深城ダム 一昨日の雨で放水中


深入沢
 大菩薩連嶺葛野川
2011年8月28日
クマチさん、タケさん、高橋

遡行図


コースタイム

深入橋8:45−入渓8:59−二俣740m10:27−二俣880m10:16−枝沢出合11:36〜12:00−稜線12:51〜13:00−尾根分岐1000m13:18−深城ダム14:10

 沢の遡行を終わって、満ち足りた気分で帰路についた。御殿場の先、国道246号線を走り始めると、山梨の天気とは打って変わって、晴れの天気だった。茜色に変わり始めた空には、鰯雲が広がっていた。いつの間にか、季節は秋だった。


 前夜祭と称して、前日梁川駅近くの場末のキャンプ場に泊まった。前日の雨で増えたのか、蚊が多かった。タープなので寝るのに心配したが、深夜、蚊の動きはなかった。それよりも、朝方、大ぶりのタープを雨が叩いた。眠りが浅くなるとそのパーカッションは、賑やかになった。そして、また眠りに入ったようだった。まだ薄暗い5時頃、シュラフを脱いだ。雨はやんでいた。

 赤木沢の出合いの桃源郷のような景色。それを美しいと思わない者はいないだろう。一人で沢を歩き始めてから間もなく、赤木沢の桃源郷を写真で見た。なんて美しいのだろうと思った。技術的にはそう難しくないことも知った。この沢の遡行を最終の目標として沢を続けようと思った。
 まだ、会社を退職する前だった。若い後輩に、この赤木沢の話をしたことがある。彼氏は、東北大に社会人入学をして、ドクターを目指していた。「ダイヤモンド切削できる超精密金型素材の研究」だった。最初、彼を連れて何度か大学の研究室を尋ねた。珍しい名前の、きさくな教授だった。この特殊な世界に先鞭をつける可能性があった。そう、われわれはいつも、わずかな可能性を追っていた。萎えようとする自身を、奮い立たせるように仕事に向かった。だが、どんな開発も、成功するのはわずかだ。私が退職した後、その彼氏が、病を押して、最後のドクター論文を提出したと聞いた。今年の五月連休前だった。だが、彼氏は、最終宣告を受け、長崎の病院へ転院した。そこで、文字通り最後の戦いに挑んでいた。だが、連休明けにあっけなくこの世を去った。残酷だった。

 念願の赤木沢だったが、天候不順で取りやめた。再び挑戦する日はあるだろう。急遽、大菩薩連嶺葛野川にある深入沢に転戦することにした。幸い、クマチさんもタケさんも参加だった。だが、タープを叩く明け方の雨で、われわれは、すっかり消沈していた。それでも、朝ごはんを食べている間に、樹間が明るくなってきた。「現地までは行ってみましょうか」、そんな会話で、深城ダムへ向かった。ダムが、放流の音を轟々と立てていた。一昨日に、まとまった雨が降っていた。目的の谷は、深入橋の遙か下にある。あまりに谷が深く、小さな沢は樹木に覆われて見えない。低く垂れ込める白雲と薄暗い谷底を見て、われわれは再び消沈した。とても、歩き通せないと思ったのだ。でも、「少し歩いてみましょうか」自身を奮い立たせるように言った。ダメなら、引き返すか、尾根に上がればいい、そう考えた。だが、谷は深い。標高差250mはあるだろう。簡単に、尾根に上がれるはずがない。

 深入沢は、最初の大きな直瀑で腕を試される。「この滝、どうするんだろう」、そんな感じの滝だ。だが、この滝は難しそうな左岸ルンゼを上がり、小さく巻いた。危険なところは無い。この滝をクリアすると、深入沢の魅力が全開される。この沢は、沢床が全てスラブでできている。ところどころ土砂が堆積しているが、それは仮の姿だ。滝を形成しやすい岩質なのだろうか。小さいな釜を従えた小滝が、延々と続く。この延々とが、三時間も続く。そう思えば良い。われわれが尾根に上がった標高950mの左岸枝沢出合いまでの間に、一度しか休まなかったのである。滝が続くので休み場も少ない。滝の登攀の魅力に押されて、われわれは休むこと無く滝を登った。ただただ登った。途中で引き返したり、途中で左岸尾根に上がるなど、もう誰も考えていなかった。
 どの滝も登れるので楽しい。だが、簡単ではない滝もあるのでますます面白い。10m級の一見して登れない滝は巻いた。どれも、小さく巻けるルートがあるので、高巻きはそう苦労しない。だが、簡単だというわけでもない。滝も、高巻きもそこそこ緊張して取り組む。岩は黒いので滑りやすそうに見えるが、フリクションが効くしホールドもある。ただ、標高850mを超えるとホールドが小さく抜けるところもあるので、要注意だ。初心者を誘って、沢の魅力を教え、登攀のトレーニングをするには絶好の渓だと思った。
 われわれは満足のうちに遡行を終えた。歩き出す前の、あの漠然とした不安が、喜びに変わった。その変化をまた喜んだのであった。相変わらずの曇天の下で、われわれの心は晴れやかだった。

