釜ノ沢西俣 奥秩父東沢

西沢渓谷入口駐車場からスタート

2011年10月8〜9日
さわね企画山行
Iさん、Mさん、moguさん、Yさん
タケさん、高橋



遡行図  なし


コースタイム
10月8日
西沢渓谷入口駐車場7:20−鶏冠谷出合8:05−山ノ神9:46−釜ノ沢出合12:00〜25−両門ノ滝13:49〜14:07−同滝上14:33−テン場1670m15:16
10月9日
テン場7:37−二俣1753m8:17−二俣1840m9:21−二俣1890m9:30−二俣2050m−奥の二俣2100m−稜線登山道12:13〜40−甲武信ヶ岳山頂13:38〜49−甲武信小屋14:06−戸渡尾根分岐14:35−林道17:38−西沢渓谷入口駐車場18:10

プロローグ
 釜ノ沢西俣を歩いた。釜ノ沢の遡行記録を、釜ノ沢のあれこれをここで仔細に語る気はない。すでに、この沢については、先輩諸氏が、事細かく報告してくれているからである。私的なことのみ記しておきたいと思う。という訳で、今回は遡行図を書かないことにする。だが、遡行図について、詰めのルートについてはひとこと言っておきたいとと思う。

登場人物
 今度の山行には、準会員になったIさんが参加した。これが、会の初めての山行とのことである。と、会の代表の私がいうのも変だが。これには理由がある。会の人数が大きく増え、一人ひとりの動向を記憶するのが、なかなかできなくなっていること。これは、脳の記憶装置が大分錆び付いている私自身の問題でもある。もうひとつ、今年は、天候によりことごとく週末の山行が中止になっていることである。7月に入会したIさんは、会のどの山行に参加したんだっけ。確か山行計画に載っていた時も確かにあった。だが、その山行が実施されたのか、中止されたのか?「うーん。どうだったかなー。」そんな感じである。
 Iさんは、なかなか好感のもてる人だった。というからには、なぜそうなのかをここで書いて置かなくてはならない気もする。が、それは難しいのでよしておこう。会員の諸氏も実際に彼氏に会った上でその良さを感じて欲しい。まあ、もっとも人間に対する好悪の感情など、人それぞれで当てにならないものである。
 Iさんとの会話で、記憶に残っていること。*海外へときどき遊びに出掛けていて、すでに60ヶ国を「冒険」していること。*かつてはJECCに所属をしていたこと。*甲斐駒、大武川支流赤石沢を登攀していること。*赤石沢で遭難した仲間の捜索に当たったことがあること。この、経歴を見ただけでも万年初心者の私から見れば、眼を見張るべきものがある。だが、私が彼氏に感じた好ましい感覚は、そういうことではない。飄々とした物腰や漂う人物の匂い、とでも言おうか。私の粗い笊(ざる)のような文章からは、するりと抜け出してしまうような、そんな人物ではないかと「感じた」のであった。
 Mさんとも今年初めての山行だ。Mさんは、なかなか騒々しい人物である。登山道を、後ろから付いて来る彼女は、何か下駄で歩いているよう歩き方をする。そんな感じだ。だが、私は、彼女にも好感をもつことができた。自身の感情を直接的に表現しようとするその生き方は、たぶん天性のものだと思う。初心者である彼女は、釜ノ沢西俣の少し高い滝を登るたびに、歓喜の声をあげていた。本当に嬉しそうに。こういう風に自分の喜びを表現できたら、どんなにか楽しいだろう。そう思わせる生の肯定がある。だが、ひとことだけ言っておけば、彼女はそそっかしいので、沢は危ない。この時も、急傾斜の5mの樋状滝で滑ってロープにテンションをかけた。
 Iさん、Mさんの他に、moguさん、Yさん、タケさんが今度のメンバーだ。釜ノ沢は東俣を二年前にウェクラの大橋さん、山崎さんと歩いている。今度は、二度目の釜ノ沢だが、とても二回目とは思えない懐かしさがある。何か、10度も来ているような感じがする。何故そうなのだろう。あまりにメジャーな沢で、様々な情報が摺りこまれているいるせいなのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいい。moguさんには、餃子入りの美味しい鍋を作ってもらった。山に来てまで鍋じゃないだろう、と思う自分も居るが、旨いものには勝てない自分もいる。Yさんは、初日のゴーロで足を捻ってしまったようだ。夕刻に痛みが有ったので心配だった。だが、二日目も変わらないペースで歩き通すことができて、幸運だった。本人は、苦労しただろうとは思う。タケさんには、西俣の後半からリードをお願いした。何の経歴もない私が言うのもへんだが、沢は初心者とはいえ、彼氏には、山岳会で学んだリーダー学が備わっている。そんなふうに見える。

