金山沢〜曲沢 奥秩父滝川

ハシリドコロ 有毒で鹿が食べない

2012年5月5〜6日
さわね3名、高橋



遡行図



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「疲れたー」というのが、金谷沢遡行の印象である。下山の最後に、滝川の吊り橋から国道140号線に上がる急登では、なんども立ち止るという状態だった。今までにはない沢の経験である。せっかくの遡行で、「疲れたー」というのが第一印象というのは、何か情けない気がするが、事実なのでしょうがない。とりあえず、歳のせいにしておこう。

コースタイム
5月5日
出会いの丘10:25−林道終点11:05−下降尾根11:47−金山沢出合13:50−10m滝高巻き14:15〜16:10−1020mテン場17:20
5月6日
テン場発07:15−小屋跡07:55−1200m地点09:06−小屋跡10:53−1420m二俣11:35〜50−1520m12:20〜50−1670m鞍部13:56−1120m二俣16:26−小屋跡16:38−沢小屋沢17:38−国道140号線19:10


遡行のポイント
 滝川金山沢の遡行のポイントは、(1)踏み跡の定かで無い枝尾根を、ピンポイントで金山沢出合へ降りられるかどうか、(2)ゴルジュの10m滝の高巻きを首尾良く果たせるかどうか、(3)踏み跡薄い滝川右岸道を探索できるかどうか、という点にあった。さらに、この3日間、かなりの雨が続いたため、(4)滝川本流の徒渉ができるのかどうか、というポイントが加わった。これらは、中級レベルの遡行技術を持った者にとっては、どうでも良いことかも知れない。だが、今に至るまで、「沢の初心者」で在り続けている自分にとっては、結構頭を悩ませるポイント群なのだ。
((1),(3)は、資料編を。(2),(4)は、本文を参照のこと。)
 →資料編

豆焼橋 快晴 これからの遡行に期待が膨らむ

*5月5日の巻


滝川本流の徒渉
 これはダメかな、そう思った。滝川本流の水の勢いを見た時である。金山沢出合前の淵をこの数日降り続いた雨で、「五月雨をあつめて速し最上川」の状態だった。金山沢出合から入る水も、とてもネットの写真で見たような分量ではない。まるでポンプで吹き出しているようだ。うーん、これはやっぱりダメだな。だが、あきらめきれないので、出合いの前でウロウロした。ここで釣り人の玉さんが、「ここは渡れます。」と確信的に言う。「おい大丈夫か」と高橋は思った。「今日はここで終わりだ。」と別の確信をしている残りの二人は、崖を降りずに上で待っている。「ここで焚き火して、酒呑んで、明日は帰ろう」そういう、お手軽な考えである。


滝川本流金山沢出合前 白く泡立つ流れだった
他の遡行記録の写真と比較すると、
水量は多い
降りてきた滝川本流左岸 渡った右岸から撮影

 徒渉をするかどうか、迷った。だが、とてもトップを引く勇気のない高橋は、玉さんの「確信」にすがることにした。流されたらどうする、という打ち合わせもして、玉さんがロープ徒渉に突入。高橋が確保。ハラハラする高橋の心をよそに、玉さんは無事徒渉した。続くmoguさんは、両岸で張ったロープにカラビナで確保して渉る。途中水圧で水の深い下流側に押され、ロープにはマックスに近いテンションが掛かる。が、なんとか耐えて徒渉完了。徒渉は初めてというイサさんには、頼りない高橋が徒渉のコツを「伝授」して流れに入る。上背を生かして無事切り抜ける。緊張したことだろう。さて、最後の高橋は、対岸確保でロープをハーネスに固定、流れに飛び込む。緊張したが、横向き徒渉で「難なく」越えた。うーんこれは、去年の入川本流の遡行経験が生きている。見た目よりは水が深くなく、太もも下部辺りだった。平水の場合は、問題のない徒渉ができるのだろう。でも、いずれ玉さんの度胸で、徒渉は無事完了した。
 だが、白泡の立つ水を轟々と吐き出す金山沢のゴルジュがすぐ待ち受けている。これが、本当にネットで見た金山沢の出合いだろうか。本当にゴルジュを通過できるのだろうか。難しいのは、ゴルジュ10m滝だけだと思ったが、この水量が難易度を高めていた。確信が持てないまま、ゴルジュに突入。ダメなら、戻ればいいや、これ以上滝川の水量が増えることはないだろう。

