源太ワナバ沢本流 丹沢山塊中川川用木沢
2013.10.27

高橋

獣に食べられている赤い実 何という樹なのか








遡行図  




参考情報
源太ワナバ沢」の沢名は、「AYコーナー山ブログ」手沢の項を参考にしました。この沢名を「一ノ沢」とする情報もあり、混乱しています。


コースタイム
用木沢出合8:40−源太ワナバ沢出合8:56−870m三俣11:05〜13−1080m二俣12:10〜22−稜線登山道13:01〜犬越路避難小屋13:34〜47−用木沢出合14:37


ルート図



プロローグ
 西丹沢、中川川が上流で白石沢と名を変える辺りで、左岸から用木沢が出合う。用木沢は犬越路(いぬこえじ)辺りの雨水を集める大流である。残念ながら、堰堤が多いため沢歩きには適さない。登山道から用木沢の音を聞き、その流れを見るにつけ、堰堤が作られる前のその姿はどんなにか美しかっただろうと思う。堰堤に寸断されたその渓を見るのは、何か残酷なものを見ているような気がする。

 きょうは、この用木沢の右岸支流、源太ワナバ沢を歩くことにした。ワナバは罠場なのだろう。なにかロマンを感じる沢の名である。罠とは、何を獲るための仕掛けなのだろう。歩いてみると解るが、源太ワナバ沢はとても魚釣りに適しているとは思えない。淵も釜も殆ど無いからである。とすれば、山椒魚だろうか。峠・犬越路の反対側の神ノ川では、山椒魚をとって生業にしたとの記録がある。
 西丹沢自然教室を過ぎ、舗道をそのまま北上するとゲートがある。この手前が用木沢出合である。ここには、5〜6台の車が停められる。ゲートを越えて北へ歩けば、白石峠を経て加入道山、大室山へ至る。東へ足を伸ばせば、峠・犬越路を経て大室山へ至る。峠の向こうへ下れば、神ノ川ヒュッテとなり神ノ川が流れている。三年前の五月の連休に、Nさんとヒュッテの前にテントを張り、矢駄沢とエビラ沢を歩いたことを思い出す。

 この10月27、28日は、もともとYaさん企画の日光柳沢の遡行に参加する予定だったが、台風のお陰で中止になった。日光に予約した宿もキャンセルして、気の抜けたような日を送っていたら、どうやら27日は台風一過で晴れるようだった。そこで、首都圏のNさんに急遽都合を聞いたら、けっきょく波長が合わず見送りとなった。中央線の滝子沢を登る予定だった。
 それではと、得意の西丹沢を物色して、用木沢のひとつ上流の「手沢」を単独で歩こうとした。だが、この沢は標高差930m、水平距離3kmで、丹沢にしてはなかなか「長大な」沢である。歳のせいかリハビリのせいか、最近はちょっと楽そうな沢を選ぶ傾向にある。あっさり手沢を歩くのをやめて、手頃な?源太ワナバ沢を歩くことにしたのだった。

用木沢に懸かる登山道専用の立派な橋
用木沢の清流 水が多い


用木沢 水量が多い
手積み堰堤を流れる用木沢


左俣と本流
 ところで、源太ワナバ沢といえば、webのどの記録を見ても、870mの三俣で左へ入り、左俣を歩くワンパターンが繰り返されている。どうしてなのだろう。地形図を開けば、源太ワナバ沢の本流は、集水面積の大きい右俣であることが分かる。なぜ本流を歩かずに、左俣を歩くのだろうか。源太ワナバ沢は、「丹沢の谷110ルート」にも掲載されていないマイナーなルートである。本流の情報が無いとすれば、本流を歩いてみるのも面白いだろう。という訳で、今回は本流を歩くことにした。

