかりだ。だが、あの雪の急斜面を登ることができるだろうか。金冠山へ上がるには、かなりの時間がかかるだろう。だが、道を失ったからには、戻るしか無い。
 道迷いの経験は数回ある。ちょっとしたことから道を失い始め、それが新たな迷いを産み、ついにはどうしたら良いか分からなくなる。脳が混乱する。タガが緩み始めるとあっという間に全てのタガが外れ、収拾がつかなくなる。戻れる場合は良い。戻る記憶をも失った場合には、全てが失われてしまう。そんな感じだ。

急な斜面を降りて広い道路へ降りた(A地点) 現在地は不明 左へ下がっていくが方向が分からない 雪が深い 迷う


 戻ると決めてから、道路へ降り立った位置(A地点)へ戻るのはそう時間がかからなかった。長い時間迷った気がしたが、それはわずかだった。このままこの広い道を辿れば、峠へ出るのではないか、そう思った。そういえば、道路はずっと登っているではないか。最初に歩いた方角へは道路が下っている。なぜそこに気づかなかったのだろうか。峠は高い方にあるに決まっている。道路を反対側に下がってしまったのだろう。とすれば、現在地はここだ。地形図で仮の現在地を指すことができる。このままこの広い道路を歩けば、道路は支尾根を反対側に越えて、そこで登山道と交わるはずだ。そこで現在地が確認できれば、さっき苦労して降りたこの急斜面を戻る必要もない。
 この後の展開は、自分の思っていたようになった。道路が右へカーブして支尾根を跨ぐ所に登山道の標識があった。安堵した。地形図に現在地の点が打たれ、自分が今どこに居るか、脳内にリセットされた。このまま雪の積もった広い道路を歩けば戸田峠へ出るだろう。峠の前でトンネルを二つくぐるはずだ。その先は、除雪した幹線道路になるだろう。そこから出発地点まではわずかだ。


A地点へ戻る ピンとくるものが有って反対方向へ歩く


このだだっ広い場所でゆっくりお昼にする
トンネルを二つくぐると峠はすぐだ


戸田峠に着いた ここも除雪の雪がいっぱい きれいに除雪された道路 ありがたい

天気が良くなってきたので林の中を歩きながら帰る 雪が深くて苦労する



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