東横川、西横川 中央アルプス中御所谷

白玉の木 西横川標高2000m付近


2011年9月17〜18日
さわね合宿
さわねのメンバー8名、高橋

遡行図 西横川
遡行図 東横川




コースタイム

9月17日西横川遡行
しらび橋7:50−東横川出合8:1230m大滝上9:2232−二俣(右へ)9:32−段々3011:14−長谷部新道12:30−ロープウェー駅13:45
9月18日東横川遡行
しらび橋7:50−東横川出合8:121920m左岸支流出合9:35−三俣(左俣へ)10:02192400m二俣(左へ)12:18−6m滝12:2413:04−長谷部新道13:2031−小屋場14:0923−蛇原沢登山口16:10−北御所登山口17:00


前夜祭(16日)

 またまた悪い天気に捕まえられてしまった。初日雨予報、二日目も小雨混じりの予報だった。台風は、かなり離れているはずだが、雲の発生しやすい不安定な天気だった。例によって、駒ヶ根の菅ノ台バスセンターに近い予定の泊場に結集して、まず明日の遡行について検討しなければならなかった。予定の太田切本谷と中田切川大荒井沢へ突っ込むかどうか、悩ましい決断をしなければならない。メンバーは、今日まで自身の気持ちを高めて望んでいるはずだったので、誰にしても苦しい決断であったはずだ。「予定の遡行は取り止め」、日帰り遡行ができる「中御所谷西横川」に変更した。雨の中を遡行して、焚き火もできない遡行を嫌ったのだった。
 不満足ながらも明日の遡行が決定されると、各々に何かホンワカとした空気が漂うようになる。先着隊8名は、用意したつまみを前に、それぞれに杯を空けた。深夜着の猪俣さんを入れて、合宿の参加は9名だ。6月の例会山行、南アルプス笹ノ沢以来の大集合になる。最近の遡行は少人数のケースが多いので、久々の大所帯である。大勢だと何かそれだけで楽しくなる。杯を重ね四方山話をしているうちに、自然の流れで、会の運営の話になる。もう少し自分たちが楽しく会の山行に参加できる方法は無いのだろうか。そんな話だが、冗談交じりにも、かなり本心を現した議論となった。そんなことで、猪俣さんがタクシーで到着する深夜まで、盛大な宴会になった。結局眠ったのは、零時を過ぎていた。

農業用テントのような快適な泊場を拝借 ここで三日間暮らした


西横川遡行(17日)
 悪天のため、バスに乗る登山者は少ない。しらび平でバスを降りて車道を戻ると、しらび橋がある。この橋の下が入渓点だ。西横川は、まだ会に入る前に単独で二回ほど歩いている。当時は、丹沢の沢しか歩いていなかったので、この開けた明るさが何とも言えなく気に入った。だが、きょうは小雨がぱらついている。西横川の下流部は、まず変化のある小滝が現れ、その上は大岩のゴーロとなる。ここの突破にまず体力を使う。やがて、大滝30mの少し手前から6m程度の滝が二つ現れる。

最初に現れる5mトイ状滝 右を登った 5m滝を登る 滑りやすい

 標高1970m付近の二俣の下が大滝30mである。この滝はさすがに大きく、遠目にも分かる。滝の水量は多くないので水流右から下段を上がり、流れを渡って右岸の岩を登った。Tさんにリードをお願いして確保してもらうつもりだった。だが、ここは、ホールドがしっかりあったので、それぞれフリーで登ってしまった。今日はじめての猪俣さんもサクサク登ってくる。この辺りで、ポツポツと来ていた雨が、やや強くなって来た。西横川は、岩の窪なので雨の流れは早いだろう。そんな心配を少ししたが、予報通り雨は本降りにならず、小雨のままだった。
 大滝の上の二俣(1970m)で本流は右だ。ときどき、左に入ってしまった記事を見るが、どうしたわけだろう。水量は明らかに右が多い。右俣はすぐ大きな滝になっていて滑りやすい。ここは、水量の少ない左俣を少し上がって、岩の段差をトラバースして右俣へ入った。この辺りは、両俣とも遮るものがなく、明るい沢の風景が広がっている。晴れていればさぞスカッとした気分になるのだろう。



