地獄棚沢左俣(福井沢) 丹沢山塊中川川大滝沢
2013.09.22

Nさん、高橋
個人山行

地獄棚沢へのアプローチ 大滝沢の遡行 西丹沢らしい風景が広がる










遡行図



参考情報
「沢の風と空」2013.06.09 地獄棚沢

コースタイム
駐車地点9:25−入渓(マスキ嵐沢出合)9:48−地獄棚沢出合10:30〜10:45−(高巻き)−地獄棚沢725m地点11:55−790m二俣13:53−稜線登山道14:58〜15:08−屏風岩山15:24−地獄棚沢870m地点16:15−同沢790m二俣16:29−(作業道)−一軒屋避難小屋16:58−17:55駐車地点

プロローグ
 久々にNさんと、西丹沢に出掛けた。「西丹沢へ行きませんか?」という私の誘いに、応じてくれたものだ。しかも、前日の誘いだった。たぶん、波長が合ったのだろう。Nさんは、勤めの休みが会の行事日程と合わず、同行できない事情が続いていた。以前二人で歩いた沢は、互いに「いつだったかな」と言うほど、一緒に歩いていない。会えば、久しぶりだなということにはなるが、Nさんとは、あまりそういう感じがしない。話し始めれば、以前と変わらないNさんがそこにいる。
 西丹沢は難しい沢が多く、登攀がうまくない自分には、余裕をもって登れる沢は少ない。どこにしようと考えたが、結局以前登った地獄棚沢の左俣を歩くことにした。以前は同じ沢の右俣を歩いた。地獄棚沢は大滝沢の支流だ。大滝沢の大滝・雨棚の手前で右岸から見事な滝を懸けて出合う。30mはあるだろう。一見の価値がある。
 Nさんと新松田駅で落ち合い、車で大滝沢へ向かう。246号線を走り、右折して西丹沢自然教室の方角へ入る。大滝橋の手前から左の林道へ入り、右手に大滝沢を見ながら林道を上がる。林道が大滝沢から離れUカーブする地点に駐車できる広場がある。ここへ車を止め、大滝沢沿いに伸びる登山道をしばらく歩く。標高600m付近のマスキ嵐沢の出合で大滝沢に入渓した。

大滝沢遡行
 マスキ嵐沢の出合は分かりにくい。知らぬ間に大滝沢と勘違いして、そのまま先を歩いてしまうので注意が必要だ。出合いのすぐ手前に堰堤があるので目印になるだろう。
 ここからの大滝沢は、しばらく標高差が小さいので歩きやすい。沢幅も広く、日差しの漏れる明るい河原を歩く。大方はゴーロだが、石は小さいので歩きやすい。丹沢特有の花崗岩のきれいなナメが現れる。河原は白砂なので水が濁らない。途中、右、左と枝沢が出合う。左の沢は沖箱根沢だ。今日は急いでいるので寄らない。
 沢がS字にカーブしたナメの先に地獄棚沢の大滝・地獄棚の下部が見える。見事な大滝だ。先日の台風で、少し水も増えたのだろう。以前来たときよりは、威厳が増したように見える。地獄棚の前は広々とした花崗岩スラブの広場になっていて、一休みしたくなる所だ。Nさんもこの地獄棚には感激したようだ。この辺りで、二人の釣り人に会った。
 さて、今日の遡行はここから始まるが、まずは
30m地獄棚を高巻く必要がある。ここは、とても登れない。


