朝日山〜ナコウ山〜離山  伊豆
2014.02.01

高橋



参考情報
 山と高原地図30 伊豆 天城山  2010年版

コースタイム
網代駅9:40〜新網代トンネル10:00〜朝日山10:27〜大島茶屋跡12:19〜ナコウ山12:4613:10〜離山14:05〜宇佐美漁港14:43〜宇佐美駅15:05


日の当たる登山道に「冬いちご」  離山の下山で山葡萄に似たつるにイチゴがなっていた。前週の城山でも道端にあって気になっていた。


 先週、城山へ行った時、登山道沿いに野イチゴに似た植物を見つけた。赤い実を付けている。初めて目にしたものだった。つるが伸びているので、木苺ではない。つるから大きめの丸い葉を伸ばしている。葉の付け根のつるに、木苺のような実を付けている。葉は山葡萄のようでイチゴの葉とは少し違う。
 今日また同じ「イチゴ」を見つけた。どう見てもイチゴなので、その名をネットで調べた。ネット検索は、こういう時に便利だ。「イチゴ、ツル」など、蔓(ツル)という語にこだわって検索すると、なかなかそれらしい写真と名前が出てこなかった。キーワードを工夫して検索するうちに、ようやく「冬いちご」の名に行き当たった。冬に実を付けるので「寒いちご」とも呼ばれるらしい。冬の登山道、木漏れ日の下に赤い実を付けるいちごの名にふさわしいと思った。
 「深山冬いちご」という種類もあるというので紛らわしい。「深山冬いちご」は葉先が尖っている、とある。今日見たいちごは、葉の先が丸いので「冬いちご」としておこう。


概念図






 3月末のような陽気だった。歩くうちに汗をかき上着を脱いだ。左手のヤブの向こうから始終漁船の低いエンジン音が聞こえてくる。最初はこの音が気になったが、歩くうちにこの音も照葉樹林の景色に溶けこむようになった。
 伊豆、網代(あじろ)の近くに朝日山、となり町の宇佐美の近くに離山(はなれやま)がある。その中間にナコウ山があり、この山々をつなぐ稜線が歩けるようだ。近くに歩けるところがないか調べているうちに、山と高原地図30で探し当てた。冬季のトレーニングと割り切れば別だが、このコースは、あまりひとにお勧めできない。人の手が加えられ過ぎている。特に朝日山から大島茶屋跡の間は、質の悪い別荘が開発されて、細い舗道が入り組んでいる。体内磁石がしっかり備わっている人でないと、地図と磁石を駆使しても、つい迷宮のオリエンテーリングに入り込んでしまうことになるだろう。別荘地の通過に問題がある。
 海岸沿いの稜線歩きなので、海の眺望は素晴らしいかも知れない。この予測も裏切られた。というか、当然登山道は、樹間を縫って続いているので、標高が高いとはいえ、照葉樹林のヤブに邪魔されてあまり展望がきかない。朝日山、ナコウ山、離山のピークも同様だ。ただ、スポット的に眺望がきく箇所はあるので、そういう楽しみが無いわけではない。



網代(あじろ)漁港の漁船を見ることから始まる 対岸に見える街が熱海
新網代トンネルの手前から歩道橋を渡り、急坂を登る。

朝日山の頂上から海を望む 静かな暖かい海だ 対岸は熱海
朝日山公園に咲いていた梅 帰りには電車の車窓から網代駅近くに早咲きの桜の開花を見た 静岡県東部でも、この辺りは格別に暖かいようだ