三番手にイサさん 打ち合わ後、徒渉(moguさん撮影) 高橋が徒渉 見た目よりは浅く助かった(moguさん撮影)

ゴルジュと10m滝
 おそらく平水の時は、楽しい遡行になるのだろう。だが、今日のゴルジュはそうはいかない。水しぶきを浴びながら、必死で岩にしがみついて滝々を越えた。時には玉さんがリードしてくれた。10m滝には、垂直に近い右壁にトラロープが下がっている。
 この巻きのトラバースの情報は、困難さを強調するものが多い。「FIXロープがあるが、意外と悪い高巻き」、「高度感があるので要注意」、「巻きは悪い」、会のMaさんからは、「結構微妙な一歩だった」などなど、どれも暗い論調だ。しかも、これらは敬愛する沢のベテランの感想だから、侮ってはいけない。万年初心者の高橋としては、ここは多分越えられないだろう。同行者も同じだ。とすれば、どうしたら良いのだろう。ここで帰るか、越えて先へ進むかだ。進むには、トラロープの下がった左岸の巻きを避けて、新ルートを開拓するのが良いだろう。これが、机上で考えた末に出した高橋の見立てだった。滝を見ても、その見立ては変わらなかった。

 この巻きは、滝を少し戻って左岸の急な泥壁に取り付いた。直進できるような壁ではないので、ルートを左右に選んで30mほど登攀。泥だらけになりながら、左岸尾根に上がった。ここからは、緩傾斜の稜線を少し上がる。左手下に先の10m滝が見えてくるので、滝の位置を頭に入れてトラバースを開始する。果たして、沢へ戻ることはできるのだろうか。地形図には両岸とも岩マークが続いている。だが、運がよい。10m滝上の左岸は、予想に反してロープ無しで沢へ降りられる。ばんざーい。そう難しいところはないが、左岸尾根のトラバースでは、滑落にそなえて数回ロープを出した。この高巻きでは、結構な時間を費やした。それでも、きわどい箇所のないこの高巻きルートは有効だろう。

最初の滝5mCS 右を小さく巻く 3m滝 水の勢いが強い


10m滝を背に左岸を高巻く 急な泥斜面を30mほど上がれば尾根に出る
前方隠れた位置に10m滝 右の垂壁にトラロープが下がっている 前衛の滝には倒木が引っ掛かっている

左岸尾根を歩くと左手に10m滝が見える この滝の上流側へトラバースする きわどい箇所はないが滑落には注意


テン場と宴
 沢へ戻ってからも、あいかわらず水量は多い。そう大きくない金山沢を轟々と流れている。右岸に枝沢を見て、次の右岸枝沢のすぐ先にS字状小ゴルジュが現れる。ここは、とても突破できず右岸を巻いた。この下降点にはトラロープが下がっている。テン場は、悪くても1100mの小屋跡と決めいていたが、すでに五時近くなっていた。小屋跡まで行くのは難しいだろう。テン場にできるところがあれば、どこでも停泊するつもりで歩いた。たいして遡行していないのに、高巻きと水量の多さで余分な時間を費やしてしまったようだ。足元に疲労も来ている。S字状小ゴルジを通過して3mほどの滝を二つ越える。
 両岸が岩壁でスラブ小滝が続くと、右岸の段丘にテン場適地があった。標高1020m付近だ。偶然で思いがけないプレゼントだった。きれいに整地してあり、5人用テントが張れる。いっぺんに疲れが引いていくように思えた。それぞれに持ち寄った山食を分けあって、いつものように、終わらない宴会に突入するのであった。次第に夜も更け、きょう一日の締めくくりにふさわしく、空には星、上流の尾根には満月(スーパームーン)が上がっていた。時間を気にしながらも11時まで宴会は続いた。沢泊が初めてというイサさんも楽しそうだ。それぞれに、それぞれの喜びを噛み締めてテン場に倒れこんだ。


比較的小さな沢を泡立つ水が落ちる
下降地点の金山沢


小ゴルジュのS字状の流れ
小ゴルジュの高巻き トラロープを降りる

スラブの小滝が続く 右岸に最適なテン場があった 快適なテン場に夕闇が迫る(moguさん撮影)



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