2013.12.12 元旦号


 地方の小さな小さな新聞社に電話した。元旦号の原稿依頼が無かったためである。
 この小さな新聞社の元旦号に30年近く作品を寄せてきた。元旦号に、毎年「新春に歌う」という紙面が企画される。その一隅の「詩の欄」に拙作が掲載されてきた。芹沢さん、滝さん、北沢さん、そして私、みんな若い時に切磋琢磨した仲間が常連だ。正月にこの地方紙の元旦号を見て、今は会うことのない互いの無事を確かめる。そんな役割の紙面でもあった。
 毎年11月になるとその原稿依頼が届く。毎年、元旦号を飾るはずの原稿作りで12月初めは忙しかった。だがどうしたことか、今年は少しの音沙汰もないのだった。手慰みの作品とはいえ、作品を成すにはそれなりの時間がかかる。新聞社に電話をして、原稿依頼の確認をした。今年は、事情により「詩の欄」を廃止するという。丁寧な対応を受けて電話を切った。
 芹沢さんの病状が悪く、作品を書ける状態ではないらしい。彼女が「詩の欄」を仕切ってきたので、やむを得ないと思った。だが、これで一区切り付いたという安堵が支配した。いつか区切りをつけなければならない、そう思ってきたからである。人のつながりや義理で書いてきた面もある。いつか断りを入れようと思いながら、今日まで延びてしまった。詩という「青年の文学」は、琢磨しなくなった者が書くべきではない、というのが若い時の自分の思いだったからでもある。
 とはいえ、在ったものが無くなるというのも寂しいものだ。これで、元旦号の紙面で、かつての仲間の作品を読むこともできなくなった。30年も続いた企画が突然無くなるとは思っていなかったので、新聞社に電話する時には原稿をすでに仕上げていた。どこへも行きようのない作品が手元に取り残されたことになる。すべてのものは移ろい流れてゆく。改めてそう感じた感慨深い一日であった。



   無縁のもの
            川崎英穂


  山に分け入ると
  隔絶した世界がある
  岩は岩のままで座り
  水は水のままで滑る
  我々の営みとは無縁に
  無縁のものは日に日に
  無言でその営みを続けるばかり
  葉は茂り水は温み
  寒風に黄葉を水に流す
  獣は草を喰みときに鳴く
  我々はその川下で育ち
  水を盗ったり
  発電機を回したりする

                     (原文は縦書き)



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