大滝沢本流 丹沢山塊中川川
2013.05.14

高橋

マスキ嵐沢出合いで ヤマツツジ










コースタイム
林道駐車場9:10−マスキ嵐沢出合9:40−沖箱根沢出合10:00~06−二俣・地獄棚沢出合10:35~45−雨棚11:00−(戻る)−二俣11:25~35−マスキ嵐沢出合12:00−林道駐車場12:18

ルート図




 久々に沢へ出かけた。あまりに天気が良く、家にいるのがもったいなかったのだ。沢を歩いてのんびりしたい。それが目的だ。丹沢の小さな沢と言えども、稜線まで歩き通すには、相当の体力が要求される。という訳で、きょうは西丹沢の大滝沢本流の下部を、雨棚まで歩くことにした。言うまでもなく、雨棚は大滝沢の大滝(おおだる)である。途中、支流・地獄棚沢の地獄棚も拝むことができる。このルートは今まで一度も歩いたことがない。西丹沢には、自らルートを選んで歩こうとすれば、いくらでもルートを見つけることができる。世間一般に知られた定食のような沢登りルートは、小川谷廊下を別格にして、滝川本流の鬼石沢や支流・マスキ嵐沢があるが、それは西丹沢の極一部にすぎない。
 大滝沢本流は、西丹沢特有の花崗岩の白いスラブを見せる、美しく雰囲気のある沢だった。本来なら、中川川の大滝沢出合いから歩き始めるのが良いのだろうが、途中堰堤が幾つもあるので、本流沿いを通る登山道でマスキ嵐沢出合いまで登り、そこから大滝沢へ入渓することにした。堰堤のない頃の大滝沢本流は、白いスラブが露出する美しい渓だったのだろうが、マスキ嵐沢出合いまでは、堰堤によって寸断されている。だが、その美しさの名残を今でも登山道から覗き見ることができる。
 マスキ嵐沢は何度も行っているので、その出合いを間違えることはないだろう。そう高をくくって登山道を歩いたが、知らぬ間に本流を外れてマスキ嵐沢へ入ってしまっていた。マスキ嵐沢の遡行入渓点には、「マスキ嵐沢」の手製の標識が立っているのですぐ分かる。誰が立てた標識なのだろうか、もう15年以上も立っている。ここまで来てしまっては、出合いを過ぎて、マスキ嵐沢へ入ってしまったことになる。登山道を少し戻って、マスキ嵐沢出合いへ降りた。ここは、本流の石積み堰堤のすぐ上である。本流の流れが穏やかなため、ここが二俣であることを見逃してしまうのだろう。


土方スタイルの私 本人は結構気に入っているが 以前箱根の沢で工事関係者に間違えられたことがある
まずは、登山道をマスキ嵐沢出合いまで歩く


大滝沢本流 初めての大きな滝 登山道から
マスキ嵐沢出合いから大滝沢本流へ入渓した
新緑の萌える中、穏やかな流れが続く


堰堤がひとつだけ現れる 堰堤攻略の作戦を立ててこなかったが、左岸にロープが下がっていた。あっさり越えられる。
ときどき深みが現れる 水はどこまでも清い 正面は20mの岩壁

標高640mで左から入る支流に大きな滝が見えた。滝は15mはある。その上にさらに5mぐらいのヒョングリの滝も見える。この支流は、地形図からも比較的大きなことが分かる

(あとで、この支流は「沖箱根沢」であることがわかった))



 沢は折しも新緑におおわれていた。この季節が、渓のもっとも美しい季節ではないかと思う。透明度の高い西丹沢の流れの両岸には、開いたばかりの淡い緑が輝きを放っていた。この淡い緑の輝きが、白い花崗岩の大岩やスラブを縫う水の流れと相まって、心洗われる景観が造り出されている。心底、来て良かったと思った。沢に入れば、自然に沢の中に遊ぶ自分が居る。自身の心は、沢を歩き始めればすぐ、沢に溶け込んでゆく。と言うよりは、自分という者と沢という自然が交歓する、とでも言ったほうが良いのかもしれない。自分の心が歓んでいる。沢の持つ力をもらって、歓んでいる。うまく表現できないが、そんな感じだ。

