ヘイズル沢左俣右沢1 奥利根楢俣川
2012.08.16〜17
SSC3名、高橋

ミヤマトウキ 深山当帰 標高1500m付近






  ヘイズル沢左俣右沢2



遡行図



コースタイム
8月16日
キャンプ場入り口前ゲート6:37−ヘイズル沢出合8:57
ヘイズル沢出合9:10−最初のゴルジュ9:35−1000m二俣10:35−16m滝12:43〜13:11−1180m二俣13:25〜35−1400m幕場15:40(泊)
8月17日
1400m幕場7:08−大滝20m7:20〜8:27−第一堰堤8:34−第二堰堤9:47−第三堰堤10:03−1710m二俣10:24−1780m二俣10:45〜10:57−1860m二俣11:28−稜線登山道13:14

プロローグ

 南八幡平の小和瀬川と葛根田川の支流を歩くのが、このお盆の計画だった。だが、どうも天候がすぐれない。7月ごろから、徐々に八幡平への思いを高めてきたので、そう簡単にはあきらめられない。同行するみんなも、おそらくそうだろう。山行の最終日の、黒湯温泉(乳頭温泉郷)の泊まりが無くなるのも残念だった。遡行の仕上げに、ひなびた湯治場で、疲れた身体を癒やそうという計画だった。だが、日に日に予報が変わり、ついにはあきらめざるを得なかった。
 さて、この重要な会の催しに、穴を開ける訳にもいかないだろう。急きょ選ばれたのが、ヘイズル沢だった。変な名前だが、ゴルジュを「へづる」ところから、「これがヘイズル沢の語源になったとも云われている」と、小泉共司氏の力作『奥利根の山と谷』にある。
 今回の遡行候補に選んだのは、『岳人8月号 2012年』にヘイズル沢の記事が載っていたからである。白い花崗岩と思しきスラブの大滝に、豊富な水を落とす写真を見て、胸が高鳴った。どうやら、私のような腕に不安のある「沢屋」にも歩けるようだ。元来、乾いた明るい沢を好む自分にピッタリの沢だ、同行する会の仲間もこれなら喜ぶだろう。南八幡平の行動予定日の二日前に、急きょこのヘイズル沢を転進先に決めた。間際に遡行先を変えたのも、今度の遡行の喜びに無関係ではない。あまり事前調査が進められなかったことが、予想外の驚きをもたらしたとも言える。

ヘイズル沢と赤木沢
 ヘイズル沢は、ピカいちの沢だった。「黒部源流の赤木沢に負けない美しさ」と表現したのは同行したタケさんだ。二人の女性を見て、どちらがどれだけ美人かと決めるのは、なかなか難しい。女性の美しさにもいろいろあるからだ。赤木沢の渓谷美が、ほとんどスキのない日本美人だとすれば、ヘイズル沢は少し違う。ヘイズル沢にはスキがあるが、躍動感や変化という点から、赤木沢に優る。赤木沢には、欠点というモノがない。そんな完全無欠な美しさを感じさせる渓谷だが、欲を言えば少しおとなしすぎる、というのが欠点だろう。
 ヘイズル沢は、初級者でも歩ける優しさを持った渓谷だが、変化に富んでいる。1000mの二俣あたりから始まるナメとナメ滝は、1180mの二俣まで、延々と2kmに渡って続く。その間に、碧(みどり)色の深い釜や渕が現れる。時々に現れる小ゴルジュもヘイズル沢に魅力を加えている。ときに現れる大きな滝の風貌がどれも違うというのも魅力だろう。それらの滝の登攀は難しくはないが、どれもそれなりの工夫が要求される。釜を従えたナメとナメ滝は、ヒタヒタと歓喜の心で歩き、小ゴルジュと大きな滝では、はたと止まり、その通過のラインを見定める。ナメとナメ滝は、単調ではなく、年月を経て穿たれた白岩の、深く味わいのある造形の美を見せてくれる。
 ヘイズル沢のスキと言えば、後半部に現れるゴーロと鉄製の堰堤だろう。だが、この間にも10mに満たない小滝が次々に現れ、遡行に退屈することがない。この「欠点」を補い、なお余る変化と躍動をヘイズル沢は見せてくれたのである。

