小仙丈沢2 南アルプス

最初の大滝上に咲いていたタカネニガナ(高嶺苦菜)

2012年7月27〜28日
高橋



遡行図



  小仙丈沢1

コースタイム
小仙丈沢入渓7:30−F1大滝上8:47−F2大滝9:18〜9:41−2360m二俣10:26−2550m二俣11:18−2730mカール下12:16−2800mカール(詰め開始)12:37−2940m付近稜線13:27−稜線鞍部2830m13:38〜45−小仙丈岳14:05−北沢峠15:20

花々
 小仙丈沢、小仙丈カールに咲いていた花々


シモツケソウ 下野草 入渓地点1850m イワオトギリ 岩弟切 1970m タカネニガナ 高嶺苦菜 一つ目の大滝上

ヤマガラシ 山芥子 一つ目の大滝上 ミヤマムラサキ 深山紫 2360m二俣付近 コバイケイソウ 小梅尅 2500m

タカネコウリンカ 高嶺高輪花 2550二俣上 モミジカラマツ 紅葉唐松 2550m二俣上 シナノキンバイ 信濃金梅 2550m二俣上

コイワカガミ 小岩鏡 カール チングルマ 稚児車 カール キバナシャクナゲ 黄花石楠花 カール

ハクサンフウロ 白山風露 カール ミヤママンネングサ 深山万年草 カール タカネナナカマド 高嶺七竈 稜線下

ツガザクラ 栂桜 稜線直下


アプローチ
 広河原は、早朝から3〜4台のバスが出るほどの行列ができていた。早朝6:50発の北沢峠行きバスが、6時半ごろの臨時発車となる。2号車へ乗り込んだ。野呂川の谷は本当に深い。時々現れる左岸支流はどれも急峻で、ルンゼといっても良いものばかりだ。広河原から北沢峠まで歩いたことがある。まだ、バスが運行される前のことだ。砂利道を3、4時間かけて歩いたと思う。多分、甲斐駒へ登る時だったと思う。
 「野呂川出合」で降りたのは三人だった。ここで降りるのは、大方釣り人である。沢を歩きそうな者は見当らなかった。バスを降りる時に、両俣小屋の手前でクマ出没の情報があったと、運転手が教えてくれた。小仙丈沢まで40分ぐらいだろうか。クマ鈴を忘れたという釣り人と一緒になり、小仙丈沢へ歩く。これには助かった、歩くあいだ退屈せずに、あっという間に小仙丈沢についた。35分ぐらいだ。
 途中、小仙丈沢の全体を仰げる場所がある。青空の稜線まで沢は一直線に昇り、要所に大滝が白い筋になって見える。小仙丈沢は、全体が大きな滝といってもいい。遠目に見える急勾配の沢の全景は、圧巻と言って良いかもしれない。とても登れる沢には見えない。この急峻なルンゼを登るのかという感じがする。写真に撮らなかったことを後悔した。

アサヨ峰に朝日が当たり始める 5:40 北岳の勇姿と大樺沢 快晴だ 6:05

もうこんなにバスを待っている 6:16 早朝6:30北沢峠行きの一番バスが入る 6:17


一つ目の大滝まで
 谷へ降りるのを心配したが、入渓の心配は不要だった。一歩で入渓できるほど橋は低い。すぐ先に鉄製の堰堤が見える。左岸に踏み跡がある。幸いこの上には堰堤がない。
 
1900mの二俣を左へ入って10分ほどで、6mほどの滝になる。ここが初めての滝だ。ここは、左のルンゼを上がりバンドを落ち口にトラバース。滝の右からも登れそうだった。小仙丈沢は、沢が開けているので木陰がない。夏に登るには熱いところだ。単独のため、どうしてもハイペースになる。背中から差す強い日差しもあって、初戦から肩で息をする始末だった。どこかでマイペースに戻るだろうと思いながら歩いたが、いつまで経っても調子が戻らなかった。やっぱり、もう二ヶ月近く厳しい山行から遠ざかっているからだろうか。
 
1990m辺りで、左岸にテン場にできそうな草原が出てくる。この遠方にはもう最初の大滝(8、5、15m)が見える。かなり大きい。近づいてみると益々大きい滝になる。前衛の滝は右手を上がり、上段15mは、左岸の枝沢から巻いた。枝沢を大滝落ち口高さまで上がり、本流方向へトラバースする。踏み跡もあり、危険なところは無い。落ち口には、黄の鮮やかなタカネニガナ(高嶺苦菜)がひっそりと咲いていた。大滝上は、大岩がゴロゴロしていて歩きにくい。ここには、左岸に踏み跡ができていた。すぐ左岸に大きな雪渓が現れた。だが、歩くには支障がないので安心した。二週間前に小仙丈沢を登ったweb情報では、二つ目の大滝あたりで、雪渓によって敗退したとの情報があった。それから、まだ二週間だ。雪渓は心配の一つだった。

