恋ノ岐川2 奥只見
2012.09.15〜17

SSC3名、高橋

ミヤマママコナ 深山飯子菜 台倉尾根で





遡行図  (オホコ沢)


  
恋ノ岐川1


清水沢出合の夕餉

 出発地は、静岡、埼玉、栃木とみなそれぞれである。山崎さんの地元、宇都宮駅に朝集合して現地へ向かった。恋ノ岐は遠い。国道を繋ぎながら那須塩原、檜枝岐、奥只見湖と走る。尾瀬口船着場から先が不通のため、平ヶ岳登山口に自転車をデポして車で走り、船着場から林道を二時間歩いた。ご飯を食べて入渓した時には、午後一時になっていた。恋ノ岐は遠い。タケさんがやや不調だ。どうやら風邪のようだった。
 台風16号の進路が心配だったので、できるだけ歩を先に進めたかった。だが、計画通り清水沢出合でタープを張った。これが幸運だった。広い河原で、素晴らしい夜を迎えることができたのだ。清水沢の出合は、ガレの押し出しで荒れていた。おそらく、昨年7月の新潟・福島豪雨によるものだろう。かなりの荒れ具合である。出合いを過ぎ、30mほど上流に広いナメがある。右岸の段丘に平坦地があった。
 ここは、快適なテン場だった。広いナメのそばに晩餐の支度をした。広々として、沢の上流も下流も見渡せる。絶好の環境だ。日が暮れれば、火が恋しくなる。ここに泊まる者は少ないのだろう。薪はすぐ集まった。長く続いた日照りのために、流木をくべれば、沢風にあおられすぐ炎を上げる。沢の遡行で最も楽しいひと時だ。
 互いに持ち寄った酒の肴で乾杯して、ゆったりとした時間を過ごす。とりとめのない話に過ぎないが、それが互いの心を豊かに平穏にする。泊りで沢を歩く目的の半分は、この夕餉のひとときにあるのだろう。やがて、上空には星が瞬き、我々の談笑を見下ろしている。明日の晴天を約束しているようだった。

 恋ノ岐川に快適なテン場は少ない。沢床が岩であるため、段丘が発達しないのだろう。岩床の沢の両岸は、ヤブで埋め尽くされている場所が多い。オホコ沢出合のテン場は両岸にあるとの情報を得たが、どうやら右岸の段丘は大水に削られてしまったようだ。左岸を上がれば、テント二張り程の平地があるが、周囲がヤブなので快適とは言いがたい。ただ、貴重なテン場であることには変わりがない。標高1000m付近のテン場も、三角沢出合付近にあるとされるテン場も、確認できなかった。おそらく、見逃したのだろう。1200m付近の段々5m滝の上、左岸に幕場の跡があった。ただ、ここは、水面から1mも上がっていない。

清水沢出合いからオホコ沢出合 
9月16日(二日目)
 朝から雲ひとつ無い空だった。出発の一週間ほど前の天気予報は、天気の谷間でくもりの予報だった。だが、数日前から晴れ間のでる予報に回復した。沢の遡行で、何より気になるのは、天候である。予報の回復は良いが、超大型の台風の発生があった。もしかしたら、17日頃には、台風の間接の影響が出るかも知れない。そう思っていた。
 この晴天はありがたい。本流を三角沢出合、オホコ沢出合と溯り、今日中に本流を抜けたい。オホコ沢に入り、1550m付近でテン場を開拓して、タープを張るつもりだった。もし適地がなければ、稜線に近い台倉清水へ上がる。そういう作戦だ。


ポットホールのある滝5m
ゴーロを歩く 早朝

穏やかな流れをゆっくり歩く 深い釜の小滝 釜の左をへつることができる 

長いゴーロもある 茶色の石は良く滑る 朝の光に水面が揺らめく

美しい滝 どこを登ったらいいか知恵比べ


三角沢出合手前 5mトイ状滝 水に入って正面突破 1140m
難しそうなゴルジュも 次々に突破


左岸の尾根が近くに見える
三角沢付近 こんな見事な滝も現れた 4m滝 1050m付近

ゆるやかな7m滝 二条に流れる ゆるやかな7m滝の上 岩床のナメを歩く 爽快


1180m二俣の上 二条3m滝
三段滝 3、4、2m めずらしくスダレ状の滝

複雑で壮大なパズル

 沢登りは、複雑なパズルだと思う。滝をどう登るか、釜や淵をどうへつるか、そしてゴーロをどのように歩くか。沢という壮大で複雑なパズルを解いているように思えるのだ。滝や両岸の形状や傾斜から、おおまかな登攀ルートを読み取る。岩壁に付いた複雑な凹凸の位置と角度から、手足を置くべきホールドを選択する。ホールドを巧みに使い、バランスを取りながら身体を上へ横へ移動する。どの滝も淵も、ひとつとして同じものはない。常に異なる対象を相手に、進むべきルートを歩む。