30m滝上から登ってきた沢を振り返る
6m滝 手前にわずかに落ち口が見える 左岸のスラブの
際を登る
 奥に見えるのは30m滝 大きい

 二俣上からは、ナメ滝の連続となる。どれも登れるが、スラブなので気が抜けない。ルートを読めば簡単だが、ルートの取り方によっては、緊張するところも出てくるだろう。難しいところは、草付きへ逃げ、草と細いブッシュを頼りにすることになる。標高2200mから先は、急傾斜のゴーロになる。右から支流を迎えると、本流は30mの段々滝となる。ここは、落ち口の辺りが立っているので少し緊張した。ブッシュをつかんで強引に上がったが、このブッシュは、遡行者の腕力によって傷められている。滑りやすいナメ滝を過ぎ、さらに垂直の5m滝を右から小さく巻くと、水が涸れ急登になる。

970m二俣の右俣を見る 16mナメ滝 取り付きが難
しそうなので 左俣を少し登ってから 右俣へトラバ
ースした
10m滝落ち口を上がる


10m滝 右の弱点を攻める 4mトイ状滝 奥に12mナメ滝が見える 12mナメ滝を登る 直登はやや難しいが途中でバンドを左へ上がる

12m滝の登攀 落ち口は滑りやすい ここは左手前のルンゼから
巻くことができるが
 写真のルートを登ったほうが良い































急なゴーロをぐんぐん登る

登ってきた急峻なゴーロを振り返る
三段ナメ滝 3、5、6m フリクションで登る 油断禁物

5m二条滝 直登する 段々30m滝 落ち口は立っているのでやや難しい

5m滝幅広 右を小さく巻く この上で水が涸れる 


 6m赤岩の涸滝を越える辺りでは、だれの足もふらついていた。最後の力を出そうと思っているとあっけなくトラロープが現れ、右手に遭難碑が見えた。長谷部新道である。この道は、廃道でありながら「新道」というのは妙な気がする。5年ほど前の地形図には載っていたが、現在はこの登山道の記載は無い。今日はロープウェー下山なので、ここまで来ればひと安心である。千畳敷までの踏み跡はしっかりしているが、ハイマツの枝が伸びていて歩きにくい。悪天のお陰で、待ち時間なしでロープウェーに乗れたのは、今日の小さな幸運だった。
 西横川は、実は二年前に会の山行で企画し、菅の台に結集しながら中止になった沢である。そのときは、前泊当日の夕立豪雨で増水し、なお翌日朝の雨で中止したのだった。この時は、世話人として本当に情けない気持ちだった。今日の西横川は、小雨とは言え、寒くもなく十分に沢を楽しむことができた。あの、中止になった時の悔しい思いを晴らすことができ、満足だった。皆もそんな思いでいることが分かった。
 今夜も菅の台バスセンターで野営する。明日も天気は悪いだろう。そのまま解散して家路につくことにしよう。このとき、天候が急回復することは、誰もまだ知らなかったのである。



トラロープが張ってある長谷部新道に到着

千畳敷カールが見える 
長谷部新道(廃道)を千畳敷方面へ もう秋が始まっている



東横川遡行(18日)

 昨日の西横川遡行とはうって変わって、晴天の遡行となった。今年の遡行では、8月の大武川の遡行以来である。天気が良いと心が自然に明るくなる。それがまた嬉しい。東横川は、伊那前岳に突き上げる急峻な沢であった。昨日の西横川と同じく、平坦部の無い大きな幅広ルンゼを登っている。そんな感じのする明るく開けた沢だ。難しくもなく簡単でもない滝が、時々に現れる。遙か前方を仰ぐと、沢形が反り上がり一気に山頂へ詰上がっているように見える。天には真っ青な空が開けていた。この沢は、全体に崩落した岩が転がっている。落石常習地帯なのだろう。いたるところ、剥がれ落ちた大岩が沢に点在しているのが見える。標高2350〜2400m付近は、幅広のルンゼが、この大岩で埋まっていて、見るからに通過するのが怖いようなところである。巨石が、互いにゆるやかに支え合い不安定な堆積地を造っていた。こわごわと、この急峻な「危険地帯」過ぎると、その上は抜けるような青空であった。
 東横川の遡行の核心は、入渓早々に現れる20m滝の登攀と標高2500m付近を横断する長谷部新道の探索だと思っていた。20m滝は、いかにもホールド豊富な大滝であるが、岩にヌメリがあり、やや怖い。リードの高橋は、早々にT女史にバトンタッチし、トップをお願いした。この20mの滝をリードできる力があれば、東横川はとっくに単独で登っていた沢であったが、この20mの滝がその実現を阻んできた。今日は、やっとその先に足を踏み入れることができたのだ。嬉しい。T女史はロープを引いて軽快に登って行くが、見ると右手には木の杖を持っている。あろうことか落ち口手前で、二本足で立ち上がる余裕の登攀になった。人数が多いのでプルージックで登ったが、3級ぐらいだろう。このような滝をリードできない自分を、やはりしばらくは「万年初心者」と言い続けることにしよう。

