地獄棚沢 丹沢山塊中川川大滝沢
2013.06.09

高橋

マルバウツギが盛りだった







遡行図



参考情報
この遡行には、次のweb情報を参考にしました。
http://yamajinn.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/20111026-b222.html 
 「yamajinn丹沢一人歩き」 作業道の経路について
http://www.scn-net.ne.jp/~swallow/yamaaruki_corner/yamaaruki_corner.htm
 「山歩きコーナー」No.141 地獄棚右岸尾根からの高巻きについて

ルート図


コースタイム
駐車場8:45−マスキ嵐沢出合9:03−地獄棚沢出合9:3010:03(ロスタイム33分)−670m右岸枝沢出合10:11−作業道10:18740m下降地点10:35−地獄棚落ち口上11:01725m右岸枝沢出合11:12−5m滝11:15−7mトイ状滝11:26−同滝上12:091410m滝12:2312m滝12:4355790m二俣(右俣へ)13:09915m二俣(右俣へ)14:01985m登山道14:21−一軒屋避難小屋14:4652−駐車場15:30

プロローグ
 大滝沢の支流である地獄棚沢を歩いた。地獄棚沢は、標高690m付近で出合う大滝沢の支流だ。5月14日には、この出合を過ぎて雨棚まで歩いた。この時と同じように、大滝キャンプ場前から大滝沢沿いの林道に入り、林道がヘアピンカーブで大滝沢から離れるところに車を止めた。ここには4台ほど駐車できる。

 地獄棚沢までは前回歩いているので、マスキ嵐沢出合から大滝沢左岸にある踏み跡を急ぐ。ときどき、右岸に渡ることもあるが、おおむね左岸に踏み跡は続いている。急いでいない場合は、水流を歩くほうが楽しいだろう。途中、堰堤を固定ロープのある左岸から越える。標高670m付近で沢はS字状にカーブしている。ここは綺麗なナメだ。そのすぐ先で地獄棚沢が大滝・地獄棚となって出合う。大滝沢の名前の由来である本流の大滝・雨棚は、この先のゴルジュの先にある。今日はそこまでは行かない。

地獄棚30m 先月来た時より水量が少ない


地獄棚の高巻き
 地獄棚沢出合に懸かる大滝・地獄棚の落差は、30mはあるだろう。地獄棚とはすごい名前だなと思う。この大滝を登るには、地獄を味わうという意味なのだろうか、それにしても強烈な名称だ。勇敢にもこの滝の登攀に挑む者もあるようだが、大方は高巻きしている。水流右のブッシュ混じりの急斜面を高巻きする者が多いが、けっこう難しいようだ。「この高巻きは二度としたくない。」という人もあるようなので、地獄棚沢遡行の核心は、この大滝の高巻きにあるとみてよい。さて、では登攀技術に乏しい自分としては、この大滝をどのように高巻くか、考えねばならない。幸い大滝右岸に作業道があるとの情報を得たので、まずはこれを利用しようと考えた。前回大滝沢本流を歩いたときに、地獄棚右岸の枝尾根の取り付きを確認しておいた。ここは、地獄棚沢出合を来た方向へ戻り、S字状のナメが始まるところにある。ここの見分けは、比較的簡単につくだろう。だが、今回はS字状のナメの下までさがり、標高670mで右岸から入る枝沢を上がることにした。このルートを上がった例は無いようだが、いくつかのweb情報を総合すると、この枝沢を上がった方が、比較的簡単に作業道に取付けるだろうと考えた。




 地獄棚の高巻きは、ほとんど左岸の記録しかないが、ただひとつ右岸を高巻いた記録があった。だが、どこからどのように大滝落ち口の上へ下降したかの記録があいまいだ。降り口は自分で探すしかない。作業道を上がりながら、地獄棚沢へ降りられる箇所を探すことにした。地形図から、標高750m付近、だめなら地獄棚沢に725mで出合う枝沢を下降しようと考えた。かなりの大高巻きになる。
 大滝沢本流の標高670mに右岸から出合う枝沢は二本あるが、ここは右手の枝沢を上がる。ゆるい8mほどの滝になっている。水はわずかだ。この滝を上がり少し歩くと右手に支尾根に上がれるそうな緩斜面が出てくる。ここを上がることにした。登ってきた枝沢の上流を遠望すると両岸が急斜面で迫り、目指す作業道へ上がれそうな斜面は無くなるように見えたからだ。
 右手の緩斜面をわずか4mほど上がるとすぐ踏み跡らしきものがある。このルートが正解だったようだ。落ち葉で覆われているのではっきりとは分からないが、ジグザグに尾根を上がって行くので、これが作業道だろう。


S字状ナメ(上流側から) 右手が地獄棚右岸尾根への取り付き このS字状ナメの下の右岸の枝沢出合まで下がる 標高670mに入る枝沢二本 右の沢の傾斜のゆるい8m滝を上がったあとに、作業道に取り付く