 本流を歩かない理由があるかも知れない。もしかしてすぐ水が涸れる涸れ沢なのか、あるいは、長いゴーロの沢であるかもしれない。だが、地形図を見る限りでは、冗長な沢であるという証拠があるわけでもない。もしかして、素晴らしい景観が待っているかもしれない。うーん、あるいは、退屈な沢かもしれない。期待は膨らんだりしぼんだり。だが、少なくても、本流の初めての情報を得ることはできるだろう。

源太ワナバ沢
 予報通り、沢支度を始める頃には、雲ひとつ無い青空が広がっていた。そして、白い月がぽっかりと浮かんでいた。用木沢出合に車を置いて、犬越路へ向かって歩いた。すぐ、登山道の橋としては立派な橋が現れる。堰堤をこしらえたために、登山道を造作するのが難しくなり、その場に似合わない贅沢な橋を造って上下の登山道をつないだ、というのが真相だろう。
 何度か用木沢を渡って、右岸を歩くようになる。源太ワナバ沢は、右岸から用木沢に合流する。用木沢の出合から源太ワナバ沢の出合までは20分ほどの距離だ。水量が多いので見間違うことはない。地形図を見れば分かることだが、集水面積からすれば、源太ワナバ沢は、用木沢の第一の支流である。
 出合は広く水量が多い。右から二つ続けて支流が入るが水量は多くない。740mの二俣で本流が右へ曲がる先で、末広がりの滝5mが現れる。水量が少ないときは、流れが左右に分かれたり、真ん中一本になったりするようだが、今日は水量が多い。どこから登ったら良いのか悩む。右岸にはバンドがあるが、うまく繋げない。ここは、二俣へ戻り左俣側から境界尾根に上がり、滝の方向へトラバースをして、落ち口に降りる。難しくはないが、ルートを見つけるまで少し時間がかかった。ここは、境界尾根を登り過ぎてはいけない。本流の右岸が高い崖になるからだ。落ち口近くにはブッシュが有り、容易に懸垂下降ができる。
 この先で、右岸から12mほどの水量の少ない高い滝が落ちている。ここを右へ折れると大きな滝が見える。前衛の小滝を従えた堂々とした見事な滝だ。近づくと8mぐらいはある。水量が多い。台風27号の影響で、この2日ほど雨が降ったせいだろう。水流左を水をかぶらないように上がったが、中盤で傾斜が急になる。頼りにしていた太い枯れ木を掴んで引くと、ズルズルと落ちてきた。巻き込まれないようにあわてて逃げた。ここは一度下まで降りて、右岸のブッシュ帯を上がった。少し上がり過ぎたので、補助ロープを使いながら落ち口上のカンテへ降りた。ここからは、足元に気を付ければ問題ない。
 8m滝の上流は西丹沢的なスラブの小滝が現れる。だが、すぐその上からは、三俣まで長いゴーロになる。ただ、沢の幅は広く、日が当たるので明るい。奔流のきらめきを見ながらゆっくりと高度を稼ぐ。ゴーロも水量が多いので、時にゴロタの滝ができていて、単調なゴーロ歩きを癒してくれる。870mで左俣の分れる三俣になる。左俣の出合にはスラブが有り、奥には多段滝が見える。左俣の水量は少ない。大した登らないうちに水が涸れるのではないだろうか。まっすぐ続く本流の水量は圧倒的に多い。水量が多いということは、上流部まで水が涸れない可能性が高い。だが、滝はあるだろうか。



用木沢出合 完璧な青空 源太ワナバ沢出合付近 広く水量が多い

源太ワナバ沢 ゴーロが続く 水量は多い


740m二俣 右俣には末広がりの5m滝が見え
740m二俣 左俣にトイ状滝が見える


5m滝 登れない 二俣へ戻って巻いた
  5m滝落ち口 高巻いてここを降りる


立派な滝が見えてくる 前衛の滝もある
右岸から細い滝12m



両岸険しい崖 直登するか左から巻くか
水量が多く水流左は水をかぶる 右岸のブッシュから巻いた


しばらくゴーロを歩く
8m滝上の小滝

ゴーロが続く ときどきゴロタの滝


870m三俣 左俣出合のスラブ 奥に段々滝が見える
870m三俣 左俣の奥に見える段々滝


源太ワナバ沢本流
 三俣を過ぎても、本流はゴーロが続く。やっぱり本流はゴーロの沢かもしれない。このまま、何も現れずに詰めになるのか。そんな諦めが支配した頃、遠くに大きめの滝が見えてきた。
 