魅力ある滝々とゴルジュ(1180m二俣まで)
 ヘイズル沢には、小さなゴルジュがいくつか現れる。どれも、遡行に行き詰るような難しさはない。だが、泳ぐという決断をしない限りは、へつりのラインを考えなくてはならない。入渓して20分ほどで現れる最初のゴルジュは、水際のバンドを伝うことができる。だが、出口の3m滝は釜が深くて取り付けない。左岸の岩を細かいホールドを拾って上がった。
 1000m二俣手前には、豪快な10m滝が現れる。この滝には、左岸側に格好のバンドがある。ここは、水に濡れずに登れる。1000m二俣を過ぎると三段15m滝と三段20m滝が連続する。ヘイズル沢のハイライトと言えるだろう。最初の三段滝は傾斜が緩いのでどこからでも登れるが、次の滝は傾斜が強く釜が深い。滝に取り付くのも大変だ。ここには、左岸に巻き道があった。小さく巻ける。この滝の落ち口には、仁王のような岩柱がある。1050m付近に現れる10m滝は、一見難しいように見えるが、水線左に絶妙なラインがある。
 標高
1075mで左岸から枝沢が入る手前にあるゴルジュは、先が見えない。腿辺りまで渕に入り左へ曲がると、あおぐろい釜の先に3mの美しい滝が見える。ここは、背の立たない釜を泳いで取り付く他ないだろう。我々は渕を戻って、右岸の凹部から巻いた。みんな泳いでいるのだろうか、踏み跡は見当らなかった。
 この先で、左岸から10mほどの段々滝で枝沢が出合う。この先、本流ゴルジュの出口にある6m滝は、ちょっと難しい。いろいろ考えたが直登の決断ができず、右岸を小さく巻いた。ここには残置ロープが有ったので使わせてもらった。そう難しいところではない。
 1130m二俣の先に現れる16m滝は、ヘイズル沢では最も豪快な滝だ。両岸深いゴルジュの先にドウドウと水を落とし、水飛沫を上げている。滝の近くは、切り立っており、巻きのルートを取るのはちょっと難しい。沢を戻ると左岸の上部に、段丘らしきものが見える。左岸を見ながら、容易に段丘に上がれる箇所まで沢を下り、ここと思うところから段丘へ上がった。すぐケモノ道に出た。ここが大滝を越える獣たちの巻き道だ。それは、最も安全なところにある。段丘を上流へ向かい、ヤブにぶつかったら右手斜め上方へヤブを避けて辿ると、またケモノ道らしい薄い踏み跡になる。そのまま小さな枝尾根を越えると左手下に本流が見える。ゆるやかな傾斜を下って、16m滝の落ち口に出た。小泉共司氏の遡行図では、右岸に巻き道を取っている。落ち口から両岸を見る限りでは、左岸の段丘ルートを選んだ方が容易だろうと思う。

ヘイズル沢へ入渓 穏やかな渓相 ゴルジュが現れる 越えられる ゴルジュの中を楽しみながら

ゴルジュ出口3m滝 釜が深い 左岸の岩を上がる 再びゴルジュ 右岸をへつる

ゴーロ 陽が差して熱い 沢幅はそう広くない

1000m二俣手前 初めての大きな滝10m 豪快な滝を懸ける 右のバンドを登った 落ち口近くでちょっと手掛かりが薄くなる この上からナメとナメ滝が続く
























三段15m滝を登る 壮快
三段15m滝 傾斜が緩いのでどこでも登れる


落ち口右岸に「仁王岩」
三段20m 傾斜が強く釜が深い 右を小さく巻ける

みどりの釜を巻いて歩く 沢の喜びが弾ける


水流左に絶妙なラインがある 山崎さん
10m滝 直登は難しそうに見えるが


ゴルジュを左に曲がると3m滝 釜が深い 戻って右岸を巻いた
トイ状ナメ滝を越えて 脚は軽い

次々に息を呑む光景が 碧色の釜をへつって進む 何度も感動しながら歩く 水が澄む滝壺

ゴルジュ出口の6m滝 唯一のラインは水流右 だが濡れる ここは右岸から巻いた

穏やかで美しい渓相 尽きることがない沢の美しさ 次々に新たな造形の美が

1115m付近 花崗岩の右岸をへつる ナメの連続に感激




















静かな渕の先に大きな滝が見える いかにも不穏な空気が漂ってくる
16m滝 激しい飛沫 登れる感じがしない 両岸は切り立つ  高巻きは、しばらく沢を戻る 易しいところを選んで左岸の段丘に上がる

まだまだ花崗岩のナメやナメ滝が続く 水が特有の色を見せる 心がいやされる


1180m二俣 正面に見える右俣 4m
1180m二俣 左俣の6mナメ滝 優雅なライン



Home