水晶沢、雷木沢 丹沢山塊モロクボ沢

ミツバツツジが咲き始めていた

2012年4月29〜30日
SSC2名、高橋



遡行図
水晶沢




*水晶沢 4月29日
  (→雷木沢の記録へ)

プロローグ
 SSCでシーズン初めての山行だった。SSCは、ゆったりと楽しく沢を歩こう、という会である。「楽しく沢を」というのは当たり前過ぎる。だから、実は「ゆったりと」というところに力点がある。「ゆったりと」というと、聞こえはいいが、現在手持ちの体力を大事に使って、沢歩きを楽しもうという訳だ。SSCは、「清遊沢の会」の略称だ。今まで、5年間続いた、ウェクラsawakaze企画の発展形と考えれば良い。まあ、細かいことはどうでも良い。今回の参加者は3人だった。Yさんは、遠いところから参加して頂いた。丹沢のマイナーな沢なので、遠いところから来てもらって歩く沢なのか、というような小さな不安があった。だが、どっこい、ダイナミックな沢だった。私たちは、全員、興奮気味に沢の遡行を終えたのだった。場末のキャンプ場は、連休にもかかわらず静寂が保たれていた。様々な事情で少人数になったが、それも良い。3人ゆっくりと火を囲んで、沢の喜びを噛み締めた。

 水晶沢と雷木沢を歩いた。丹沢の奥深い沢である。どちらも、丹沢のバイブル「丹沢の谷110」にも載っていない。私が独りで丹沢を歩き始めた10年前には、これらの谷の情報はどこを見ても無かったように思う。有ったとしても、丹沢の主、マシラ仙人の情報ぐらいだったろう。試みにマシラ仙人の記録を開いてみると、「雷木沢は、ゼルフィスさんの記録で知った。03/04/13」とある。最近では、丹沢のバリエーションに取り組む愛好家によって歩かれているようである。これらの方々のお陰で、奥深い谷の「全容」がその姿を現しつつある。とは言っても、モロクボ沢(室窪沢)の支流である水晶沢の方は、けっこう歩かれているようである。水晶沢左俣の稜線直下の詰めには、薄い踏み跡ができている。それに比べて、雷木沢は、人の気配も踏み跡もまだまだ薄い。それは、F1の障壁が人の侵入を防いでいるためだろう。このF1の登攀をこなせる人は、そういないだろう。巻き道も険しい。

モロクボ沢から水晶沢出合い
 モロクボ沢はいつも明るい。両岸が開けているからだろう。ちょうど淡い若葉が開き始めた頃である。快晴の天気の下、明るく美しい渓相の沢をF1大滝までのんびり歩く。F1は、20mはある豪快な滝だ。落ち口で絞られた水流が岩に砕けながら滝の流れを徐々に広げてゆく。登れないので、巻くことになる。2008年にYさんと歩いた時は、右岸を大きく巻いた。だが、もっとお手軽な巻き道があるらしい。大滝の左を垂壁の前まで登れば、左にロープの下がった窪が見える。段々の岩場だが、ホールドが遠く、小柄な人にはハンディがある。特に最初の段を上がるのにバランスを要する。ここは、Hさんに尻を押してもらってクリア。その上も、スイスイとは行かないが、ホールドを確保して慎重に上がる。難しくはないが、最初の登攀なので緊張した。ここは、固定ロープを使えば容易に上がれるだろう。幸いなことに、落ち口へも簡単に降り立てる。


やまびこ橋を渡って行く 快晴 言うことなし
モロクボ沢へ入渓すると、 明るく穏やかな渓相



遠くに大きな滝が見えてくる
大滝20mF1 いつ見ても豪快な滝だ



F1の落ち口 簡単に沢へ戻れる
水流の左を垂壁まで登る。ここは難しくない。左へトラバースすれば、階段状の巻き道がある。ロープが下がっているが、慎重に登りたい。

 モロクボ沢の「白眉」は、大滝から標高810mの手積みの堰堤までだ。大滝のすぐ上は、荒々しいナメ滝、その上からは美しい曲線を持つ滝が続く。青く澄んだ水を湛える大きな釜を持つ。どれも4〜5mの滝だ。「沢に来て良かった」と卒直に思う。10年ほど前に、このモロクボ沢を歩いたときに覚えた感動が、その後の沢歩きに繋がっている。手積みの堰堤前の4mナメ滝(写真なし)は、中間部が滑る。ここもタワシでフリクションを確保し、右の水流に突っ込む。水量が多い時は苦戦するのだろう。左岸に支点とスリングがあった。写真を撮るのは忘れたが、手積みの堰堤は、石工が丹精込めた見事な堰堤だ。コンクリートの堰堤には無い独特の風格がある。地形図にわざわざこの堰堤が記載されてあるのは、石工職人への賞賛を表わしているのかも知れない。