 落ち葉におおわれた踏み跡は、かなりの急斜面を登っているので、靴底が平らな沢靴では頼りない。だが、木に掴まらずに登れるだけでもありがたい。じきに、作業道は地獄棚沢右岸の支尾根に出た。このまま作業道を上がり、右手の地獄棚沢へ降りる場所を探しながら歩くことにした。ときどき右手に滑落防止のトラロープが張ってある。このトラロープが三回現れたところで、右手の斜面を見ると枝尾根が少し張り出している。標高740m付近だ。覗いてみると上流側へ降りた跡がある。獣道なのだろうか。沢の流れは見えないが、何とか降りられそうに見える。直感でここを降りることにした。30mロープで3ピッチ、ブッシュの間を縫った約30mの懸垂下降だった。降り立ったところは、地獄棚の落ち口すぐ上、標高710mだった。懸垂のロープを回収すると、深いV字谷に一人取り残された。ひとまず高巻きは成功だが、3ピッチも懸垂下降したので、もう降りてきたところを上がって戻ることはできない。何か自分の中に緊張と孤独感が走る。

降り着いた大滝落ち口上 その先には小滝が 倒木に被われた小滝もある 右岸を巻いた


連瀑帯
 大滝・地獄棚の先は、V字谷に10mぐらいの滝が続く連瀑帯である。大滝・地獄棚を左岸の急斜面から高巻く登攀系の人々は、この連瀑帯の登攀を目的に来るようだ。大滝のすぐ先は、小さな滝が続くが、細い倒木に遮られて巻きを強いられる。すぐ左手から水量のある枝沢がトイ状滝になって出合う。標高725m付近だ。本流は、この先から連瀑帯になる。
 まず二つの滝が見える。5m滝、7mトイ状滝だ。5m滝は簡単そうに見えたが、ホールドがやや外傾していて、ぬめりがある。持参したタワシでぬめりを落として、ようやく登った。webの情報では、誰もこの滝は簡単に登っているようなので、あらためて自分との差を感じた。しかも一人だ。この先大丈夫だろうか。そんな不安が押し寄せてくる。脱出ルートは、唯一標高725m付近に入る枝沢だろう。
 7mトイ状滝は、どの遡行者も水流沿いを登っているようだが、わりと苦労しているようだ。自分が登るとすれば、中段まで水流沿いを上がり、そこから左の岩へ移り登る。そう考えたが、中段先の一歩二歩が、難しいように見える。撤退のクライムダウンも苦労するかもしれない。そんな考えが浮かび、結局踏ん切りがつかずに右岸を巻くことにした。ここは小さく右岸を巻けるようにも見えるが、直登するより難しい可能性もある。結構の苦戦になるだろう。高巻きではできるだけリスクを負いたくない。そこで、まずは右岸を20mほど木を掴みながら上がった。その後、緩斜面を上流方向へトラバースし、7mトイ状滝の落ち口へ懸垂下降した。落口の状況をみてみると、水流沿いは勾配がきつくツルンとしていて難しそうに見えるが、右岸側の岩は、ホールドが有り簡単そうに見えた。

725mに右岸から出合う枝沢 トイ状滝が見える。この枝沢の右岸尾根(左手)も作業道からの下降に使えそうだ 左記枝沢出合いの先、本流には5m滝 この滝はヌメリがあり、やや苦戦した ルートが良くなかったのかもしれない


高巻き 懸垂下降で落ち口へ
7mトイ状滝 今ひとつ難しそうなので右岸を巻いた


 7mトイ状滝の上は、くの字滝10m滝だ。ここを高巻くのは両岸とも厳しい。滝を登るか、左岸の乾いた岩を登るか、どちらかだろう。乾いた岩は、凹凸がなく下で見るより外傾している可能性があるので、そう簡単ではないと思う。ここは、滝を登る他はない。下からは落ち口の様子が見えないので、中段まで上がって上部の状況を確認する必要がある。見る通りかなりの急勾配が予測された。
 水流左から中段に上がってみると、思ったよりは傾斜が緩くホールドもある。登れそうだ。良かった。外傾気味のホールドは、タワシでぬめりを落とし、ゆっくりそして慎重に体重を掛けた。最近の空梅雨で今日は水量も少ないことが幸いした。水を浴びるので、水量が多い時は少し難しくなるのだろう。この10mくの字滝の先は、小さなナメ滝と3m滝がある。ぬめりの多いこの3m滝は、少し難しいと思ったが、水流左にホールドのしっかりしたルートがあった。ただ、岩が脆いので慎重さを要する。



3m滝 小さいがなかなか美しい
10m滝 水流左からタワシでぬめりを取りながら登った

 この先には、滝が二つに分かれて落ちる豪快な12m滝がある。水量が多い時は、さぞ立派な滝になるのだろう。下から見ると難しそうにも見える。とくに落ち口付近は傾斜がきつく良く見えないので心配だ。だがよく見れば、滝は四段になっていて途中にバンドがある。比較的安心して登れるようだ。落ち口付近は、水流左の乾いた岩を選んで登ったが、他のルートも選択できると思う。下段から考えると、取れるルートはいくつもあるだろう。この滝で連瀑帯は終わり、ほっとする。緊張の連続だったので、けっこう疲れた。すぐ790mの二俣になる。