詰めのルート

 釜の沢左俣は、1890mで右沢左沢に分かれる。滝の多い右沢へ入る。この右沢の源流2100mに見逃しやすい二俣がある。この二俣の手前には、分厚い倒木帯がある。通常、この二俣は右へ入り、源頭を歩かずに適当な所から左岸の支尾根を目指すらしい。地形図を見ればわかるが、ここはかなりの傾斜がある。この右俣の沢筋をそのまま詰める者もあるようだが、少数派である。しかも、このルートは、水師(ミズシ)に直接つき上げるので、詰めの標高差は大きい。。
 なぜ、この急斜面で標高差の大きいルートをとるのだろうか。これが疑問であった。沢のルートは、沢筋を詰めて鞍部に出る。というのが、エネルギー消費からみて、最も合理的なはずである。いろいろ、ガイドブックやwet情報を調べてみると、おおよそのことは分かった。古くから出版されていたガイドブックに、このルートが紹介されていた。このガイドにならって、次々に遡行者が同ルートをとり、このルートが正道と見做されるようになったのだろうと推察した。最初にこのルートを登った者には、「前方が密な倒木帯であったので、支尾根に逃げた」などの理由があったのだろう。だが、現状では、沢から離れて途中から支尾根を目指さなければいけない明らかな理由はない。ガイドブックで(最近出版されたガイドブックでも)左岸尾根へ逃げるルートが示されている。皆がそこを歩いてる、ということだけが理由であろう。

点線矢印がガイドブックのルート 実線矢印が今回のルート

 そんな訳で、2100mの二俣を左へ入り、この左俣を標高2280mへ出る「新ルート」を目指した。もしかしたら、皆が、このルートを歩かない理由が見つかるかも知れない。密な倒木帯の連続、難しい滝や岩場があるのかも知れない。だが、地形図で見るかぎりはおとなしい沢である。なにより、傾斜がゆるい。稜線まで沢筋を詰められる。そういう易しさが見える。
 このルートには、滝も岩もなかった。地形図で見る通りの穏やかな上りだった。最初倒木がある、詰めの最後が急斜面になる、登山道の手前、5分ほど藪を漕ぐ、こんな程度の「困難」はあるが、これはどの沢の詰めでも有るものだ。困難とは言えないだろう。つまり、このルートは理想的な詰めのルートだったのである。詰めの終盤では、踏み跡があったので、このルートを歩く人間も少しはいるらしい。ただ、このルートは、登山道へ上がってから、水師まで15分ほどの登りが待っている。釜ノ沢西俣の詰めはこのルートがおすすめだ。もしこの記事を読んだ人があったら、ガイドに騙されずにここを選択して欲しい。メンバーの体力消耗が少なくて済むはずである。

2100m二俣前の倒木帯 左岸を歩く 2200m付近で水が涸れる 登山道へ出る少し前は薄いヤブ


老いを感じる
 足腰に老いを感じる。10時間ほどの長い距離を歩くと足の疲れがひどい。これは、今年入ってからの感覚である。特別に理由があるわけではないので、加齢によるものだろう。私は、父母の強靭な足腰を受け継ぎ、ちょっとぐらいの登りや下りで参ることはなかった。さわねで活動してきた間、足の衰えを感じるような山行は、少なくても今までは無かった。トレーニングが足りないと言えばそれまでだろう。沢を歩くためのトレーニングを熱心にやっている人もいるようだが、沢登りのトレーニングは沢を歩くこと、と思っている自分には向いていない。11月で63歳である。今までも何回か書いて来たが、終盤が近い。本当に体力が要求される沢へは元々行っていない。だが、少し長い距離でも支障が出るようになれば、行ける沢は大幅に制約されるだろう。会の中の還暦組でも、まだ衰えを感じない強者もいるが、時間の問題と心得て置くべきだ(警告)。
 縁側で庭を見ながら、ぼんやりとかつて登った沢のことを懐い出す、そんな自分の姿を思い浮かべるようになったら、やはり終盤は近いのだろう。だが、沢を思う心は、益々強くなるのだから全く始末に悪い。