朝日山公園から舗道を歩く 途中石切
り場跡を過ぎる
 日差しがあり暖かい
稜線付近にある別荘地 舗道が入り組んでい
る 注意していても、ついルートを外してしまう


 沖合にある初島(はつしま)はどの地点からも遠望できる。だが、初島には要塞のような大きなホテル?が立ち、島自体が人工の島と化している。伊豆にしても初島にしても元々自然の美しさが特徴だったはずなのに、近視眼的な商業主義と結びついて、元々の価値をすっかり失ってしまった、というのが現在の姿ではないかと思う。山も海も自然が自分たちの生きる上での大切な財産であったはずなのに、その財産の根元を崩してしまったのだと思う。40年前にはあんなに盛んだった伊豆の観光も、今では往年の姿が見られないのは、そういう深い根があるような気がしてならない。
 山や陸は、取り返しの付かないほどに人工物で占められてしまったが、海はなお昔の価値が残されている。この伊豆にとって、海が最後の砦になると思うがどうだろうか。もっとも、このような悪しき商業主義に結びついた事例は、ここ伊豆に限ったことではないだろう。近年では、世界遺産に登録された富士山にも同じウィルスが感染し始めている。
 少し脱線してしまった。今度歩いたコースで伊豆の自然の姿を見たいならば、大島茶屋跡からナコウ山、離山のルートを歩くことだろう。このルートには、ほとんど人の手が加えられていない。この地域には、江戸城を築いた大量の石を切り出したと言われる石切り場がいくつか見られる。だが、それはすでに再び自然の姿に戻っている。ナコウ山のすぐ下に広場がある。ここは、石切場跡だ。ナコウ山には、石切り場の石工が相模湾を望むこの頂に上がって「仕事の辛さから故郷を偲んで泣いた」、との由来がある。土木を仕事とする男達が泣いたとすれば、石切りがどんなに過酷な仕事だったのか想像がつくというものだ。


大島茶屋跡はすぐ(右手) 旧街道はナコウ山へ続く 今日のコースは、旧街道を歩くらしい 現地で初めて知る 旧街道だけあって道幅もある

ナコウ山への分岐 ここからナコウ山の山道へ入る こんな照葉樹林が続く 下草は生えていない




ナコウ山の頂上 方位盤と三角点がある 時間も1時近くになったのでお昼にした この先すぐに石切場跡がある
ナコウ山の先の石切場跡から宇佐美の街を望む 暖かいせいだろう 霞んでいる


 ナコウ山から離山に向かう稜線に、321mのピークがある。このピークの近くに分岐がある。右手が宇佐美駅方面、左手が離山方面である。ここは、左へ入り稜線をそのまま歩く。この分岐から5分ほど踏み跡を歩いた時、山道の上にクマの糞を見つけた。幾つも糞が重ねられてあったので、クマの糞場だろうと思う。その先の樹木には、クマのものと思しき古い爪痕が見られたので、熊の生息地と判断したがどうだろうか。伊豆半島ではクマが絶滅したと云うのが定説だがクマ情報は無いのだろうか。2011年の暮に、湯河原の大観山近くでクマの目撃情報があったというので、宇佐美の山中にクマがいたとしても不思議はないと思うが・・・・。

初島が見える 大きな建造物があるので軍艦に見える 321mピーク付近の分岐 左手離山方面 右手白浜台別荘地


離山方面へ歩く ゆるやかな下りが続く
この辺りに熊の糞があった
照葉樹林は下草が生えていない 見通しが良い


赤い実のなる低木が時々現れる ヤブコウジ? 
シダに被われた登山道もある


 なだらかな尾根を下るとやがて転げそうな坂道になる。足元が滑りそうなところには、ロープが張ってある。地形図を見ると100mを一気に下る。傾斜がゆるやかになると、左手が海岸まで落ちる断崖になる。樹間に波打つ海が見える。木々がなければ素晴らしい展望なのだろう。離山手前の鞍部には右手に下がる道がある。これが下山道なのだろう。孟宗竹の竹林になった急坂に重い足をあげれば、ようやく離山の頂上になる。とはいっても、頂上はいまひとつはっきりしない。踏み跡が続く先の「展望台」からは軍艦のような初島が見える。その他は碧い海原が見えるばかりである。



離山手前の登り 鞍部を登り返す所に竹ヤブが
離山頂上付近 頂上ははっきりしない 展望台も海は見えるが見晴らしは良くない

離山頂上付近の石切場跡 広場になっている

 竹林を戻って鞍部から西へ下がると、日の差す道端に冬いちごが実を付けていた。木苺のような実だ。葉は、山葡萄に似ている。道を間違えたのだろうか。ほとんど人の歩いた形跡のない荒れた道になる。夏みかんの実る家並みが現れた。猫が多い。漁のおこぼれにあずかるのだろう。どの猫も毛並みが美しい。やがて家並みの先に眩しい海が開ける。
 海岸をゆっくりと駅まで歩く。全く風がない。暖かな日だ。振り返ると海岸線の向こうに、先ほど登った離山が寝そべっていた。



下りの道端に冬いちごが実を付けていた
のどかな家並に挟まれた細い道を下ると海が開ける 猫がたくさんいた


離山 右手に宇佐美漁港がある
早くも西に傾いた日 風のない穏やかな海だった 今日のトレも終り



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