大滝沢の遡行 きれいな沢床に日が差している
花崗岩のスラブに木漏れ日が眩しい


S字ナメ滝を過ぎると地獄棚が現れる 西丹沢的だなー
地獄棚30m 6月の時より水量が多い みごと

地獄棚沢出合の先 大滝沢本流ナメ滝 この先に雨棚がある


ルート図


地獄棚の高巻き
 地獄棚の左岸の急斜面を高巻く沢屋が多いようだが、結構ハードなようだ。ここは、右岸を大きく高巻くことにする。大滝沢のS字ナメを戻り、670m付近で右岸から出合う枝沢を上がり、早々に左岸へ上がる。すぐ作業道の踏み跡があるので、この踏み跡をたどるように登る。けっこうな傾斜だ。しっかりした作業道を歩くと、やがて右手に大滝の音が聞こえてくる。途中、谷側に転落防止のトラロープが現れる。トラロープが三回現れると、地獄棚沢の右岸壁がブッシュ混じりの斜面に変わる。ここから沢へ懸垂することができる。前回は、30mロープで3ピッチここを下がった。
 今日は、さらに容易な下降点を探して作業道を登る。地獄棚沢本流の725m地点に出合う枝沢沿いの枝尾根を下りて、本流へ下降しようという作戦だ。最初、どの地点から下降するか迷ったが、作業道右手に枝沢が間近に迫ったところで、その枝沢右岸の枝尾根を下がることにした。標高780m付近からロープを使って下降し右岸枝尾根を下りた。この枝尾根は、そのまま本流へ下がるものと考えたが、左手の右岸枝沢に下りてしまったため。そのまま、右岸枝沢を下降して、地獄棚沢本流725m地点に降り立った(地獄棚上流の拡大図を参照)。この右岸枝沢は花崗岩のナメとナメ滝が続くが、下降できる。
 この本流への下りは、今回下降した地点よりも手前、作業道標高770m付近から本流725m地点を目指した方が良いかも知れない。機会があればまた挑戦してみたい。


  地獄棚上流の拡大図



懸垂下降の途中から枝沢を望む
標高780mの作業道から枝沢へ下降 3ピッチ目 困難は無い

右岸枝沢を降りる高橋 途中一箇所4mほどの滝が有ったがクライムダウンできた やっと下に本流が見える 降りてきた右岸枝沢を振り返る トイ状の滝が続いていた 右へ曲がった先に4m滝がある

連瀑帯
 本流の連瀑は5m滝から始まる。5m滝はルートを選べば簡単に上がれる。その上の7mトイ状滝は、今回はぜひ登りたいと思っていくつかルートを検討したが、結局水流沿いをシャワーで上がる勇気が出ず高巻きをした。小さく巻けそうにも見えるが途中のトラバースが微妙で、ここは傾斜の緩むところまで上がってから、滝上へトラバースしたほうが早い。10mほどの懸垂下降で落口へ下りられる。
 この下降で、ロープの末端がヤブに絡み、結局、ロープを切断したので、その一部を残してしまった。ブランと下がったロープは、西丹沢には似合わない。ちょっとはずかしい。ロープの末端をどう処理するかという議論がときどきあるが、今度のケースでは、末端を結んでいなければ何の問題もなかったはずだ。状況によって判断すべきことと思う。

 7mトイ状滝の落口の先には、10mほどの斜めに落ちる滝が見える。豪快な滝だ。今日は水量も多く、正面から見ると難しそうに見える。しかし、左からルートを選んで上がれば快適に登れる。この滝の上には、小滝が三つほど続く。そしてその先には、12mの滝が現れた。「丹沢の谷110ルート」では25mとあるが、とてもそんなには無い。あっても16mだろう。今日は、滝全体に水が広がりながら落ちていて、なかなか見事だ。順層で傾斜が比較的ゆるめなので、快適に登れる。この上は、すぐ790mの二俣になる。きょうは、ここを左俣へ入る。