5m滝を登る高橋 モロクボ沢の楽しいところ
F1上の2m+5m滝 水流沿いを登った方が簡単 滑るのでタワシを使ってコケを落とす


しばし、幅広のナメになる 心が自然に明るくなる
5m滝落ち口

ナメを歩くと前方に幅広の滝が見えてくる。(写真では少し分かりにくい)
5m幅広滝 深い釜がある。つい休みたくなるところだ。水流右側にホールドがある。この上で釣り人と遭遇。帰るところだった


左の滝の釜をトラバース中
4m滝 釜の左をトラバースして水流左のクラックを上がる


水晶沢
 支流水晶沢の出合を入り、5分も歩くと右岸からキメ岸沢が出合う。15mほどの滝を従えている。試みに登ってみると傾斜もゆるく、簡単に登れる。その落ち口の先には12mのスラブ滝が立っている。ここを登るのは難しいだろう。今では、西丹沢のバリエーションに取り組む篤志家によって、このキメ岸沢の奥も明らかにされつつあるようだ。機会があれば、歩いてみたいと思う。ひとつのテーマにそって、その山塊の全容を収めようとする者に、自然に尊敬の念が浮かぶ。マシラ仙人を始めとして、最近精力的に丹沢を歩いている人々に敬意を表したい。
 キメ岸沢出合を見送った先に、やっかいな5m滝がある。直登は難しい。右岸の段状の岩をブッシュをつかんで上がり、落ち口をトラバースした。ここは、手元が悪くやや緊張する。この先、ナメが始まったと思うと、左岸から8m滝で水晶沢右俣が出合う。ここは、二俣である。当初、この滝を上がり右俣を遡行するつもりだったが、意外に早く水が涸れるようなので、本流左俣を歩くことにした。左俣は、すぐナメとなり、やがて傾斜のゆるい15m滝になる。傾斜が緩いので、どこでも場所を選んで登れる。だが、滑る処があるので要注意だ。
 この先は、990mの二俣を右へ入り、1050mの二俣では、水量の多い左へ入った。ここでは、30mほどの階段状の涸れ滝を登ることになる。なかなか面白い。難しいところはない。詰めは、標高1120mの分岐を左へ入り、1130m付近で右の枝尾根に取り付いて急登した。稜線直下には、薄い踏み跡ができている。我々と同類の沢の遡行者だろう。ほどなく、1170mの主稜線鞍部に出た。


キメ岸沢出合の滝15m 簡単に登れる この上に12mナメ滝がある最近はここも歩かれているようだ。
5m滝 左の段状の岩を上がり落ち口をトラバースした。手元不安定で少し緊張。段状の岩は左から回りこんでも登れる。


左俣は、すぐナメになる
ナメが現れると右俣が8m滝で入る この滝は登れそうだ。今日は、左俣を歩く。

水晶沢大滝15m 傾斜が緩い癒し系の滝 滑らないようにルートを選んで上がる。

5m滝 1040m二俣手前


雷木沢右岸尾根の下降
 水晶沢ノ頭1278mから登山道を南西に100mほど下り、鹿柵の間を左、東に下がると左手に尾根が見える。ここが、雷木沢右岸尾根だ。この尾根は、笹が生えているが、葉が鹿に食べられてしまっているので、けっこう見通しが良い。注意すべき尾根の分岐は、1190m、1120m、1030m、950から920m、790mにある。どこも難しくないが、950から920m辺りの分岐で迷いやすい。この辺りでは、踏み跡も分散してしまう。迷うとしたらここだろう。970m辺りで檜の植林帯に出るので、この植林帯の左端をたどり、920m付近まで下がる。ここでは、一度植林帯の左下のヤブに入る。そのまま左、北東へ下がると、雷木沢に下る枝尾根だ。東南東に進路を定め、分かりにくい広尾根を下る。やがて、踏み跡も現れてくる。だが、ところどころ踏み跡も消えるので尾根を外れないように降りる。標高850mで、右下の広い作業道に出る。やがて、赤いハシゴを越えて鹿柵の中に入る。この辺りは790m分岐手前である。鹿柵に入って20mほど踏み跡を下ると、左手に枝尾根Aが見える。これが、雷木沢に降りるルートだ。ここは、そのまま踏み跡をジグザグに下れば、いずれ鹿柵に沿って踏み跡が下がる。やがて、鹿柵を離れるように左手の枝尾根Aの北側斜面を下るようになる。ここは、土留めの柵が並ぶ斜面なので安心して雷木沢へ降りられる。ここには、鹿柵の外へ出る赤いハシゴがある。降りた地点は、雷木沢の標高690m付近だろう。


ミツバツツジがポツポツと咲き始めていた 下るに連れて若葉が多くなる



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