恋ノ岐川 奥只見 2012月9月中旬 2012思い出の沢10

 恋ノ岐川は、遡行者をやさしく包み込んでくれる穏やかな渓だ。喩えて言えば母を思わせる。白く光る岩の沢床や滝を、澄んだ流れがゆるやかに滑って行く。両岸低く降りる緑は、疲れた我々に涼やかな木陰を提供してくれる。荒々しい谷ではなくどこまでも優しい谷、それが恋ノ岐川だ。清水沢出合のすぐ先で天幕を張った。ここは、また素晴らしい泊り場だ。右岸の段丘に広めの寝床を準備し、広い磧にはかまどをしつらえた。上流から下ってくる渓風によって、枯れ木は赤々と炎を上げる。本流には豊かなナメがいっぱいに広がり、その流れが清麗な音楽を奏でている。天空には、明日の朗らかな天候を約束するように、星が瞬いている。恋ノ岐川! 渓を歩く喜びの全てがそにあった。

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