ウェルネス・クライマーズ短信 045
東黒沢〜ウツボギ沢 利根川水系
2012/10/20〜21
山ア 加藤




コ−スタイム
10月20日
土合駐車場7:25
−白毛門沢出合8:25−金山沢出合1080m10:43大岩2m滝上11:48〜12:15(昼食)−1350m鞍部12:50−ウツボギ沢出合13:45広河原13:50(泊)
10月21日
広河原7:55
−大滝上8:45−右俣出合9:00−1550大岩11:45〜12:15笠ケ岳稜線13:00(13:15)−白毛門13:50(13:57)−土合P15:45





 いろいろと悩んだ末白毛門を源流とする東黒沢を選んだ。我々の遡行できる沢を選ぶことは大変な苦労があると、沢塾の塾長が毎回同じことを口にするので記憶に新しい。でも、その通りと今は思っている。

 今回は、初めてのパートナ−加藤さんだ。十代から山に入り現在も山にかける気持ちは、われわれを遥かにしのぐものがある。

 自宅から土合駐車場までの所要時間を知りたいため高速を全面利用した。日光経由と比較すると、30分くらいの僅かな違いだった。10月後半の30分は大きい。

10月20日 湯檜曽川東黒沢
 7時25分に駐車場を出発した。入渓は左岸の踏み後をたどるとあるが、最近、はやりのキャニオニングを開催するツア−が近くにあるので、右岸に確りとした登山道がある。東黒沢本流へとのびている。ゴ−ロがしばらく続き、ナメ状の小滝が始まる。その先にナメ状の大滝ハナゲの滝が目前に迫ってくる。岩盤を滑る帯状の物体はまさに、生物のように、蛇行を繰り返す。この岩盤は良く滑る、乾いたところも藻がついていて滑る。前回の大行沢とまったく違い歩き始めは戸惑った。



白毛門沢出合 右俣東黒沢に入る
20mナメ状ハナゲの滝左手を登る

 大滝上もナメ滝が続き8時25分白毛門沢出合だ。車中の温度計は10度を下回り遡行姿に、白毛門に向かう登山者からは異様に見えたかもしれない。しかし、快晴の中汗がにじむ程度で体調も充分である。
 出合をすぎ小滝を何本か越すと一転、両岸が狭まり薄暗いゴルジュが現れた。幅2mくらいのトロ場が7〜8m続きその先は左に曲がり小滝が見える。夏であれば泳いで通過できるが、ここは左岸を小さく巻き補助ロープで懸垂した。


ゴルジュを左岸から小さく巻き補助ロープで下降
ゴルジュを越えて、3m+5m

 しばらくナメ滝が続く、10月後半というのに900を過ぎても木の葉の色つきはまだ弱い。この先で谷が広くなり、10m三段の滝となる。三回目となる東黒沢、しかしこの滝はあまり記憶に無い。自分には平凡な滝にしか見えないからと思うが、大きな滝がかからないこの沢では唯一の大滝だ。

 1038、1080の二俣を右に入る。倒木にナラタケが目立つ、その数はすごい、おしろいの匂いがするブナハリタケも重なり合っている。採りたいところだが先があるので横目で見て通り過ぎた。ブナハリは水分を多く含む、水を絞って採取すると良い。

ブナハリタケが群生する。檜枝岐村では、鶏肉、ヒジキと合わせ煮物で食べる ナラタケがたくさん出ていた


 今回高橋Sさん作成の遡行図と地形図を合わせ見ながら現在地を確認している。1200の三俣に見える位置だが右からの沢のみ確認した(二俣)が、左からの沢は分からなかった。水が切れていたかもしれない。ちょっと不安であったが本流を行くと、遡行図にある大岩と2m小滝が出現、遡行図のありがたさを実感した。
 1250を過ぎると地形図から読み取れないほどの、小沢が何本か入る。徐々に両側から薮がかかり源頭の趣となった。本流らしき方を選び1350の鞍部に出た。ここからは踏み後をたどり乗越してウツボギ沢へと下降した。ウツボギ沢合流地点右岸にテン場があるが、流れから近いので広河原に下った。6分でテン場に着く。すぐ目の前に宝川ナルミズ沢が流れる。その対岸にも良いテン場がある。