踏み跡を追って入渓 さもない沢だ 豪快な最初の滝7m 直登は難しい 7m滝上 深入沢の連瀑の始まり


深入沢はこんな雰囲気の沢だ



流れに沿って登る 小難しい滝もあって



左の10m滝 落ち口の突破が難しそうだ  Tさんだったら取り付くだろうと思った
標高640m付近10m滝 左岸から小さく巻ける 足元注意だ




思いのほか岩のフリクションは良い

手強い滝も時々
小滝が続く 休む間がない 珍しく樹間がひらけるこの先で休息


幅広の滝 釜に入って右から 深い釜は少ない 水流沿いを登る 今日は水量が多いのだろう 小難しい滝も時々現れる



タケさんリードで頑張る ここが一番難しかったかも 高橋は左を巻く

探せば細かいホールドはある
二段滝 ここは巻くとあるが そのまま突破


休まず滝が続く 爽快だ 細かいホールドを拾って上がる クマチさんリード

ねじれ滝の向こうに大きな滝が 標高880m二俣手前の10m滝 落ち口の水勢が強い 左の細流から巻いた

標高880m二俣 左俣12m(奥) 同二俣 本流右俣三段10m 傾斜はゆるい

次々に大きな滝が現れる 7m滝 タケさんリード 確保してもらう 途中緊張する場面も ホールドはある

クマチさんが ガンガン登る タケさんもガンガン登る 標高950m本流4m滝 右から枝沢が入るこの枝沢を詰め稜線に上がる

帰りの尾根から 深城(ふかしろ)ダムを望む

難しい滝と詰め
 今日の深入沢は、一昨日まとまった雨が降っていたので、やや増水していたものと思う。葛野川本流は濁っていた。入渓してすぐ現れる大釜7m滝は、見るからに登れそうにない。その手前に左から支流が入る。この支流を登って巻きたくなるが、ここは右の窪を登ってから落ち口へトラバースして小さく巻ける。標高640m付近の見事な10m滝は、中盤まで登れそうだが、落ち口付近が絞られており水勢が強い。ここを突破する自信が必要。ここは、右の窪を上がりトラバースして落ち口へ降りる。標高740m二俣手前の三段10m滝は、上段のすり鉢状2mのホールドがやや細い。難しくはない。水量が今日より多いときは苦労するかも知れない。標高880m付近に二俣がある。この二俣の少し手前にある10m滝は、落ち口の水勢が強く、勢い良く水を吐き出している。水量が少ないときは登れるのかも知れない。ここは左から入る細流を上がり小さく巻いた。標高880mの二俣は、両門の滝ともいえる立派な滝が懸かっている。右俣本流は三段10m、左俣は12mの滝だ。三段10m滝は、ホールドが細かい上段で右へ逃げた。標高910m付近の7m滝は、しっかりホールドがあるが緊張する。ここは、タケさんリードで、ロープを出してもらった。まともにロープを出したのはここだけだったと思う。
 詰めは、本流をまっすぐ詰めると苦労するようだった。そこで、標高950mの左岸の枝沢へ入った。この枝沢の小さなゴルジュを越えると、細いナメ滝になる。だがじきに、水流がザレの中に、あっけなく消える。稜線への最短距離を目指して窪を上がるが、ザレ場で足元が不安定だ。1050m付近で右の枝尾根に上がり、そのままこの枝尾根を詰めた。たどり着いた標高1150mの支尾根には、しっかりした踏み跡があった。この支尾根伝いに下ったが、杣道が左を並走する。標高1000mで左の尾根に入りそうになったが、修正してダム湖へ向かう支尾根を降りた。一時間少しで、深城ダムへ降りた。ダムの見えるところからは、左の階段方向を目指した。

  *深入沢の遡行ガイドは、宗像さん編集になる「東京起点沢登りルート120」山と渓谷社に詳しい。



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