白毛門沢 湯檜曽川東黒沢
ナナカマド 下山途中 松ノ木沢ノ頭付近

2011年10月16日
ウェルネス・クライマーズ
大橋さん、山崎さん、Kさん(ゲスト)、高橋


遡行図  なし





コースタイム
白毛門登山口8:42 −白毛門沢出合9:26〜37−12m滝10:50〜11:03−タラタラのセン11:25〜44−1250m二俣−1380m二俣13:31−白毛門山頂14:50〜15:05−白毛門登山口17:10

プロローグ
 午後に家を
出て、土合駅の地下要塞の階段を上がって、改札口へ出た。夜9時少し前だった。すでに、6パーティーが思い思いに陣取って呑み会を開いていた。今日はめずらしく単独の前泊である。一人だと、酒もつまみも進まない。細長いコンコースの端っこに陣取って銀マットを敷いた。寂しくても、一人とは良いものだ、取り留めのない思いを反芻しながら、静かに呑んだ。
 同好会のさわねに入って、はや5年。さまざまな山の知識を学び、さまざまな思い出を作ってきた。どうした訳か4年目に代表についてしまった。思いもかけないことだった。素人同然の自分が、「沢」の付く同好会の代表に。今思えば、何かの間違いだったのだろう。真剣にやるほど小さな齟齬が現れた。現在受講している「グローバリゼーションの人類学ー争いと和解の諸相ー」では、人類を「孤独への性向と集団への性向の間を行きつ戻りつする」ものとして捉えている。もともと、社会集団というものは、「孤独への性向も同時にあわせもつ勝手気儘な人間を束ねる人為的な装置」だという。わずかな齟齬が、孤独の中で拡大される。閉じることによって争いは生まれ、開くことによって霧散する。そう思いたい自分がいる。ゴーッと空気が動く時がある、座っている銀マットの横の、小さな蜘蛛の巣が震えている。清水トンネルを疾走する列車が、駅構内の空気を引きこんで行く。明日は、白毛門沢だ。

土合駅ホームから 地下要塞のよう 階段を上がって下を見下ろした


ひろたさん
 翌朝、かなり早い時間に、Kさんが土合駅に到着。駅にいてもしょうがないので、白毛門登山口へ向かった。時々雨が降ってくるが、雲の切れた合間から青空も見える。どうしたわけだろう、ウェクラの大橋さん、山崎さんがなかなか来ない。たいがい時間前に来る人たちなので、少し心配だった。およそ30分少々遅れて到着。どうやら、出発時間を勘違いしたらしい。北西方向に、とんがり帽子の大源太山がみえる。良い天気になってきた。出発しかけた時に、ひろたさんの姿を見た。偶然だった。

 ハナゲ(花華)の滝を始めとするスラブが美しい東黒沢を遡ること1時間で、白毛門沢の出合だ。ハナゲの滝の下で、再びひろたさんと会った。ネットで知っていたので、気楽に声をかけてしまった。先方は、もちろん私の顔を知らない。先日、メールを頂戴したことも覚えていてくれた。ひろたさんとは、ひとことふたこと言葉を交わして、そこで別れた。ハナゲの滝の左岸も登れると言っていた。ひろたさんの挑戦的な遡行は、彼氏のHPを賑わしている。南アルプスに興味を持っているので、その方面の遡行記録を探すと、ひろたさんの記録は結構出て来る。だが、どれも自分には登れそうのない、登攀を主にした遡行なので、「うーん」と感心しているだけである。
 白毛門沢の大滝タラタラのセン15mは、タラタラどころか瀑布に変わっていた。一日前に降った雨のせいだろう。あろうことか、このタラタラのセンに取り付いている者がいる。驚いた。たいがいここは巻くルートだ。よく見ると下で別れたひろたさんだった。落ち口のすぐ下で格闘していた。ひろたさんの登攀をこんな所で見るとは思いも寄らなかった。思わず写真をとった。このタラタラのセンを登る登攀者の写真は珍しいだろう。貴重な資料となった。しばし格闘の末、ひろたさんはゆっくりと落ち口の向こうへ姿を消した。

