下棚沢 丹沢西沢

紅葉の西沢を歩く

2011年11月15日
ジョーさん、高橋



遡行図






コースタイム
駐車場9:10−下棚9:45〜58−7mF310:16−7mF411:16−二俣930m12:30−二俣1000m13:10−二俣1110m−稜線1250m14:20〜40−下棚沢出合15:51−駐車場16:20

プロローグ

 ジョーさんの個人山行に加わった。ジョーさんは仕事の都合で、平日に山へ出かけている。西丹沢の下棚沢は、以前から行ってみたいと思っていた沢である。行ってみたいが、単独ではちょっと躊躇する。下棚沢はそんな沢だ。下棚沢は、シモンタナサワと読むらしい。下棚沢は西沢の支流で、盟主は下棚である。高さは40mとも言われる。現物を見てみれば、たいした滝だ。沢を初めたころ、この滝を見たことがある。驚いた。その高さではない、この滝を登る沢屋だかクライマーがあるという、そのことにだ。この滝を登る者があるというだけで、驚きだった。いまでも、この滝を登攀する者を無条件に尊敬してしまう自分がいる。10月に白毛門沢で会ったヒロタさんは、この滝を登ったらしい。彼氏の南アルプスの遡行記録は、読むだけでもワクワクする。

下棚40mは見るだけ ツルツルの逆層に見える

序盤・ゴルジュ
 F1下棚は見るだけにして、巻くことにした。とても登ろうという気が起きない。登れない。下棚沢の出合へ戻り、左岸の尾根へ上がれば立派な踏み跡がある。作業道なのだろうか。巻き道としては頼もしい。やせ尾根を上がると、谷へ降りる踏み跡がある。まず、10mF2下へ降りる踏み跡だ。ここを降りても滝が登れないので、その先を歩いた。こんどは、7mF3下へ降りる踏み跡だ。下棚沢へ来て、F1〜4のあるルンゼに降りなければ面白く無いだろう。そう思って、7mF3の手前に降りた。ここは、西丹沢の見事なゴルジュが待ち構えていた。文句なく美しい。
 F3の手前には二段7mの滝がある。ここは良いが、F3は登れそうにない。左のルンゼから巻こう。何とか登れそうだ。そう考えた。これがいけなかった。ガイド情報では左を巻くと書いてあったが、すぐ先にまた7mほどの滝が見え、大高巻しないとその上に降りられない。という訳で大高巻きになった。序盤からやや面倒な高巻きで緊張した。ルンゼから取り付き、ブッシュと木の根を頼りに、足元のゆるい斜面を稜線まで登る。枝尾根の稜線を息を切らせて登って降り口を探す。7mF4の落ち口をかわしたあと、あれこれ迷った末に、かなり急な岩場を15m懸垂した。この高巻きで50分も使ってしまった。このルートは、時間がかかる。私のように腕に自信のない向きは、ゴルジュは見るだけにして、左岸の作業道に戻ってF3、4を巻くのが楽だろう。そう書いてあるガイド本もある。

尾根から高巻き 踏み跡がある 7mF3、手前は前衛の滝二段7m 7mF3 なかなか手強そう



急峻な巻をブッシュ頼りに
ゴルジュを抜けてF4落ち口からゴルジュを振り返る


中盤・連瀑帯
 ゴルジュ通過の後は、これぞ西丹沢という景観が現れる。花崗岩のスラブに折からの黄葉が落ち、白岩のゴーロが続く。幸せだなと思う瞬間である。両岸の木々は、鮮やかに色付いている。西丹沢の白い岩には、奥秩父のようなに青い苔が付かない。白い岩は白いままである。それが美しい。流れは細くても、両岸の彫りは深い。随所にスラブの白い沢床を見せる。ただ、滝の濡れた部分は褐色の苔をつけている。これは良く滑る。
 F4上、ゴルジュ終了点から小滝を二つ、今にも大岩の落ちそうな2mCS滝を過ぎる。白砂のゴーロを軽快に歩くと、遠方に大きな滝が見えてくる。三段15mだ。一段目の落ち口がかぶりぎみで直登を躊躇する。右から小さく巻いて落ち口へ立った。中上段はスラブに落ち葉が降り、滑りやすくなっている。弱点を選び、フリクションを頼りに登ることができた。
 三段15m滝上には、すぐ四段20m滝がある。ここも傾斜は緩いがスリップが怖い。三段目はそこそこ傾斜がある。トイ状の流れのすぐ右手、乾いたスラブのクラック沿いに登ることにした。何とか登れそうに見えたが、いかにも滑りそうだ。高橋がジョーさんの足元をおさえてスリップを防ぐ。その上の一歩がなお難しい。ジョーさんは微妙なスタンスを丁寧に使い、この一歩を越えた。その上も難しそうだが思いがけなく手掛かりがある。
 自信のない者が、ここを一人で登るのは難しい。だが、私は、沢歩きというのは、基本的に個人競技ではないかと思っている。例え複数で登るにしても、競技者は一人である。リードするものと補助するもの。補助に当たるべき時に、競技に加わろうとする者が時にある。これはいけない。自らの力量を正確に判断していれば、このような逸脱は無いと思うのだが。競技者への強いあこがれが、なかなかそうさせないのだろう。ジョーさんが、「今日は二人で来て良かった」と言った時、こんなことを考えた。おそらく、ジョーさんは、補助というものの重要さ、とりわけ精神的な支えを語ったのだろうと思う。だが、やはり競技者は一人なのである。その上で、わたしも「今日は二人で来て良かった」と思ったのだった。ここは、未経験の単独行では、こなせない。