堰堤を越えて遡行開始 今日は沢を独り占めだ 1900mの二俣 ここは左へ


1990m テン場が探せる 空は快晴だ
初めての滝6m 左のルンゼを上がり乾いたバンドをトラバース


一つ目の大滝が見えてきた 背中に陽が当たるので、この辺りでもうかなりバテている
一つ目の大滝(8、5、15m) どこが登れるのかなーという感じがする


大滝上に咲いていた タカネニガナ
一つ目の大滝 正面から 前衛の滝は楽勝 上段15mは左岸から入る支沢を上がると簡単に巻ける


二つ目の大滝まで
 一つ目の大滝の上には、4、5mの滝がいくつか現れるが、どれも問題になる滝はない。二つ目の大滝は、遠くからでもよく見える。近づくに連れてその大きさがよく分かる。
 二つ目の大滝は、下から4、5、
1515mぐらいだろうか。下段の滝はまだしも、上段二つの滝は登れる気がしない。ここには、滝が三つ横並びで懸かっている。本流の四段大滝、そして四段大滝のすぐ左に落ちる水の少ない二ノ滝、そして枝尾根を介してさらに左手に大きな三ノ滝がある。なお、二ノ滝は、四段大滝の二段目の上に落ち、下段に合流している。二ノ滝は、高巻きルートに使えそうだが、一箇所難しそうな所が見える。今回、三ノ滝下には高さ10m、長さ30mほどの大雪渓があり、三ノ滝には直接取り付けない。比較的簡単と思われた三ノ滝を上がろうと計画していたが、ここで修正を迫られることになる。三ノ滝の流れは、雪渓に3mほどの穴を開けて流れているが、そこを潜って三ノ滝に取り付こうとは思わない。怖い。
 やむをえず、四段大滝の下二段を右手から上がり、二段目5mの落ち口を右岸に渡った。この高さでちょうど大雪渓を交わしている。大雪渓を左下に見て、本流右岸側の枝尾根を越えて三ノ滝へ移った。そこは、三ノ滝の中段部だった。ここから三ノ滝右手を上がり、右岸のブッシュを目指すホールド豊富なルートが見える。コケの付いたスタンスは滑りそうだが、順層で問題はない。どれもしっかりしたスタンスだ。タワシや渓流手袋で、コケを落とせば完璧だ。ブッシュのある右岸に移ったあとは、水流沿いに落ち口下までガバホールドで上がれる。落ち口は少し絞られるので、バランスを取りにくそうだった。右岸のブッシュをつかんで、最後の2mを上がった。全体に3級マイナスぐらいだろう。ただ、高度感はあるので、緊張するかもしれない。この水の少ない三ノ滝の高さは、本流四段大滝と同じぐらいだ。実際には、下を見る余裕がなかったので、緊張するヒマもなかったが。


一つ目の大滝の上には雪渓が現れる 歩行に影響はない程度
ゴロタ滝6m その後ろには四条の滝5m

四条の滝5m 横から















二つ目の大滝遠景 手前に大雪渓 その向こうに見える細い流れが三ノ滝 右の顕著な滝が本流四段大滝 三ノ滝と四段大滝のちょうど中間に見えるかすかな細い流れが二ノ滝 二ノ滝上部はブッシュに隠れている

遠景拡大 登った三ノ滝は一番左側


本流四段大滝 前衛の滝3mに大雪渓が庇のようにかぶる 大雪渓が邪魔をして三ノ滝を直接登れない まずは、前衛の滝3mを左から越えて大滝の前に出る 緊張した 四段大滝全景 4、5、15、15m 左上に見える細い流れが二ノ滝 下段4、5m滝の右手を上がり、本流を右岸に渡る 中間の枝尾根を越えて左手(右岸側の)三ノ滝へ移る


四段大滝下部二段を上がった後、右岸側の中間尾根を見る この枝尾根(雪渓の上辺り)を向こうに越えれば、三ノ滝だ 三ノ滝はルートを見抜けば、順層のスタンスとガバホールドで登れる 下を振り向く余裕もなく、登攀完了
二ノ滝 上部が立っている 上手な人ならここを登るのだろう

