白石沢篠大慈沢 西丹沢

今日はこの標識から入渓

2012年7月16日
高橋









コースタイム
用木沢出合前ゲート10:28−白石ノ大滝上標識(1025m)11:39491150m二俣12:141280m二俣12:51−前大室13:32−加入道山13:4554−白石峠14:04−用木沢出合15:25

プロローグ

 久々に沢へ出掛けた。だが、今度の沢はスカだった。人生にスカは付きものだが、沢のスカは少ない。今の沢登りは、たいがい人の評判を聞いて、スカのない沢へ出掛けるからだ。人生の全てがスカだったのではないか、と思うことがある。最近は、このマイナス思考が時々襲ってくるが、無視している。まだ、沢の情報が少ない時代には、スカが多かったと思う。だが、今の沢登りは、スカを引かないのが普通だ。「遡行する価値のある沢」だけが歩かれ、スカの沢は見向きもされない。かつて話題になった100名山の登山と、本質的に変わらない。
 人生だれしもスカを引きたくない。そう思ってくじを引くのだが、大方はスカだ。一等、二等は幸運な者にしか訪れない。くじというのは、いや人生というものはそういうものだ。そんなふうに思うことがある。実人生がスカなので、山歩きや、沢歩きぐらいスカのないところへ行きたい。そういう心理は、人生のスカの裏返しであり、もっともなことだ。正直言うと、私は百名山的沢登りが大好きである。

アプローチ
 やっと梅雨の天気が回復しそうなので、西丹沢へ出掛けた。昨年の12月に歩いた白石沢本流の先を歩いてみようと思った。突然思い立ったので、用木沢出合に着いたのは10時過ぎだった。途中、丹沢湖の下流、河内川の流れは茶色に濁っていた。そんなに雨が降ったのだろうか、思いがけないことだった。
 用木沢出合先のゲートを出発したのは、10時半になっていた。左下に白石沢の流れを見ながら歩いて行く。増水の心配をしたが、沢の水はいつもの様に澄んでいた。いつ見てもこの沢の水はきれいだ。岩床も両岸も花崗岩なので、土による濁りがない。西丹沢のキャンプ場の人気は、この水の美しさによるのだろう。用木沢出合の下のキャンプ場には、いつもの様に数百台のマイカーが止まり、テントを張っていた。広い河原が重機で均され、ヤブが埋められる。車が横付けできるスカのないキャンプ場である。
 左手に旧白石キャンプ場を見て、白石沢の左岸を歩く。トリキ沢が出合うところで右岸に渡ると、その後は、頻繁に徒渉することになる。いずれも、木製の橋を渡る。前にも書いたが、白石沢は、堰堤の展示場のようなところだ。短い距離の間に堰堤が次々に現れる。登山道はその堰堤を上手にかわして高度を上げる。850m付近で大きな二俣になる。両俣とも堰堤が見える。左手が白石沢本流、右俣がザレノ沢だ。去年の12月は、左俣の白石沢本流に入って遡行した。今日は、去年歩いた大滝上まで登山道を使って巻いていく。
 ザレノ沢の900m地点辺りから、登山道は右岸の尾根へ上がり、その尾根を大きく巻いていく。やがて、左下に白石沢の沢音を聞くようになる。白石ノ滝(大理石ノ滝)という看板が現れ、樹間に大きな滝が見える。二段30m、白石ノ滝だ。全容が見えないので、迫力に欠けるが、その大きさを感じ取ることはできる。この大滝の上に登山道の徒渉点がある。ここには、「白石峠1km」の標識がある。去年の12月はここまで白石沢を遡行した。大滝の上段20mは巻いた。今日は、ここから上流側を遡行しようという訳だ。




