2014.01.03 愛する小道具たち4 メモ付き地形図 


割引沢三嵓沢のメモ付き地形図(メモは手書きで充分だろう)



 アプローチを辿りいよいよ入渓点から遡行を始めると、からだ全体が興奮し始めるのが分かる。やがてこの興奮も徐々に鎮まり、次第に沢を冷静に観察するようになる。ただ、この冷静さは、いわゆる日常生活でのそれとは異なり、どこかハイの状態で留まっているようなのである。この傾向は、グループで歩くよりも、独りで歩くほうが強いようだ。
 独りで遡行を始めると、まず休憩することがない。沢の分岐、昼食の時間、稜線への到着など、およそ身体を休めたくなるきっかけがあっても、ひたすら前へ歩こう、登ろうとする観念に囚われている。これは、沢を楽しんで歩くことのできない初心者的な行動と見ることもできる。だが、自分としては、「単独であっても十分にゆっくりと沢を楽しむことができる」と自己判断するようになってからも、こういう感覚はいつまでも残っている。
 そんな訳だから、沢を歩いている時の様々な判断は、自分が思っているほどには、信頼が置けないと感じている。地形図の標高を読み間違えたり、二俣の位置を取り違えたりは、いつも起こりえるように思えるのだ。いつもこの急かされているような気持ちが、ついつい判断を誤ってしまう。この過ちの可能性を減じるのは、メモを付けた地形図であると考えている。
 2.5万分の1の地形図をそのまま何の工夫もなく持ち歩いて、時々に現在地を確認して遡行を続ける諸先輩の姿を見ると、よほどの練達者に見える。ただ、その先輩が、少しでも現在地を取り違えたりすると、よほどの粗忽者に見えてしまうということもある。どちらにしても、自分にはできない芸当である。とくに独りで歩く時にはそうだ。冷静な判断ができない自分というものがある。そのためには、工夫が必要だと思う。
 まわりくどい前置きだったが、かならずしも冷静に判断しているとは思えない自分の場合には、遡行の最も重要な道具、地形図には、判断を助けるための工夫が必要だということだ。
1)二俣の位置を取り違えないために、小さな窪にも水線を引く。
2)終了点の近辺では、沢の分岐が多いので細かい窪も水線として書き出す。
3)遡行予定の水線には、標高を書き入れる。
4)明らかな二俣には◯を記入する。二俣には標高を入れておくと分かりやすい。
5)終了点や尾根越え、大高巻きなど、進路の判断が難しい箇所は拡大表示する。
6)ウェブの遡行情報から、通過の難しそうな滝やゴルジュの位置をメモする。

 遡行に興奮した自分の頭脳が、間違いを犯しにくい地形図を持ち歩くことが重要だと思う。この面倒な地形図の作成の過程で、遡行のルートを自分の頭に記憶させることもできる。まだ冷静な計画時点で、自分の欠点をできるだけ回避しておこうという作戦である。
 遡行終了点付近は、細かい窪が多数分岐するものである。この辺りは、どこから稜線へ上がっても大差ない場合が多いが、事前に計画した通りのルートを踏破した時の喜びは、また格別のものがある。
 高度計は、地形図と組み合わせれば、遡行時の現在地を知る最も有効な道具である。だが、高度計は遡行している間に、20mや30mの誤差は容易に出るので、その数値をそのまま信用してはいけない。現在地の特定は、いくつかの要素を組み合わせて判断するのが基本だろう。


遡行終了点の拡大図





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