小仙丈カール下まで
 二つ目の大滝の上には、もう大きな滝はない。5〜10mぐらいの滝が続くが、特に難しいところは無い。沢幅も広くどこまでも明るい沢である。どの滝も比較的傾斜が緩く行き詰るところは無い。2300mの上から2450m辺りまで連瀑が現れる。さながら沢全体が滝になってしまったようである。2450m辺りからは、両岸から岳樺の枝が伸びるようになり、高山独特の渓相が現れる。対面には小太郎山の手前のピーク2535mが見える。2550m付近の二俣(2:3)は右に入るが、この辺りからはハイマツが現れ、いよいよ高山の様相が顕著になる。岳樺の丈も低く、明るい雰囲気は変わらない。2550m二俣を右へ入ったが、すぐに沢がまた二手に分かれる。圧倒的に水の多い左を選択するが、この水は、2620m付近で突然涸れてしまった。この辺りの両岸は広く、10mほど右手に小沢が並行していたので、こちらの沢へ移って遡上する。すぐ、傾斜のゆるい6mトイ状滝になる。この滝が、小仙丈沢の最後の滝である。その上で沢は大きく西向きに方向を変える。2730mを過ぎると、小仙丈カールがその全容を現す。左手の砂地にテン場の跡があった。想像していたより、残雪は少ない。連日の暑さで急速に溶けたのだろう。



1360m二俣左へ入る
傾斜のゆるい7m滝 ここから連瀑 水が冷たくなる

2360m二俣 左俣4m滝 4m、5m滝 10m滝 2380m付近


三段10m上段 水が舞う 2440m付近
こんなところもあって 北岳に対面する


北岳 絶好の天気

源頭の雰囲気に 2570m付近
2560m二俣手前 岳樺がひろがる


傾斜のゆるい6mトイ状滝 この滝が現れると小仙丈カールは近い
カールが開ける直前の沢を喘ぎながら登る まだ水がある 雲が出てきた

小仙丈カールが開ける 思いのほか残雪は少ない


















詰め・稜線まで
 壮大なカールの下に、すでに体力の限界に近い自分が居る。小仙丈岳から仙丈岳へ向かう稜線には、登山者の姿が点々と見える。カール下の自分は、小さな動く物体のように見えるだろう。時々は歩き出し、すぐに動かなくなる。時々浮石に足を取られて転ぶ。時にはそのまま動かなくなる。屈まって写真を撮っている小さな自分がいる。あの、まだまだ高い稜線に上がらなければ、今日の仕事は終わらない。みんなからは丸見えなので、こんなところで倒れる訳にはいかない。何とか、あの登れるかどうか分からない急斜面を、詰めなければならない。だが、一体どこを。
 ハイマツを避けて登ろうとすれば、ガレを詰めるしか無い。地形図を見れば、2830mの鞍部がある。だが、この鞍部はハイマツに覆われている。「鞍部+ハイマツのないガレ」を探してカールを歩くうちに、2800mまで登ってしまった。この頭上は、稜線までハイマツがない。何とかここを登りたい。稜線直下までは、何とか登れるだろう。その上は、そこに登ってみなければ分からない。ガレをジグザグに登る。折り返し点では都度、息を整えて。そうでなければ、次の一歩が出ない。何度立ち止まったか分からない。ルートを選んで、最も安定したラインを目指す。そういうラインは、たいがい獣の足跡がある。カモシカだろう。そういえば、カールには、特徴のあるイノシシの糞があちこちにあったが、ハイマツの生えるこんな高山にイノシシがいるのだろうか。
(あとで気付いたが、この糞は日本カモシカのものだろうと思う。)
 詰めの上部では、ハイマツの枝をそっと掴みながらバランスを取る。まだまだ滑落するような傾斜ではない。だが、ハイマツの枝は助かる。ハイマツの縁に沿って上がる。ようやく北岳のずんぐりした頂点が、小太郎山の右手に見えてきた。稜線直下の、岩場の下のラインをトラバースして、登山道のすぐ下に出た。緑のロープを張った杭が見える。登山者の顔がはっきりと分かる。最後の急なザレを、トラバース気味に上がれば終了だ。ここで初めて、このルートが正解だったことが分かった。遡行終了は、2940m付近稜線。仙丈岳にかなり近い位置だった。
 濃いサングラスの登山者が一人寄ってきて、「この変態野郎」と言いながら握手を求めてきた。稜線を歩きながら、カールを動く小さな物体に注目していたらしい。


詰めの途中から鳳凰三山の方角
詰めの途中、稜線直下から 小仙丈岳

矢印のルートを詰める 標高差140m カール下から50分

小仙丈カール全景 2830m鞍部から見る

登ってきた小仙丈沢を稜線から 稜線を降りてきた方角を振り返る 登山者は多い

下山
 下山を始めると、脚が攣りそうになった。しばらくそのまま下ったが、回復しない。稜線鞍部(2830m)で休憩して、カールを振り返った。詰めで登った急なガレ斜面を改めて見ると、なかなか急峻だった。どのガレを稜線へ詰めるのか、人それぞれだろう。ガスが懸っていると、詰めのルートを予測するのは難しい。今日のルートよりも下に、ガレが稜線に達するところが一箇所ある。時間的にはその方が有利かもしれない。
 時計を見ると、16:00発のバスに間に合いそうだった。脚もすっかり調子を取り戻していた。駒仙小屋に泊まる予定だったが、間に合えば帰るつもりで、ピッチを上げた。15:20には、北沢峠へ着いた。



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