連瀑帯最初の5m滝 水流右をホールドを拾って 難しくない
トイ状7m滝 スラブのため微妙に難しく右岸を高巻いた


10m滝 撮り忘れたので6月の写真を再録
10m滝上の小滝群 ほっとする


3m滝 水流左、ルートを探して越える 岩が脆いので注意だ
12m滝 正面から 今日は水量が多いのでなかなか立派だ


12m滝上部を登るNさん スリップに注意!
同12m滝 左から 順層なので快適に登れる 楽しい所だ


12m落ち口を上る高橋 上から見るとかなり高い
12m滝 落ち口付近 ここは左の乾いた岩へ逃げることもできる


左俣遡行
 左俣は、滝やゴルジュのない穏やかな沢が、詰めまで続く。右俣には小さな滝が続くのに比べると、滝が少ない。登攀系の人々が、790m二俣で遡行を切り上げてしまうのも頷けるが、この静かな癒し系の沢を歩くのも楽しいものだ。
 二俣の小さな滝を越えて左俣へ入ると、広いナメが広がる。険しい連瀑に比べて心休まる景色だ。少し歩くと左岸からナメ滝になった枝沢が入る。幅広の穏やかなナメだ。このナメの奥にはさぞや美しい渓が控えているのだろうと、少し寄り道をすることにした。だが、渓はすぐ狭い
U字谷となり、あまり見栄えがしなかった。
 左俣本流の渓はまだ広く、スラブの沢床にしっかり水が流れている。この辺りは傾斜もゆるく、滝もないので思いのほか速く歩くことができる。840m付近で、二段6mの滝が現れる。この滝は、ホールド豊富で快適に登れる。両岸の斜面には緑がかぶる。秋の日差しが木の葉を明るく照らし、さらに沢床をきらめかせている。標高850mで右から枝沢が入る。この沢はゆるやかなトイ状滝になっている。本流はいったん狭まり、3mナメ滝が現れる所で開ける。左側から枝沢が二本入るその手前で、沢床から噴き出す湧き水があった。見るからに勢い良く噴いているので、弧を描いている。湧き水は何度も見たことはあるが、弧を描くほど勢いのある湧き水は初めてだ。試しに水を呑んでみたが旨い。
 900m地点の二俣は左へ入る予定だったが、左俣には倒木があふれている。ここは沢幅の広い右俣へ入り、次の二俣(930m)を右(北西)へ入った。じきに、稜線の空が見える。水は、予測を裏切り最後の二俣(930m)まで流れていた。これにはかなり満足だった。最近台風が通過して雨が降ったせいだろうか。




少し歩くと右からナメで沢が入る 日が差し込んで美しい この奥はどうなっているのだろう 本流は左だ
左俣はナメが続く 心休まる

ナメをヒタヒタと歩く 歩きやすいので距離がはかどる 右岸にかぶる緑がまぶしい 秋とはいえまだ紅葉は早い


二段6m滝 快適に登れる
この小ゴルジュを抜けた先に3m滝がある 

珍しい噴水型の湧き水 一見の価値がある 呑んでみると水は旨い

標高860m付近 沢幅も狭くなるが、水は最後まで流れている














稜線・下山
 稜線へ上がると風が吹いていた。「気持が良いね」と、Nさんとつぶやき合った。爽やかな風が、汗で濡れた二人の髪の毛を揺らせた。しばらく休んで、西丹沢の奥山の静寂を楽しんだ。声には出さなかったが、地獄棚沢の厳しい連瀑と癒しの左俣を歩いた充足感に浸っていた。
 下山は、屏風岩山の東の尾根に入り、登ってきた地獄棚沢左俣の右岸尾根を下る予定だった。だが、どうした訳か途中で地獄棚沢左俣へ下りてしまった。990mの尾根の分岐の少し手前で、間違えて沢へ降りる枝尾根へ入ってしまったようだ。到着地点は、見覚えのある左俣の標高870m地点だった。やむを得ず、そのまま沢を下り、790m付近の二俣へ降りた。そこから右俣へ入り、8m滝を登ったところにある作業道に入り、作業道をたどって一軒屋避難小屋へ向かった。作業道はかなり崩落している箇所もあるが、有るだけでもありがたい。避難小屋から登山道を降り、駐車地点にたどり着いたのは夕方の6時近くであった。


ヒノキ林の急登をこなすと稜線は爽やかな風が吹いていた




Home