楓科の鮮やかなモミジ
1250mを過ぎると細流となる もうすぐ1350鞍部

 タープの下でシュラフにツェルトを被った姿で寝た。遠くに鹿の高鳴きが聞こえる。翌朝タープに押しつぶされ目が覚めた。夜露が放射冷却で凍て付き沢靴は朝日に照らされ銀色にひかり、通す靴紐は針金のように硬い。


10月21日 宝川ウツボギ沢左俣
 天気は良い筈だが雲の流れが速いそして昨日のような晴天といえないいやな雲がときおり現れる。薄手を下にその上にジオライン3D、そして半そでシャツを重ね着する。下着は薄いタイツを履く。足もとはネオプレンのソックスで固める。
 冷たい水に一旦ためらうが、一度つけるともう気持ちも引き締まり、戦闘ム−ドになる。いや、戦うのではなく、岩、水と良いコンタクトをとることと思っている。

 しばらく単調な歩きが続く。右俣手前に左俣唯一の大滝15mが行く手をふさぐ。とても登れそうにない。そこで滝の右手の岩溝を5mほど登る。左手岩稜に移りそこを5m登るとほぼ滝上だ。そこから薮に突入する。4mほど入ると沢床が木々の隙間から見える。落ち口から5〜6m位の位置になる。落ち葉で傾斜が読み取れない。1mスリングを2本つなぎゆっくりと沢床に降りたった。息もつかずに緊迫場面を越すと、歩き始めから50分経過していた。
 この先は小滝が連続する。小さな釜で足を滑らせ半回転してしまう。胸近くまで水没した。疲れが出始めて集中力が弱くなってきた証拠だ。うかつが危機をまねく、注意しなくてはならない。


1250m付近から小滝が続く 上部に樋状の滝



右俣手前に大滝が出現する


2m上から岩溝5m 慎重に一歩を踏み出す
落口から中ほど、二条に落ちる大滝15m+2m

15m大滝上から観るモミジは素晴らしかった

 急に沢幅が狭まる。両岸が立っている。水深もありそうだ。もう難所はないと安心していたところだった。夏なら泳いで通過できるが、水に入る勇気が無い。食い入るように通過できるところを探すが、足場が無い。困った。ここから引き返すことは出来ない。我々の技術では間違いなく落ちる。最悪の時は飛び込むことしかないと覚悟した。
 よく見ると釜に流れ着いた3mほどの流木が浮かんでいた。2mから上が二又になっている。そうだこれを利用しよう。そう思った。なにか先が見えそうになる。スタンスの無い岩に立てかけた。加藤さんがザックを置き軽身で越えた。「やった−」。うれしかった。ザックを拾い上げ投げるように渡す。山アも二又に足をかけ投げてくれたスリングをカラビナに通し、安全を確保して難所をクリア−した。
「必要が生んだ工作だった」。

倒木を利用して小さな釜を越えた

 1550陽の良くあたる大岩で昼食とした。(11:45〜12:15)余裕が出てきた。頭がさえてきた。
 濡れ物をザックからだし店を広げた。ガスで湯を沸かし熱い「抹茶カプチ−ノ」を身体に注いだ。心もウキウキ、身体もウキウキだ。

 1550から先は1580で右から小沢が入る、その先の1610で地形図上は左から入る。もう稜線も見えるだろうから、それから判断することにする。
 右を選ぶ。ますます急登になるも、稜線に出る感激を胸に秘め、一歩一歩近づく。息が切れる。同行者の息づかいも同じようにあらい。ここが詰めの醍醐味といえよう。稜線の登山者の声が近くなる。ザレ場の草付きに、良いルートを見定める。潅木から登山者の頭が覗く。
 「笠 白毛 稜線に出た」2012年10月21日午後1時ジャスト。
お疲れ様130歳。
                              山ア





1600mから笠稜線が見える
登ってきたウツボギ沢 7:55→13:00

稜線 笠ヶ岳(1852m)に続く一本の道




沢歩きの想い
 一歩沢に入ると何かテンションが上がる気持ちは誰もでしょうか。

 山の縦走とは違い、タバコの煙と登山者の気持は上へ登る。雨風忘れ危険さながら登る登山客。沢屋さんは 狭いゴルジで何を想い登るのか不思議でした。しかし体験しなければ分からないスポーツなのでしょうか? 
 ワクワク感、技術、体力、経験 山頂では何者にも変えがたい達成感、今は満足感に浸っています。
                              かとう



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