白石沢は堰堤が続く 時々木橋を渡る



850m二俣 左は白石沢、右がガレノ沢
立派なツガの木が立っている


ガレノ沢の右岸を巻いて白石沢の方へ 大きな滝、白石ノ滝の上段が見える


今日の入渓はここから始まる



白石沢篠大慈沢
 「白石峠1km」の標識のすぐ上で、沢は二手に分かれる。左俣は、西へ向きを変えて白石峠へ向かう。水量が多い。沢の大きさに比べて、この水量の多さは似合わないぐらいだ。下山時に白石峠から下った時に、この水量の多さの理由が分かった。1100m付近から湧き水が大量に噴き出ていたのである。この沢が、白石沢の本流とされているようだ。だが、いかにも沢が細く、源頭の雰囲気いっぱいなので、きょうは北上する篠大慈沢を歩くことにする。なお、2.5万図の白石峠は、1307mピークになっているが、実際の白石峠は、1307mピークの150m北の鞍部である
 篠大慈沢は、しっかりした沢形だが、水の流れていない涸れ沢である。涸れ沢のわりには、沢の石の上には落ち葉の一つも落ちていない。雨が降ればたちどころに流れが生まれる沢なのだろう。「イガイガの丹沢放浪記」に、上流で水流が復活する、とあったので期待することにした。涸れ沢は、動物の頭蓋骨を思わせる白い石が目に付く。これが白石沢の由来だ。真っ白い石は、涸れ沢の中でも際立って見える。大理石だ。大きな岩床がそのまま大理石のところもある。独特の模様も入っている。この光景は、白石沢特有のものと言ってよいだろう。1130mで水が出てきて、その後水量は増えるが、わずかな流れである。大方がゴーロだが、河原の石はきれいに洗われている。さっきまで水が流れていて、突然干上がったような、何か不思議な光景だ。
 1150mで二俣になる。左俣は加入道山へ詰め上げる沢だと思うが、水流が全くない。ここは、水流に惹かれて右俣へ入ることにした。この辺りから、ガスが懸かりはじめ沢の先は白く霞んで見える。今日は晴れだと聞いたが、どうしたのだろう。途中、左右から支沢が入るが、沢形のしっかりした本流を歩いた。相変わらず水は少ない。1220mで水のある沢が左から出合う。ゴルジュになってその先は見えない。少し探検してその沢へ入ると、右に折れたところで3mほどの滝になる。その上は、岩のルンゼを登るようだ。入口は狭いが、これが、地形図で1230m辺りで分岐し、加入道山と前大室の間のコルに向かう沢だろう。ここは、本流に戻って遡行を続けた。
 左がガレて倒木がかぶる箇所、標高1250mを過ぎると、思いがけなくナメ滝が現れる。フリクションが効くので簡単に上がれる。この先すぐに、1280mで源頭の二俣になる。右俣はかなりの傾斜の段々滝になっている。左俣より沢は大きく水量も多い。左俣はゴルジュ状になって、上部が見えない。ここは、簡単そうな左俣へ入るが、そう簡単でもなかった。すでに、最後の詰めに入っているので、傾斜は増し、沢は狭くなっていた。この左俣は、まず30mの岩溝ルンゼの登りになる。垂直に近い最初の滝を上がれば、岩も堅くホールドもしっかりあるので問題ない。その後も、左の支尾根に上がるまではルンゼ登りになる。1330mの4m滝は岩が脆いので慎重にクリア。
 1400m付近で沢の登攀が難しくなるギリギリで左の支尾根に上がった。支尾根はヤブもなくすっきりしている。噴き上げるガスで展望はないが、ガスが晴れれば、眺望のきく場所なのだろう。支尾根を歩き始めるとすぐに草地が現れ傾斜が緩む。ロープで囲われた登山道に出た。右手のすぐに「前大室」の標識があった。前大室に向けてまっすぐに登ってきたらしい。前大室のギリギリまで沢を詰めたことになる。前大室も加入道山もガスっていたが、なぜか心は満足だった。沢も天候もスカだったのに。そして人生も。


白い大きな大理石が沢に転がっている
1040m二俣 右が篠大慈沢 篠大慈沢は涸れ沢 沢形はしっかり

1150m二俣 右俣篠大慈沢には少し水流がある
二俣の渓床は白い大理石

最初の滝らしい滝3mCS クライミング気分で右の岩を上がる

篠大慈沢は水が少ない

1220mの右岸支流を入ると3m滝 戻って本流を行く こんなゴーロを歩く 水は少し


スラブのナメ滝 フリクションが効く スラブのナメ滝上 ナメ滝はすぐに終わる

1280m二俣 左俣の30mルンゼ最初の滝 次々に小さい滝が連続する ここが核心 どの滝も岩が堅くホールド豊富

ズーッとルンゼが続く 4m滝(1330m) ここの岩は脆いので注意

1400m付近で支尾根に上がる 少し歩くと前大室の標識の前に出た もちろん誰もいない 
ガスが懸っている



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