970mでようやくひとつ目の滝が現れた。長々とゴーロを歩いてきたせいだろうか、6mほどの滝だが立派に見える。滝がなくても良いと思いながら歩いていても、やはり滝があると嬉しい。一遍に心が明るくなるのが分かる。あらためて、滝の力の大きさを感じる。この滝は、4m滝の上に2mの滝が連なった二段の滝だ。ここは少し濡れるが水流沿いを登った。この先でもトイ状の流れや小さなナメが現れたりして期待をもたせるが、相変わらずゴーロが続く。
 1040m付近で、再び立派な滝が現れた。滝の両岸に鳥の翼のように岩稜を広げている。ほぼ垂直の滝で4mぐらいだ。水流沿いは逆層で難しそうだったので、右手から岩稜へ上がり、落ち口へトラバースした。見た目よりも岩が脆く、少しバランスの取りにくい箇所があった。
 このすぐ先にも二段5m滝が現れる。上部はハングしているが、左岸に絶好のラインが見つけられるのでここを登る。難しいところは無い。快適に登る。この上、すぐ二俣になる。
1080m付近の二俣だろう。ここは、状況によって右俣か左俣に詰めのルートを求めようと思っていたが、左俣の水量が多いので、そのまま本流を詰めることにした。
 1080m二俣の先で3m、2mのゆるやかな滝を越えると穏やかな渓相に変わり、詰めの近い様相になった。右手に低い尾根が見える。この尾根を上がって詰めても良いのだろうがまだ水がある、最後まで沢を辿ることにした。
 1130mの二俣の前で2m滝、ナメと続く。水のない左俣を見送りこの二俣を右へ入った。その先で水は涸れた。この先でまた1170mの二俣になるが、沢床の低い左へ入ると、登山道まで急な詰めになる。稜線の直前で右の尾根に上がり鹿道を辿って、登山道へ出た。チラホラと紅葉が目につくブナ林だった。



6m滝 本流最初の滝 眩しい日が差している
同6m滝 左から取り付き水流を登る


小さなゴロタ滝はいたるところに
ときどき流れが狭まる奔流も


空は相変わらずの蒼さ 木漏れ日が背中から差してくる
小さなナメが現れた

両岸へ鳥が翼を広げたような4m滝 ツバサ滝と命名しよう


同5m滝 上部落ち口
二段5m滝 水流右に絶妙なラインが有る


1080m二俣上 沢を振り返る 穏やかな渓相になる
1130m二俣手前 小さなナメが現れた

急な詰めを上がって稜線登山道 秋の気配がいっぱい
犬越路 いつも休んでいる人が居る 右手奥は大笄(おおこうげ)


まとめ
 源太ワナバ沢本流は、ゴーロの沢だったが損した気がしない。要所で魅力ある滝が現れたのでそれで満足だった。期待した以上のものでもなく以下のものでもなかった。ほぼ予測した通りといって良いだろう。ゴーロは広く明るいので、沢の散歩をしたい人には向いている。南面の沢で、始終背中から陽が差してくるので春先や晩秋に歩くと良いかも知れない。スリルを味わう登攀は、序盤で現れる5m、8mの滝だけなので、その向きには、わざわざこの沢を歩く必要を感じない。
 源太ワナバ沢出合の先、犬越路側の用木沢の右岸は、いたるところビバーク適地がある。下山時に気がついたのだが、ひとつ上流に用木沢右岸から出合う「一ノ沢」は、出合がナメで沢の奥に大きな滝が見える。短い沢だが、何か期待できる渓相のようなので、いつか行ってみたいと思う。



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