タラタラのセン15m 手前の滝は前衛6m滝 タラタラのセン15m 落ち口右を登るひろたさん 格闘技だ


秋の白毛門沢を歩く
 白毛門沢は、時々癖のある小難しい滝が出て来る。それがまた楽しい。5年ほど前に、某沢登り教室の劣等生として同行したことがある。難しい滝や、先生に叱られた場面をよく覚えていた。最近、脳の記憶装置が緩んできているのを自覚しているが、苦労したり、ドキドキした滝はよく覚えてるものだ。

 「白毛門沢は、沢全体が滝になっている」と表現しても、あながち間違いではない。沢床がスラブで次々に小さい滝が現れる。出合に着く頃には、予報通り青空が出ていたので爽快な遡行になった。折からの紅葉の季節で、美しい彩りの木立を見ることもできた。台風による強風のせいだと言われる枯れた葉に混じって、みごとな黄葉が美しい。緑の葉波に鮮やかな紅を見せるカエデも、なかなか見栄えがする。嬉々として、ナメやナメ滝をぐんぐん越えた。
 最初に出てくる大きな滝12mは、右手の岩を登り、落ち口手前で左岸に逃げた。一箇所ハーケンが有ったので使わせてもらう。ひろたさんの登ったタラタラのセンは、左から巻いた。この大滝には前衛の滝が、二つ有る。5mほどの逆層の滝、その上の6mほどの滝だ。5m滝は左から小さく巻いた。根曲がりのブッシュが登りにくい。微妙に難しい6m滝は左を登った。タラタラのセンの下から、右岸を踏み跡に従って登ると、一本目の枝沢に出る。この急な沢を6mほど登ると右手に、落ち口方向へ向かう踏み跡があった。二本目の沢に出たあと、2、3m上がるとまた右手に濃い踏み跡がある。そのまま落ち口へ出られた。タラタラのセンの上は、難しい5m滝である。ここは、登れない。右手を上がり上手に巻ける。さすがに人気の高い沢だ。高巻きがしっかりしている。この辺りがハイライトだろう。

東黒沢 花華ノ滝の下で (撮影:ひろたさん) 花華ノ滝を登る我々 (撮影:ひろたさん)

花華ノ滝上 釜とスラブを歩く (撮影:ひろたさん) 大岩の下を潜って 水量が多い (撮影:ひろたさん)

白毛門沢の出合(左)に到着  東黒沢本流は右


5mトイ状滝 左を巻いた 二段滝 水量が多いので映える 6mトイ状滝  左を登り中間部で左岸に渡る

こんな穏やかな渓相も 難しい滝は笹とブッシュを掴んで登る 5m滝 この奥に12m滝がある


12m滝 右を登って落ち口下で左岸へ逃げた
タラタラのセン15mとその前衛 水量が多い 
ひろたさんの登攀を声援 我々は左を巻いた

 この上の大ナメ滝は、面白いが、ルートを間違えると登れない。高橋は、左寄りを突破しようと力んだが、滑って登れない。あえなく敗退。右岸の草付きへ逃げた。おかげでこの大ナメ滝を楽しむことができなかった。右を登った三人は滝を楽しんでいるようだった。この辺りで、ひろたさんと接近、写真を取り合いながら、ひろたさんたちが先行した。我々は大岩の下でお昼にした。まわりの紅葉を楽しみながら、ゆったりと休憩できた。至福のひとときだった。

大ナメ滝 前衛の滝に取り付くひろたさん 大ナメ滝 簡単そうに見えるが、ルートを選ばないと登れない

大岩 デカイ ここでひろたさんチームと接近


 1250mの二俣を越えた辺りから、徐々に沢幅が狭まり、源頭の雰囲気になる。ここからが長い。頂上までは、500m近い標高差がある。1500m付近からは、急な岩登りになる。越えても越えても現れる滝。気の抜けない滝も出てくるが、行き詰まるところは無い。1550から1600m辺りの二俣で方向を確認して左へ向かった。雨が降ったあとのためだろう、頂上直下まで水流があった。滝滝滝の連続で、ひとつひとつがクライミングのトレーニングになる。途中で辞めたくても、登り続ける他はない。笹原に入ると人の声がする。すぐ、頂上だった。


ジジ岩が、つぎにババ岩が見えてくる 二俣を右へ入るとこんなナメ滝が 次第に沢幅が狭くなる


黄葉が青空に映える
源頭の近く まだ水はある 左へ緩やかに回り込んで行く

終盤近く スラブを登る ホールドはしっかり有る



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