2014.01.09 愛する小道具たち6 ガイドブックとweb情報


 沢のガイドブックにはずいぶんお世話になってきた。特に『丹沢の谷110ルート』は繰り返し読んだ。市販されている沢のガイドブックは、もともと数が少ない。そして、たいがいは、首都圏周辺の沢を対象にしているので、いつも同じような沢が選ばれてきた。これらの沢を選択して遡行する限りにおいては、沢の遡行も日本百名山を制覇しようという思考と、大差なかったように思う。
 市販されてきた沢のガイドブックは、たいがい同じパターンで編集されている。遡行図と遡行ガイドの大略が載せられている。ひとつの沢に割かれるスペースも少なく、解説も大雑把だ。それに比べ、webの沢情報は、玉石混交ではあるが量と質ともガイドブックのそれをしのぐ。対価を払う必要もない。webで得られる沢情報の特徴は、写真が多く遡行の解説も丁寧にされていることである。これは、情報が掲載されるスペースの違いによるものだろう。なかでも、写真の掲載量はガイドブックとは比べものにならないほど多い。活字でどんなに詳しく谷の説明をされても、写真の力にはかなわない。今では、webに掲載されたカラー写真を見て谷への思いが駆り立てられ、「その沢を歩いてみたい」と思うことが多い。


ガイドブックと日本登山大系(第9巻南アルプス)

















 今まで、遡行したい沢の選定にガイドブックは大きな影響を与えてきた。だが、webで多くの沢情報を交換できるようになった現在、その役割を終えようとしているようにもみえる。webの人気サイト「その空の下で。。。」で、ヒロタさんが「もう沢登りのコースガイド本は出版されない???」と疑問を発しているのも、webで良質な情報が集められることを念頭に置いている。ガイドブックは、我々の貴重な「遺産」になろうとしているのだろうか。
 webで良質な情報が得られるということは、情報の発信をしている者が居るということだ。2千万人とも言われる登山人口からすれば、沢の遡行をする者は微々たるものだと思う。沢の愛好家は、1万人そこそこだと思うがどうだろうか。誰か正確な統計を持っている人があれば、教えてもらいたいものだ。その数少ない遡行者やグループが、webサイトを介して遡行の情報を精力的に発信している。これは、「斜陽」の沢登りのひとつの希望である。
 現在考えられる最良のガイドブックは『日本登山大系』(全10巻)だろう。1970年代に踏破されたおびただしい沢の記録とガイドがそこにある。『大系』は、歩くに値する沢を選定するのに最も適した資料であると思う。その名が示すように、山岳地別に遡行の記録が体系的に示されている。ただ、『大系』は、簡単なガイドと遡行図が示されているに過ぎないので、沢の情報を詳しく知ることは難しい。この『大系』の欠点を埋めるのは、webの沢情報である。
 上級の沢や一部の難しい沢を除けば、『大系』に掲載された沢をwebで検索するのはそう難しくない。『大系』では得られなかった貴重な情報が得られるはずだ。得られた情報を元に遡行した者の中から、更に新たな情報発信がされるだろう。情報は情報を産み、円環を描いて増殖するのではないか。いま、『大系』の時代の「熱い情熱」が、webによって書き直される時代がやってきた。
 図書館の開架書棚から陽の当たらない書庫に仕舞われた『日本登山大系』が、再び陽の目をみる時代がやってきたのだと思う。




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