赤木沢1 黒部川
チングルマ(稚児車) 源頭付近

2012年8月2〜5日
タケさん、高橋






  赤木沢2  赤木沢3

コースタイム
8月3日
折立キャンプ場6:54−太郎平小屋11:00〜35−薬師沢小屋13:50(泊)
8月4日
薬師沢小屋5:50−赤木沢出合7:19−大滝25m9:08〜30−2230m二俣12:05(右へ)−北ノ俣岳13:15−太郎平小屋14:30〜45−折立キャンプ場17:30(泊)

プロローグ
 もう
10年以上も前に、独りで沢を始めた。それから、何年も経たない頃、北アルプスの黒部川に赤木沢という美しい渓があることを知った。赤木沢出合い付近の写真を見て、「桃源郷のようだ」と思った。桃源郷という所が、どんな場所を指すか分からずに、そう思った。「こんな沢を歩いてみたい」、そう思った。だが、その思いは、かなわないものとも思ってきた。沢を始めたばかりの自分にとっては、遠い存在のように思えたのである。
 沢という「哲学」は、奥が深い。10年経ってもいまだに初級者の域を抜けられないでいる。だが、ようやく、赤木沢に手が届くようになった。そう思ったのは、昨年だった。自分の歳を逆算すると、今行くしかないとも思った。同じ思いを持つ者が、身近にいることも分かった。昨年の夏、三人で、ついに赤木沢遡行の行動計画を立てたのである。だが、残念なことに天候が許さず、やむなく中止にした。
 今年は、最も天候の安定すると思われる季節に計画を立て、行き帰りのチケットを買って時期を待った。タケさんと二人だ。タケさんもこの渓への思いが深く、二人三脚が実現した。直前に台風の心配があったが、高気圧の勢いが強く、本州には寄せ付けなかった。ほとんど、天候の心配をせずに、いよいよの赤木沢だった。

赤木沢優游
 赤木沢は、その完璧に近い美しさを我々に見せてくれた。そのほとんどが、天候のおかげと言って良いのだろう。早朝に薬師沢小屋を出て、雪渓の残る稜線へ上がるまで、空は、抜けるような蒼さだった。だが、稜線を歩き始めた午後一時ごろには、夏雲が西の谷から勢い良く吹き上げてきたのである。高山の沢の場合は、天候が全てを支配する。そう言って良いのではないか。その点、完璧だった。恵まれた天候の中で、赤木沢は、その完全な美しさを開いて見せてくれたのである。
 赤木沢の美しさを、ことばで言い表したいとは思う。だが、それはかなわないことだとも同時に思う。長いアプローチをこなし、黒部川源流を歩いて来た者だけに、ようやく開いてみせてくれる、美しさだ。その美しさは、渦中の感動の中にこそあるのだから。

 だが、貧弱なことばで、あえて赤木沢を語ろうとすれば、その渓谷美は、1)出合いの水と岩と樹木の妙、2)開放的な明るさと青い空、3)両岸を彩る針葉樹と樺の緑、4)渓床を造る花崗岩や玉砂利、5)次々に現れる滝々、6)源頭まで豊富な水、7)巻き道の濃さ、などを上げることができるだろうか。もちろん、7)は、渓の美しさではない。遡行者を谷深く導いてくれる優しさのようなものだ。そういえば、かつては優子という名の女性が多くあった。「優」は優秀の優だとばかり思っていたが、名付けた親は、その子に「優しさ」を求めていたのだろう。今にして分かる。わが子には、「悠子」と付けたかったが、当時は、「悠」が人名漢字に無いということで、諦めた思い出がある。「ゆうこ」には、やさしい響きがある。
 「優」を辞書で調べると、「ゆたか、広い、のびやか、ゆるやか、やさしい、しとやか」など、次々にその意味が啓かれてくる。これは、赤木沢の美しさそのもののことではないか。

赤木沢の核心
 赤木沢は、グレード2級、初級の沢になっている。そのため、沢を数回歩いた者が、自分でも歩けるかも知れない、そう思われている沢のようである。先日、赤木沢の情報を収集している時に、「三度ほど初級の沢に行った(連れて行ってもらった)ことがあるが、自分達でも赤木沢を歩けるでしょうか?」という、ウェブ上の質問があるのを見た。その愚にもつかない「問い」に、沢愛好家らしき人間が丁寧に答えている。行けるという意見と止めろという意見があった。だが、いったいこの質問者は、第三者の意見をどのように捉えて決断をするつもりなのだろうか。結局は、誰かが決めるのではなく、行く者が自分できめる他無いのだが。それは現地へ入れば、もっとよく分かる。言うまでもなく、現地でルートを判断するのは、自分以外には無いということである。

 赤木沢の核心は赤木沢に無く、黒部川本流に在るといって良い。当日は、平水と思われたが、ちょっと迷うへつりや徒渉もあって、なかなかルート判断に悩ましいところがあった。源流とはいえ、黒部本流の流れは重い。何でもないようなところで、前進に行き詰まり、少し迷った。岩登りを含めたへつりで、何とか突破したが、徒渉すべきか、へつりを続行すべきか、都度迷う。水が少しでも多い時には難儀するのだろう。赤木沢に近いゴルジュは、左岸を巻いた。巻きがあるところは難しくない。核心は、一見なんでもないところのへつりと徒渉である。

早朝の薬師沢小屋 みんなは雲ノ平へ 5:40 ハシゴを使って黒部川へ降りる 5:50 黒部川 行く手は晴れている

まだ陽の差さないゴルジュ 小さな滝が見える 高巻きの上からゴルジュの滝を見る


前進に頭を悩ますところがときどき
赤木沢出合前の黒部川本流 出合に日が差し始めた

赤木沢出合の黒部川本流 美しい滝

今日の遡行者は、6人、1人、1人、2人(タケ、高橋) 薬師沢小屋の宿泊者の10分の1 この辺りまでは固まって遡行

赤木沢出合ゴルジュ この奥が赤木沢だ 左岸をへつるとナメになる



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