2014.01.22 愛する小道具たち9 銀マット、鍵、ドライバー


写真を撮るまでもない、ごく普通の銀マット 大きい物は地面に、小さいものはその上に重ねる

銀マット
 様々なマットが市販されているが、銀マット以外使ったことがない。たぶん、雪山をやらないので、その必要性を感じないのだろう。沢を歩くスリーシーズンであれば、「マットが無いせいで地面から体温が奪われる」、ということもない。地面や河原の凹凸を緩和するという点では、しっかりしたマットに分があるだろう。だが、沢歩きの1、2泊の泊まりを、どこまで快適にするかという問題だろうと思う。大きめの薄い銀マットを地面に敷いて、その上にもう一枚、上半身を載せる小さい銀マットで寝る。これで不自由だと思ったことがない。
 銀マットがいつ頃から使われ始めたのか良く分からないが、もう10年も同じものを使っている。この銀マットは素晴らしい発明だと思う。何より軽い。そして安い。水を吸わない。さらに、銀マットの上に寝ると自分の体温を反射して本当に温かい。20代で山を歩いていた頃は、布製のグランドシートを敷いてその上に直にシュラフを広げて寝ていたと思う。それに比べれば、銀マットの上に寝るのは、もう天国のようなものだ。
 たいがいのマットは、重くてかさばる。それを持って山へ入るということは、それなりの利点があるのだろう。それを使った者は、その快適さを手放せなくなる、ということも容易に想像できる。沢歩きの小道具は、持てばそれだけの快適さを得ることができるだろうとは思う。だが、時には、道具を持たないことが意味を持つ。
 マットに関しては、よほどの発明品でも出てこない限り、今までの銀マットを変える気持ちは無い。





鍵 身軽に行動するために便利な小道具


 沢歩きに「鍵」というのは、どうもピンと来ない。何に使うのだろう、という疑問がすぐ湧くと思う。渓を歩くのに鍵はいらない。この鍵は、沢へ向かう「移動」の時に使う。無ければ無くてもなんとかなるのだが、持っていれば確実に動きが自由になる。しかも、重いものではない。
 地方に住んでいるせいか、南東北や関東の沢登りの現地へ向かう時は、電車を使うことが多い。場合によっては、現地に近い駅の近くに前泊ということも珍しくない。軽量化をはかっても、1、2泊のザックは10kgを越えることになる。これを担いで混みあう電車に乗るのはなかなか勇気がいる。ラッシュは避けて東京周辺を通過したいといつも思う。電車で移動する時に乗り換えは付きものだ。乗り換える時にトイレへ行ったり、買い物をするという時もある。初日の昼の弁当はコンビニのおにぎりにするので、たいがいは駅中のコンビニで探すことになる。だが、朝の混雑する小さなコンビニで10kgのザックを担いでウロウロするのは、人の邪魔になって気が引ける。以前、高崎駅で常備薬を忘れてきたのに気が付いて、街の中で薬局を探したことがあった。こういう時に、荷物を担いで歩くのは身が重く大変だ。
 この鍵は、そういう時に使う。駅前の邪魔にならないスペースにザックを置いて、近くの構造物とザックをワイヤーで結び付け、鍵をかける。「置き引き」を防ぐためだ。こうすれば、いっぺんに身軽になり、様々な用事を早く済ますことができる。10kgの荷物を盗みとって逃げるのは、相当の体力が必要なのでそう簡単ではないだろうとは思う。だが、旅の途中で荷物を奪われてしまっては、沢登りもできないことになり、現地で待っているメンバーに申し訳が立たない。そんな心配をせずに、安心して用事を済ますために、この鍵は有り難い。
 新幹線には大きな荷物を置くスペースのある車両がある。ここでもこの鍵は重宝する。駅に泊まるたびに、荷物が持ち出されるのを心配する必要がいらなくなる。沢登りに疲れた身体には、うとうとする時間がほしい。




何の変哲もないドライバーだが 使いようによっては役に立つ 時々紛失してしまうが、これは5年は使っている
















ドライバー
 高巻きや詰めで、急なザレや泥壁を登る時に便利だ。ちょっと難しいザレや泥壁で余裕のある登りができる。沢を歩き始めた頃、丹沢の源次郎沢かどこかで沢通しに詰めた時に、赤土の壁で苦労した。赤土は滑りやすく足元も固めにくい。こういう時は、アイスハンマーを使うことになるのだろうが、ハンマーは重いので持たないことが多い。何か役に立つものはないかと思い、ドライバーに行き着いた。ドライバーは軽くて良い。
 
西丹沢・弥七沢の詰めでも苦労したことがある。詰めでルートを誤ったと思われた。難しそうな斜面だったが、リーダーが突っ込んだので後続はそれに従った。ザレっぽい岩まじりの急斜面で足元が崩れやすい。少し記憶が消えかかっているが、かなり難しかったとを記憶している。
5人ほどのメンバーが、ザレを落としながらわらわらと登った。誰も落っこちなくて良かったと思った。この時にも、ドライバーに助けられた。

 ドライバーは、おもいっきりザレや土に刺して使う。微妙な所でバランスを取りたい時には重宝する。今使っているドライバーは、刺し込める長さが15cmだ。これだけの長さがあれば、足を滑らしても身体を支えることができる。ドライバーを差し込めば、泥下の岩の状況も分かるので、泥が薄いような場合は注意できる。草付きでも泥の深さを掴むのに役に立つ。ドライバーがなければ、指を差し込んで対処することになるだろうが、普段の生活で、指先など鍛えていないので、それもちょっとつらい。
 ドライバーを持つ場合は、腰に収めるホルダーを付ければ使いやすい。日曜大工センターへ行けば適当なものがあるだろう。

 自らの工夫と想像力によって、難局をくぐり抜けることに沢登りの本質がある。とすれば、そこで使われる小道具にも様々な工夫と創意があるはずだ。瀬畑雄三翁の沢道具を見たことがある。我々のものとは、明らかに異なった世界が、そこには見られるのだった。「持たないことの決断」というようなものが、そこにはあった。




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