金冷シ沢 丹沢山塊水無川
2013.08.26

高橋

水無川F5上に捨てられたワラジ 下流部を遡行したのだろう ワラジを履く者があることに感嘆















コースタイム
戸沢山荘10:02−書策新道(廃道)−水無川本谷入渓(F5上)11:0012−木ノ又大日沢11:28−金冷シ沢出合12:0114−F1・1012:2130−F2・7m13:06−登山道13:53−戸沢分岐14:34−戸沢山荘15:30


ルート図



プロローグ
 「金冷シ沢へ行こうよ」と誘っても、だれも「行きたい」とは言わないだろう。ましてや、この沢のハイシーズンに。金冷シ沢と言ってもいったいどこにあるのか、どこの金冷シ沢なのかピンと来る人はまずいない。という訳で、今日も独りで出掛けることにした。
 最初は、西丹沢の笹子沢へ出かけるつもりで、情報を収集していたが、遡行だけで6時間もかかることが分かり、リハビリの沢としては適さないだろうと、急遽、金冷シ沢に決めたのだった。笹子沢は、またの機会に歩けばいいや。
 webサイトを調べてみると「金冷シ沢」を歩く人もいるようだ。こういう渋い沢を歩く人は、どういう人なのだろうか、と興味がわく。金冷シ沢は、丹沢の名峰・塔ノ岳へ突き上げる水無川本谷を遡ると、終盤で右岸から入る支流だ。水無川本谷と並走して塔ノ岳へ突き上げる。本谷を遡行したとき、何度も金冷シ沢の出合は通過したが、遡行したことはなかった。平凡な沢だということだが、大きな滝が二本あるようだ。

時間というもの
 東名高速を飛ばして、大倉の先から水無川の左岸道・戸川林道へ入る。戸川林道の舗装が切れる辺りに、進入禁止の立て札があった。長いこと、登山者に利用されてきた戸川林道も捨てられる運命にあるのかもしれない。今はまだ、車が走ることができる。
 何年ぶりの本谷行きだろう。林道途中の新茅荘は閉まっていた。平日のためだろうか。長いこと夫婦二人の住まいになっていたはずだが。新茅ノ沢の水量は少ない。これだけ少ないのは珍しい。昨日雨が降ったようだが、今年の渇水の状況がよく分かる。70年代、沢に熱狂した時代があった。私は、その熱狂を傍から見ていただけだが、今は丹沢の沢を歩こうという者は少ないのかもしれない。きょう歩くことになる水無川本谷、金冷シ沢を歩いても、そのことに思い至る。どちらも、その終盤の沢筋の崩壊は甚だしい。久々に本谷を歩いたので、そのことがよく分かる。沢を遡行するのではなく、ガレを歩く、という様相だからだ。山全体が崩壊している。そういう感じがする。



駐車場と戸沢山荘 平日なので車二台
書策新道(廃道)から見える 本谷F5


廃道
 戸沢山荘の前に駐車して、書策(かいさく)新道に入った。だが、この書策新道、今は進入禁止のテープが貼られている。書策小屋が廃業して書策新道に手を入れる者が無くなったのだろう。荒廃、遭難者続出?で、修理ではなく廃道ということらしい。水無川本谷、セドノ沢の横断部で、水のある貴重な休息場所を与えてくれた、疲れを忘れさせてくれる登山道だった。時の移ろいを感じる。
 書策新道が本谷を渡る手前は、崩落で「恐い」と感じる箇所が一箇所ある。ここは、知恵と技術で抜けなければならない。戸沢林道の通行止め、書策新道の廃道そしてヤマビルの出現で、戸沢山荘を起点にする登山は激減したのだろう。戸沢山荘が廃業すればそれが決定づけられる。そう長い先ではないと思う。
 水無川本谷F5の上で書策新道が本谷を横断する。ここで入渓した。ここから金冷シ沢出合まで、本谷を遡行する。