穏やかな流れの中にも小さな滝をかける 大きな岩はどれも花崗岩 新緑の中の静かな沢を歩く ときどき蛙の声が聞こえる


水はすっかり温んでいる 冷たくはない
花崗岩のスラブに小さなナメ滝が

沢を歩いていると、知らぬ間にその中に溶け込んでしまう





















 大滝沢本流は、地獄棚沢を分ける二俣までは、歩くに困難なところはない。途中一箇所堰堤があるが、ここには左岸に固定ロープがある。これからすれば、大滝まで歩く人は結構いるのかも知れない。二俣手前から地獄棚の落ちる二俣までの景観は素晴らしい。これぞ西丹沢という景色が展開される。また、大滝沢本流には、至るところテン場適地がある。渓の流れを見ながらゆっくりと夜を過ごすのも楽しいかも知れない。


地獄棚沢出合い手前のスラブ滝2m あえて水流沿いを登る


頭上には新緑が美しい色彩を見せている
S字にカーブするナメ 木漏れ日が差し明るい


花崗岩のスラブをきれいな水が流れていく
沢の開けた先に大きな滝が見えてきた。自然に鼓動が高鳴る


地獄棚沢出合手前のナメ滝 奥に見えるのが地獄棚
地獄棚沢出合の地獄棚30m とても登れない



 二俣から先の大滝沢本流は、ゴルジュになっている。両岸切り立つV字谷になっていて、沢慣れしていないと少し苦労するだろう。両岸から落ちてきた岩が堆積しているので、落石常習地であることが分かる。長居すべきところではない。ゴルジュに深い釜のある4mほどの滝がある。左岸をへつりホールドの細かいスラブを登る。登ることはできるが、ここのクライムダウンは少し難しい。ロープが無いと苦労するだろう。ここには、立派な残置支点がある。この先でゴルジュが開ければ、そこが雨棚だ。まるで天から降るように黒々としたトイ状の滝が落ちている。雨棚は50mと言われているが、落口が見えるところまでは、せいぜい30mだろう。雨棚を見学した後は長居は無用だ。そそくさと引き返した。4m滝は懸垂で。へつりがやや難しく股まで沈没した。



右の流れが大滝沢本流 二段5m滝 左は地獄棚沢
大滝沢本流 この奥にゴルジュが待っている

V字谷ゴルジュの先に小さな滝が見える
釜のある4m滝 左岸をへつり登攀 帰路は懸垂で 落ち口に残置支点がある

この先で沢が明るく開ける 右岸の岩壁50m 水流がある
























大滝沢本流雨棚30m 辺りは落石だらけ ゆっくり休む場所が無い 長居は無用だ


 今回の遡行の目的のひとつは、地獄棚の高巻きを考えることだった。地獄棚沢の遡行を考えるときに、この高巻きが核心になる。地獄棚の上は、手頃な滝のある地獄棚沢のハイライトのようである。地獄棚の高巻きは左岸のブッシュに取る者が多いようだが、切り立っている上に露岩もある。かなりの苦戦を強いられるだろう。丹沢の仙人・マシラも落口へのトラバースで結構手こずっている。素人同然のわれわれには、このルートは難しい。大滝の右岸を辿って流れを戻ると、右岸枝尾根への取り付きがすぐ現れる。情報によれば、この枝尾根に取り付けば、作業道があるようだ。落ち口高さを越えた辺りで地獄棚へ降りるルートを開拓すれば良い。ただ、地形図をみる限りでは、降下の適地はそう無いだろうと思う。懸垂下降は必至だろう。
 今日はこの枝尾根を上がって、できれば高巻きルートを探りたいと思っていたが、雨棚までの往復に満足して、枝尾根を登る余力は残っていなかった。また次の機会にしよう。そう思って大滝沢を引き返した。いつかこのルートを探り当て、地獄棚上のハイライトと標高800mで分かれる地獄棚沢右俣(仮称)を完登したいと思う。ハイライトを遡行した後は、作業道を使って一軒屋避難小屋へ向かう遡行者が多いようだが、「大滝峠上」へ向かう右俣には、まだまだ魅力ある遡行が待っているようだ。


地獄棚の左岸 高巻きの取付き地点 ただし、露岩も見えるし傾斜もあるので相当の苦労を強いられるだろう
地獄棚の右岸に伸びる枝尾根の取り付き地点
地獄棚の落口までは、ゆるやかに高度をあげるので、左岸のような苦労はないだろうと思う。途中作業道があるらしい。大滝上に降下するには、ルート開拓が必要だろう。



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