2mCS 左をジリジリと上がる
白い岩のゴーロ 足取りが軽い

三段15mの滝が現れる 下段は小さく巻いた





























三段15m滝下段の落ち口へ上がる
三段15m滝 中段 フリクションで登れる


四段20mナメ滝 下から バランスを崩さないように一段目の落ち口をかわす

四段20mナメ滝二段 滑るので注意 同三段目上から ジョーさんリードで水流左のクラックを微妙なバランスで登った 高橋はゴボウで登った


終盤・スラブ帯
 三段15mと四段20mの連瀑帯が中盤のハイライトであるとすれば、標高950m付近から頂上直下まで延々続くスラブ帯は、終盤のハイライトであろう。途中左岸の山抜けを見れば分かる。この辺りの基部は、岩である。薄い表土が硬い岩を覆っているに過ぎない。水によって削られた沢床には、スラブが広がっている。このハイライトの始まりは、標高950mの8m逆層の滝である。この滝は、web情報によれば登っている人もあるようだが、少し覚悟がいる。水には濡れるし、褐色の苔が、遡行者のスリップを狙っている。写真を撮る角度によって、落ち口下に絶好のテラスが有るように見えるが、かなりの逆層である。とてもここに立ち上がれるとは思えない。幸いこの滝は、左岸に入る水のある沢から巻くことができる。この滝上から、広いナメや幅広の滝が次々に現れる。標高1000mの二俣を右へ入ると、やがて下棚沢の神々しさが現れる。沢が右へ曲がるところに大スラブが現れ両岸が切り立つ。沢を歩く者は自らを小さな生き物にすぎないと感じるだろう。この苔のゴルジュの先に、どんな大滝が待っているのだろう。単独行ならば、この雰囲気に包まれただけで帰りたくなってしまうかも知れない。幸い大滝は現れない。数mの滝や水の少なくなったナメ滝が現れる。苔がついて赤く見える赤岩滝5mや1110mの二俣下にある三段8mが大きな滝だ。
 赤岩滝は、左岸のルンゼを上がると絶好の巻き道がある。なお、この滝手前左には、自然が創りだしたと思われる洞があり、その中央に石仏が鎮座しているのが見える。自然の造形としては、でき過ぎている。倒木の先に現れる三段8m滝は、弱点を縫って登ることができた。この終盤のハイライトは、途切れること無く、遡行のルートを考えさせる滝が現れるので、時間の経つのを忘れてしまう。いつの間にか、1110mの二俣に差し掛かっていた。


テラスに見えるところが逆層 苔で滑るだろう
逆層8m滝 完全に濡れるだろう 右の沢から巻いた


スラブ帯が始まる 滝は幅広 正面幅広2m 標高1020mの4m滝


3m滝 左から登った
赤岩滝5m落ち口から 前方に洞が
ある
洞の中には仏像らしきものが
自然の造形にしては出来過ぎている


倒木の先に三段8m 登れる


詰めとすり鉢
 1110m二俣の本流は、左正面に見える窪だろう。彫りの深いスラブの窪が上部へ向けて伸びている。スラブの登りを敬遠した。少し時間も遅くなっていることもあった。ここは右俣へ入って稜線を目指すことにした。だが、この先どんなスラブが待っているとも限らない。心配した通りだった。8m、5mの傾斜のゆるいスラブ滝の先が明るく開けているように見えた。どんな美しい景観と希望が待ち受けているのだろう。だが、そこは巨大なすり鉢だった。天井だけがポッカリと開けて日が差している。正面は、何処か陰鬱な壁だった。10mはあるだろう。垂壁に緑の苔が突いている。行き止まりだ。幸い右の枝尾根が低かった。ここを上がろう。その先の大きな支尾根を上がれば、主稜線1250m付近に出るだろう。傾斜が緩いとはいえ、最後の詰めはつらい。何度か立ち止まって休んだ。ようやく秋の深まった静かな稜線に着いた。わずかにガスが漂っていた。


1110mで右俣へ入るとすぐ8m滝

5m滝スラブ滝
すり鉢の正面に壁が ここは右の枝尾根に逃げる

静かな山稜にたどり着いた 標高1250m付近



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