書策新道が横切る本谷F5の上から水無川本谷入渓 
奥に3m滝がある

木ノ又大日沢出合 水は少なくガレが続く 水無川本谷 7mF6が奥にある こちらも水が少ない


明るいゴーロだが、疲れる
左岸大崩壊部 至るところ崩壊が進んでいる

三段4m滝 F6の上では数少ない滝 同左 左水流沿いを登る


登ってきた本谷を振り返る


ゴルジュと小さなナメは、ガレで埋まっていた
金冷シ沢出合手前のゴルジュ入口


金冷シ沢
 金冷シ沢の大半はゴーロの歩行になる。滝は数えるほどしか無い。うーん、やっぱり渋い沢だな。当日は水も少なく貧相な沢がさらに貧相な姿を見せていた。こういうどーでもいい沢を黙々と歩くというのは、何か哲学的だなと思ったりしたのだった。だが、どっこい標高1300mを過ぎ、詰めの枝尾根に取り付くと尾根筋には見事な原生林が待っていた。単純に美しいと思った。崩壊を見せることもなく、緑の苔や下草が生え、細く低いブナがその曲がった枝ぶりを競っている。沢を歩く者にとって、詰めというものは、短ければ短いほど良いものだが、この詰めは楽しみながら登ることができた。だが、この標高差で70m足らずの詰めもあっという間に終わってしまう。この短さが、詰めの印象を良くしたのかも知れない。いくら美しいと感じても、延々と続く詰めは、やはり御免だ。膝丈の笹原を越えると人の声がする登山道だ。ここは、三叉路・金冷シの少し南側だ。この詰めは、稜線までザレを詰め上げずに、ぜひ1300m付近から右岸枝尾根に上がりたい。

 10mF1は、左のルンゼを登り落口の方へ回りこむ。途中、古い固定ロープが有ったので使わせてもらった。かなりの勾配があるので助かる。ロープは、もう20年を経ているだろう。白く退色している。ロープはまだ上まで伸びているが、途中、落ち口高さで右手にトラバースすると、容易に落口の上に出た。その上に4m滝があるが、左右とも簡単に巻けそうにない。結局あれこれ迷った末、直登することにした。ここは、ちょっと苦戦した。水量が多いときは、難しくなると思う。ここは、古いロープに従って左岸を巻いた方が良かったのかも知れない。
 1150m付近でいったん伏流になるが、7mF2の手前でまた水流が戻る。このF2の直登は難しい。すぐ手前の左岸を6mほど木の根と細い笹を掴んで上がると、落ち口へ向かう絶妙な巻き道がある。しっかりした踏み跡だが、金冷シ沢がそんなに遡行者に歩かれているとは思えない。獣道なのだろう。
 標高1230mの二俣は、右俣へ入ると塔ノ岳へ詰め上げなければならず、厳しい詰めになりそうだ。ここは、左俣へ入った。この先、何度か二俣が現れ、どちらへ進んだら良いか迷う。だが、いずれもコンパスで方角を確認すれば間違うことはないだろう。




1050m、左から金冷シ沢が出合う 右が本谷

金冷シ沢出合付近 水が少なくさみしい 水無川本谷 水がある

金冷シ沢 小さな滝3m 水が少ない 金冷シ沢 茶色い3m滝 やはり水が少ない 


web情報から 水量がある場合はこんなだから今日の水量(左)はかなり少ない
立派な10mF1 水が少ないので見栄えがしないが

左のガレルンゼから回りこんでF1をかわす 途中、古いロープがある けっこう急なので、古いロープでも助かる 落ち口高さでトラバースし落口へ出た



F1上の4m滝 巻きの途中から
同左4m滝 水流右を登る 途中バランスの難しい所が一箇所 このぐらいの滝は確実に登れるようにしたいが、上達しない 水量が多いときは苦戦するだろう

苔の美しい右岸を歩く ゴーロ おおむねこんな所を歩く F2の手前で一度伏流になる


7mF2巻き道 絶妙なルートができている おそらくけもの道だろう
7mF2 とても登れない 左岸を6mほど登り 巻き道へ


二つ目の枝尾根にトラバースして尾根を真っ直ぐ登る
1300mで右岸の枝尾根に上がる


一見の価値がある金冷シ沢の詰め
美しい枝尾根の景色 沢歩きの幸福感がいっぱい

辿り着いた登山道 「金冷シ」のすぐ南 ここも良い雰囲気だ

下山

 花立山荘を過ぎ、1126mのピークの先の分岐を左へ折れ、戸沢山荘へ下った。この天神尾根の下りは、ヒノキ林の中、標高差500mを一気に下る「悪路」だ。今まで何度も下っているが、今回ほど辛い思いをしたことがない。途中何度も立ち止まって脚の回復を待たなければならなかった。おかげで、次の日はふくらはぎが痛かった。それでも今回は、小さな沢だが完登できた。来月予定している巻機山の沢登りに一歩近づいたことになる。




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