 ゴーロにしても、徒渉すべきか直進すべきかを常に読み取りながら、飛び石を踏むべきか、水底を踏むべきかを瞬時に判断する。ゴーロの歩き方によって勝負は決まる。アップダウンを最小にした者が、最小のエネルギーロスを得る。つまりは、長時間行動したときの疲労に明らかに差が現れる。沢登りは、複雑なパズルだ。そう思うことがある。恋ノ岐川の遡行は、一級のパズルだった。そういう意味で、どこにも退屈なところがない。


小さいが美しい滝 心洗われるひととき



二段くノ字滝8m 上から 右岸寄りの窪を上がった
二段くノ字8m滝 1310m付近


倒木がある 恋ノ岐川は荒れているところが少ない
ゆるやかな滝5m

三段滝 3、4、5m滝の連瀑 三段滝 最後の5m滝 複雑な釜をへつる


流れを振り返る 快適なテン場は少ない
オホコ沢出合前のゴルジュ 正面突破


オホコ沢(左)出合 右は本流
オホコ沢 かなりの水量がある



オホコ沢
 恋ノ岐川の支流は小さい。うっかりすると出合を見逃してしまう。三角沢出合を目標に歩いていたが、その確認をすることができなかった。連続した小さな滝を懸けた細流が出合っていたが、それだったかも知れない。「顕著な支流がないので、現在地の確認が難しい」とのウェブ情報があったが、その通りだった。清水沢の流れも少なかったので、このところ続いた日照りで、支流の水が少ないのだろうと思った。
 オホコ沢は大きな支流で、見逃す心配は無いだろう。今回は、オホコ沢を上がって恋ノ岐川上流部をカットする計画だ。8m滝の巻き道などから判断すると、オホコ沢はけっこう歩かれている。だが、オホコ沢の情報は少ない。遡行図を見ることもない。今回の遡行をもとに遡行図を作ってみた。
 オホコ沢に入ると、沢幅は狭くなるが、水量は意外に多い。2〜3mの小滝が続く変化に富んだ面白い沢だ。小滝の
CSには、なかなか手強いものもある。標高1450mで左岸から支流が入り、1500mの上で10m、8mの滝が続く。10m滝は、トップにつられて左の窪を登ったが、中間部のホールドが細かく、一時セミになる。ロープを要求して、ここではみんなに迷惑をかけてしまった。ここは、右の窪のほうが易しいようだ。8m滝は、見た目難しい。左岸にロープが下がっているので、これを使って小さく巻いた。1545mで三俣になる。すっかり源頭の雰囲気だ。ここは、地形図で見ると二俣に解釈できるが、右岸のわずかな窪から流れが入って、三俣になっている。水量からすれば、右俣が本流だろう。

 台倉清水は、稜線1650m鞍部の近くにあるらしいので、中俣を進む。ここは、すぐヤブがかかり始め、失敗の予感がした。右岸の崩れによって、ヤブが沢を塞いでいるようだ。右岸から小さく巻くと、すぐまたヤブのない沢が現れた。1575mの二俣は、水の多い右俣へ入った。伏流もあるがすぐ水が出てくる。だが、徐々に水は少なくなり、左にはっきりした踏み跡が出てくる。ここが台倉清水のようだ。水の溜りはあるが、流れは無かった。この踏み跡を上がればテン場があり、すぐ登山道になる。ヤブ漕ぎはない。


2、3mの滝が続く
オホコ沢はこんなところ 水が多い


ナメがあったり ちょっと面倒なCS滝があったり
釜のある小滝があったり


5m滝を登る
上段が10m滝 左の窪を登ったが少し難しい 右が易しい

ヤブがかぶり始める源頭を詰める 台倉清水は近い


 稜線へ上る前にテン場を開拓して、泊まる予定だった。地形図を見る限りでは、標高
15301570mが適地だろう。タープを張れそうな場所もあったが、暗くジメジメした場所ばかりだった。昨日の快適なテン場の印象が強く残り、だれもOKを出さないまま、稜線へ上がってしまった。台倉清水の下り口にタープを張れる場所がある。だが、水はなく、ご飯が炊けない。

 みんな、下山して広々したキャンプ場に泊まろうということになり、疲れた脚にムチを打って下山した。下山する間に暗くなり始め、完全に闇が支配した。車の回収をお願いした山崎さんは、明るいうちに二時間弱で下ったというから速い。登山口に着いた時には、タープを張る元気もなく、トイレと水があって屋根がある場所を探して車で移動した。悪運が強いのか、格好の泊場を見つけた。途中、冷たいビールも調達して、テーブル、イス付きの宴会場で、二日目の宴を開始したのだった。
 何年もこがれてきた恋ノ岐川は、恵まれたメンバーと天候とによって、充実した楽しい遡行になった。


間近に燧ヶ岳が見える 下ってきた台倉尾根を振り返る


疲れた膝を労りながら下山する
下台倉山から支尾根を下る 稜線の踏み跡が下まで見える


  恋ノ岐川1


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