しらび平のバス停で準備をして出発

東横川の出合いから入渓 すぐ20m滝が見える





























核心20m滝 Tさんがリード ホールドはあるがヌルがある 20m滝 杖を持ったTさんが余裕で立ち上がった

5m滝 沢はS字状に曲がる 歩きにくいゴーロ ルートを見定めて進む


4m滝 1920m付近
少しづつ傾斜が強くなる ガスが降りたり晴れたり


三俣でひと休み すぐに15m滝がある
ルートが定め難いゴーロ帯を行く

標高2050mの三俣 左俣の本流15m滝 水が多い 6m滝 タケさんがリード



5m滝 倒木の右側を登った ここは濡れる
倒木のある5m滝 水流沿いを登る

前方に大きな滝が見える 空は晴天 8m滝 水流右を登った


岩石帯の下で休憩 遠くに南アルプスらしき山並みが
標高2350〜2400mの岩石帯 不安定な大岩の堆積を見る 落石に注意しながら通過

 2500m付近の長谷部新道(廃道)の探索は、その下の5m滝でモタモタしていた我々を追い越したメンバーが、あっけなく探してしまっていた。長谷部新道は、この5m滝を登り、さらにその上の傾斜のゆるい10m滝を越えた上で交差している。標高2500m付近である。この長谷部新道の探索は、この東横川を遡行する多くのパーティーが難儀するらしい。ウェブの情報によれば、新道の横断地点を見逃して登ってしまい、稜線の登山道まで上がるケースが多い。たしかに踏み跡も不明瞭で、沢を登りながらこの踏み跡を探索するのは難しいだろう。幸い、右岸の樺の枝に、小さな赤布が下がっていた。これが目印だ。われわれは、うどんや峠を経て、北御所登山口へ降りるために、左岸の踏み跡へ入った。この新道横断地点の両岸に、新たに赤布を取り付けたので、これからの遡行者には役立つだろうと思う。でも、少し余計なことをしたかな。


5m滝 この通過で時間がかかった 右を小さく巻いた者
左のザレを登った者 ロープ確保で直登した者
長谷部
新道は、この5m滝を登り、さらにこの上の10m滝を越え
た先、標高2500m付近にある

 長谷部新道の踏み跡は、途中失いかける所もあるが大方しっかりしている。左に岩壁を見る緩傾斜の斜面には草が生い茂り踏み跡の探査が難しい。おおむね高度を変えずにトラバースを続ければ、自然に踏み跡に出る。長谷部新道は、六合目小屋場まで続いている。小屋場とは、以前小屋があった所なのだろう。広々とした休憩場所になっている。五合目うどんや峠は、名前の通りうどん屋でもあったのだろうか。当時はどれだけ賑わっていたのだろう。地形を見れば、その昔は木曽駒ヶ岳登山の主要登山道であっただろうと想像できる。今や、ロープウェー登山で昔の面影が無い。蛇原沢登山口からは、TさんやNさんと本当にくだらない話を延々として、降りてきた。こういうのは、単独では味わえない楽しみだ。
 北御所登山口に着いたとたんバスが来た。満員で乗れなかったが。運転手のはからいで、次のバスに9人の空席を用意してもらい、早々に下山することができた。感謝だった。ここの最終バスは17:18とあるので注意が必要だ。



東横川の標高2500m付近で長谷部新道が横断する 
横断点の両岸の枝に赤テープを下げた
左が岩壁となる緩斜面の踏み跡は分かりにくくなるが、同じ高さでトラバースする 踏み跡は6合目小屋場の稜線登山道へ出る



Home