12m上部 水流沿いにホールドはある
落口付近は、左の乾いた岩を登った
12m滝 水量が多ければ見事な滝になるだろう


地獄棚沢右俣
 「地獄棚沢右俣」は正式名称ではない。正式な沢の名があるかも知れないので、ここでは仮称としておく。790mの二俣で流れは二分され水量が少なくなる。ここは、右俣へ入った。この先ですぐ沢は左に折れる。ここに8m滝がある。水量が少なくなったので見栄えがしない。落口でスリップに気を付ければどこからでも登れる。この落ち口に丸太が針金で縛られた橋が架かっている。この作業道を北東へ向かえば、一軒屋避難小屋に出るようだ。大方の登攀系の遡行者はここで遡行をやめ、避難小屋へ向かい下山するらしい。今日は右俣をそのまま進む。この先にも滝はあるが、登るのに苦労する滝はない。苦労することがないため、沢歩きをじっくり楽しむことができる。
 すぐ4mトイ状滝、4mナメ滝が続く。なかなかきれいなところだ。ナメ床の沢は小さな曲折を繰り返し小滝を懸けている。この先でも4m、3m滝がつづくが次第に沢は、流木や砂礫で荒れてくる。5mの黒い滝の上は、ナメになっていて、左岸にマルバウツギが白い花を付けていた。ここ標高860mまでで、ナメやナメ滝は終わる。


790mの二俣 ここは右俣へ入る 水が少なくなる
右俣の8m滝 この落ち口に作業道がある


作業道のすぐ上に4mトイ状滝 情緒がある
4m滝 地獄棚沢右俣は癒し系の沢に変わる


3m滝 沢は少しづず荒れてくる
4m滝 ナメ床が続く


5m黒滝の上はナメ いい雰囲気だ
5m黒滝 簡単な左を登ったが直登も面白いかも

ナメの横に白いマルバウツギが咲いていた


詰め
 この上流でも水のあるナメ床は続くが、沢は倒木や木片、砂礫で荒れてくる。標高900m付近でようやく水は途絶える。計画では、900m付近で左岸から入る枝沢を950m鞍部へ詰める予定だったが、高度計を頼りにしていたらこの枝沢を見逃したらしい。緩傾斜の沢を、高度計だけで現在地の同定を行うと間違いが起こる。そういう間違いの典型だった。そのため、すぐ上に稜線が望めるところまで来てしまった。地形図の915mの二俣だと思われる。ここは、大滝峠上から一軒屋避難小屋へ向かう登山道へ出るために、右俣を選択したが、沢は荒れていて倒木も多い。ここは左俣を選択して、大滝峠と大滝峠上を結ぶ稜線の登山道へ出たほうが良いと思う。
 915m二俣の右俣を選択して荒れた沢を登り詰めるとやがて三俣になる。どの窪みもその先には稜線らしきものが見えるので、ここは、標高940mだろう。稜線が一番近く見える右側の窪みを、息を切らせて上がって980mの尾根に出た。だが、ここには登山道はなかった。この尾根を1分ほど登るとすぐ立派な登山道へ出た。標高985mだ。



標高900mぐらいまでは水が流れている
沢の上流部は荒れてくるが こんなほっとする景色も

三俣(940m) 予定に反して915mの二俣まで来てしまった。荒れた右俣を苦労して登るとこの三俣に出た 三俣(940m)の一番右の窪を登った。支尾根が見えるけっこう体力を使う。途中立ち止まりながらゆっくりと登る。

登山道を下って一軒屋避難小屋へ


















マルバウツギが綺麗な花をつけている
登山道にウツギが盛り ヤマツツジも 気持ち良い下山


ロスタイム
 今回、ちょっとしたミスを犯してしまった。言うのもいやだが、地獄棚沢出合でのロスタイムについて話しておこう。大高巻きをするために、地獄棚沢出合を来た方へもどり、予定通りS字ナメ下の標高670mから右岸枝沢を登った。出合いの緩傾斜の8m滝を登って、枝沢の左岸を4m上がればすぐ作業道に出た。これは期待通りだった。作業道を登り大滝・地獄棚の右岸支尾根に出て、沢下降に使えそうな枝尾根を見つけ、ここから沢へ懸垂下降した。2ピッチほどで降りられるおあつらえ向きの下降ルートだった。
 こんなに簡単に本流へ戻れるとは、自画自賛した。だが、沢に降り立ってみると、あれれ大滝30m地獄棚が眼の前にあるではないか。何のことはない、大滝落口を越えないうちに懸垂下降したらしい。なんというボケなんだろうか。すっかり意気消沈したが、ここでやめるわけには行かない。何しろ地獄棚沢の入口にさえ入れなかったのだから。気を取り直して、大高巻きを再挑戦することにした。
 何でこんなことになったのだろうか。下降を決心した「枝尾根」の標高は700mだ。よく考えれば、標高720m以上に登らないと落口をかわせないはずなのに、そこを降りてしまった。しかもその尾根は、枝尾根ではなく大滝・地獄棚の右岸支尾根だった、ということだ。悔しいが、とりあえず老人性のボケということにしておこう。そうすると少し安心できる。



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