2013.06.19 手嶋亨 編著『沢登り』ヤマケイ入門&ガイド




 童人トマの風代表、手嶋亨さんの編著による『沢登り』山と渓谷社が発刊された。「ヤマケイ入門&ガイド」の副題で、沢登りの技術とルートガイドが一冊の本にまとまっている。この『沢登り』(2013/4/20発刊)は、沢登りの技術編に大きな力が注がれている。
 
この技術編には、沢を歩くときに必要なさまざまな事柄が網羅されている。初心者が沢を始めようとする場合には、この本を一冊読めば十分だと思う。初心者として知らねばならない、沢登りのあらかたのことが分かる。また、沢をすでに歩いている者にとっても、自分の沢登り技術を再確認するのにも良い書物である。その基本技術は、必ずしも万全であるとは限らないからである。事実、この技術編に学ぶことは多い。例えば、タープの下での焚き火の方法、ロープを使っての徒渉技術「三角法」などである。

 手嶋さんは、この本を読む人に、何とか沢で必要な技術を学んでもらいたい。そう思っている。この文章を読めば、氏の情熱や思いがすぐに伝わってくる。この沢登りの技術編が初学者にも経験者にも説得力を持つのは、沢登りの技術というより、沢へ向かう手嶋さんの「思想」が伝わってくるからだろう。それは、氏が共著ではなく、ひとりでこの「技術編」を著したことにも現れている。氏が経験を経て得た沢の技術を、氏のことばで丁寧に解きほぐして見せてくれる。
 共著の場合は、分担の間で、どうしても細かい点が漏れてしまったり、論の展開に難があったりするものである。何より、著者の責任が曖昧になるので、書く者の力の入りようが自然に異なってくるものだ。沢登りの技術をことばで伝えるというのは、もともと難しいものである。細かな点の漏れが無く、責任をもって万全な技術を著すためには、ひとりで著すほかない。そう考えたのだと思う。それがみごとに成功している。
 三氏の共著になる『沢登り』登山技術全書C(2006/7/15)は、写真を多用したビジュアルな編集になっているが、取り上げられた技術は網羅的で互いの関係性が薄い。この書では、その前版の同名の『沢登り』(2001/7/1)で掲載されていた丁寧な作りの「沢登りベストルート集」が、カットされてる点も残念だ。
 手嶋さんの手になる今回の『沢登り』は、完璧である。氏の考える沢登りの「思想」が、この一冊に凝縮されていると言ってもいい。これは、吉川栄一氏がかつて技術編をひとりで著した『沢登り』入門とガイド(
1990/9/10)に匹敵する力作であると思うがどうだろうか。この本は1996年に第五刷を出した。沢登りの案内書としては破格の人気を誇っていた。
 初心者そして沢の経験者どちらにとっても、手嶋亨・編著『沢登り』は、必携の案内書であると思うのでお勧めしたい。この書が沢登りの愛好家に広く読まれることを願っている。





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