2013.03.01 殺人ダニ


 殺人ダニという言葉が、流行っているようだ。だが、流行りというのはすぐ忘れらてしまうのが運命なので、この言葉もじきに廃れてしまうのだろう。このダニというのは、どこにでもいるものなので、今や心理的なパニックになっている。どうやらマダニが危ないらしい。
 日本でマダニのいないところは、市街化が進んで植物の生えないコンクリートジャングルの都市部ぐらいしか無いだろうと思う。野生動物の棲む草原やヤブ、笹原のあるどこにでもマダニは居るので、たいがいの人はダニに噛まれる可能性を持っている。噛まれた経験のある人は無数にいるだろう。特に、ヤブに入ることの多い林業関係者はその可能性が高い。沢を歩くことを楽しみとする沢屋や藪山を歩くことを趣味とするヤブ屋もその例外ではない。猫や犬を媒介して人にうつらないとも限らないので、ペットを買っている人の悩みも深刻だ、と推察する。我が家に暮らす「もも」は、家猫なので心配は無い。
 沢を歩くのを至上の喜びとする自分にとっても、どうもこれはまずいことになったな、というのが正直な感想である。とはいうものの、今のところ全容解明には至っていないので、まずは、事実や分析の経過を良く振り返って見ることにしよう。今回の騒動を整理してみるとおよそ次のようである。

1.2012年に山口県、愛媛県、宮崎県、広島県で各一名が感染症と考えられる症状で死亡した。その後、長崎で 男性一人2005年の死亡が確認された。全国で16件の似た症例があった。
2.感染症は、重症熱性血小板減少症候群(STSF)ウィルスによって感染する。
3.STSFは、2009年頃から中国で感染例が多くなっている。マダニが感染源とされている。中国の例では、致死率12%と報道された。
4.問題のマダニは、数ミリの大きさで血を吸うと1cmぐらいになる。
5.日本発生のウィルスは、中国発生のものとは遺伝子配列の一部が異なる。
6.日本の症例では、ダニに噛まれた明確な跡がない。
7.マダニに噛まれるときに痛みや痒みはない。そのまま一週間ほど噛み続けて血液を吸う。噛まれたら無理にダニを取らずに、皮膚科で処理してもらうのが良い。
8.もし野外に出掛けた後、熱が出たら医師の診断を受ける。受診の際に野山に出掛けたことを告げる。
9.マダニやその他のダニに噛まれることによって発症する感染症
*日本紅斑熱:噛まれた後、2〜10日後に発熱、発疹、刺し口に5〜10mmの赤い発疹
*ツツガムシ病:5〜14日後に発熱、体に2〜5mmの紅斑。刺し口が発赤、潰瘍 ツツガムシが媒介
*ライム病:10〜14日後に、刺し口に赤い斑点ができ、周辺に紅斑が拡大。疲労感、発熱、筋肉痛、頚部痛などの症状。マダニが媒介。欧米で10数万人感染。
10.マダニは春から秋にかけて活動が活発になるので、マダニの生息する野外では、肌を出さないようにすること。

 こんな記事を見ると、何か怖くて山へなど出掛けるのも嫌になりそうだが、次の専門家の見解が決定的に重要になる。

北海道大学の有川二郎教授(病原微生物学)
 8年前(2005年)に死亡した男性の血液からSTSFのウイルスが検出されたことについて。「男性に感染が疑われる期間の渡航歴がないのであれば、少なくとも平成17年には日本にもSTSFのウイルスが存在していたことになる。日本で見つかっているウイルスが海外から新たに入ってきたものだとすれば特定の地域で流行してもおかしくないが、これまでの患者は時期や場所がばらばらで流行は発生していない。こうしたことから、STSFのウイルスは古くから日本にあった可能性が高いのではないか」と話している。
厚労省結核感染症課
 (長崎の例では、)保存してあった血液検体から見つかったウイルス遺伝子により、国内で感染したとみられることが分かった。STSFは中国で09年ごろに集団感染が発生したことを発端に注目を集めたが、長崎の男性はそれ以前に感染していたことになる。 厚労省結核感染症課は「国内にもかなり以前からこのウイルスが存在していたという意見があったが、それを裏付ける症例だ」としている。
国立感染症研究所ウイルス1部部長・西條政幸氏
 STFSは、「100年、それどころか1000年単位の昔から日本にあった病気だと思われます。少なくともここ最近、あるいは戦後といった時期に来たものではありません。」

 これからの調査で、さらに詳しく解明されるだろうが、2013年2月末での専門家の見解は、「STSFのウィルスは、もともと日本に在ったものと考えられる。」ということに要約される。この症例が、これから流行するというものではないということだ。とは言っても、その危険性が無くなるわけではない。今回のダニ騒動を機会に、念のためにマダニへの対策を考えて山へ入ることが重要になってくると思われる。では、その対策とは何だろう。(つづく)



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