小難しい滝
 魚留ノ滝は、一昨年来た時よりも水が多かった。山ノ神からは東沢を遡行するが、随所で徒渉が要求される。そのため、増水しているときは釜ノ沢の遡行は難しいだろう。
 釜ノ沢出合いの魚留ノ滝は、左壁のわずかな凹凸をスタンスにして、手を伸ばせば届くガバホールドがある。強引に身体を持ち上げ、クラックを登ればブッシュに入る。千畳のナメ上の傾斜の急なナメ滝は、右岸を巻いた。
 両門の滝・左俣の30mは右岸を巻いた。この滝から左を見ると登れない岩壁がある。さらにその左に眼をやると、石が落ちそうな小さな枝尾根がある。そのすぐ左には窪がある。この窪から上がって標高差30m上がった所から右上方へトラバースして本流を覗くと、少し高く巻いてしまったことに気づいた。細尾根を10mほど下がると、本流へ下る踏み跡があった。この高巻きは、窪か枝尾根を20m上がり、右上方へトラバースすれば良いだろう。
 この30m滝上の本流へ降り立つと、ゴルジュである。ガイドには、このゴルジュの通過は少して手こずる、とある。最初の淵のある小滝は岩と右岸の間を登った。難しくない。次の、斜めスラブに大岩が乗った小滝は、良くホールドを探して足を置けば大岩の上にあがれる。ここは、滝の右端から上がって、バンドを拾っていった方が簡単のようだ。ここもそう難しい所ではない。ナメの先に倒木の掛かった小滝がある。ここは倒木を頼りに滑りやすい滝左端を登った。倒木がないと手こづるだろう。ゴルジュ出口の5mほどの滝は、滝右を小さく巻いた。ゴーロが始まり出したあと、二つ目の左岸の段丘に平らなテン場(1670m)があった。
 1650mぐらいからゴーロが始まる。このゴーロは結構長く、1840m付近の二俣の先まで続く。左俣は涸れ沢である。この二俣を過ぎると滝が現れる。1890mの二俣の右俣は滑りそうな5m滝だが、水流沿いを登れる。この滝のすぐ先に、落ち口が二手に分かれたトイ状滝5mがある。ここはホールドが細かく滑りやすい。難しければ、左を小さく巻いたほうが良い。の先が西俣右沢のハイライトであろう。大小の滝と美しいナメが間断なく続く。遠目に難しそうな滝もあるが、近くへよれば、簡単に弱点が見つかる。難しい所は巻いても良いだろう。全て小さく巻ける。少し沢をやった人なら行き詰まるところはない。初級の沢と言われるゆえんだろう。美しさの備わった一級の沢である。


10月8日 
東沢遡行〜釜ノ沢遡行〜同左俣遡行〜1670mテン場

東沢の清流 水の色が美しい 東のナメ沢 I さんは登ったという 東沢 滑るので深水を渡り右岸へ

魚留ノ滝 今日は水が多い

千畳のナメを歩く 水が多いので迫力がある 急なナメ滝が出てきた 水が少なければ直登するのだが


6m曲がり滝の手前 大石のゴーロを苦労して
急なナメ滝は左岸を巻いて

両門の滝 左滝の右岸の窪から巻く 20mぐらい登って右上へトラバースする


スタンスをていねいに選んで  難しくない
30m滝上はゴルジュ 岩の左を登る 小さな滝 倒木を掴んで登った

1670m付近 左岸の段丘にテント


10月9日 
1670mテン場〜1890m二俣(右沢へ)〜2100m二俣(左へ)2280m主稜線

朝のテン場
1890m二俣を右へ入る 5m滝 滑りやすい5mトイ状滝 正面突破

滝がどんどん出てくる 小滝の先に7m滝 狭い流れを上がると大きな滝が見える

S字状滝10m S字状滝を滝左端から 水線を登れ
そうにも思ったが
難しい


大岩の滝 右に5m滝 左を巻く
秋の始まった渓谷をゆったり歩く


多段10m滝が見えてくる
多段10m滝 バンド沿いに登れる



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